I'm your present.

※軽めの性的描写あり


玄関のドアを開けるとリビングの方からテレビの音声が聞こえてきた。時間はかろうじて0時前だけど、起きていたら必ず飛びついてくる彼女の可愛い出迎えがないから、またテレビを点けたまま寝ちゃったなと苦笑が漏れた。先に寝てていいよと言っても、は必ず僕が帰るのを待ってる。でも彼女も任務などで疲れてるから途中で眠くなるんだろう。点いたままになっているテレビを僕が消すのが最近ではお約束になってきた。

、そんなとこで寝たら風邪引くよ~」
「ん…」

もう12月だというのに、は可愛らしいルームウエアのままソファで丸くなっていた。暖房はついてるけど、これじゃ体が冷えてしまう。一応、対策したのか、テーブルの上にはホットココアらしき茶色い飲み物が半分ほど減っているカップが置いてあった。

「あーあ。すっかり冷めちゃって」

カップに触れてみれば少し冷んやりしていた。はいつからここで寝てたんだろう。テレビの画面には彼女が毎週録画してるドラマが流れているから、これを見てる途中で寝落ちしたってところか。

「…ん。悟…?」

カップをキッチンに下げてから、彼女をベッドへ運ぶのに抱き上げると眠り姫が目を覚ましたようだ。子供のように目を擦りながら何度か瞬きを繰り返した。

「ただいま」
「お帰り~…あれ…今、何時…」

嬉しそうにへにょっと眉を下げた彼女は、だいぶ遅くまで寝込んでしまったのかと慌てたようだった。

「今は0時15分前」
「え…今日早かったんだね」
「うん。任務はちゃちゃっと終わったんだけどねー。帰りの道が渋滞しててこんな時間」

普通の生活をしてる人なら決して早くはない時間だろうけど、僕らは決まった時間に終わるような仕事じゃないから、も多少は麻痺してるらしい。

「悟、食事は?」

ただいまのキスをしてから彼女をベッドへ下ろすと、まずは制服の上着を脱いでハンガーにかける。その背中にいつもの質問が飛んできた。

「んー伊地知と帰りのドライブインで不味いラーメン食べてきた」

は「不味かったんだ」と言って笑ってるけど、本当に二度と食べたくないくらい不味かった。いくらドライブインのラーメン屋とはいえ、あんだけ伸びた麺をよく客に出せたなという感想しかない。ついでに伊地知が眼鏡を曇らせながら「消化に良さそうなラーメンですね」とフォローにもならないようなことを言ってたことまで思い出して笑ってしまった。

「伊地知くんなら言いそう!…でもラーメンの話されると食べたくなる不思議…ウチにインスタントラーメンってあったっけ」
「こんな時間に食べたら太るっていつも僕に言ってなかったっけ」

だいたい夜中に小腹が空いて何かを食べたがるのは僕の方で、彼女はそれを横目で見ながら「太らない体質が羨ましい」とボヤきつつ我慢してる方だ。

「…確かに」

ベッドへ座りながら僕を見上げたが小さな舌を出して笑った。その笑顔が可愛らしくて、僕はアイマスクを下ろして身を屈めると、また自然に唇を重ねる。途端に悪戯な手がシャツの隙間から滑り込んできた。その手が下へ下へと下がっていくから、苦笑交じりで唇を離した。

「こーら。まだ僕、シャワー入ってないんだけど」
「んー…でも悟が食べたくなった」

は僕のシャツをぐいっと引っ張ってくるから、彼女を押し倒す体勢になった。唇を今度は彼女の方から重ねてきて、柔らかい舌が僕の唇をなぞるように舐めていく。彼女から誘ってくるのは凄く珍しいからドキっとさせられた。

「僕はの夜食?」
「夜食というより一日の最後のメインディッシュかも」
「僕から見ればの方が美味しそうだけど」

腰から脇腹、胸の膨らみへかけて撫で上げ、胸元のファスナーを下ろすと、噛みつくようなキスをされた。
残り僅かだった僕の理性が完全に崩壊した瞬間だった。



△▼△



キスを交わしながら手触りのいいシャツのボタンを外していくと、悟の引き締まった下腹部が見えてくる。体を起こして腹筋へ口付けながら、邪魔なベルトを乱暴に外すと、暗闇で青い瞳と目が合った。これが欲しいと言うように、熱を持ち出した場所をズボンの上からそっと撫でると、刺激が加わったことですぐに硬さを増していく。ファスナーを下ろして楽にしてあげると、悟がかすかに吐息を洩らしたのが分かった。
なのに身を屈めてすっかり硬くなった場所へくちびるを寄せようとした時、いきなり肩を押されて、再びベッドへ押し倒されてしまった。

「ダーメ。今されたらマジでヤバい」
「えー…今日はシテあげたいのに…」

なんて言ってる傍からルームウエアのズボンを脱がされて、ショーツの中に手が滑り込んできた。最初の主導権はわたしだったはずなのに、今じゃすっかり悟のペースだ。

「まだ触ってもないのに濡れてる。今日のエロい」
「…ん…っ」

意地悪な笑みを浮かべながら、わたしを煽る悟もなかなかにエッチだ。割れ目をなぞっていた長い指が一本、二本と増やされて、内壁を厭らしく擦ってくる。抽送されるたび愛液が溢れて、静かな室内に卑猥な音とわたしの嬌声だけが響き始めた。さっきのお返しだとでもいうように、噛みつくようなキスをされて、くちびるの形なんて無視するくらいわたしを食べ尽くそうとしてくる。その間もナカを掻きまわす指が、わたしのいいとこを突いて脳内が沸騰しそうだ。

「…まだイっちゃダメ。僕のでイって」

もう少しでイケそうだったのに、悟は指を引き抜いて、すぐに自身の劣情を挿入してきた。指とは違う質量を受け入れて、わたしの口から悲鳴にも似た甘い声が漏れる。突き上げるように何度も最奥を貪られて、意識が飛びそうになった頃、互いに絶頂を迎えた。

「悟、お誕生日おめでとー♡」
「…え?」

息が整ってきた頃、汗ばんだ悟の胸元に頬を寄せて言えば、本人はすっかり忘れていたらしい。キョトンとした様子で瞬きを繰り返した。だから枕もとにあった時計を見せる。
"12月7日AM.0:36"
本当は今日になった瞬間、おめでとうと言ってあげたくて、だから主導権はわたしが握りたかったのに、悟の余裕がなくなってしまったのは予定外だった。悟は何でも持ってるし、たいがい自分で買えちゃうから、プレゼントを考えるのも苦労する。なのに悟は毎年プレゼントはわたしでいいとしか言わない。だからさっき早く帰って来たのを見て、珍しくわたしから仕掛けてみたのに。
悟はすぐにわたしの意図を察したらしい。「だからあんなに積極的だったんだ」と苦笑を洩らしている。やっぱりわたしから誘うのは失敗だったかなと思っていると、悟が再び覆いかぶさってきた。

「じゃ…今からプレゼントくれてもいいけど」

悟は言いながらわたしの手を自分の下半身へと導く。そこはさっき以上に熱を持ってガチガチになっていた。

「…悟の方がエロいじゃない」
が可愛いのが悪いでしょ。責任取って」

切なそうな顔をする悟の方が可愛いと思ったのは内緒の話。
どうやら今年もわたしが誕生日プレゼントになりそうだ。

2023.12.7


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