lesson-19


※性的描写あり


1.

昨日の報告書を提出した後、今日は珍しく任務もないので休憩所の自販機でコーヒーを買い、今まさにそれを開けようとした時、後ろから「五条!」という聞き慣れた怒声が聞こえて、ふと振り向いた。すると視界に恐ろしい形相をした元同級生で現同僚の家入硝子が、ズンズンと言う効果音が良く合うような歩き方で真っすぐ五条の方へとやってくる。表情を見る限り、あまり機嫌はよろしくないようだ。

「おー硝子。お疲れ――」

と片手を上げたものの、五条の腹に家入からのグーパンが入る。ただし無限のおかげで当たってはいない。それでも顔を合わせた瞬間、殺気のこもったパンチを繰り出す家入に、五条の碧眼が僅かに細められた。

「何だよ、いきなり…」
「く…っほんとに忌々しい術式ね、これ」

家入はブツブツ言いながら自身も自販機でコーヒーを買うと、五条よりも先にソファへ腰を下ろして足を組んだ。その一連の動作を眺めながら苦笑していた五条も、家入の隣へ腰を掛ける。

「何だよ…僕、何かした?」
「私じゃなくて、にしたでしょ」
「え、がどうしたんだよ」
「…夕べ…任務の後に都内のアンタのマンションに泊めたんだって?」

ジロリと家入が睨むと、五条は「ああ、そのこと」と苦笑いを零した。その呑気な顔を見て更に家入はイラッとしている。

「まあ…泊めたけど。何で知ってんの」
「アンタ達と任務先で別れたっていうのは伊地知に聞いてたけど、夕べは寮に戻ってこないしおかしいなあと思ってたとこへ、さっきが薬を貰いに私のとこに来たんだよ」
「あ…そうか。あまり眠れなかったみたいだったな…」

と顎を触りながら五条が言った瞬間、家入がすくっと立ち上がった。

「アンタのせいでしょーが!に何したのよっ!少し薬の量も減って良くなって来たと思って安心してたのにっ」
「ナニって…僕の口から言わせたいの?硝子のスケベ♡」
「ぐっ…」

ぷっと吹き出す五条の態度に、家入の苛立ちゲージが一気にマックスになった。拳を握り締め、怒りに震えたが、五条に物理的攻撃は効かない。それが更に家入の苛立ちを押し上げていく。当然、五条にも家入の怒りは伝わっているが、こればかりは文句を言われても困ってしまう。

「あのさー。前にも言ったけど僕は別に無理やりしてるわけじゃないよ。ちゃんと合意の上で――」
「分かってるけど!分かってるけど、あんなを見てたら心配やら腹が立つやらで…この怒りはアンタにしか解消できない」
「…怖…」
「っていうか、だいたい何でマンションに連れ込んでんの?都内の家には誰も入れないって前に豪語してなかった?!」

家入は鼻息荒くフンっというと再び隣に座り、缶コーヒーを一気飲みしている。それを横目で見ながら、五条は軽く笑いを咬み殺した。前に不便だからと都内にマンションを借りたことを家入に話したら「連れ込み部屋だ」と散々罵られたことがある。その時に「そこには誰も入れる気ない。僕の寛ぎ部屋だよ」と説明したことを言ってるようだ。

「そりゃ遊びの女はってこと」
「は?じゃ…じゃじゃあ…は本気ってこと…っ?」
「何だよ、その短絡的な考えは」
「む…じゃあどういう意味なわけ?」

ますますムキになる家入を見て、五条は呆れたように肩を竦めた。

とは遊びでトレーニングしてるわけじゃないし、僕にとってもは大事な後輩。だからマンションに呼んでも問題ないってこと」
「ぬ…何か言いくるめようとしてない…?」
「どう受け取ってもらってもいいけど。夕べは確かにワンステップ進めたからもまた寝れなくなったみたいだけど確実に以前よりは慣れて来たとは思うし、その内精神的ダメージも和らいで来るとは思うよ」

ジトっとした目で見てくる家入に溜息を吐きつつ、説明する。そもそも寝不足と言うなら五条も同じだった。ふと夕べのことを思い出し、ガックリと項垂れる。夕べの行為は五条にとって天国のようでもあり、地獄のようでもあった。





2.

「…あ…っや…」

脚を押し上げられ、恥ずかしさのあまり腰を引こうとした。それを阻むように五条の腕が腰へ絡みつく。固定された状態で濡れた場所をぬるぬると柔らかい舌が何度も往復する刺激で、全身がゾクゾクと震えてしまう。

「…んっ…ゃあ…な…なん…か変…っ」

五条の舌に弄られながらぷっくりと膨らんだ場所を口に含まれ、じゅっと吸われた瞬間、くすぐったさが甘い刺激に変換されて行く気がした。思わず脚を閉じようとしたものの、手で逆に押し広げられてしまう。

「ダメ。閉じないで」
「で、でも恥ずかし…い…ぁあっ」
「履修するんでしょ…?」
「そ…それは…んっ」
「すごい…のここトロトロ…もう少しでイキそう?」
「や…わ…わかり…ませ…んぁ…っ」

溢れる愛液を五条の舌が舐めとっていくと、更にの脚が震えるのが分かって、五条はもう一度舌先で小さな突起に刺激を与えていく。突いたり、舐めたり、吸ったりを繰り返していくだけで、の口から艶のある嬌声が上がる。気づけば五条の息も乱れていた。すでに脱力しているの脚を少し押し上げ、愛液ごと襞の中まで舐め上げると、脚を押さえている手からビクビクと体の震えが伝わって来る。最後のダメ押しでもう一度突起の部分を吸い上げた時、「ぁ…あぁっ」との声がいっそう高くなってガクガクと身を震わせた。

「…はぁ…はぁ…」
「…だいじょーぶ?」

脚の力が抜けたのを感じ、五条が身を起こして声をかけると、は乱れた呼吸を整えながら真っ赤な顔で頷いた。

「い…今の…ですか…?」
「そう。どうだった?」
「よ…よく分かりません…急に頭が真っ白に…なって…目の前がチカチカ…しました…でも…きっと…気持ち良かったんだと…思います…」
「そう?なら…良かった」

と言いながら、五条は濡れそぼった場所を指で撫で上げる。その瞬間、の腰がびくんと跳ねた。

「な…何…」
「ん?今ならイキやすくなってるから――」

と五条は意味深な笑みでニッコリ微笑むと、再び脚の間へ顔を埋めた。それにはもギョっとして体を起こそうとする。ただ思っていた以上に全身がだるくて動けない。

「な、何する……ひゃぁ…んっ」

再び突起をぬるりと舐められた感触に、声が跳ねる。ついでに違う場所を指で刺激されて、下腹部の辺りがジクジクと疼きだした。

「や…五条…せんぱ…ぃ…?んんっ」
「ここ…指も入れられたことないよね」

言いながら五条がピタリと閉じている入口の辺りを指で擦れば、更に愛液がとろりと溢れ出した。

「…え…ぁ…そ…そこ…くすぐった…」
「ちょっとだけ解すよ」
「え…っ?や…ぁ…っ」

五条は突起を舌で転がしながらも、入口を優しく指で撫で上げ、押し開くようにつつく。濡れているだけに抵抗もなく、つぷりと指先が入り、入口辺りでゆっくりと抜き差しすれば、強い刺激でが甘い声を上げた。

「…んぅ…っゃ…くすぐったい…っ」
「……凄く感度いい。ここ感じるんだ?」

入口の上辺りを指でつつけば、ビクビクと腰が跳ねる。浅い場所だからか痛みや異物感はあまりないようだ。しかし同時に中と外を愛撫され、の体に再び電流のようなものが走り抜けた。

「んぁぁ…あ…っ」

さっき以上のオーガズムを感じたは、快楽の余韻が残る中、ぐったりと身をシーツに沈めた。それを見た五条は軽く息を吐いて上半身を起こすと、そっとの顔を覗き込む。すると涙が溢れた瞳と目が合った。

「…大丈夫?やりすぎた?」
「だ…だい…じょう…ぶで…す」
「…大丈夫じゃないな、これ」

苦笑を洩らしつつ、目尻に浮かんだ涙を指で拭ってやると、五条はそっとの頭を撫でた。正直、理性などミリ単位でしか残っていないくらい今、五条はに対して欲情している。だからついついやりすぎてしまった感が否めない。でもこれ以上触れてしまえば本当に抑えが利かない。

、動ける…?動けるならシャワー入っておいで」
「…む…無理…です」

真っ赤になりながら泣きそうな顔で首を振るは、手を上げることすら億劫らしい。まさかそこまで感じてくれたのかと、五条は軽く吹き出してしまった。

はかなり優秀だから、慣れればきっと大丈夫だな」
「え…?」
「すんごく感じやすい体みたいだし…」
「な……そ、それって…大事…なんですか…?」

一瞬ギョっとしたものの、興味はあるらしい。乱れたシャツを直しながらも恥ずかしそうに聞いて来るのが、五条の目には可愛く映った。

「もちろん大事だよ。物凄くね」
「も…ものすごく…」
「だって女の子が感じてくれた方が男は興奮するから」
「こ…っ…興奮…そ、それじゃ…五条先輩も…興奮したって…ことですか…?」
「え?」
「そ、その…それ…」
「それ…?」

は恥ずかしそうに五条の下半身を指さしている。そこは今の行為ですっかり硬く勃ちあがっていた。まさかの指摘をされて今度は五条の頬がかすかに赤くなる。

「仕方ないでしょ。自然現象ってやつだし…はエロ可愛いし…」
「な…何…バカなこと――」
「いやほんとに。あんなに可愛い見たら、男は絶対勃つって」
「…へ…変なこと言わないで下さい…っ」

五条の言葉に首まで赤く染めたは頭からシーツを被ってしまった。その子供みたいな行為に呆気に取られた五条も、思わず笑ってしまう。

「今日のトレーニングはここまで。動けるならシャワー入っておいで」
「……は、はい…」

はシーツに包まったまま、恥ずかしそうに頷いて、それを巻き付けたままバスルームへ。結局、この日も五条は悶々とした気持ちのまま朝を迎えた。





3.

「ってことがあってだな…」
「な…オ、オ、オーガズムって、何てことしてんのよ、アンタは!」

簡単に夕べのことを説明した五条に家入は顔を真っ赤にしながら空き缶をぶつけた。どっちにしろ当たらないので、缶はコロコロと床に転がって、結果それを五条が拾ってゴミ箱へ放り投げる。

「ゴミを捨てるな、ゴミを。それにの希望なんだし仕方ないだろ。僕だって寝不足になってんだから」
「く…ほんっと何でアンタに可愛い後輩を預けなくちゃいけないんだ…」
「別に最後までしてないし、かなり我慢してる方よ?僕」

苦笑気味に言えば、またジロリと睨まれる。だがそこで肩を落とすと家入は深い溜息を吐いた。

「まあ…ちゃんとそこの約束は守ってるとこだけ評価してやるわ」
「偉そうに」

上から言われて五条もムっとしつつ、飲み干した缶をゴミ箱へと放る。その時、五条のケータイが鳴りだした。

「あ?母さん…?」
「え…お母さん…?」
「チッ…しつこいな…」

五条は心底面倒といった顔でケータイに表示された名前を見ている。しかし出る様子はなく、「出なくていいの?」と家入が訊ねた。

「いーんだよ。どうせいつもの見合い話だから」
「は?見合い?アンタが?」
「うるせーな。コッチにもいろいろあんの」
「そっかぁ…アンタ、そんな性格だから忘れてたけど御三家のお坊ちゃまだもんね、一応」
「あ?一応って何だよ。僕は正真正銘のお坊ちゃまだから」
「ウザ」
「あ?」

同級生のいつものやりとりをしながら、五条はケータイを上着のポケットへと押し込む。先日から「見合いしろ」と母親からせっつかれてるのだ。

(冗談じゃない…何でこの歳で結婚相手を決めなくちゃいけないんだか…)

少し憂鬱になりながらも、次はいつをデートに誘おうかと考えながら、少しだけ浮かれている自分に気づいた。最初はから頼まれたものの、自分から仕掛けたゲームなのに、それをいつの間にか本気で楽しんでいる自分に苦笑する。

「これじゃミイラ取りがミイラだよな…」
「え?何か言った?」
「別に~」

怪訝そうな顔で見上げて来る家入に意味深な笑みを浮かべながら、五条は傾いて来た太陽を見上げる。その時、少しだけ開いた窓から、気持ちのいい秋風が吹いて五条の髪を揺らしていった。