身体が火照ってしまう理由を教えて欲しい-13



※性的描写あり



「ちょ、ちょっと待って…」
「待てねえ。覚悟決めろよ」

オマエを抱きたいと言われ、連れ込まれた近場のホテルの一室。比較的綺麗なまま残っていた建物は鹿紫雲曰く無人とのことだった。しかし他の泳者がうろつく中、こんな真昼間から男と抱き合うという経験はもしたことがない。それも相手は恋人でも何でもない過去の呪術師だ。部屋に入った瞬間、大きなベッドへ押し倒されたは、自分に圧し掛かってこようとする鹿紫雲を止めようと腕を突っ張った。

「オマエ…往生際がわりー女だな…」
「だ、だって…シャワー…入ってないっ」
「ハァ?シャワーだぁ?いいよ、めんどくせえ」
「よ、良くない…っ。さっきまで戦闘してて汗かいたし土埃だらけだし…」

は必死に言いながらベッドを抜け出すと、鹿紫雲は盛大な溜息を吐いた。女という生き物はどうしてこうも細かいことをいちいち気にするのか。しかし裏を返せばシャワーさえ浴びればOKともとれる。そうすれば言い訳も尽きて大人しくなるだろうと鹿紫雲は考えた。

「んじゃーオレはアッチの部屋で入ってくっから、はこの部屋の風呂に入れよ」
「え…いいの…?」

てっきりごねるかと思っていたは、鹿紫雲があっさり引いたのを見て驚いた。いつもの鹿紫雲ならうるせえと怒鳴って無理やりにでも事に及ぶだろうと思っていただけに拍子抜けしてしまう。

「言われてみりゃお互いひでぇ顔だしな」

部屋に設置された鏡に映る自分の汚れた顔を見て、鹿紫雲も苦笑を洩らす。も同様、頬や首に泥や土埃などが付着していた。確かにこれではそういう雰囲気にもなりづらい。鹿紫雲もベッドから飛び降りると「サッサと浴びようぜ」と言いながら他の部屋へ歩いて行った。それを見送ったはホっと息を吐き出すと、自分もバスルームへと向かう。ここまで来れば覚悟せざるを得ないようだ。

(だいぶコッチの意見も聞いてくれるようになったな…)

その事実に少し嬉しく思いながらコルク捻ってお湯を出す。出会った頃より数倍は優しくなった今の鹿紫雲なら、案外悪くないかもしれない。ただ好きかと聞かれると答えに困る。

(悪い人じゃ…ない。何だかんだ守ってくれるし時々優しいし…それに何より過去を引きずってたわたしを励まそうとしてくれた)

言葉は乱暴だったが、あの雨の夜。鹿紫雲は弱っているの心を鼓舞するように戦えと言ってくれた。これまで戦いたくないと逃げてばかりいたはずが、あの言葉を言われてハッとさせられたのは、自身、もう逃げるのは嫌だと本当は思っていたからなのかもしれない。目を反らしたところで過去は変えられず、死んだ仲間は戻って来ない。彼らの死を全て自分のせいにして逃げていたことが恥ずかしくなった。彼らの死を自分なんかのせいにしちゃいけない。皆は自分の任務を全うしようとしたのだ。それを否定するような自己満足の後悔など、仲間を侮辱してるも同然だ。

(そんなつもりはなかったのかもしれない。でも…鹿紫雲くんのおかげで目が覚めた…)

彼らは術師として目の前の敵に挑み、は術師としての自分達の力量を考え、生き残ることを選んだ。

――現状を把握して無理だと判断したなら引くのも術師として大事なことだ。少なくとも、僕はが生きていてくれて嬉しいよ。

あの時は生き残ってしまった自分を責め、五条の言葉は届かなかった。でも五条に言われた言葉の意味を、は今頃になって理解した。キッカケをくれたのは鹿紫雲だ。

(先生も鹿紫雲くんも強者だから…そう線引きをしてしまってたけど…二人ともわたしの心を引き寄せてくれようとしてたんだ…暗闇に堕ちてしまわないように)

嬉しかった。弱者であったはずの自分を少しでも気に留めてくれたことも、強さを認めてくれたことも。改めて呪術師を辞めてから今日まで、ただ漠然と生きて来てしまったんだなと自分自身に呆れてしまう。

(五条先生の思いに気づけたのは…鹿紫雲くんのおかげだな…)

全然タイプは違うのに、強者は得てして他人を動かす力があるのかもしれない。

「…はあ…スッキリ」

髪も念入りに洗い、汚れの落ちた顔を鏡で見て、はホっと息を吐いた。あれこれ考えながら入っていたせいで少し時間はかかってしまったが、置いてあった未開封のバスローブを身に付ける。ただ現実問題。今から鹿紫雲に抱かれるのだと思うと、急に緊張してきた。

(何か…恥ずかしくなってきた…)

自身そういう行為が久しぶりということもある。それに鹿紫雲は恋人ではない。そんな男に本気で抱かれようとしてる自分が信じられなかった。

(不思議と…イヤじゃないのが困る…)

キスをされた時と同様、そんな思いが過ぎる。ただ一つだけ心配なのは――。

「か…鹿紫雲くんって経験豊富だよね、絶対…」

鹿紫雲にされたキスを思い出し、頬が熱くなる。うん百年前の男であり、中身の年齢だけ考えれば父親よりも年上ということになる。ならばこういった行為は当然のことながらやりつくしてそうだ。

(鹿紫雲くん何か慣れてるっぽかったし…あの感じじゃ相当な経験数がありそう…)

片手で足りる経験人数の自分が果たして太刀打ちできるのかどうか分からない。それに久しぶり過ぎて、こういう時どうしたらいいのかも分からなくなってしまった。恋人ならまだセックスに至るまでの甘い時間があったりするが、と鹿紫雲はそんな関係じゃないので行為前のイチャイチャなど期待できない。

「う…ど、どうしよう…何か恥ずかしい通り越して怖くなってきちゃった…」

まるで処女に戻ったかのように心臓がバクバク鳴り始めた。何気に指先も震えている気がして軽く深呼吸をすると、はそっとドアを開けて部屋の中を覗く。

「あれ…いない…?」

薄暗い室内、どこを見ても鹿紫雲の姿はなく、はホっと息を吐いてバスルームから出た。随分と長風呂をした気もするが、今回は鹿紫雲も珍しく長いようだ。

「…何だ。緊張して損した」
「何が損だって?」
「…うひゃあっ」

再び安堵の息を洩らした瞬間――すぐ後ろで声がしてはその場で飛び上がった。振り返ると、鹿紫雲はビールを煽りながら、その手には缶ビールやウイスキーの入った袋を持っている。

「喉乾いたから飲みもん調達しに厨房行って来たんだよ。も飲むか?」

鹿紫雲は部屋に設置されたグラスを手にベッドへと上がる。それを眺めながら未だバクバクしている胸を抑えつつ、は頷いた。酒の力を借りる――。その手があったかと言わんばかりに、ベッドへ上がり、鹿紫雲から缶ビールを受けとる。アルコールに強いわけではないがはお酒が好きな方で、会社帰りは時々同僚の女の子たちと飲みに行くことも多かった。

「冷えてて美味しい…」

缶ビールで喉を潤し、ホっと息を吐く。こんな時でも風呂上りのビールは格別だ。ついでに言えば昼から酒を飲むというのは正月に許された特別行事のように感じていたが、今は仕事も気にせず、飲みたい放題。そう考えるとこの時間がとても贅沢な気もする。

「鹿紫雲くんはお酒強いの?」
「あ?あーまあ弱くはねえな。あんま酔ったことねえし」
「え…そ、そうなんだ。わたしはウイスキーの水割りいっぱいで結構ほろ酔いになっちゃうけど」
「ういすきーってコレか?」

鹿紫雲が袋の中からボトルを数本取り出す。鹿紫雲の生きていた時代には日本になかった酒だ。

「うん。このままだとキツいからお水で割って飲むの」
「あ?酒を水で薄めて飲んで何が美味いんだよ」

そう言って鹿紫雲はウイスキーの蓋を開けると、そのまま瓶へ口をつけて飲みだした。

「げ…だ、大丈夫…?」

日本酒か何かと間違えている。そう思っただったが、鹿紫雲は「かーっ効く」と言いながら美味しそうに飲んでいた。

「へえ…これ外国の酒か。変わった味すっけど美味いじゃん」
「か、鹿紫雲くん…相当強いんじゃ…」
「そうかー?普通だろ。オマエも飲めよ」
「え、い、いいよ、わたしはビールで…」
「へえ、オマエ、これ飲めねえのか」

ニヤニヤしながら言われ、はむっとしつつ「飲めるけど…」と言ってしまった。実際は水割り以外飲んだことはない。でも挑発的な態度をされてついムキになってしまった。鹿紫雲の手から瓶をひったくるようにして奪うと、ウイスキーを半分ほどグラスに注ぎ、そのまま一気に口へ流し込む。その瞬間喉の奥がカッと熱くなった。

「ん…ゲホっ…か、からっ」

強烈な味が口内に広がり、思わず咽ると、鹿紫雲が呆れたように笑っている。

「からい?甘ぇーだろ」
「ど、どこがよ…ゴホッ」
「おいおい…大丈夫かよ…」

咽ているを見て、鹿紫雲は苦笑交じりで背中を擦りだす。言ってたように鹿紫雲はかなり酒に強いみたいだ。すでにふわふわしてきたとは違い、平然とした顔をしているし、顏すら赤くならない。

「はぁぁ…何か体が熱くなってきた…」

ウイスキーをそのまま一気に飲んだせいで身体の熱が上昇して、は胸元をつまんでパタパタと仰ぎだした。酒を飲みながらそれを見ていた鹿紫雲は、扇ぐことでチラチラと見える胸元へ自然と目が向く。ついでにアルコールで頬が赤く染まりだしたの姿に小さく喉が鳴った。あまり酒は強くないと言ってたように、はすでに目がとろんとしていて、こうして見るとやけに色っぽい。

(何だかんだオレも久しぶりだし、酒でも飲んで気分を落ち着けようと思ったが、持ってきて正解だったな…)

大して酔わないまでも、酒を飲むと多少気分も落ち着いてきた鹿紫雲は、バスローブの裾から覗くの白い脚にも視線を向けた。先ほどまではどちらかと言えば緊張気味だったが、今は無防備な姿を晒していることで、余計に男心をくすぐってくる。

(もう…いいよな…手を出しても)

そう思いながら酒瓶をベッドボードへ置くと、未だちびちびと酒を飲んでいるの手からもグラスを奪った。

「ん…何…?」
「別にここへ酒を飲みにきたわけじゃねえだろ」

言いながらの腕を引き寄せ、細い体を腕の中へ納める。はとろんとした目を少し見開いたものの、鹿紫雲のしたいことを察したように目を伏せ、まつ毛を震わせた。その恥じらう姿を見て、鹿紫雲の心臓が大きく反応し、同時に下半身に熱が集中していく。その欲求に従い、鹿紫雲はの顎を掴むと顔を上げさせ、薄っすら酒で濡れている唇へ自分のを重ねた。

「…ん…う…」

たっぷりと味わうよう深く、何度も角度を変えて口付けられ、は息苦しさで喘ぐ。舌先を絡め合い、軽く吸い上げられると、アルコールでふわふわした身体が更に火照っていった。

「あ…ンぅ…」

キスの合間に鹿紫雲がバスローブのヒモを器用に外していく。はだけられた胸を大きな手で弄られ、ひときわ甘い声が洩れた。呼応するように下腹部の奥が熱く疼いてしまう。

「ん…ッ」

の乳房が鹿紫雲の手に優しく捏ねられ、時折脇腹を撫でられると自然に体が跳ねた。緊張して強張っていたはずの体は、アルコールと鹿紫雲の手によって少しずつ解されていく。

「ん…あっ」

鹿紫雲の唇がの細い首筋へ押し付けられ、背中がゾクゾクとしてきた。少しずつ下がっていく鹿紫雲がの胸に顔を埋め、乳首の尖りをぺろりと舐め上げると、その刺激で肩が跳ねて、胸の膨らみが鹿紫雲を誘うように揺れる。

「…は…ぁっんん」

ちゅっと音を立てて吸いつかれ、尖らせた舌先で乳頭をくすぐられると、焦れったいような疼きが広がっていく。濡らされた乳首を指でぬるぬるとしごかれ、まだ触れられてもいない場所が勝手に疼き、腰が動いてしまう。それに気づいた鹿紫雲が「…可愛いな、オマエ」と低い艶のある声で呟く。

「…え…んあ…っ」

しかしの耳には届かない。すっかり赤く色づいた場所を吸われ、背中をのけ反らせた。久しぶりのせいか、やけに体が反応してしまう。しかしその反応の良さが鹿紫雲の欲を余計に煽っていった。

「……ぁ…っ」

我慢出来ないとばかりにベッドへ押し倒され、は頭がくらりとした。中途半端にはだけたバスローブの下は当然なにも身に着けていない。圧し掛かって来た鹿紫雲の好きなように弄られ、息も絶え絶えで喘がされる。少しずつ身体を下げて行った鹿紫雲に膝裏を持ち上げられ、恥ずかしさで身を捩ったものの、それくらいでは耐え切れない淫靡な刺激が、恥ずかしい場所から襲ってきた。

「…ひゃ…ぁ…ん、ンっ」

すっかりと濡らされた場所にぬるりとした感触がして、思わず腰が跳ねる。舌先で襞をかき分けるよう亀裂をなぞられ、隠れている尖りに吸い付かれた瞬間、強い痺れが足元から駆け抜けていく。

「ダ…ダ…メ…そん…なとこ舐めちゃ…ぁっぁ」
「何でだよ…すげー綺麗だぞ、オマエのここ…濡れて厭らしく誘ってんじゃねえか」
「…ンぁ…」

あまりの刺激の強さに身をくねらせたものの、僅かな抵抗も空しく、鹿紫雲の舌がの陰核に絡みつく。小さな尖りだったものは剥かれて吸いだされ、めちゃくちゃに舐め回される感触には容易く堕ちた。背中がしなり、びくびくと白い脚が震え、奥から熱くとろりとしたものが溢れてくる。またそれを鹿紫雲が舐めとり、イったばかりで膨らんでいる芽をまた芯まで剥きだされ、悦楽の核心を直接舐め回されるのはたまらなかった。無意識に鹿紫雲の髪に両手を置き、どうにかやめさせたかったが、舌の動きが止まることはなく。蜜が溢れたそばから舐めとられ、その場所にまで舌を押し込まれたの口から悲鳴のような声が洩れる。

「ナ…ナカ…やめ…て…ん…ぁっ」
「…ここ良さげだなァ。どんどん溢れてくる…」
「…ん…っぁあ」

ぬるっと押し入ってきたのは舌ではなく、指だった。ゴツゴツとした鹿紫雲の中指が、濡れすぎてヒクついている場所へ埋められていく。

「ひ…イ…イっちゃ…う…っ」
「イけよ…もっと見せろ」
「…ぁぁ、あっ」

蕩けているわりにキツい媚肉の中で指が出し入れされる。ちゅく、ちゅくっと濡れた音を立てながら、のそこがヒクつき、指に吸い付くように締めつけてきた。

(わたしのカラダ、おかしくなってる…こんなの…初めてだ…)

執拗に攻められながら朦朧とする意識の中で、は初めてナカで何度も達した。無理やり快楽を引きずり出すような鹿紫雲の愛撫は乱暴なくらいに荒々しい。ナカで感じるなど今まで一度もなかったは、その甘美な快楽に意識を全て持って行かれそうになった。

「……あぁっ…」

恋人でもない男にここまで快楽を引きずり出されるのは、たまらなく恥ずかしいのに、体だけが先に鹿紫雲へ溺れてしまう。どうしようもなく、まるで引力のように鹿紫雲に引かれてしまうのだ。
寝室に、はぁはぁとの荒い息遣いだけが響く。響くのはの息だけで、鹿紫雲は未だバスローブさえ脱いでいない。

「……オマエは可愛い女だな」
「……っ…?」

いつの間にか体を起こしていた鹿紫雲が指を引き抜き、を見下ろした、火照った頬をするりと撫でられるだけでビクリと肩が跳ねる。全身が敏感になりすぎていて、どこを触られても感じてしまう。

「…ぁ…」

鹿紫雲は呼吸を乱しているを見てかすかに微笑むと、彼女の脚をぐいっと押し上げ、自身の体を間へ割り込ませた。

「…あっ…待っ…」

待ってと言うの制止は最後まで言うことが出来なかった。

「ン…っんう…」

達した後のヒクついているナカへ熱く昂った生身が押し入ってくる。じっくりと蕩けさせられた場所はの意志と関係なく焦れていたのか、容易く根元まで受け入れてしまった。

「…ん…ふ……」
「…く…狭いな…すぐ持ってかれそうだ…」

鹿紫雲は深く息を吐いて切なそうに呟く。も同じような感覚を感じていた、閉じていた場所を強引に広げられていく感覚に苦しそうな息を吐く。

「…動くぞ」
「…ん…っ」

鹿紫雲の言葉に応えようとしたが唇を重ねられ、舌を絡み取られる。キスを交わしながらも、鹿紫雲にぐっと腰を押しつけられると、更に深くつながった。くぐもった声がの口から洩れる。

「…ゃ…んっ」

唇が離れたと思った瞬間、腰を打ち付けられて声が跳ねる。突かれながら胸を揉みしだかれ、硬くなった乳首を擦られると、ナカの壁がきゅうっと鹿紫雲のものに絡みついた。それをものともせず、狭い場所をこじ開けるように抽送されて、口唇で散々弄ばれた乳首を今度は指で弄られると、どうしようもない気持ち良さが全身に広がっていく。鹿紫雲が腰を引くと自然にの腰も動き、その瞬間また打ち付けられて卑猥な水音が立つ。

「…ゃ…あっ」

胸を弄っていた手が今度は繋がっている場所の上の部分へ伸びる。ぷっくりと膨らむ場所も乳首と同じようにヌルヌルとこねられ、はたまらず背中を反らせ何度目かの絶頂に達した。その間も抽送されてはナカを抉られる。激しすぎる快感に全身が粟立ち、の目尻から涙が零れ落ちた。身体が震えての足の力が抜けそうになるのを、鹿紫雲の腕が支えて更に押し上げ、そうすることでより奥深くまで鹿紫雲のものに犯されていく。

のナカ…すげぇ…気持ちいい…絡みついてくる」
「…ん…ンっ」

吐息交じりで呟く鹿紫雲は、快楽を追うように乱暴なほど腰を打ち付けてくる。

「…や…あ…ん…ぁっ」

絶頂の余韻の中、更に攻められ、は意識が飛びそうになりながらも頭を振って耐えていた。粘膜の絡み合う音と激しい息遣いが、静かな室内に響いて、の甘えたような嬌声が上がる。過去に抱かれた経験など、子供のお遊びだったと思えるほどに、身体が鹿紫雲から与えられる快感に打ち震えている。大きなベッドのスプリングが二人分の体重を乗せていっそう苦しげにギシギシと軋んだ。鹿紫雲も絶頂が近づいてきたのか、抽送が次第に激しくなり、肌と肌のぶつかる音でさえ、耳を刺激してくる。

「……っ…」
「…ぁぁ…あ…っ」

最後に最奥まで突かれ、ナカが一気に収縮すると、鹿紫雲もそこで絶頂を迎えた。互いの荒い呼吸音だけが残り、余韻を味わうよう鹿紫雲はを抱き寄せ寝転ぶ。火照った肌に室内の冷えた空気が心地いい。も鹿紫雲の胸に顔を埋めながら、気怠い体を密着させた。ドクンドクンと鹿紫雲の心臓の音がかすかに聞こえて、ほっと安堵の息を洩らす。こうしていると普通の人間と何も変わらない。髪を撫でる鹿紫雲の手の優しさが嬉しかった。

「…大丈夫か?」

しばらく無言で抱き合っていたが、不意に鹿紫雲がの顔を覗きこんでくる。翡翠色の虹彩と至近距離で目が合い、急に恥ずかしくなった。

「な…何で赤くなんだよ…」
「だ…だって…は…恥ずかしい…」
「…あ?さっきもっと恥ずかしいことしてんじゃねえか」
「い…言わないでよ…そういうことっ」

鼻で笑う鹿紫雲を見て、こういうところは抱き合っても変わらないとは徐に目を細めた。恋人じゃないのだから仕方がないが、行為の後は少しくらい甘い時間が欲しいと思う。その時、指で顎を持ち上げられ、ドキっとしたのと同時に唇を塞がれた。たったそれだけで胸の奥が音を立てる。普段の粗暴さからは考えられないほどの優しい口付けに、再び理性を持って行かれそうになった。どうしようもなく体が熱くて、そのもどかしい火照りをもう一度、消して欲しいと願った。