04-9:ニアミス以上でも以下でもなく [ near miss ]



過去 × ノ × 足音


はひとり店へ帰って来ると明かりもつけず、少しだけ酔いのまわった体をソファへと沈めた。先ほどまでカノイやミリヤ達と飲んでいたのだが、酒を楽しむ気分でもなく先に帰ると言って戻ってきたのだ。カノイも一緒に帰ると言い張っていたが結局はミリヤの強引な引き止めにあい、そのまま次の店へと連れて行かれた。

「あの分じゃ朝まで帰してもらえないんだろうな」

カノイの困った顔を思い出し、は苦笑した。そしてふとジーンズのポケットに入れたままのメモを取り出す。クロロのケータイ番号を見ているだけでどこか繋がってるような安心感を覚えた。

「私の居場所、か……」

確かにこの街に来てからこの場所が自分の居場所なのだと思えるようになっていた。でもそれはクロロともう二度と会えないんだという思いも少なからずあったからだ。他に行くところがなくなり、自分を受け入れてくれたカノイの元で生きて行こうと思いなおしたからにすぎない。

「……私は……どこにいたいんだろ」

今の生活は決して嫌じゃない。今日まで楽しくやってこれていた。何の不満もない。だけど――が行かないと言えばクロロは何も言わず姿を消すだろうと言うことも分かっていた。そうなれば二度とクロロや旅団のメンバーに会えないと言うことも。

「……そんなの嫌だよ……」

天井に翳したメモを額に当てると、そんな本音が漏れる。いつの間に私はこんなにも欲張りになったのか――。そう思いながらゆっくりと体を起こした。その瞬間、ドアの開く気配を感じ思わず立ち上がる。

「誰?カノイ、さん?」

そう問いかけながらもそれがカノイではないと本能的に分かっていた。昨日の事もありは警戒したまま一歩後ずさる。暗い店内には月明かりだけ。そこに一人のシルエットが浮かぶ。

(またブラックリストハンター?)

夕べの恐怖がじわりと足元から忍び寄り、はドアの前の人影を見つめた。相手はゆっくりとの方へ歩いて来る。

「誰なの?」

もう一度が問いかけた。同時にその人物がもう一歩前へ出た時、月明かりに緋色の眼が浮かび上がった。

「――――っ?」

自分と同じ眼を見ては驚いたように後ろへと下がった。同時に背中がテーブルへと当たり、がたんっと僅かに音を立てる。

「な……何で……」

驚愕するの前に姿を現したのは金髪の少年だった。


「私を、覚えているか――?」


緋の眼の少年が静かに問う。
同時に、の体は力なくその場に崩れ落ちた――。


貴方ハ誰――?





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