Ice ring
しんしんと降り積もる雪を見ながら、そっとそれに手を伸ばす。
小さな白い雪は、私の体温ですぐに溶けて、ただの水滴に変わった。
「寒くないのか?」
不意に後ろから抱きすくめられ、ドキっとする。
かすかに頬を掠めた彼の唇で、更に身体が熱を持った。
「寒くないよ。一緒にいるから」
そう言って私を抱きしめる彼の手にそっと口づける。
男の人にしたら、細くて滑らかなこの手が、私は好きだった。
それでも彼のこの手にかかれば、虚という化け物だって、すぐに塵と化してしまう。
「私ね、雪って好きなの」
「…へぇ」
「こうして雪を見てると、いつも日番谷隊長の事を思い出すから」
「…コラ」
ぺチっとオデコを叩かれ、僅かに後ろを向くと、少し不満そうな彼の顔。
「二人の時は…隊長って呼ばない約束だ」
「あ…ご、ごめん」
「まあ…前よりマシだけどな」
呆れたように笑う彼の少し低い声…
この響きも私の耳を心地よくさせる。
「最初は何度言っても、"日番谷隊長"だったから」
「だ、だって…」
私と彼の間には大きな格差があって、いくら恋人になったからといって、すぐには変える事が出来ないくらいの大きな壁がある。
彼、日番谷冬獅郎という人は、この尸魂界を守る、護廷十三隊・十番隊長なのだから。
「そういや…オレ達のこと、いつまで隠してるつもりだ?」
「…出来ればずっと」
「ずっと?!」
私の言葉に、彼はギョっとしたように顔を覗き込んで来た。
視界いっぱいに彼の顔が現れ、少しだけ心臓に悪い。
でも彼の切れ長の瞳も、凄く好き。
「ずっとって…これからも、こんな風にコソコソ会うのか?」
「…うん」
「はそれで良くても、オレが嫌だね」
「また、すぐスネる…」
プイっと顔を反らす彼に、ちょっとだけ苦笑する。
こういうところは、やっぱり年下の彼らしいところでもあり、可愛い所でもある。
でも私は死神でも何でもない、ただの庶民といっていい。
しかも年齢だって、彼よりはるかに上で(見た目は若いけど)
そんな女が、護廷十三隊の隊長でもある彼の恋人だなんて広まれば、それこそ彼に迷惑がかかってしまう。
だから、こうして時々彼が会いに来てくれるだけで、私は幸せなのだ。
「せっかく今日、会えたのにケンカなんかしたくない」
スネたままの彼にそう呟けば、そうだな、と彼も笑う。
「プレゼントは忘れたけど…ごめんな」
そう呟いて私の頬を傾かせると、軽く唇を重ねる。
そんな些細な事ですら、私にとっては幸せを感じる瞬間。
「いいの。今日、あなたに会えた事が、私にとってはクリスマスプレゼントだよ」
そんな本心を口にすれば、彼が耳元で苦笑した。
「大げさ」
「だって本当だもん」
そう言って彼を仰ぎ見れば、優しく細められた瞳が私を見つめていた。
「何も…ないけど」
「え…?」
僅かに微笑んだかと思ったら、私の手を握る。
その行為にドキっとしたのもつかの間、指先に冷たい感触が走った。
「これくらいは出来る」
彼はそう言って私の頬に口づけると、握ったままの私の手を目の前に翳した。
「これ……」
「オレからにプレゼント…」
耳元で照れ臭そうにささやくと、翳した手を一緒に見つめた。
私の左手の薬指には、キラキラと光る、氷のリング。
降り続く雪と重なって、それは本物のダイヤのように光り輝いている。
「綺麗……」
思わずそう呟いた瞬間、涙がポロっと零れ落ちた。
「な、泣くなよ…」
「う…嬉し泣き…だもん…すっごい…嬉しい…」
「…ホント…大げさ。こんなもん、すぐ融けるだろ」
照れ臭そうに視線を反らすと、彼はリングの光る指を自分の口元に持って行き、優しく口づける。
「いつか……ここに本物のリングをはめるまでは…空けとけよ。オレが予約しとく」
その言葉の意味を聞く前に、私の唇は彼のそれと重なって、かすかな熱を持った。
左手の薬指に光る、この氷のリングも、そのうち融けてしまうだろう。
でも、この夜の想いだけは、永遠に融かさないで――
「メリークリスマス…冬獅郎」
BLEACH、劇場版第二弾、公開記念?で、日番谷シロちゃんを。
乱菊さんにからかわれて、怒るシロちゃんが可愛いです(笑)
どの漫画でも好きな女の子キャラって、あまりいないんですけど、乱菊さんだけは無条件に好きです!
たとえ愛しのギン様と、実は密かに想い合ってる仲だとしても!(私の推測)乱菊さんなら何でも許せます(笑)
あ、話がそれましたが…今回のBLEACHの映画、第二弾では、そのシロちゃんが主役っつー事で そんな映画の記念に、シロちゃんと一般女性の秘密の恋なんぞ…(笑)