禁断の実は何故甘い



それは凄く綺麗で、どうしても自分のものにしたくなった。 




サラサラ、サラサラ揺れる綺麗な黒髪、その合間から見え隠れする細くて白い首。 
華奢な肩、腰、そして俺を射抜くような漆黒の瞳… 
何もかも俺の中の何かを疼かせるから、ゆっくり近づいて、もっと傍で見たいと思った。
触れたい、と思った――





 「私に触れたらお兄様に殺されちゃうよ?ベル」 





もう少しで触れられそうだってのに、その叱咤に伸ばした手がピクリと止まる。





「なぁーんだ。バレバレ?つか何で俺って分かったのさ」 
「だって、こんな無謀なことするの、ベルしかいないもん」 
「あーそっかもねー。皆、ボスにビビりくんだから♪」 





ちぇ。そっと近づいたのに、ってば勘が良すぎて嫌になっちゃうよ。 だったら最初から堂々と近づけば良かった。 





「でもさぁ、愛しい"お兄様"は今、出かけてるからいないじゃん?」 





そう軽く言って、の肩越しからひょいっと顔を出すと、冷たい視線が俺を捕らえる。 
その視線にまでゾクゾクしてくるんだから、俺ってやっぱ危ねぇ奴かも。 





「…ねぇ、いつんなったら俺のもんになってくれるの?」 
「ちょっと…私に触ったら―」 
「いいよ?俺、殺されても。ちょっと嫌だけど、やっぱに触れたいし殺されてもいーや」 





本能のままの細い首筋に腕を回し後ろから抱きしめると、はビクっと体を跳ね上がらせて振り返った。 
全くその反応とか、すっげぇ可愛いから参っちゃうよ。 やっぱ触れて良かった。 
思ったとおり、の体は折れそうなくらい華奢で、思い切り力入れたら壊しちゃいそう。 
つか、いっそこのまま俺の腕の中で壊しちゃおうかな。 





「…本気で…言ってるの…?」 





至近距離で見つめあいながら、唇を振るわせるは、ハッキリ言ってめちゃくちゃ可愛い。 
艶々と赤く光っている、ふっくらとした唇を見てたら、腰の辺りがムズムズしてくる。 
血、以外の物で欲情するなんて初めてだし、何だか変な気分だけど。 





「本気…って言ったら俺のもんになる?」 
「やだ。ベルのものになったら何されるか分からないもん」 
「痛いことはしないって。すっげぇ優しくするよ?」 
「何だか言い方がイヤラシイから嫌」 
「イヤラシイって…まあ当たってるけど。俺、今すげぇームラムラしてきてっから♪」 
「な…何それ!もうー放してよ!私の部屋から出てって!」 
「やーだよ」 





クモの糸にかかった蝶がジタバタと羽を動かすように、も俺の腕の中で暴れるから、ちょっとだけ力を込めて抱きしめる。 
放すわけないじゃん?せっかく捕えた可愛い蝶を。 
捕まった蝶は食べられるって決まってるんだからさ。 





「…ちょ、ひゃ…っ」 





抱きしめたままの長い髪をそっと避けると、露になった白い首に吸い付いて舌を這わせる。 
その刺激に驚いたのか、はビクンと身体を震わせるから、いっそう俺の欲も高まっていく。 





「な、やだ…何して―」 
「んー食事♪美味しそうだから食べちゃおうと思ってさ」 
「バ、バカ!スケベ!」





の耳が見る見るうちに赤く染まっていって、ふっくらと柔らかそうなほっぺも同じように染まる。
やっぱり可愛いなぁなんて思いながら、その頬もぺロっと舐めてみたら、凄く甘かった。 





「ん、おいし♪」 





てっきり、もっと暴れるかと思ったけど、は急に動きを止めて、涙目で俺を見上げるから、ちょっとガラにもなくドキっとする。 
なに?というように首をかしげ、そのぷっくりと美味しそうな唇にも自分の唇を寄せれば、は声を震わせた。 





「…ベルってば…ホントに殺されちゃうよ?」
「…いいって言ってるじゃん。が一瞬でも俺のものになれば殺されたって本望」 
「―――バカ…」





はそう呟いて俯いたけど、俺は早くキスしたくって、その唇を思う存分味わいたくて、彼女の顎を少しだけ持ち上げる。 
その時、の真っ赤な頬に透明の粒がポロポロ零れ落ちてドキっとした。 





「私は…嫌だよ…?ベルが死んだら…」 





胸に突き刺さるような言葉をポツリと呟いたは、もう一度、「嫌だよ…」と言って俺を見上げた。 
涙で濡れた瞳の中に俺が映っていて凄く綺麗にキラキラ光ってるから、何とも言えない想いが溢れてくる。 





「大丈夫、俺は簡単には死なないよ?」 
「…え?」 「だって俺、王子だもん」 
「…バカ」 





俺の一言に泣きながら微笑むが、あまりに可愛いから。 
限界に来ていた欲情を解放して強引に顎を持ち上げ覆いかぶさる。 
押し付けるように唇を塞いで無理やり舌を侵入させると、の喉から甘い音が聞こえてきた。 
逃げ惑う小さな舌を絡めとリ強く吸い上げると、ピチャリと厭らしい水音が静かな空間に響き渡る。 
口内を存分に味わいながら、首に回してた腕を放して肩を押せば、華奢な身体は、いとも簡単にソファの上へと沈んだ。 





「ベル…?」 





俺の唾液で艶やかに光る唇が俺の名前を呼ぶ。 とろんとした目で見上げるなんて、誘ってるようにしか見えないじゃん。 




ああ、俺、マジでボスに殺されっかも。 




禁断の果実を食った奴って、どうなったんだっけ?




まあ、いっか、食べてから考えよう。



























  • back>>
























  • ニャー♡





    王子バンザイ! キレちゃってる王子も変態王子も大好きだー。 という事で、やっぱ描いちゃいました(゜ε ゜;)