「じゃあ明日のお昼にホテル前の公園ね?」
「分かりました」
こうして私はLとデートの約束をした。
「L!」
約束の時間よりも少し前に来てしまった私は、道路を渡ってくるLが見えて大きく手を振った。
彼も私を見つけて嬉しそうな笑顔を見せると足早にこっちへ歩いてきてくれる。
「すみません。待ちましたか?」
「ううん。私が早く来すぎちゃったの」
そう言ってLを見上げれば、また嬉しそうに微笑む彼に、私も自然と顔が綻ぶ。
「じゃあ、どこに行きましょうか」
Lはそう言って私の手を繋ぐとすぐに指を絡めてきた。
いつも一緒にいるのに、何故か外でこんな風に手を繋ぐだけでくすぐったい気分だ。
「どこでもいいよ?Lが行きたいところで」
「そんな…の行きたいところでいいですよ?」
「いいの。L、どっか行きたいとこない?」
そう言って彼の顔を覗き込めば、Lは訝しげな顔をする。
「どうしてですか?」
「どうしても。Lの行きたい場所に行きたいの」
「だから、それがよく分からないのですが…そもそも何故、今日は出かけようなんて言ったんです?」
Lは凄く不思議そうに首を傾げて私を見ている。
確かに毎日、Lのいるホテルに会いに行ってるのだから、わざわざ人ごみに行かなくても…なんて思ってるのかもしれない。
でも私はLとこうして太陽の下で会いたかったのだ。
「Lはいつも室内にいてお仕事してるでしょ?だからよ」
「…はあ」
「一日中、部屋にこもってるのなんて体に悪いでしょ?それに…」
「それに?」
更に顔を覗き込んでくるLを少しだけ見上げると、私はニッコリ微笑み繋いでいる手にギュっと力を込めた。
「こうしてLと外を歩きたかったの」
「……」
「どこに行きたいとかじゃないの。ただ外でLとデートらしいデートをしてみたかっただけ」
――だって会う時はいつもスィートルームの一室で、何だか恋人じゃなくて愛人みたいなんだもん…
最後にそう呟いた私に、さすがのLもギョっとしてたけど、すぐに困ったような笑顔を見せた。
「すみません…。そうですね。仕事ばかりでとはデートらしいデートをした事がなかったですね」
「あ、あのね。ほんとはね?Lと一緒にいられればそれだけで幸せなの。でもLは誘わないと、あまり外に出ないし、その…」
Lに罪悪感を持たせたいわけじゃないのに、と慌てて説明した。
が、不意に彼の指先が私の唇に当てられ―――。
「いいんです。分かってますから」
Lはいつものように優しい笑みを見せて私の額にちゅっと口付けた。
「L…」
「そんな顔しないで下さい。今日は色々な場所に行きましょうか」
「…いいの?」
「ええ、もちろん」
Lの言葉に嬉しくて笑顔になった。
「さ、最初はどこに行きますか?」
「あ、じゃあ…歩きながら考えよう?」
「そうですね」
そう決めて、また二人で仲良く歩き出す。
今日は天気もいいから公園内も色々な人で溢れかえっていた。
「私は行きたい場所なんて思いつかないですし、が決めて下さい」
「え、でも…いいの?」
「もちろん。どこがいいですか?」
Lの言葉に私は必死に考えた。
二人で行きたい場所はたくさんある。
ただLが外に出たりする事や、人が多く集まる場所を嫌うので言えなかっただけ。
でも今日は…もしかしたらOKしてくれるかも。
私は思い切って、「動物園…」と口にしてみた。
それにはLもクスクス笑いながら、「ええ、いいですよ」と言って頬にちゅっとキスをする。
これくらいのスキンシップは、いつもしてるけど外でされると妙に恥ずかしい。
「後は?」
「え?」
「後は行きたい場所ないんですか?」
てっきり行くとしても一ヶ所が限界かなと思っていたので、Lのその言葉に少し驚いた。
「あ…じゃあ…映画見たい…!凄く笑えるっていうコメディなの!ほら、L疲れてるから思い切り笑った方がいいのよっ」
張り切って説明すると、Lは嬉しそうに目を細めた。
「私の事を気遣ってくれるんですね」
「え、だって、そんなの当たり前だよ…」
「凄く嬉しいです。ありがとう、」
そう言って少しだけ屈むと、Lは私の唇の横にもちゅっとキスをする。
またしても不意打ちで顔が赤くなったけど、Lと一緒に映画館で映画を見れると思うとワクワクしてきた。
「他には?」
「え?」
「今日はもう時間の許す限り、の行きたいところ全て行きましょう」
「え?い、いいの?…」
「ええ。もちろん」
「わぁ、嬉しい!ありがとう、L!」
彼の言葉に感激して思わず外という事を忘れ、Lに抱きついた。
すると、すぐに背中に腕が回され、ギュっと抱きしめられる。
「あ、あのL…」
「私も嬉しいです…」
「え…?」
「から抱きついてくれたので」
「…………」
そう言われて、すぐに我に返り、彼の腕の中で暴れたものの、Lは一向に放してくれない。
「L…?あの…」
「好きですよ、。誰よりも」
いきなり公園で愛の告白をするLに私は更に顔が赤くなった。
「ちょ…L…?ここ公園で…あの…皆、見てるよ…?」
「見せ付けてやりましょう」
「え!で、でもここはアメリカじゃなくて日本だし…」
「関係ありません。私はいつでもとこうしていたいんですから」
Lは更に私の心臓に負担がかかりそうな事を耳元で囁くと、
「、私からも一つお願いが」
「え…?な、何?」
それを聞くまで放してくれないかも、と思って、すぐに返事をする。
「今日はのいう事を何でも聞きますから…デートの最後は私が決めていいですか?」
「…え?あ…うん。もちろん!元々そのつもりだったし…」
そう言ってLの胸から顔を上げると、熱っぽい瞳と目が合ってドキっとした。
するとLが私の額に自分の額をコツンと当ててきて、少し動けば唇が触れ合いそうな距離に鼓動が一気に早まる。
そんな私を見て、Lは軽く笑みを零すと、小さな声で、
「じゃあ…デートの最後は、を食べたいです」
「――――っ?」
"もちろん、朝まで"と付け加えたLの大胆発言に、私は文字通り顔から火が出るかと思った。
「ん…ひゃ…っ」
しかも、そのまま唇を塞がれ、軽く唇を舐められる。
Lは耳まで真っ赤になった私を満足げな顔で見ると、何事もなかったかのように再び手を繋いで歩き出した。
「楽しみですね、デート」
「う、うん…」
あんな事を言われた私は、そっちの方が気になって、さっきからバクバクとうるさい心臓を沈める事に集中した。
チラリとLを見上げれば、何だかいつもより楽しそうでホっとするのだけど。
「じゃあ最初に動物園でしたっけ」
「あ…うん」
「で、その後は映画を見るんでしたね」
「あ、その前に水族館も行きたい」
「ええ、いいですよ」
「あのね、イルカが凄い可愛くて―――」
「の方が可愛いですよ」
「………」
そんな台詞をサラリと言われ、私は、"Lはどこにいても普段と同じで何も変わらないんだな"という事を学んだ。
それでも、こうして仲良く手を繋ぎながら、他愛もない話をして二人で太陽の下を歩く。
相手がLだと、こんな些細な事でも凄く幸せ―――。
陽だまりで待ち合わせ
貴方となら何度でも
皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて…【Nelo Angelo...Owner by.HANAZO】