月が出ているうちは幸せだったけど、朝、どんな顔をすればいいのか分からない。
だって男の人の隣で目覚めるのは初めてだから―
「あ…雷」
朝っぱらからお腹に響くような音が聞こえ、その数分後には青白い光を放つ。
私はその光を見ながら何も答えないメロへと意識を飛ばした。
「…痛いよ、メロ」
「黙れよ」
さっきから抱きしめられた体から骨の軋むような音がする。
遠くから聞こえる雷の音と重なって何だか滑稽だ。
今日まで何だかんだと理由をつけて呼び出すのはメロの方だったけど私はそれが不思議でならなかった。
他人に興味がなく、自分が一番になること以外、執着心の欠片もないような男だからなおさらだ。
そんな男が本気で逃がさないと言うように私の体を拘束している。
昨夜、私たちはそうなる事が当然のように肌を合わせた。
抱かれてる間中、彼の胸元で揺れてるロザリオを見ながら、私は生まれて初めて幸せを感じた。
自分の望みのためなら平気で人を殺せるような男に抱かれてるのに私は幸せだったのだ。
それは初めて感じる"生きてる実感"。
なのに朝を迎えた途端、現実に戻されたかのように怖くなった。
それは終わる事への恐怖なのか。
「…あ…」
さっきから響いていた雷の音に合わせて激しい雨音までが聞こえてきた。
「雨降ってきたよ、メロ」
「…だから帰るなよ」
その言葉に顔を上げた瞬間、メロは私にキスをした。
夕べの激しさとは比べものにならないほどの優しいキスを。
「いつもはそんなこと言わないのに」
「言いたかったよ、ほんとは」
何度もキスを繰り返しながら、メロが囁く。
「私…メロを好きになったらいけない気がする」
「何だよ、それ」
「だって愛してくれないでしょ?」
「愛してやるよ。が俺の傍にいてくれるなら」
「それだけでいいの?」
「ああ。何も考えないで俺だけの傍にいればいい」
ああ、そうか。
メロのやること全てに目を瞑って、何も知らないフリをしていれば、私は彼から愛され、幸せになれるんだ。
ならば…メロがどこで何をして、誰を殺しても、私はいつも貴方の傍で笑っていよう。
「じゃあ今日も…泊まってっていい?」
「泊まる必要なんて、もうないだろ」
耳にかかるメロの息がくすぐったい、と思っていると、不意にベッドに押し倒された。
「好きだよ、」
「…その言葉が聞きたかったの」
「お前のためなら何度でも言ってやるよ」
「じゃあ、また抱いてくれる?」
「が望むなら何度でも」
無知の幸福
貴方に愛され抱かれるためなら、どんなことでも バカなフリでも。
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メロでお題なんぞ。
彼は一番、分かりやすく素直な人ですよね。
攻撃的なメロも好きだけど、女の子に優しくしてるメロも見てみたいな。
皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて…
【SICILY...管理人:HANAZO】
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