終焉の前夜に会いましょう














「何をする気なの?」


私がそう聞いてもメロは何も答えなかった。
さっき電話で話してたのはSPKのメンバーだろう。
彼女から何を聞いたと言うのか。
メロは一言、呟き電話を切った。


"俺がやるしかないな"


何かを決心したような声で、いったい何をする気なのか。
結局、何も話してくれないまま、メロはどこかへ出かけてしまった。
こんな風に出かけるのは、いつもの事だけど、嫌な予感が消えなくて、私はずっと電話をしてた。
でもメロも、一緒に行動してるはずのマットも、電話しても繋がらない。
嫌な予感が胸を過ぎった。







二日ほどするとメロが戻ってきた。
普段どおりに、私に手土産を持って。


「これ…どうしたの?」
「何だよ、好きだろ?」


メロはそう言って甘そうなケーキを差し出す。
こんな事をしてくれるのはメロが機嫌のいい時だけだ。
でもどうしたんだろう、急に。


「どこ行ってたの?電話しても出ないし心配するじゃない」
「…色々と調べてただけだ」
「何を?」
「お前は知らなくていい」


メロはそう言ってチョコを噛み砕いた。
その横顔は前にも見たことがある。
あの施設を出て行くと決めた日の前夜、私の部屋に来て同じような顔をしてた。


「…何だよ」


急に不安になってメロの手を握ると、彼はちょっと笑って振り返った。


「どこにも行かないで…」
「…何言ってんだ?ちゃんと帰ってきただろ」


メロは苦笑するとそっと私を抱き寄せた。


「お前、そんなに俺のこと好きなのか」
「…知ってるくせに」
「そうだな…」
「そうだよ」


メロの胸に顔を埋めて呟く。
昔も今も、メロが好き。
それは私の中でもメロの中でも変わらない真実だ。
メロはそんな私を受け入れ、こうして傍に置いてくれる。
でも、彼の腕の中にいても小さな不安は少しづつ大きくなって、私の全てを飲み込んでいくような気がした。


「なあ、…」
「…何、メロ」
「お前…俺が死んだらどうするんだ?」
「…そんな話、したくないよ」


そう言って少し顔を上げメロを睨む。
たとえ話でも、そんなこと話したくない。


「こんなんで一人で生きていけるのか心配だよ」
「心配なんてしなくていい。メロは生きてるんだから」
「…そうだな…」
「そうだよ…」


怖い、怖い、怖い。


メロがこの世から消えてなくなるなんて考えたくもない。
だけど現実に危険な殺人犯を追っていて、いつキラに殺されたって不思議じゃないんだ。


「…なあ」
「ん?」
「抱きたい」


いつもより優しいトーンのメロにぎゅっとしがみ付いた。
私はいつだってメロを受け入れるに決まってるのに、何でそんなこと言うの。
メロは私を好きにしてくれていいのに。
そう言ってるのに。
だって私はそれで幸せなんだから。


顎を軽く上げられ、唇が重なる。
優しく舌を弄ばれて息が乱れた頃、ベッドに押し倒された。
でもいつもより乱暴じゃない愛撫が逆に不安を煽る。


「…メロ、好き」
「…知ってる」


私の肌にいくつもの痕をつけていくメロは皮肉な笑みを浮かべて見つめてくる。
時々赤い舌を見せながらメロがわざと音を立てるから、それが凄く淫靡で体がまた熱を持った。


「…気持ちいいか?」
「…うん。メロ…は?」
「…知ってるだろ?」


メロが私の中に入ってきて息を乱すのが好き。
何度もキスをして名前を呼んでくれるメロが好き。
この瞬間だけはキラとか、ニアじゃなく、私だけを見ていてくれるから。
私の中で果てるメロは凄く愛しい。


「…どうしたの?」
「…何が」


終わった後も愛撫を続けるメロにそう尋ねる。
メロは首筋や胸元に唇を這わせながら僅かに顔を上げた。


「いつもより…優しいから」
「…同じだろ」
「違うよ…」
「…答えは一つしかない」


甘く優しいキスをしながらメロは私を至近距離で見つめる。
こんな風に見つめられたことなんてないから、私は息が苦しくなって、メロに強くしがみついた。


「…答えって?」
「言わせたいのか」
「言って」


怖くて、どうしようもなく怖くて。
メロを失いそうな気がして。




「お前を愛してるから」




知ってるだろ、とメロは笑って、また唇を重ねた。
あの雨の夜と同じ事を今、また言ってくれる。
初めてメロと抱き合った日は新しい出発の前夜だった。


あの日が始まりなら今夜は…。






「…どこにも行かないで」


「ここにいるだろ…?」








泣きそうな私を見て、メロは悲しげに呟いた。






















腕の中で甘い声をあげるを心から愛しいと思った。
俺がいなくなれば、こいつはどうするんだろう、なんて思うと、決心が揺らぎそうになる。
確実に死ぬとも限らないが、必ず助かるとも言えない所まで来ている。
最悪の結果を考えた時、やっぱりと、この夜を過ごしたいと思った。


それは何か悪い予感でもあったのか。




「どこにも行かないで…」


「…ここにいるだろ?」






どこにも行かない、と言えない自分が悲しくて、また彼女に溺れていく―


































※ブラウザバックでお戻りください。


最終巻を読んでの、メロ夢。
リドナーとの電話で、メロの一言にグっと来ました(´;ω;`)ホロホロ



皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて…

【SICILY...管理人:HANAZO】