私は知っていた。


彼女の瞳が誰を見ているのか。





「何を見てるんですか」
「…何も」


はそう呟いて、また視線を戻した。
その先にはどんよりと灰色の重たい空。


「雨が降りそうですね」
「そうね…」


彼女の背中はハッキリと私を拒んでいた。
彼女の瞳は私を映そうとしない。


「…、大丈夫ですか?」
「分からない…」
「変な事…考えないで下さいね」


私の言葉に彼女は答えなかった。
こっちを見ることなく、ただ黙って空を見上げている。


目を離せば消えてしまいそうな気がして、置いていかれそうな気がして。
こうして傍にいることしか出来ない。


彼女を失わないように――




















二アの存在がただ疎ましかった。
大切な人を失い、心が壊れかけるのを必死で堪えてるからなおさら、どこか彼に似てる二アが傍にいるのは辛かった。


「…雨、やっぱり降ってきましたね」


窓にポツポツと小さな水滴が当たりはじめ、堕ちてきそうなほど、どんよりとしていた空から涙のような雨が降る。


「…悔しくて泣いてるのね…」


そう呟いた瞬間、私の瞳からも涙が零れた。
バカなことを言ってしまった、と後悔した、その瞬間。
後ろから包むように抱きしめられる。


「…私が…仇を打ちます」


泣きそうな声で囁かれた言葉は私の胸に刺さり、一気に悲しみが溢れた。


「…そんなこと言わないでよ!放っておいて!」


心の奥から叫び、その暖かな腕を振り払うと、二アは酷く悲しそうな顔をした。
その顔を見て胸が軋む。


違う…こんなこと言いたいわけじゃないの。
でも、今あなたを見るのは辛すぎるから。


大好きだったあの人の面影を持った、あなたを瞳に映すのは――





「仇なんかどうでもいい…慰めてくれなくていい…。彼に…会わせて…」





吐き出すように零れた私の言葉は、少しづつ激しくなった雨音にかき消されて、滑稽なほど空っぽの心に響いた。









「…私が…の傍にいます」




いつもは感情を出さない二アが、初めて私に見せた強い想い。


涙で濡れた頬が凍っていく。











ねぇ、L…胸が痛いよ。
あなたは、今どこで何を見てる?
あなたのいる、その場所はどんな色をしてる?
あなたのいない、この世界は全て色褪せて見えるよ。



伝えたい事があったのに、この世界中、どこを探したって会えないんだね。


もう、二度と…この想いを伝える事は叶わない――





















きみが見ている空は、どんな色だろう




――NO.01





















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二アでお題プチ連載?発動。
最終巻、見て発狂した管理人デスノ。(オイ)


皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて…

【SICILY...管理人:HANAZO】