「貴女は…ここに残ってください」
昨夜、ニアに抱かれながら自分の変化に気付いた私に齎されたものは、何の意味も持たない言葉だった。
今日は快晴。
外から入る日差しで部屋は明るいのに。
私とニアの周りだけ真っ暗。
まるでLがこの世からいなくなった時みたいに。
「何、それ」
掠れる声を絞り出すように口にした。
今まで触れていたニアの綺麗な指先から手を離せば、彼はゆっくりと視線を上げる。
「ここに残って下さい、と言ったんです」
「だから何で?昨日は一緒に来いって言ったくせに」
何で?何でニアはそう勝手なの?
いつもいつも私を振り回して。
勝手に「好きです」とか「愛してる」とか言って、私の気持ちなんてお構いなしに何でも物事を決める。
じゃあ私はどうしたらいいの。
夕べの事は何だったの。
抱きながらくれた沢山の言葉は嘘だったの。
「応えてよ、ニア!」
激しい感情が込み上げてくる。
ただ熱くて、体中が痛くて。
ニアの体を揺さぶっても、彼は淡々とした表情で私を見つめる。
その瞳に愛を感じたのは愚かだったの―――?
「…を…失いたくないんです」
私が床に泣き崩れると、ニアが小さな声で呟いた。
優しく私の頭を撫でながら、何度も「失いたくないんです」と呟いた。
「何で…」
「今更気付きました。遅いんですけどね」
本当に遅いの?まだ間に合うよ。
そう思ったから私は―
「今までは私の傍に置くのが一番いいと思っていました。を守りたかったからです」
「……だから一緒に行くって―」
「いえ…今度からは遠くで捜査をするわけじゃありません。よりキラに近くなっていく。それなのにを連れていくのは―」
「今更だよ、そんなことっ」
分からないわけじゃなかった。
ニアの気持ちを分からないわけじゃ。
抱き合って私が見えないものに気付いたように、ニアもきっとそうなんだろうという事を。
だからって置いてけぼりは酷すぎる。
もうニアがいない生活なんて送れるはずないじゃない。
そんな風に私を変えたのはニアのクセに――
初めて自分を愚かだと思った。
目の前で泣き崩れるを見ながら、自分自身の浅はかさに気付かされた。
夕べ、彼女に触れなければ良かった。
そうしたらきっと愚かなまま、彼女をアメリカに連れ去り、最後の時が来るまで傍にいられたのに。
でも一度、触れてしまえば…前以上の愛しさと共にやってくる"恐怖"という感情に勝てやしない。
そうだ。
には私がいない方が幸せな日々を送れるかもしれない。
今まではそんな風に考えた事もなかった。
傍にいることで守っている気になっていた。
そんなものは私のエゴでしかないというのに。
「すみません……。私がいけないんです…」
「……ニ…ア」
気付けば熱いものが指先にポツリと落ちた。
も顔を上げ、私を見つめる。
「ニア…」
「貴女を愛してます…とても…愛して…ます」
「…二ア…私…私…は、」
そこでは再び私の手を取った。
それをそっと振り払う。
「でも、もう…自由にしてあげます」
「…二ア…っ」
死ぬつもりはなかった。
この戦いに私は勝つだろう。
でも、それまで待ってて欲しい、とは言えなかった。
「今日から…貴女は自由です…」
待っててくれ、とも、忘れてくれ、とも言えない弱い私を彼女の真っ直ぐな瞳が射抜く。
は首を振りながら、そっと細い指先を伸ばし、私の頬に触れる。
「泣かないで…二ア…」
そこで初めて気付いた。
頬を伝う、自分の涙に。
泣きたいほど、貴女が愛しくて、泣きたいほどに貴女を失うのが怖い――
自分がこんなにも弱い人間だったなんて、貴女を愛して知った。
滴った雫は何だった?
――NO.4
※ブラウザバックでお戻りください。
ニアって声を出して笑うのかな。
そう言えば食べ物って何が好きなんだろう?
ニアが立ち上がったとこは大統領の前でだけしか見たことない気がする…(;^_^A
皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて…
【SICILY...管理人:HANAZO】
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