01

初めて会った夜、イザナくんは泊ってくれたけど、その夜はわたしもベロベロで、特別なことは何もなく眠ってしまった。
目が覚めた時は二日酔いで死んでいたし、イザナくんが隣で寝てたことにも驚いて、本当にそれどころじゃなかった。
ただ朝になったのだから、二日酔いの女なんて放置して帰ればいいものを、イザナくんは「飲み過ぎじゃね?」とブツブツ言いながらも、わたしを介抱までしてくれた。
イケメンだけど、どこか悪い男臭がすると思っていたイザナくんは、意外と優しい人だった。
結局、その日一日二日酔いで死んでたわたしの傍に、彼はいてくれた。時々どこかへ電話してたから、てっきり帰るものだとばかり思っていたけど、その日もイザナくんはわたしの隣で眠ってくれた。

「…何考えてんの」

唇を離したイザナくんの瞳がスっと細められる。軽く首を振ると「ー?」と更に身を屈めてきた。

「オレといんのに考え事とか許さねえから」
「ちょ…」

彼の両手が無遠慮にわたしの後頭部に添えられた。グイっと引き寄せられて、またイザナくんの唇に塞がれる。でも今度は舌が差し込まれて、口蓋をぬるりと舐められたから、背中をゾクゾクっとしたものが走るのを感じた。

「ん…」

イザナくんの舌が、唇や、舌裏、歯列を好き勝手に蹂躙してくるたび、呼吸が勝手に乱れていく。逃げたいのに、体の力も抵抗する気力も徐々に失われて、わたしはまた彼の好きなようにされてしまう。

「…イ、イザナ…くん…体、冷えてる…」

やっと唇が解放されて出た言葉がそれだった。イザナくんの濡れた体に密着してるせいで、パジャマが濡れるのが気になった。でもその前に彼の体が冷んやりしてることに気づく。このままじゃ風邪を引いてしまうかも、と心配になった。
でもイザナくんはどこ吹く風で、いつの間にかに彼の手がパジャマの裾から入ってきている。わたしのくびれを確かめるように、ウエストからお尻にかけて優しい手つきで撫で始めた。少しずつ、体が火照ってきて頭の奥が痺れてくる。

「じゃあがあっためろよ」

少しずつイザナくんの手のひらが上に移動して、体の正面に滑ってきた指先に胸の中心を軽く擦られた。小さく声を漏らすと、イザナくんの顔に満足そうな笑みが浮かぶ。

ってさぁ、感度いいよな、マジで」
「そ…そんなこと…ん、」

またキスをされた。唇を舐められて、首筋、鎖骨、と彼の唇が下がっていくと、やがて胸まで辿り着く。イザナくんはわたしのパジャマのボタンを一つ一つ、丁寧に外していくと、露わになった胸の上に顔を埋めた。彼の滑らかな肌の感触に心臓が跳ねて、そこから一気に熱が広がっていく。そのまま敏感になった先端を舌先で弄ばれた。

「ここ硬くなっててエロい」
「だって、イザナくんが…んっ」
「オレが?何?」

そう言いながら舌先を止めることなく、主張している部分に吸い付いた。左胸が彼の手に弄ばれて、右の胸は口内に含まれて、もう足に力が入らなくなってきた。

「ダ、ダメ…やっぱり…」
「ここじゃなきゃいいわけ?」

イザナくんが視線だけ上げてわたしを見つめる。求められてるのが分かるくらい、彼の瞳がゆらゆらと男特有の熱を見せていた。
イザナくんに触れられるたび、いつも迷う。こんな曖昧な関係を続けてていいのかと、自分自身に問いかける。でも一向に答えは出ない。
パジャマの布越しでもイザナくんのものが硬くなってるのが分かった。わたしの頭は考えることを放棄して、ただただイザナくんに求められるがまま、この身を差し出すほかない。
愚か、だと思う。イザナくんのことを好きなのかもよく分からないのに、こんな関係になるなんて。
でも――そばにいて欲しい。自分でも自分のこの気持ちは全然分からないけど、わたしをこんな浅ましい女にしてしまったのはイザナくんで、わたしはこの気持ちを持て余してる。自分がこんなにも黒い部分を持っていたなんて、自分で引く。
イザナくんはわたしとのセックスを楽しんではいるだけで、わたしのことを愛してるわけじゃない。
この時のわたしは本気でそう思っていた。