長年連れ添った幼馴染は、オレの話を聞きながら固まっていた。
幹部会の後、息抜きで入ったホテルのバー。そこの窓側の席は目の前にキラキラした渋谷の夜景が広がっている。そのガラス窓にしっかり、イヌピーの驚愕顔が映りこんでいて、オレはバーボンを煽りながら軽く苦笑を洩らした。

「いや笑い事じゃねえだろ…あの男の…恋人だったって…そりゃマジかよ」
「マ~ジ。オレも最初あの男の名前が彼女の口から出た時はイヌピーとおんなじ顔してたと思うわ」
「…そんな偶然…あんのかよ」
「マジ、それな」

でも絶対にないとは言い切れない。同じ渋谷の、それも近所に住んでいるのだから、まあそういうこともあるだろう。自分が殺した男の恋人を偶然助けて、その子と親しくなるなんてこと。事実は小説より奇なり、と昔から言うしな。

「で…その子に事実を話した理由は?んなもん放っておきゃいいだけの話だろ。本人はフラれたと思ってたんなら」
「まあ…そうだけど…何か可哀そうになってさ。帰ることもない男の影をこの子は延々と引きずってくのかなーと思うと」
「いや別に引きずらせておけよ。そこまで気遣う必要あるか?その子が何かに気づいたらヤベえだろが」

イヌピーの言うことは最もだ。確かにのことをそこまで心配してやる義理はない。けど、いい子だからちょっと罪悪感を覚えてしまった。

「らしくねえことすんなよ…。どうせ本気じゃねーんだろ」
「まあ…でもは大丈夫だよ。疑ってもなかったし、あの男の失踪にオレが関与してるとは思ってない。マジでオレの金盗んで浮気女と海外に逃げたと信じ込んでる。元々そういう気のあった男のようだしな。あの子にまで金借りてたらしい」
「…だとしても…些細なことでバレたらどーすんだ。その子も消すのかよ」
「………」

その問いにはオレも答えられなかった。出来ればを手にかけたくはないが、万が一オレが彼女の恋人を殺したと知られれば、そうするしか道はなくなる。最悪、部下を身代わりに出来るとは言え――稀咲さんならそうしろと言うだろう――極力、彼女にバレたくはない。

「…バレたらバレた時のことじゃね?つーかバレねえよ。証拠も何もかも全て消した。そもそも戸籍は別の人間が使ってるし、もし彼女にバレて警察に垂れ込まれても、本人・・が生きてんだから問題ねえだろ」
「そりゃそうだけど彼女ならソイツは別人だって分かるだろ」
「例えそうでも警察もそこまで調べねえよ。女一人が騒いだところで。それに…」
「それに…?」
はもうその元カレのこと、そこまで想ってねえみたいだし?」
「あ…?」

オレの言葉にイヌピーはますます眉間に皺をよせた。

「オマエ…まさか手ぇ出したのか」
「いや、そんな驚く?」
「女にはこりごりだっつってたろ」
「懲りたよ。だから別に本気で口説いたわけじゃねえ。ただオレの方に気持ちを向けさせりゃ何かあった時の保険になるかと思っただけ」

バーボンを煽りつつ説明するオレを、イヌピーの心底呆れたような目が射抜く。まあ言いたいことは分かるけど。

「勘違いすんな。まだ手は出してねえし」

その一言にイヌピーは明らかにホっとした顔をしたから、苦笑いが零れた。

「キスはしたけど」
「…っ出してんじゃねーか!」
「いや、ちょっと軽いのしただけだって。あんなんで真っ赤になるんだよ。可愛いだろ」
「オマエなぁ…素人の…それも初心そうな子を弄ぶなよ…」

相変わらずイヌピーは優しい。何だかんだ言いながらも、そこは気にしてるらしい。でもオレも別に弄んでやろうと思ったわけじゃない。あの時は素直に可愛いと思ったから、ついキスをしてしまっただけで。

「で…その子とそれ以降も会ってんのか、その様子じゃ」
「まあ…二回ほどデートはした。つっても食事してちょっと飲んで毎回ちゃんと家に送ってく健全なやつな」
「…手元に置いて様子見かよ」
「まあ…そんなとこ」
「ったく…素人と関わるなよ、あまり」

イヌピーの言いたいことは分かる。その方が危険は少ないってことも。でも日々こうして闇ばかり見ていると、時々無性に明るい場所へ出たくなることがある。と過ごす時間はオレにとってそういう時間になっていた。仕事で疲れた時は、彼女の顔が必ず頭に浮かぶ。

「ココ」
「あ?」

ボーっと目の前の夜景を眺めていると、イヌピーは意外にも真剣な顔でオレを見つめた。その顏を見ていると、はるか昔、想いを寄せた人のことを思い出す。

「もし…その子のことを本気で好きになったっていうなら…その時はもう何も言わねえよ」
「…イヌピー?」
「ココは……そろそろ幸せになっていいんだよ」

その言葉はオレの心臓に突き刺さるほどの威力があった。思わず言葉を失い、次の瞬間には何とも言えない苦い思いが走る。

「何…言ってんだよ…」
「ココ」
「赤音さんより好きな女なんて…オレには出来ねーよ」

言った後に失敗したと思った。イヌピーはいつまでも赤音さんを引きずるオレを、いつだって心配してるから。でもきっと、本当は気づいてるんだ。人はそばにいない人のことを、死ぬまで一生愛していけるわけはないってこと。今のオレにあるのは後悔だけだ。

「…そろそろ帰ろう」

残りのバーボンを飲み干すと、オレは静かに席を立った。



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「ありがとう御座いましたー」

出ていくお客さんに声をかけながら、わたしは乱れた本を元通り綺麗に並べながら、軽く息を吐いた。壁にかけられた時計を見れば、午後4時を少し過ぎたところ。後40分もすれば上がれる。

ちゃん。奥の棚もお願いできる?空いてるところ補充しておいて」
「あ、はい。やっておきます」

店長に言われてすぐに奥の棚へ向かうと、そこの棚が何冊か買われたことで隙間が出来ている。それを埋める為、また同じ本をそこへ入れていく作業が必要だ。在庫を取りにバックヤードへ行き、新しい本を手にまた同じ場所へ戻ると、巻数ごとに整理をしてから新しい本を並べていく。こういう地味な作業も本好きにすれば意外と楽しい。
元々本が好きで図書館や本屋さんに行くのも好きだった。本独特の紙の匂いは気分が落ち着く。だからマンションから歩いて通えるこの店でバイトを募集してたのを見てすぐに面接を受けた。それから三年間バイトとして働き、その後に店長の勧めもあり正社員になった。好きな物に囲まれて仕事が出来るのは楽しい。店長や他のバイトの人達も本好きのいい人ばかりで、わたしは今の職場に満足していた。

「これでいいかな」

綺麗になった棚を見て満足していると、後ろから「ちゃん」と呼ばれて振り向いた。

「彼、来てるわよ」
「えっ」

ニヤニヤしながら店長が肘でつついて来る。"彼"と言われて思い当たるのは、今では一人しかいない。店長に促されるまま出口の方へ歩いて行くと、思った通りの人物が店内をキョロキョロしながら歩いてくる。詰襟のダークレッドが鮮やかなジャケットを羽織り、左耳にはピアス。歩いているだけで彼の周りだけ空気が違う。その姿を見ただけで胸の奥がぎゅっと苦しくなるのだから嫌になってしまう。
ココくんはわたしに気づくと笑顔で手を上げて歩いて来た。そこでハッと我に返り、髪型は乱れていないか手で触れて確認する。

「そろそろ終わる頃かなと思って」
「う、うん。あと30分で上がれるけど…」
「じゃあもし予定とかなければ飯でも行かねえ?」
「え…と…うん。行く」

また誘ってもらえたことが嬉しくてホっとしながら頷くと、ココくんは「じゃあ終わったら電話して。迎えに来るから」とだけ言って帰ろうとする。思わずジャケットの裾を掴んでしまったのは、次に会えたら言おうと思っていたことがあるからだ。

「あ、あの…迎えに来なくて大丈夫。わたしが…その…事務所に行っちゃダメ?」
「え?いや…いい、けど…」
「食事…また作りたいなと思ってるんだけど…」

思い切って口にすると、ココくんは一瞬驚いたような顔をしたけど、すぐに笑顔を見せてくれた。

「いいの?仕事で疲れてるのに」
「い、いいの。ほら、ココくん、前に外食は飽きたって言ってたし…最近は多かったでしょ?外で食べるの。だから…」

最初にご飯を作って以来、時々ココくんはこうしてわたしを食事に誘ってくれるようになった。でも付き合ってと言われたわけでもないし、好きだと言われたわけでもない。だから毎回あった日の別れ際は今日こそこれで終わるんじゃないかと不安だった。でも、またこうして会いに来てくれたらその時は、またココくんの家で食事を作ってあげたいなと思ってたのだ。

「そんなの気にしないでいいのに」
「でもいつもご馳走になってるから…」

そう言って見上げると、ココくんはちょっと苦笑しながら「じゃあ…お言葉に甘えようかな」と言ってくれた。嬉しくてつい笑顔になる。

「あ、じゃあ…仕事終わったらそこのスーパーに寄ってから行くね」
「分かった。待ってるよ」

そう言ってココくんは店を出て行った。

――待ってるよ。

その一言が嬉しくて顔が自然とニヤケてしまう。そこへ店長がさっきと同様、ニヤニヤしながら歩いて来た。

「またデート?最近よく来るわね、新彼」
「だ、だから彼氏なんかじゃ…」
「えー?でも向こうはちゃんに気があるでしょ、確実に」
「そ…そんなこと…」

と言いながら、一度キスをされたことを思い出す。でもあれから何度か会っているけど、ココくんは何もしてこない。いつも食事をして、お酒を飲んで、真っすぐわたしを家に送ってくれるだけ。あの時のキスは、やっぱり気まぐれでしたのかな、と思い始めていた。
元カレ失踪の真相はショックだったけど、同時に自分の気持ちにはふんぎりがついた。それもこれもココくんがそばにいてくれたからだ。我ながらちょろいと思うけど、ココくんに危ないところを助けてもらって、その後も優しくしてもらって、きっとその頃から少しずつ惹かれていたのかもしれない。最後にトドメのキスをされて、わたしはココくんに恋に落とされてしまった。だけど、この気持ちは言えないまま曖昧な関係を続けている。こういうのが友達以上恋人未満というんだろうか。

(でもわたしなんかがココくんの恋人になんてなれるはずないよね…住む世界が違うんだもん…)

もしかしたらココくんも寂しいのかもしれない。彼の恋人は良治くんと一緒に海外へ逃げてしまったんだし、そのショックを引きずっててもおかしくない。だから余計に好きとは言えなかった。

それから仕事を終えて、言った通りスーパーで買い物をしてからココくんの自宅兼事務所を訪ねた。一応買い物の途中で電話をしてリクエストを聞けば『和食なら何でもいい』と言われたので、その場で献立を考えて材料を買った。

「…うわ、すげ。何これ、美味そう!」

お酒を飲んで待っていたココくんの前に料理を運んでいくと、意外なほど喜んでくれた。

「嫌いなものなくて良かったです」

今夜のメニューは新じゃがと牛肉の甘辛煮、きのこあんかけとほうれん草のお浸し、サヤエンドウと豆腐の味噌汁に、ご飯はタコ飯を炊いた。ココくんが外食時でも食べないような献立にしたのだ。普段は殆ど洋食になると言っていたココくんは、こういう和食に飢えていたみたいだ。美味しいと言いながらご飯もおかわりして、綺麗に完食してくれた。

「ご馳走様。マジで美味かった」
「いえ…お口に合って良かった」

食べ終えた食器を洗いつつ、応えると、ココくんは「まだ時間大丈夫なら酒でも飲む?」と訊いてくる。つい頬が綻んでしまうのは、まだ一緒にいられると思ったからだ。

「頂こうかな」
「じゃあ、ちゃんと飲む為に買っておいた赤ワインでも抜こうか」
「え…わたしと…?」

最後のお茶碗を洗って手を拭きつつ、驚いて顔を上げると、目の前に見たことのないボトルを出された。

「これ、この前ワイン専門店で見つけて買っておいた。シャトー・ペトリュス」
「シャトー…ペトリュス?」
「そう。辛口で濃厚だけど意外に飲みやすいワインでさ。あまり日本じゃ見かけないんだけど、たまたま入荷したっていうから買ってきた」

ココくんはそう言いながらグラスを用意して、リビングに歩いて行く。その隙にスマホでこっそり検索してみると、一番安い物でも30万、高くて100万円はする銘柄だった。さすがに値段を見て二度見するほど驚いた。ココくんが買ってきたものがどのランクのものなのかは知らないけど、普段数千円のワインで満足しているわたしにとったら30万だったとしても眩暈がする。説明を読むとシャトー・ペトリュスはメルローワインのなかでも長期間熟成されていて深みのあるワインで、5大シャトーもしのぐ濃厚な味わいと香りに加え、"神話"と言われる魅力があると絶賛されていた。

ちゃん、片付け適当でいいからこっちにこいよ」
「は、ははいっ」

調べるんじゃなかった、と後悔しつつ、ココくんのところへ行くと、テーブルの上にその"神話"と呼ばれている赤ワインのボトルが置いてある。脳内で沢山の福沢諭吉が舞い踊っている光景が浮かぶのは、庶民のさがなのかもしれない。

「はい、乾杯」
「かか、乾杯…」

前と同様、ココくんの隣に座ってグラスを受けとると、少しだけ手が震えてしまった。グラスを口に近づけるだけで、確かに芳醇で濃い香りが鼻腔をくすぐる。恐る恐る少量を口に含むと、直接ワインの香りが口内いっぱいに広がった。

「ん…美味しい…」
「そう?良かった。オレ、これ結構好きなんだよ。ガツンと来るわりにスイスイ飲めるし」
「っそそ、そう…ですね…」

諭吉何十人以上もするワインをスイスイは飲めない!と思いつつ、でも確かに高いだけあってワイン好きにはたまらない濃厚さが後を引く。おかげで最初は遠慮がちに飲んでいたわたしも、ココくんに進められるまま、何杯も飲んでしまった。結果、二時間後にはいい感じに酔い過ぎて頭がふわふわしていた。

「そう言えば、この前ちゃんが勧めてくれた本が面白くてさ。つい続編も買っちゃったんだけど……ってか大丈夫?」
「……へ?」
「何かフラフラしてる。酔っ払った?」
「……う」

ひょいっと顔を覗かれ、ココくんの顏が視界に飛び込んできたことで、思わず背もたれに身を引いてしまった。ココくんが少し驚いた顔をしている。大げさだったかなと焦りつつ「だ、大丈夫…」と応えたものの、視界が霞んだりするくらいには酔っているのが自分でも分かった。時計を見ればすでに11時を過ぎている。そろそろ帰った方がいいかなと思ったものの、本音を言えばまだココくんといたかった。

「あんま大丈夫って感じじゃねーな。そろそろ送るよ」

苦笑気味に言ったココくんが立ち上がろうとするのを見て急に悲しくなったのは、ココくんの気持ちが分からないからだ。でもそんなことは言えない。複雑な思いが交差して、自然と彼の手を掴んでしまっていた。

ちゃん…?」
「まだ……帰りたくない…」
「…え?」
「…ダメ?」

思い切って言えたのは酔っているせいだ。全てお酒のせいにして、ココくんに我がままを言ってしまいたくなった。火照っている顔が更に熱くなって、少し早めの心臓が少しずつ加速していく。酔っていても緊張する一瞬だ。ココくんは驚いた顔でわたしを見下ろしていたけど、小さく息を吐くと再び隣に腰を下ろした。

「…男にそういうこと言ったらどうなるか分かってる?」
「………え?」
「オレ、ちゃんが思ってるほど優しくもなければいい人でもねえよ。裏社会の人間だ。分かってんだろ」
「…っそれは…」
「それでもいいわけ?」
「……」

ココくんは真剣な顔でわたしを見つめていて、少し怒ってるようにも見えてしまう。だけど、ここで首を横に振ったら、もう二度と会いには来てくれない気がした。

「い…いい…」
「…なら…後悔すんなよ?」

何も覚悟なんて出来ていないくせに、つい応えてしまったわたしの鼓膜をココくんの低音が掠めていく。掴んでいた手を逆に引き寄せられたと思ったら、膝裏に熱い手のひらが差し込まれ、突然体がふわりと浮いた。ココくんはわたしを軽々抱き上げると、黙ってリビングを出て、おそらく寝室であろうドアを開ける。薄暗い室内の奥には案の定、キングサイズのベッドがあって、ココくんはわたしをそこへそっと寝かせた。ギシ…と深いスプリングの音がかすかに聞こえて、ココくんがベッドへ上がって来たのが分かる。顔を上げると視線が絡み合った。

「…もう止める気ねえけど…」

ココくんの鋭い瞳に男の欲が見え隠れする。この時のわたしはどうかしていたのかもしれない。経験もないくせに、良治くんとは抱き合うことすら出来ないくらい、痛みに堪え切れなかったはずなのに、そんな記憶は頭の隅に追いやって、ただ目の前のココくんを見つめていた。あんなに怖いと思っていた行為が、不思議と怖くない。

「止めないでいい…」

だから、そんな大胆なことが言えたのかもしれない。恋人でもない裏世界の住人なのに、ココくんが欲しいと思ってしまった。
わたしの浅ましい我がままを聞いてくれたココくんからすると、きっと遊びの延長でしかない。そこに愛がなかったとしても、これから経験するのが刹那的で不毛な関係だったとしても、わたしはこれ以上のものを何もココくんに求めたりしない。そう、自分に何度も言い聞かせた。



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彼女がどういうつもりで帰りたくないなんて言ったのかは分からない。元カレのことがあって寂しかったのかもしれない。だから傍にいるオレに縋っているんだと、そう感じた。ベッドへ寝かせたの唇を少し強引に塞ぐ。この前したような触れただけのキスじゃなく、更に深く濃いキスを仕掛けていく。

「ん…っ」

酔ってはいるんだろうが、の体は全体的に強張っていた。どこもかしこも力が入っている。唇でさえそうだった。それを解すように何度か唇を啄み、そっと舌を滑りこませた。最初は肩を跳ねさせたものの、やんわりと舌を絡め合い吸い上げると、次第に力が抜けていく。少し呼吸が苦しそうで、一度唇を解放すると、の瞳は薄っすら潤みを帯びて、オレを誘うように揺れていた。

「ほんとにいいのかよ…」

この期に及んでオレはまだ少し躊躇していた。素人の女を抱くことにじゃなく。こんな純情そうな子を、オレがどうにかしていいのかという迷いがある。その一方で、メチャクチャに抱いて自分の傍に止めておきたいという男の浅ましい欲求もあった。本気で愛してもやれないくせに、オレはとことん、ズルい男だ。
彼女が男を知らないことを、薄々分かっていたはずなのに。