番外編:灰谷蘭は彼女を愛しつくしたい。


※性的描写あり


「なあ、まーだ~?」

バスローブ姿で赤ワインをグラスに注ぎながら、蘭が叫ぶ。
がシャワーへ行ってから、かれこれ三十分。そろそろ限界が近づいてきた。
付き合いだしてから初めての誕生日を祝い、食事をしながら軽く飲んだ二人は、ほろ酔いになりながら思い出話に花を咲かせた。
あの時、実はこうだった、などと今だから話せることを、互いに暴露しあい、驚き、そして笑い合う。この時ばかりは蘭もも、中学生の頃に戻ったように大いにはしゃいだ。まるで同窓会をしているようなノリだったかもしれない。あの頃、想いを告げていたら、今はどうなっていたんだろうな、と思いながら、蘭は目の前で無邪気な笑顔を向けるを見つめた。
何となくそんな空気になり、自然と唇を重ね合った後、蘭が言った。

「そろそろシャワー浴びるわ」
「う、うん…」

その言葉の意味を理解し、の頬が赤く染まる。
そうして蘭は先にシャワーを済ませ、次にが入ったまでは良かったのだが、そこから延々と待たされている。暇なのでワインを抜いたのだが、一人で飲んでいてもつまらない。
がとっくにバスルームから出ていることは物音で気づいていた。髪を乾かした後は、きっと軽くメイクもするんだろう。そんなものしなくていいのに、と思いながら、蘭はのんびりワインを飲んでいた。しかし待てど暮らせどが出てくる気配はなく、しびれを切らし、冒頭のようにせっついてしまったというわけだ。

「ったく…アイツ寝てんじゃねえだろうな…」

シャンパンを二本ほど飲み、がいつになく酔っていたことを思い出し、蘭は心配になった。ぶっ倒れたか?とも考えたものの、そんな物音はしなかった。ということはシャワーから出て脱衣所の辺りで寝てるかもしれない、と今度は違う心配がこみ上げてくる。
この部屋のバスルームにはパウダールームがついていて、かなり広い。座り心地のいいソファまで設置されているので、もしかしたらそこに座ったまま寝落ちでもしてるんじゃないかと思った。
だが、蘭がバスルームへ歩き出そうとした時、言葉通りおずおずといった様子でドアが開く。そこからが僅かに顔を覗かせたことで、蘭は少しホっとした。

「どうした?具合悪いのかよ」

やはりそこが心配で尋ねると、はゆるゆるとした動作で首を振る。
それから蚊の鳴くような声で言った。

「は、恥ずかしくて…その」
「…は?この期に及んでまだそんなこと言ってんのー?」

苦笑気味に言いながら溜息を吐く。こうなれば強引にでもバスルームから引っ張り出してやろうかと、少々騒動なことを考えながら再び歩きだそうとした時、バスルームのドアがパタンと閉められた。

「あっ籠る気かよ、テメェ――」

焦った蘭は今度こそバスルームへ向かい、ドアノブへと手を伸ばす。その時、中で衣擦れの音が聞こえた。そして再びドアが僅かに開く。

「……っ」

思わず息を飲んだ。さっきと同様、おずおずと限りなく緊張し、恥ずかしそうに姿を見せたのは、竜胆からもらった黒のレースの下着を身に着けただった。真っ白な肌に黒がよく映えている。だが彼女の柔肌は極度の緊張の為か、薄っすら赤く染まっていた。

「それ…竜胆がくれたやつ?」
「う、うん…何か全体的に透けてる感じだから恥ずかしくて…へ、変じゃない?」

言葉通り、はモジモジとしながら恥ずかしそうに蘭を見上げてくる。だからなかなか出てこなかったのかと納得しつつ、蘭は改めての下着姿を見下ろした。実際、再会した時、の裸は半分見たようなものだったが、知らない女だと思いながら触れていたので、正直あまり覚えていない…というよりも、あの時は自分の情緒を壊さないよう、なるべく記憶から排除することを心がけたことで、ハッキリとしたものは抜け落ちていた。

「いや、全然変じゃねえ。つーかすっげー綺麗、可愛い、エロいっ。竜胆天才か?」

とりあえず思ったことがそのまま全て口から出てしまった。大好きな彼女がエッチな下着をつけて目の前にいるのだから、さすがの蘭も自分を取り繕う余裕は一切なく、ついでとばかり弟への賛辞も忘れない。
蘭に絶賛され、はギョっとしたようにバスルームへと引っ込もうとした。しかし蘭の手が閉まりかけたドアを止め、もう片方の手での腕を引き寄せると、細い体をぎゅっと抱きしめる。

「やべえ、オレ余裕ねえわ」
「…え?」

を抱きしめながら、強い欲望が鎌首を擡げるのを感じた。
をこのままベッドへ浚い、貪りつくしたいという男の本能がやたらと煽られている。

「は、灰谷く…ひゃっ」

そろそろ我慢も限界で、蘭は本能に従い、の体を軽々と抱き上げた。急に体が浮いたことで驚いたのか、が蘭の首へ腕を回してしがみついてくる。その際、ふわりと甘い香りが蘭の鼻腔を刺激して、更に欲情してしまった。

「このままベッドに運んでいー?」

の吐息を首元に感じながら囁くように尋ねると、彼女が小さく頷くのが分かった。その瞬間、蘭の足が真っすぐ寝室へと向かう。
ここへ来てから初めて足を踏み入れた薄暗い室内。その奥にあるキングサイズのベッドへ、蘭は抱えていたを優しく横たわらせ、バスローブを脱ぎ去ると徐に覆いかぶさった。
上から見下ろせば、彼女の長く滑らかな黒髪が白いシーツへ広がり、何とも艶めかしい。更に程よい大きさの胸元を、繊細なレースが上品に包んでいるものの、が恥ずかしがったように、透けてしまっているそれは、軽く主張を始めている先端すら隠しきれていない。
それがやたらと厭らしく見えて、蘭は小さく喉を鳴らした。
自分がまだ何者でもない頃、純粋に惹かれていた女の子なだけに、体が素直な反応してしまう。

「…な…何か当たって…」

硬くなり始めた場所が太腿に当たった感触に、の肩がビクリと跳ねる。驚いた顔を向けるを見て、蘭が僅かに目を細めた。

「…当たり前だろ。オマエのこんな姿見てんだから」

オマエに欲情してる、と言われた気がして、の火照った頬が更に熱を帯びる。ただの中で一つ気になっていたのは、以前、風俗嬢になる為の指導受けた時、蘭に「下手くそ」と言われたことだ。
そんな自分が経験豊富であろう蘭を満足させられるのかと、こんな時なのに不安になってきた。
その時、蘭の手がの腰から脇腹を撫でていきピクっとの体が震える。

「ま…待って、灰谷くん…」
「オマエ…まだ焦らす?」

胸の膨らみへ触れようとした手を掴まれ、蘭が責めるような目つきでを見下ろした。本当なら付き合ったその日に抱きたかった。だが撃たれて入院を余儀なくされ、そこから二カ月以上も我慢している。これ以上、待つつもりはない。蘭の言葉にも慌てて首を振った。

「ち、違…そうじゃなくて…その…」
「…何だよ」
「だ、だから…わたし…技とか持ってないよ…?」
「は?」
「前に下手くそって言ったでしょ、わたしのこと…だから満足させてあげられないかも…」
「……オマエ、何言ってんの」

の言わんとしていることが分かって、蘭が小さく吹き出した。あの時の言葉は、単に自分の理性を守るために言ったようなものだ。

「あれは別に本気で言ったわけじゃねえし」
「…え、じゃあ…何で…」

本気じゃなかったと言われ、が驚いて蘭を見上げると、困ったような顔で視線を反らされてしまった。

「だから…ああでも言わねえと…あのまま襲っちまいそうだったから?」
「……っ?」
「何だよ、その顏…」

驚きと羞恥が混ざったような顔で赤くなるを見て、蘭は思わず吹き出した。あまり見たこともない反応は、更に蘭を昂らせて我慢の限界を軽く超えていく。

「とにかく…オマエがヘタだったとしても、そんなのどうでもいいんだよ。なら何でもいい」
「……な、何でもいいって…」
「いいからオマエは黙って体の力抜いて寝てろ。オレが気持ち良くしてやっから」
「……な…っ…んぅ」

とんでもない言葉に抗議をしようとした瞬間、蘭の唇に塞がれ、出かかった言葉が口内へ飲み込まれていく。やんわりと、だが少し強引に舌を吸いながら、蘭の手がの手首を掴んでシーツに縫い付けた。もそれ以上、抵抗することはなかった。

「ん…ん…ぁ」

唇同士を深く交じり合わせながら、の肌を蘭の手のひらが堪能するように撫でていく。そのまま薄いブラジャーの上から膨らみを揉みしだいた。透けているレースをツンと主張した先端が押し上げ始め、手のひらにそれを感じただけで男の本能を揺さぶられていく。

「…ぁ…っ」
「…可愛い」

ゆっくりと唇を味わった後、蘭はの首筋へ口付け、そのまま下降しながら跡を残すよう白い肌へと吸い付ば、が僅かに喉をのけぞらせた。その間も蘭の手のひらが胸のふくらみを包み、先端を指の腹で優しく刺激してくる。

「ん…ぅっ」
「あー…ヤバ…んな可愛い声出されたら理性飛ぶ…」

蘭が耐えるような声で呟く。その声色がの鼓膜を震わせるのだから不思議な感覚だと思った。これまでの恋人では味わったことのない高揚感が、次から次に溢れてくる。

「ぁ…は…灰谷く…」
「オマエの胸、気持ちいい。ずっと揉んでられるかも」

ヤバい、と蘭は苦笑交じりで呟き、その言葉すらの中の女の部分が刺激されていく。

「何で全部可愛いのー?オマエ」

やけにシミジミとした口調で言われ、蕩けそうになりながらもは首を振った。そんなことを言ってくれるのは蘭だけなのに、と思っていると、額や頬にもキスが降ってくる。そのたび蘭が「可愛い」と言いながら、今ではすっかり芯を持つ先端を優しく指の腹で擦ってきた。
そのたびの口から甘い声が洩れ、勝手に腰が跳ねてしまう。

「あー…えろ…」
「…ん、」

蘭の漏らした言葉に羞恥で顔を反らせば「可愛いって意味」と頬に口付けられた。でもふと蘭が真剣な顔になった。

「もう他の男に見せんなよ?もし見せたら、その男すぐにスクラップ行きだから」
「…ス、スクラップ…?」
「…マジで好き。絶対他の男には渡さねえから」

焼き付きそうな視線におずおずと頷く。そんな嫉妬をされるようなこと、起こるはずもないのに、と思っていると、蘭は「自覚してねえな」と苦笑を洩らした。

「九井も竜胆もオレの知り合いじゃなきゃ、オマエのこと口説いてたから」
「は…?く、口説くって…?…ひゃっぁ」

硬くなった先端に蘭が吸い付き、は喉元を反らしてシーツを握りしめた。下着の上からでもはっきりと刺激が伝わり、湿った口内で胸の先を弄ばれる。舌で擦られ、甘咬みされ、ちゅうっと吸われる。あまりの気持ち良さに「ダメ…無理…っ」と頭を振りながら、足をばたつかせた。お腹の奥に何かが溜まっていく、ムズムズとした感覚だ。そのせいで腰が揺れて死ぬほど恥ずかしい。

「やだぁ…っ」

これまでのセックスなど、何の経験にもなっていなかったことを再確認した。あまり好きな行為ではなかったはずなのに、蘭から施される愛撫はを未知の世界へ連れて行こうとする。
が身を捩っても蘭は行為をやめてくれない。
今度は舌先で転がされると、足をばたつかせながら初めての淫らな感覚に必死で耐える。

「んぅあ…っ」
「…やっぱ感度いいな、は…。胸だけでイケそう。かわい」
「や…」

恥ずかしさで顔を背けると、下腹部に硬いものが押しつけられた。
ついでに自分の下着の異変に気づく。まだ触れられてもいない部分が濡れていた。

(は、恥ずかしい…っ)

恥ずかしいのに太腿が自然にもじもじと動き、むず痒いような切なさがそこから広がっていく感覚だ。

「触っていい?」

の様子を見て、蘭が何もかも見透かすように微笑む。ジワリと目頭が熱くなり、思わず首を左右に振りたくなった。だが「痛いことはしねえから」と頬にキスを落とされると、つい頷いてしまう。
蘭はかすかに笑みを浮かべ、太腿へ手のひらを滑らせると、ショーツの上からすでにぐずぐずの場所を指で撫でていく。

「すげ…下着付けてる意味ねえくらい濡れてんの分かる」
「い…言わないで…よ…っん…」

蘭の指の滑りが良くなるくらい濡れてる自覚はあるものの、こんな風になるのはも初めてで少し驚いてしまった。
前の恋人からは「あんま濡れないし気持ち良くないの?」と行為の最中、何度も聞かれるのが苦痛でたまらなかったくらいなのに、濡れないどころか、今は蘭に触れられるたび、奥から溢れてくるのが分かる。

「…ひゃ…ぁぅ」

その時、蘭の指がぷっくりと主張している芽を軽く押し潰し、痺れるような刺激がそこから広がった。

「ぅ…ぁ…あっ」

恥ずかしいのに声が止まらない。のその反応に蘭も気を良くした様子で「のここ、凄い敏感」と呟きながら、今度は指の腹でヌルヌルと擦ってきた。そのたびに腰がビクビクと跳ねてしまう。

「ここ、気持ちいい?」
「や…ら…め…」
「フーン。ダメって顔じゃねえけど…、少し強めの方がいいみたいだな。吸ってもいい?」
「…ぇ…?」

蘭が意地悪な笑みを浮かべたのを見て、の脳内で吸う?って何を…と思った時だった。蘭が急に体を下げ、の太腿へ手を添えて開いていく。その恥ずかしい体勢にギョっとして閉じようとしたものの、蘭の前では土台無理な話だった。蘭は内腿を押し開くと、そこへ顔を埋めていく。

「ちょ…灰谷く…んあ…っ」

ちゅるっと割れ目を舐めた後、蘭は主張している陰核を舌先で転がし始め、その刺激での背中がしなるように反り返った。

「ぁぁあ…っや…ダ、ダメ…そんな…ぁっ」

驚きと恥ずかしさ、そして言葉に出来ない快楽がを痛めつけて、抗議の言葉は全て無視した蘭は、最後にそこをちゅうっと吸い上げた。その強い刺激での頭が真っ白になり、電流に貫かれたかのようにガクガクと足を揺らす。

「上手にイケたなー?」

体を起こした蘭が濡れた唇を舐める姿さえ、淫靡でいて色っぽい。気怠さの残る頭の中で、ふとそんなことを思いながら、は荒い呼吸を繰り返した。今のがイクという感覚だったのかという驚きを隠せない。これまでの恋人は自分が快楽を貪るのに夢中で、をイカせるということに頓着していない男ばかりだった気がする。
ボーッとする頭の隅でそんなことを思い出していると、唇に柔らかいものが押しつけられた。

「ん…」

ちゅっと甘いキスを落としながら、蘭が熱い眼差しでを見つめてくる。その瞳がやけに優しくて、快楽とは別の何かで頬が熱くなった。

「…イった時の、めちゃくちゃ可愛いわ…もっとイカせたくなる」

そんなことを言われても、は今、自分がどんな顔をしているのかも分かっていない。

「…あ…」

その時、濡れた場所にゆっくりと蘭の指が挿入されて、またそこから熱が広がる感覚に、は腰を軽く跳ねさせた。
一本、二本と増やされ、ナカを優しく掻きまわされるたび、下腹部の奥がジンジンと疼いていく。

のナカ、トロトロでヤバい…挿れてい?」

額を合わせ、哀願するように甘えた声を出す蘭を見た瞬間、の顏からぶわっと熱が放たれた気がした。の知るどの顔でもない、初めて見る蘭の表情がたまらなく扇情的だった。

「…ん…挿れて…」

つい自然とそんな言葉が漏れて、自分でも驚く。蘭以上にそうして欲しかったのはだったかもしれない。

「…煽んなよ。マジで壊しそう」

蘭は更に指を増やし、締め付けてくるナカをかき混ぜる。
すでに十分解されていることを確認した蘭は、ゆっくりと指を引き抜き、自身の熱い昂ぶりをその場所へ宛がった。蘭にとっても久しぶりの行為の上、初めて惚れた子を抱くという悦びで、そこは痛いくらいに起ちあがっている。
吸い付くような柔肌が腕の中にあって、それだけで幸せだと感じた。
蘭は繋がる前にそっと唇を重ねた。角度を変えながら、何度も唇を合わせる。

「せっかく可愛い下着つけてんだし、着たまましよーなー?」

蘭が言いながら微笑むと、は真っ赤になって視線を右往左往させた後、小さくこくんと頷いた。
蘭はの下着のクロッチ部分をずらし、足を広げさせた。誘うように濡れた入口に自身の先端をゆっくり押し込もうと腰を進める。だががハッと我に返ったように「ダ、ダメ…ゴムは…?」と恥ずかしそうにそれを口にすると、蘭は柔らかい笑みを浮かべた。

「ナカじゃ出さねえけど…まあ出来たら出来たで責任取る気満々だし」
「え?それってどういう――…んんっ」

驚いて体を起こそうとしたに構わず、蘭は奥まで一気に屹立したものを押し込んだ。

「…は…ヤバ…蕩ける…」
「は…灰谷…くん…」
「…その顏は反則…」

繋がった瞬間、の瞳から涙が零れ落ちる。蘭は軽く微笑むと、また唇へキスを落とした。

「あー…幸せすぎてやべえんだけど…もうイキそう」
「…な…っ何言って…んの…」
「…ちょっ…これ以上、締めんなって…マジでイキかけただろが!」
「ぃたっ…」

繋がったまま額にゴツンと額を当てられ、が叫ぶ。こんな場面でも二人はあまり普段と変わらないノリで、目が合うとお互い小さく吹き出した。

「頭突きするとか酷い…」
「あ?今のはオマエがわりーだろ、どう考えても」
「な…わ、わざとじゃないし…そ、そもそもイキたいならイけばいいのに…」
「は?挿れただけでイクとかねえわ。童貞じゃあるまいし…それにもっとオマエを啼かせねえと楽しくねーだろ」
「な…何、それ…」
「感じてるが可愛いからもっと見せろって意味~」

蘭が意地悪そうに笑い、再び、今度は優しく額を合わせた。

「オマエ、茹蛸みてえになってんぞ」
「だ、誰のせい…ん…っ」
「もう無理。動く」
「ちょ…待っ…」
のナカ、気持ち良すぎて待てはできねー」

突然抽送を始めた蘭に、の理性も一気に弾け飛んだ。繋がっていた部分がすっかり馴染み、容易く蘭を受け入れている。

「…ぁあ…ん…っ」
「…はー…ヤバ…マジで腰止まんねえわ…」

腰を激しく打ち付けながらも、の汗ばんだ肌に手を這わせながら、優しく胸の膨らみを揉みしだく。その刺激に呼応してナカが締り、蘭が快楽にその整った顔を歪めた。

「…オマエのナカ、良すぎ…」
「ん…ぁ…バヵ…っぁあ…っ」

シミジミ言われての羞恥心が煽られる。抗議したいのに言葉にならないほど、最奥を擦られ、ゾクゾクとしたものが全身に走った。こんな感覚も初めてで、自分の体の異変に戸惑いながらも、蘭に齎される快楽に抗うことが出来ない。
また蘭も女を抱いてこれほどまでに理性が消し飛んだことはなく、狭い場所をこじ開けるように犯すたび、蕩けた場所が悦んでうねるのが分かった。

「あー…」

思わず低い声が出た。死ぬほど気持ちがいい。
最奥を突き上げるように根元まで押し込むと、の足がばたついて、細い腰が浮いた。

「んん…っ…」

切なげに寄せられた眉根、強く腕を掴んで来る指、ビクビクと痙攣するナカ。荒い呼吸を繰り返すは、どうやら先に絶頂を向かえたようだ。しかし当の本人は何故かビックリしたような顔で蘭を見上げてきた。

「な…に…い、今…体が…」
「…あ?」
「何か…凄く変な感じに…んっ…?」
「…は?オマエ…ナカでイったことねーの…?」

一瞬、腰の動きを止め、蘭が驚いたようにを見下ろす。その直球の質問にの顏が真っ赤に染まった。

「は…恥ずかしながら…」
「……マジで?」

プイっと顔を反らしながらも認めたに、蘭もしばし唖然としたものの、不意にニヤリと口角を上げて微笑んだ。

「やべ…嬉しいかも」
「…は?」
「だってオマエ、今初めてナカでイったんだよな?」
「だ、だったら何…ひゃ」

突然、ぐいっと腕を引っ張り起こされ、ぎゅうっと抱きしめられたは、驚いてジタバタ藻掻いた。繋がったまま体勢が変わったせいで、深いところまで蘭のものが刺激してくる。

「ちょ…灰谷くん…っぁ…う、動かない…で」
「ん-無理…ってかもっかいイカせたい」
「…え、ちょ…ぁあっ…んぁ」

の腰を抱き寄せながら、容赦なく腰を突き上げてくる蘭に、の口から悲鳴にも近い嬌声が漏れ始めた。奥深くまで擦られ、そこから感じたことのない甘い痺れが広がっていく。

「や…ダ…メ…あぁ…」

淫らな水音と腰が当たる音、それらがの耳まで刺激して体が勝手に上り詰めていく。
蘭も更に快楽を得ようと奥を貫いていけば、次第に欲が上がって出る寸前だった。
の体を掻き抱き、ぴったりと肌を重ね合わせる。淫らに腰を動かし、もっと欲しいと言うようにの奥を貪った。

「ふ…ぁ…」

から零れる声はもう言葉にすらなっていない。
蘭はせり上がる欲を感じ、を再びベッドへ押し倒した。
抽送を速め、一気に最奥まで捻じ込む。柔らかな奥がうねり、蘭の先端をぎゅうっと締め付けてくる。たまらず何度か腰を打ちつけた後で、一気に引き抜いた。

「…あー…」

の薄い腹の上に白濁をぶちまけ、あまりの気持ち良さに声が漏れる。頭の後ろが痺れて、快楽の余韻が蘭を包んでいた。

「……大丈夫か…?」

少しずつ自分の感覚が戻ってきた。彼女の肌を綺麗にした後、蘭が声をかけると、何故か返事がない。ふと見ればはぐったりとしたまま眠っているように見えた。

「…マジ?」

そっと顔を覗き込むと、は気持ち良さそうに寝息を立てている。
蘭と同時に達したことで失神したまま眠ってしまったらしい。

「ったく…オレのプラン台なしー…」

隣に寝転んだ蘭が苦笑交じりに呟いて、の頬をそっと撫でる。
そしてすぐに体を起こすと、ベッド脇にあるチェストの中から、手のりサイズの箱を取り出した。お洒落なネイビーのリボンが施された同じくネイビーカラーの箱。その箱には【HW】という刻印がある。
これは蘭がに誕生日プレゼントを考えていた時、テレビで婚約記者会見をしていた女優が付けていたブランドのものだ。蘭はアレを見てにプロポーズをしようと思い立った。まさにそれが誕生日プレゼントとなるはずだったのに、当の本人は夢の中なのだから、蘭も苦笑せざるを得ない。

「ま、いっか。起きた時で」

蘭はリボンをするする解いていくと、箱を開けて中身を確認した。中には大きなマーキスカットのクラシックリングが堂々とした輝きを放ちながら鎮座している。それをそっと抜き取ると、蘭は眠ったままのの左手薬指にゆっくりとはめていった。ついでに薬指へちゅっと口付ける。

「これ見たらのやつ、また値段気にしそうだな…」

が起きた時の驚く顔を想像しながら軽く吹き出した。

「ま…コイツの借金くらいの値段ってことは内緒にしといた方がいっか…」

早く起きろよ、と呟きながら、気持ち良さそうに眠るの頬を指でつつく。
その時、左手薬指の宝石がキラリと誇らしげに光った気がした。


…終。

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