※性的描写があります。18歳未満の方の観覧はご遠慮ください。
「灰谷くんのことが好きなの」
これはオレがまだガキだった頃の話だ。
そんな台詞、もう聞き飽きたってくらい、昔から女という生き物によくモテた。
たとえば同じ学校、同じクラスの女とか、別の学校の女や、年上からだって「好きなの。付き合って」と言われてきた。
街を歩けば絡んでくる不良どもより、「兄貴は女の子から声をかけられることの方が多かった」という竜胆の言葉もあながち間違ってない。それくらいオレはモテたという自覚がある。
だから彼女に告白された時も、またか、くらいにしか思わなかった。
とは同じクラスだったけど、当時はそれほど話したこともなく、親しいわけでもなかった。
でもサボりがちだった学校へ久しぶりに顔を出した時、たまたま昼寝をしに行った保健室のベッドに彼女がいた。
学校でも可愛いと人気の高い女だったから、オレも顏くらいは知ってるクラスメート。
体育の授業中に貧血を起こしたらしく、大事をとって保健室で寝てたらしい。そう言われれば顔色が少しだけ悪かった気がする。
はオレが来たことに心底驚いてる様子で「ひ、久しぶりだね」とはにかんだ笑顔で声をかけてきて、そのぎこちなさとかがやけに新鮮だった。
に告白されたのは隣同士のベッドに座りながら、他愛もない会話を交わしたあとだった。
「わ、わたし……灰谷くんのことが好きなの。だからこうして話せてうれしい」
と彼女は言った。この時のオレは告られることに慣れすぎてて、「へぇ、そうなの?」と軽く返した気がする。
ただ――他の女と違ったのは、彼女から「好き」とは言われたけど「付き合って」とは言われなかったことだ。はただ好きだと言っただけで、真っ赤な顔で俯いてるだけ。オレとしては結構拍子抜けした。
だから、なのかもしれない。
ちょっとだけからかってやろうと思った。学校の人気者でもある彼女を。
「は、灰谷くん……?」
自分のいたベッドから彼女のいるベッドへ移動して隣に並んで座る。は少し驚いた顔でオレを見上げた。その隙に小さな唇をちゅっと啄めば、今度こそ驚愕した様子で瞳を大きく見開く。
その顏を見た瞬間、がこういうことをするのは初めてなんだと気づいた。
それが意外でオレも驚いた。モテる彼女のことだから、とっくに誰かと済ませてんだろうくらい軽く考えてたから。
キスも初めてなら、当然セックスなんてしたこともないはずで。そう考えるとやけに欲情したのはオレもまだガキだったからかもしれない。
処女の女とはまだヤったことがなく、俄然興味が沸いた。
「あ、あの――」
「こういうことすんの初めて?」
彼女の華奢な肩を抱き寄せ、また唇を寄せながら訪ねると、は瞳を一気に潤ませて恥ずかしそうに頷いた。その表情にやたらとそそられた記憶がある。
「じゃあ、こういうことされんのも?」
「……あ、だ、め」
オレの指がひとつひとつ下りていって、制服のシャツのボタンが半分ほど外れた頃、ふと我に返った様子でそんなことを言い出す。だけど、もう遅い。
の無垢な反応にオレはすっかりその気になってしまった。
「ま、待って……あ、あの先生が戻ってくるかも――」
そう言ってオレを止めたいのか、それともその心配がなければOKってことなのか。ちょっと判別はできなかったが、その辺の対策は地味にしてあった。
「鍵はかけてあるし平気だって」
サボりに来たわけだから邪魔が入らないよう、保健室の鍵は入った時点でかけてあった。どうせ教師なら合鍵を取りに行くだろうけど、そん時は取りに行ってる間に逃げればいい話だ。
でもオレはこの時間、保健医がいつも図書室でサボってることを知っていた。だから寝に来たわけだし。
「は、灰谷くん……わたしのこと好きじゃないでしょ」
シャツの中へ手を滑りこませたら、彼女は体を硬くして真っ赤な顔でオレを見上げた。
「好きだって言ったらいいわけ?」
と言いながら彼女の背中にあるホックを外す。
柔らかくていい香りのする胸元に唇を這わせたら、頭上で「ひゃ」という聞いたことのない躊躇いがちの甘い声が上がった。
この時はオレのことが好きなら何してもいいだろって気持ちが強かったかもしれない。
「い、いつも、こういうことしてるの……?他の子にも」
「今、他の女なんて関係なくね」
思わず苦笑して、の耳にゆっくり舌を差し込んだ。ひゅっと息を吸い込む音が彼女の口から洩れる。背中に回した手から彼女の体の震えを感じた。
「は……灰谷く……」
何かを言いかけた唇を塞いで、さっきしたキスよりも深く口付ける。オレから舌を絡めると彼女はどうしていいのか分からないようだった。舌で口蓋を舐めたり、彼女の舌を吸ったりしてもされるがまま。そんなぎこちないキスでも新鮮で、合間に「は、いたにくん……」と名前を呼ばれたら堪らなくなった。
上手く息継ぎができないのも可愛く思えて、「鼻で息吸えよ」と言えば、の小さな手がオレのシャツをぎゅっと掴んだ。こんなことされてるのには怖がる素振りがない。
強引かつ勝手な思考で事に及んでるのはオレなのに、何で抵抗しねえの?と聞きたくなった。抵抗どころか、オレに縋りついてきて、きっと友達にも見せたことのない厭らしい姿をさらしてる。
校内じゃ知らない人間はいないってくらいモテるが、オレのシャツをギュっと掴んでる姿がやけに可愛い。
スカートの中に手を入れてもビクンと反応するだけで、拒むことはしなかった。
「エレナはさあ、オレのこと好きなんだっけ?」
「え……」
「なあ、好き?」
「……す、好き」
「なら、最後までシテもいい?」
最後にチャンスをやった。オレから逃げるチャンスを。
もしここで「やめて」と言われなきゃ、オレも止まれない気がしたからだ。
は何も言わなかった。ただ黙って小さく頷いた。
許可が出た瞬間、口付けて彼女の口内に舌を差し込む。舌を絡めたり歯列をなぞっているうちに、もオレの舌に自分の舌を絡めてきて、そのたどたどしい動きに腰の辺りがぞくりとした。
の下着を横にずらして割れ目をなぞる。うっすらと湿っていたそこへ指を這わせ優しく撫でてやった。普段ならもっと雑にするけど、は特別だ。
誰も知らない彼女の可愛いところを指で何度も撫でてやる。恥ずかしいのか、彼女はオレの胸に顔を埋めたまま顔を上げようとしない。声も我慢してるようだった。
の可愛い声を聞きたくて、濡れ始めてきた場所を指で刺激していくと、華奢な肩がびくん、と跳ねるのがたまらない。
そのうちぬるぬるになった場所へ中指をゆっくりと挿入してナカを優しくほぐしていく。
「あ、ん……ふぁ……」
「……痛い?」
やっぱり処女は想像以上にキツい。念のために尋ねると、は苦しそうな息を吐きながら首を振った。濡れてるから指一本くらいじゃ痛みは感じないらしい。少し安心してそのままもう一本指を増やすとにゅちゅにゅちゅと卑猥な音が静かな保健室に響く。
「ん……ん、」
「すげえ濡れてきたけど……気持ち良くなってきた?」
「ん、わ、わかんな……ふ、ぁ」
「かわい。クリは気持ちいい?」
「……や……ぁん」
ナカの壁を指で擦りながら、ぷっくりしてきたクリトリスも同時に指の腹で優しくこねる。それだけで彼女の腰が嫌らしく揺れて、とろとろと蜜が溢れてきた。
そんなの見せられたら我慢も限界だ。ベッドにを寝かせると、制服のズボンのベルトを外して、の上に覆いかぶさり、下着の脇からゆっくりオレを挿しこんでいく。耳に舌を入れた時と同じように、優しく。
の呼吸が一瞬深くなったけど、腰を動かすとすぐに浅く早くなっていく。ナカはとろとろに熱くて、柔らかくて、キツかった。気を抜けばすぐイケそうなくらい気持ちがいい。
泣いてるみたいな声が耳に届くと、オレの体はそれに応えるように、もっと啼かせてやるというように激しく動いた。
生まれて初めて処女の子の中へ入ったから、いつもより気分が高揚していた。
柔らかい太もものその向こうが、オレのモノを締め付けて離さない。
「ん……あっ……灰谷……く……」
「ヤベ……腰が止まんねえわ……」
想像以上に処女はヤバかった。気持ち良すぎてバカになる。それくらい蕩けそうで夢中で腰を動かした。彼女が初めてというのもオレの劣情を加速させる。セックスを知らない、誰も見たことがない彼女の全てを自分のものにしてると思うと、何度でもめちゃくちゃにしてを抱き潰したくなった。
「っは、んあっ、ぁ……」
「かわい……オレので突かれんの気持ちい?」
「やっ、ぁ……んんっ…」
酷いことをしてる自覚はあった。オレのことを好きだと告ってくれただけのを、まだ誰にも汚されたことのなかった彼女を、強引に汚してるのがオレだという優越感も。
オレの下で涙を零しながら喘ぐは、きっと痛いのだって我慢してるし、まだ気持ち良くなんかないはずだ。でもオレの欲望を必死で受け入れてくれてる。そう思ったらたまらなくなった。
健気な彼女を抱いてる最中、不意に愛しさがこみ上げて、これまで言ったことすらない言葉が口から零れ落ちる。
「なあ……オレの女にならねえ?」
「……ふ、ぁ……?」
真っ赤に染まった顔を涙でぐしょぐしょに濡らしながら、はオレの揺れる三つ編みを眺めてた。きっと言われた言葉の意味を考えてたんだと思う。
ギシギシと無粋な音がするベッドの上で揺らされながら、彼女が小さく頷く。
「な……なりた、い……」
ヤってる時の男なんて猿なみの脳みそなんだから、あっさり信用すんじゃねえよっておかしくなったけど、言った言葉を訂正する気になれなかったのはオレの方で。
あの時の何とも言えない感情は、長い時を経てもなお、持続している――。
「蘭くん、行ってらっしゃい!」
「……バカ、夜中なのに声でけえよ」
マンションのベランダから身を乗り出して、あの日と同じ笑顔で手を振るを見上げながら思わず苦笑する。
「やべえ、オレの嫁、可愛くね? 女子高生のテンションだろ、あれ」
「……はいはい。可愛い可愛い」
「おい竜胆……そのどうでもいいみたいな返しはやめろ」
「って言うか、何年も同じ言葉聞かされてるオレの身にもなって」
「何年もじゃねえだろ。15年だから」
「うげ。もうそんなんなる?まあはめっちゃいい子で可愛いのは分かってっけどさあ。よく飽きないで付き合ってるよなあ、女食い散らかしてた兄貴が」
「いや、そんな昔のこと持ち出すな。だいたいあんなに可愛い生き物、飽きねえだろ、フツー。見て?まだ手ぇ振ってっから。マジ、可愛すぎ」
「ハァ……投げキッスをするな、弟の前で……。ってか初恋相手をずっと恋人にしてる兄貴をオレは尊敬してるよ」
始まりは聞き飽きた平凡な告白と、思春期特有のエロい欲望から。
なのに保健室で交わした想いは色褪せることなく。
来月、オレは初恋の相手と結婚する。この恋はきっと、永遠に終わることはない。
「うわ、まだ手ぇ振ってんだけど。やっぱオレの嫁、かわい」
「……オレ的には飽きもせずにデレてる兄ちゃんが一番可愛いけどな」