
※性的描写があります。18歳未満の方の観覧はご遠慮下さい。
わたしの家に向かってる、と五条からメッセージが届いた通り、十五分ほどでインターフォンが鳴った。
はや!って驚いたけど、どうせ指定した場所から高専へ飛んだに違いない。わたしのマンションは高専から約十分ほどの駅前にあるし、そのやり方なら都心部からでも最速で来られるはずだ。
五条の術式はこういう時、便利でもあり厄介でもある。
『開けてー』
インターフォンに出ると、モニターにアイマスク姿の五条が映った。任務から戻ってすぐに飛んできたらしい。
悲しいことにウチのマンションは五条の住む高級マンションみたいなオートロック式じゃない。だからドアの向こうにはすでに五条がいる。しかも合鍵を持ってるということを今、思い出した。
――僕の方が先に着いた時、不便だから合鍵ちょーだい。
前にそう言われて深く考えもせず渡した。別にわたしのことをセフレとしか思ってない五条が合鍵を持ってたとしても悪用するとは思ってなかったし、そういう用途以外に使ってないみたいだったから、返してもらうのをすっかり忘れてた。
ここで開けなければ合鍵を使って入ってくるかもしれない。なら、まずは用件だけでも聞こうと考え直した。
「何……?もう荷物も送ったし用はないでしょ」
なるべく不機嫌そうな声を出すと、五条は送った荷物を確認したこと、そして入ってなかった物があるから取りに来たと説明した。
「そんなの……電話で良くない?」
『電話したらオマエ、また送るとか言うでしょ』
「だからって急に来ないでよ……こっちにだって都合が――」
『もしかして男でも来てんの?将来を共にする相手、だっけ』
皮肉たっぷりで笑う五条にカチンときて「そんなわけないでしょ」と言い返してから、すぐにドアを開けた。部屋の前で押し問答をしていたら近所の人に変に思われるし、合鍵も返してもらいたかったからだ。
「お邪魔しまーす」
ドアを開けた瞬間、五条がのっそりと入ってくる。我が家の狭い玄関に高身長の五条が入ると、いつもこんなに狭かったっけ?と思うくらい、圧迫感があるのは変わらない。
「あれ、シャワー入ってたんだ。いい匂いがする」
バスローブ姿のわたしを見て五条が笑うから、思わず睨みつけた。
「足りなかった物って何?」
リビングの手前で立ち止まってアイマスクを外した五条を見上げると、彼は「ん?」と笑いながら小首を傾げた。その仕草は五条の好きなところの一つだったけど、これは彼が何かを誤魔化す時のクセだというのを、わたしは嫌というくらい知っている。
「もしかして……嘘?なら帰って――」
五条の横を通り過ぎてリビングに向かおうとした時、突然後ろから手が伸びてきて、長い腕に絡めとられた。ついでにぎゅう、と抱きしめられたことで、体が僅かに硬直する。
「……最初からこのつもりで来たわけ?」
「んー。そういうわけじゃないけど、二日ぶりにの顔見たら抱きしめたくなった」
「何それ。この前、わたしが言ったこと分かってる?終わりにしようって言ったよね」
「一方的にね。僕の気持ちとか何も聞かずに。だから話をしに来た」
「……別にわたし一人減ったところでセフレには困ってないじゃない」
言いながら五条の腕を振り払って逃げ出す。何でこんなことをするのかも謎だし、わたしの覚悟を無視して、また思わせぶりなことを言ってくる五条に腹が立った。
昔からそうだ。わたしの心を五条はいつだって、揺さぶってくる。
今だってどういうつもりか知らないけど、ここで流されてしまえば元の木阿弥と心を鬼にした。
「用がないなら早く帰って――」
「はさぁ。僕のこと今も好きでしょ」
「は……?」
あまりに唐突な言葉を聞き、わたしは驚きと共に振り向いた。確かに一昨日、好きだと思った時期もあったと思う、とは言ったけど、何で五条は今もわたしが自分のことを好きだと思えるんだろう。出来る限り本心を隠して会ってたつもりだし、五条に気づかれてるはずもない。
「好きなわけないでしょ……前にも言ったよね」
例の呪いの言葉を向けられた時、つい言ってしまった言葉。
――あんたみたいなクズ、好きになるはずないでしょ。
――あっそ。まあ、その方が助かるけど、僕も。
なんて会話をしたことまで思い出す。
「そりゃこの前、好きだった時期もあったと思うとは言ったけど、一時の感情とかだし、そもそもわたしは五条みたいに下半身と感情を上手く切り離せるほど器用じゃないの。好きな人じゃなきゃ、やっぱりセックスしたって気持ち良くないし……この意味分かるでしょ」
だから、五条にはもう抱かれたくない。そう付け加えると、五条の綺麗な顔から表情というものがごっそり抜け落ちた気がした。
「もう僕のことは好きじゃない?だから僕と寝ても気持ち良くないって言いたいわけだ」
「……そう言ってるでしょ」
……こんなの嘘だ。今も五条のことが好き。こうして顔を見てしまえば胸の奥が疼いてどうしようもなくなるくらいに。
だけど、これくらい言わないと五条には伝わらないと思った。五条はいつだって他人から求められてきた側の人間だから、拒否されることに慣れてない。
だからわたしの言ったことも、それほど重くは受け止めてもらえなかったんだろう。そう思った。
なのに――五条は何ひとつ信じてないと言うように、その美しい虹彩をわたしへ向けた。
「嘘だ」
「う……嘘じゃない」
心臓がきゅっと縮まったくらい驚いた。わたしは嘘が苦手だから、鋭い五条の目を見ることすら出来ない。
視線を彷徨わせていると、五条の手が不意にわたしの手を握って、そのまま自分の唇へと誘導していく。驚きで固まったままその動きを目で追っていると、五条の鋭い視線だけがわたしを射抜いてきた。
「僕はが好きだよ」
そう言ったのと同時に、五条はわたしの指先へちゅ、と口付けた。あまりに信じられない光景と言葉を受けて、考えるより先にその手を振り払う。
「平然と嘘言わないでよ」
「何で嘘だと思うの」
「そ、そんなのセフレとして傍に置いておきたいから言ってるだけでしょ。どうせ他の子にだって同じように言ってるくせに――」
「セフレなんて、もうとっくに全員切ってる」
「は……?」
思考回路が一時バグったみたいに停止する。五条はわたしの前に立って、真剣な顔で見下ろしてきた。
「ずっとだけ」
「な――ん、」
驚きの声は五条の口内へと吸い込まれていった。頬へ添えられた手に引き寄せられ、僅かに身を屈めた五条がわたしの唇を塞いだからだ。
今までされたことのあるキス以上に優しく甘い口づけに、停止した思考が床に落とされたパズルのピースみたいに散らばった。
流されちゃダメだ、という思いと、五条の本心だと信じたい思いが交差して、全く思考が定まらない。
騙されない。これが五条の手口であって、わたしを手元に留めようとする彼の作戦なんだと、必死で理性に縋りつく。
それでも柔らかい舌が口内へと侵入して、甘く絡みとられると流されてしまいそうになった。
ダメだ、こんなの――!
「……痛っ」
いつの間にか壁に押し付けられ、唇を貪られていた。でも僅かな理性をフル回転させ、自由の効く足で五条の足を踏みつける。
さすがに術式は解いてたからか、五条はわたしから僅かに離れた。
「何も足を踏まなくても……」
「そ、そっちこそ……わたしのこと好きでもないくせに、何でここまでするの?こんな……恋人にするみたいなキス……」
「だから……好きだって言ってるだろ」
「そんなの信じないよ……信じられるわけないでしょ?それにあたしは五条のこと好きじゃないっ」
言ってる傍から涙が溢れてきた。嘘でも五条の口から好きだなんて言われると、ときめいてしまう自分が嫌だ。
五条は頑ななわたしをジっと見つめていたけど、不意に項垂れて小さく息を吐いたようだった。
「あっそ。信じないないならそれでもいい」
「な、ならもう帰って――あ……っ」
言った瞬間、五条の手に両手を抑え込まれ、壁に押し付けられた。こんな風に乱暴に扱われるのは初めてで、怒らせてしまったのかと五条を見上げる。
案の定、いつもは澄んだ海のように明るく輝く瞳が、今は海底の底を思わせるくらいの静かで暗い光を宿していた。
「信じないなら信じてくれるまで言い続けるしかないよね。が好きだって」
「……な……んっ」
五条の手がバスローブの腰ひもを解いて前がはらりとはだける。下着も何もつけていない肌を、こんな明るい廊下で五条の目に晒している現実に一瞬で顔が熱くなった。
「っや…何するの……!」
「僕が好きじゃないから抱かれても気持ち良くない、だっけ?なら体に聞けばオマエの本心も分かるでしょ。僕をまだ好きかどうか」
「……あっん、」
五条の大きな手に晒された胸の膨らみを揉まれ、驚きで体を捩る。でも体格差では敵わない上に、壁に押し付けられた体は逃げることすら出来ない。
「……やぁ…っ触らないで……!」
首筋にキスを落としていた五条が更に身を屈めたと思った途端、生暖かい口腔で乳首を吸われて、その感覚に身悶えた。甘い刺激を施された場所はすぐに硬く芯を持つ。それを舌先で転がし、ちゅうっと強く吸われるたび、腰がびくんと反応してしまう。同時に片方の乳首を指先で弄られ、こらえきれずに声が漏れた。
両腕の拘束もすでに解かれて、肩を押さえつけられてるだけなのに、逃げるほど足に力が入らない。
視線を下げれば、五条の舌先が乳首をくにくにと弄る卑猥な光景が見えて、視覚からの快楽が下腹部へと直結するかのように疼いた。
「、こうされるの好きだよね」
「…んぁっ」
胸を愛撫しながらも、五条の膝がわたしの両脚を割って間へ強引に入ってくる。膝で陰部の辺りをぐりっと押されるだけで腰の辺りまで疼きが広がっていった。
「んん、や、やめ、て、五条……」
「僕がどれほどを抱いてきたと思ってんの。どう触ればオマエが感じるかくらい僕が一番分かってる」
「ぁあ……っ」
五条の手が何も身に着けていない陰部へ触れると、くちゅ、という耳を塞ぎたくなるような音が漏れ聞こえた。
「ほら、もう濡れ濡れのとろとろ」
「……んん、や…ぁあ」
「やだって言ってるけど口だけでしょ、オマエ」
「んっ」
「現にほら、簡単に僕の指が入る。ここでしょ、オマエの弱いとこ。の体のことなんて全部分かってるんだよ」
五条の筋張った中指がわたしのナカへゆっくり、つぷ、と埋められていく。それだけで背中がぞくぞくとして肩が震えてしまう。五条の言うように、わたしの弱いところは全て知られている。
浅いところで指を出し入れされるたび、くちゅくちゅと粘着質な音が大きくなっていくたび、体から力が抜けていく気がした。五条の指が巧みにGスポットを刺激してくるせいだ。
「んぁ……あっ」
気持ち良さと恥ずかしさで涙をぽろぽろ零しながらも、五条の愛撫に翻弄されてしまう。次第に上り詰めてきた体は、わたしの意志と反して快楽を追い始めた。与えられる刺激に意識が勝手に集中していく。
「イキそう?イっていいよ、ほら」
「んん…ぁあっ」
ぐちゅぐちゅと弱いところを何度も擦られ、膣壁がきゅうっと収縮すると、目の前がチカチカして全身が脱力する。その体を五条に抱き留められ、強く抱きしめられたのが分かった。
「気持ち良くないとか言ってたわりに感じてイったってことは……僕を好きってことでいい?」
は、は、と浅く呼吸を繰り返すわたしに、五条の声がかすかに聞こえてくる。でも、ここで流されたら、またセフレに逆戻りだ。
「……か、帰ってよ……」
「……ハァ。そうだった。は頑固だったっけ」
深い息を吐き、五条は難なく脱力したわたしを抱き上げると「ベッドに行こうか」とわたしの額に口付けた。その言葉の意味なんて考えなくても分かる。どうにか腕から逃げようと藻掻いたけど、力の入らない体じゃ無駄な足掻きだった。
「僕がどんなにを好きか、嫌ってほど分からせてあげる」
「……ご、五条……も、いいから」
「ちっとも良くないんだよ、僕はね」
そう呟いた五条にいつもの余裕はない。こんな顔は初めて見た気がした。
何がそんなに気に入らないのかも分からないまま、寝室へ連れ込まれ、バスローブも脱がされ、ベッドの上で後ろから羽交い絞めにされたまま、延々と弱いところを攻められた。
「ん…ぁあ…ん…やぁ…あ」
寝室にくちゅくちゅという淫らな音と、わたしの嬌声が入り混じって響く。
大きく脚を開かされた中心に、今では指を二本に増やされ、さっきと同様にナカを擦られ続ける。絶え間ない快感が襲ってくるのが怖いほどに気持ちが良くて、頭が朦朧としてきた。
五条はわたしを後ろから抱きしめるようにして、耳元で卑猥な言葉を投げかけてくる。
「のここ、すっごいね。どろどろだよ。もう何回イったっけ」
「ぁ……や……んんっ……」
見たくもないのに、この体勢だと二本の指がじゅぶじゅぶと抜き差しされるのが嫌でも視界に入る。顔を背けると元に戻され、いっそうナカを奥深くまで抉られた。
「やぁ……っ」
何度もイカされたせいか、感覚がバカになっている。少しの刺激で強い快感が押し寄せ、全身の毛がぶわっと粟立った気がした瞬間、ぷしゅっと弄られている場所から透明の液体が僅かに出た。こんなのは初めてだから朦朧とする意識の中でも酷く驚いた。
「あー上手くイケたね。初めてじゃない?潮吹いたの。いつもここまで虐めたことなかったし」
「やぁ……な、……にこれ……んんっ」
「僕の愛撫でめちゃくちゃ感じてくれた証みたいなものだけど……あー好きな人じゃないと気持ち良くない、だっけ?これでは僕のことが好きだって証明されたわけだ」
「ち……ちが…んぁ……ひぅ」
指を引き抜かれ、今度はくぱっと花弁を指で開かれる感触に、唯一動かせる頭を軽く振り、やめて欲しいと意志を伝えても五条は容赦なく指先でヌルつくクリトリスをぬちぬちと撫で始めた。敏感になっているせいで、また何度も甘イキしてしまう。
「こんなにイキまくってるんだし、そろそろ認めたら?僕のことが好きだって」
五条はぐったりしたわたしをベッドへ寝かせると、「将来を共にする相手とか言ってたけど――」と言いながら、わたしの足元へと移動した。
「その男はこんなエッチなをちゃんと受け入れてくれるわけ」
「……な、何する、の……」
力の入らない足を広げられ、五条が間に体を入れてくる。口元がにんまりと笑みを浮かべ、艶のある唇を舐める仕草を見せられた時、今から何をされるのか想像出来てしまった。普段もされてた行為ではあるけど、今は潮を吹いてしまったことで一気に羞恥心が襲ってくる。
「や……だめ……!そ、そこ……汚いから……!」
「別に汚くないよ。好きな子のなんだから」
「な……何言って……ほん、と……やめて……」
「将来を共にする男がをこんなに感じさせてあげられると思う?」
「……や、だ、め……」
「そいつはのここ、舐めてくれる?」
「……ひ……ゃあっぁ!」
五条の生暖かい舌が、今ではパンパンに膨らんでるクリトリスをぬるりと舐めた瞬間、一気にそこから大きな快感が広がって、涙が勝手に溢れては頬やシーツを濡らしていく。
足が何度もびくびくと跳ねるのは、五条が執拗に舐めてくるせいだ。
いつもはイったらすぐに挿れるくせに、未だに口淫をやめようとはしない。ナカにまで舌を挿入し、膣壁をぐにゅぐにゅと執拗に擦り上げられ、また連続してイカされてしまった。
「や……めて……ぁ……も……つらい……」
「なら認める?僕のことが好きだって。僕もを好きなんだってこと、信じてくれるわけ?」
「……ち……がう……もん……こ、こんな……」
「なら、やめてあげない」
「ひゃ……ぁっ」
クリトリスに吸いつかれ、ぢゅぅぅっと長く吸われながら、同時にナカを指で刺激される。まるで快楽の地獄のように連続でオーガズムを与えられ、声にならない声が寝室に響く。
「が好きだよ。もうがいないと生きていけないくらい。それほど長く一緒にいたよね」
今更、僕のいない日常を送れるわけ?と、五条は諭すように囁く。その間も指でナカを擦られ、奥を刺激されるたび、腰が跳ねる。
延々と続く快楽攻めと甘い言葉に、わたしの意識も蕩けてぐずぐずになってきたらしい。
「……わ、わかった、から……」
気づけばそう応えてしまっていた。不意に五条の動きが止まって、パっとわたしの顔を覗き込んでくる。その顏には喜色が浮かんでいて、ちょっとだけ子供みたいと思ってしまった。
「何が分かったの?」
「だ、だから……五条がわたしを好きってこと」
「ほんとに?」
「……で、でも……五条が好きなのはわたしの体とか……相性がいいからってことでしょ……?他に同じような子が現れたら……五条は絶対そっちにいっちゃう……」
「…………」
こんな風に快楽攻めにされて分かった。五条がわたしを放したがらないのは、こういうことなんだと思う。だから、そう言ったのに五条は不意に上体を起こすと、着ていた上着やシャツを脱ぎ捨てた。
「オマエの頑固さも、そういう強情なとこも好きだよ……。でも今のはさすがにムカつく」
「……え」
カチャカチャとベルトを外した五条は少しだけズボンを下げると、徐に勃ち上がった陰茎を取りだし、それをわたしの膣口へと当てた。
「生でヤれば僕が本気だってこと、さすがに分かるんじゃない?」
「――――ッ」
思わず息を呑む。ガチガチに硬くなったものをぐずぐずの場所へ押しあてられた時、頭の中が真っ白になった。