を好きなんだと認識したのは、思えば高専時代まで遡る。
入学当時からタイプだなとは思ってたけど、更に意識するようになったキッカケがあった。
あれは確か2年に上がってすぐの頃に行った地方の任務だったか。
硝子は元々危険な任務には就かないから、その任務は僕と傑、の3人で行ったのは覚えてる。
3人それぞれに分かれ、廃校内で大量に沸いた下級呪霊の祓徐をさくさく進めていった。
適当に終わらせて校舎の外へ出ると、そこにいたのは傑だけ。まあ、そのうちも戻って来るだろうと、傑は先に補助監督の元へ任務完了を知らせに行き、僕がその場に残ることにした。
でも殆ど祓い終えたにも関わらず、一向に戻ってこない彼女のことが少し心配になって、僕はを探しに行った。


12年前――2006年某日。

「おーい、!どこだよ!」

戦後に建てられたという古い廃校の中は、土の湿った匂いとカビの匂いとが交じった不快な空気が充満していた。ちょっと歩けば床はミシミシ軋むし、少しでも力を入れたら簡単に踏み抜きそうなほどに脆い。屋根部分は抜け落ちてる箇所がいくつもあるから雨漏りが酷く、長年雨ざらしだった床板が腐ってるせいだ。最初に見た時、こりゃ気をつけないと地下まで落ちるかもな、とは思った。
この古い木造の廃校は建てられた時代が時代だけに地下室があり、いざという時に避難できるような防空壕が備えられていたらしい。今いる1階の廊下の軋みも、この下が空洞になってるからだろうことは予測できる。でもまさか本当に床を踏み抜いて落ちる奴がいるなんて思ってもいなかった。

「――条……五条、そこにいる?」
「あ?……?」

かすかに聞き覚えのある声を拾い、俺は廊下を見渡した。でもやはり誰もいない。

「おい!どこだよ」
「――五条!こっち!」

今度はハッキリ聞こえた声を辿って、1階の教室部分へ足を踏み入れる。そこは古ぼけた机やら椅子だったものが乱雑に転がっていて、床はところどころ雑草が茂っていた。その真ん中付近に人が一人入れそうな穴が空いていた。

「おい、そこにいんの?」
「あ、五条!ここ!」

の声はその床に空いた穴の下から聞こえてくる。視線を下げると彼女の呪力が薄っすら見えて、マジか、と苦笑しながら穴の近くまで足を進めた。足場は雑草のせいで見えにくい。それが良くなかった。

「ったく。何やってんだ、オマエ――」

と言った瞬間だった。前へ出した足は床を踏むこともなく宙へ投げ出され――。

「……は?」

術式を使う暇もなく俺の体は垂直に落下した。

「ひゃ!ちょ、ちょっと五条……何でアンタまで落ちてくるのー?」
「ぃってぇ~……仕方ねえだろ。雑草で足元が見えなかったんだよ!……ってか、ここ狭くねえ?」

は俺が落ちた先にいた。っていうか、一人でもちょっと狭いというような縦長の空洞に俺まで落ちたせいで密着度が凄い。腕も動かせず、ぎゅうぎゅう詰め状態になった。

「つーか、圧迫感ヤバい……何でオマエ、こんなとこ落ちたんだよ」
「う……だ、だから五条と同じだよ……雑草が茂ってるし脆くなってる床が見えなくてそれで……」
「マジか……」

狭い空洞に二人もハマれば少しの隙間もなかった。辺りを確認すると壁は土や石で何層にも固められたもの。おおかた雨でここだけ陥没したってとこだろう。
まあ"蒼"を使えば問題なく上がれるだろうから、俺は意外と楽観していた。それよりと向かい合ってるこの状況の方に意識が向いてしまう。

「ね、五条なら脱出できるよね」
「んー?まあ……多分?」

ほんとはを抱えて"蒼"で壁を破壊しながら上空へ飛べば即脱出可能。俺がに触れていれば降り注ぐであろう土砂からも彼女を無限で守れる。
でも俺はこの時、もう少しこのままでいたいと思ってしまった。
それは単にとくっついてるのが楽しかったから、というオスとしての煩悩が働いたからだ。
この場に傑がいたら確実に呆れ顔で溜息を吐かれただろう。

「じゃあ早く助けてよ。わたし狭いとこ苦手なの」

はツラそうな顔で見上げてくる。確かに俺と密着状態、かつ腕を動かすこともままならないほど隙間がないから圧迫感は相当だ。でも不安げに見上げてくるが可愛すぎて、俺は曖昧に相槌を打っていた。
この時の俺の思考は、コイツ、マジ可愛いな。ってか、ちっさくね?腕が動くなら抱きしめたいんだけど……って、ドキドキするの何だこれ。え、俺、コイツのことマジで好きなのか……?という煩悩とは少し違うもの。
元々タイプだなと思ってた子とこうも密着してたら、めちゃくちゃ意識するに決まってる。
ただ……マズいことに1つ問題が発生した。俺の腹の辺りにさっきから柔らかいものが当たってる。これは今の状態だと本気でマズいことになる気がした。

「五条……?どうしたの?急に黙って……脱出難しいの……?」
「あ?いや、別に……」

意識をそこへ集中させたら本気でヤバい。と思えば思うほど意識は腹に当たる膨らみへ向いてしまう。は見た目細っこいわりに、意外と胸はあるから腹筋を心地良く刺激してくるのも最高――もとい。最悪だった。
今度はどんな形なのかとか考え出したら、股間の辺りが疼きそうで焦りも出てくる。
思春期の男の想像力舐めんなよ!ってくらい、頭にエロい映像が流れ始めて、そろそろ限界だった。

、俺につかまってろ」
「え?あ……う、うん」

とくっついていたいのはやまやまだが、その他もろもろ下半身事情がヤバいというので、俺は僅かに動く手をの背中辺りへ回した。おかげでより胸が密着した気がするけど、慌てず騒がず一休さん心理で心を無にして、とんち――じゃなく術式を発動。
そうなればあっという間。秒で校舎の外へと脱出することが出来た。

この件以来、俺はいっそうを一人の女の子として意識するようになり、これはもう好きなんじゃねえの?と思い始めた。
は術師としては弱い方で、よくからかったりもしてたけど、陰でめちゃくちゃ努力してたのを知った時は、もう彼女をからかう気になれなかったっけ。
でも俺がいくらからかってもは卑屈になることもなく、変に気取ってないところも好感が持てたし、硝子と二人で馬鹿笑いしてるとこも、苦手な体術を必死になって頑張ってるところも、上手くできたら凄く嬉しそうに笑うところも、全部好きだなって思ってた。
そんな淡い思いを封印する最初のキッカケとなったのは、傑がのことを好きだと分かったからだ。

と傑は仲が良くて趣味も合うとは聞いてたけど、まさか傑までを異性として見てたなんて知らなかった。

が好きみたいだ」

ある時、傑がそんなことを言いだして、俺は「そっか」としか返すことが出来なかった。
何か先手を打たれたような気がして、それ以来ずっとモヤモヤしたもんが続いて、自分でそのモヤモヤをどうにも処理出来なくなった時、俺は好きでもない女と適当に付き合うようになっていた。
硝子やに「クズ」だ何だと言われるようになったのも、それが原因のひとつでもある。
いくら俺でも親友の好きな女に手は出せない。
そのうち傑から「と付き合うことになってね」と報告を受けたことで、俺の失恋も決定的なものになり、それ以降、俺はひたすらチャラい同級生の立ち位置を貫くことになった。



――そして10年後の2016年頃。

――何で電話くれないの?そんなに忙しいわけ?ちょっとの返信も出来ないくらい?私のこと本当に好きなの?

高専時代、鬱々としてた頃、ノリが軽いお姉さんと知り合って、そのまま関係を持った。
それ以来、延々と適当な子と関係を持っては切れるの繰り返し。でも時々、勘違いする子はいる。こんな感じで付き合ってる風に接してくるようになると、もうダメだ。
最初は「体だけの関係でいい」と言うくせに、いつの間にかクエスチョンモンスター化する。
高専時代も似たようなことがあった。まあエッチはしたいし、という煩悩のまま最初は少し付き合ったこともあるけど、だんだん口うるさくなってきて「付き合うってめんどくさ!」という気持ちが強くなったと思う。
結局、その子とはきっぱり別れて、それ以降はセックスだけの関係が増えていった。

でも、まさかそこにまでが入るとは、僕だって思いもしなかった。
高専時代は傑と付き合ってると思ってたけど、アイツが離反して以降、彼女の口から傑の名前が出ることはなくなったから、その辺について聞いたことはない。
硝子いわく、は非術師の男何人かと付き合ってたらしいけど、僕は昔と同様、ただの同級生として接してきた。
なのに一緒に行った任務先で彼女は酷く酔っ払い、部屋まで送った僕に「そばにいてよ」と言ってきた。
今夜はひとりでいたくない、とも。
そうなると、もうダメだった。それまでの鬱憤を晴らすかのように彼女と関係を持ったあげく、その後もズルズルと関係を続けることになったのは、学生時代の消化しきれてない想いが燻っていたからだ。ほんとにバカだったとしか言いようがない。

ただは意外なほど淡泊で、会う約束をする時も事務的だし、セックスしてる時もどこか冷めてる。何ひとつ、僕を煩わせるような言動もしてこない。それが少し違和感を覚えた。
は遊びで男と寝るような子じゃないと、心のどこかで思ってたのもある。だから僕も一瞬こんな関係は解消して、きちんと付き合ってみようかと考えたこともあった。
彼女の反応が見たくて誕生日にネックレスをプレゼントしたこともある。けどに「何で?」って心底怪訝そうな顔をされて思った。

今更、高専時代の淡い想いを告げたところでどうなるはずもない。僕の中では未だに「傑の彼女」という思いもあったし、が僕を好きになってくれることなんかないと感じたからだ。
だからその後もと関係を持ちながら他のセフレとも関係を続けたし、はそんな僕のことを今もチャラくて軽い男としてしか見てなかったようだ。
だからこっちも心にある燻りは見せないよう、遊びだと強調するような言動をしてた。

でも2017年・冬。未曽有のテロを起こそうと現れた傑と再会して初めて分かったことがあった。
瀕死の傑を追い詰めて迎えた最期の会話で、傑は僕にこう言った。

「あの頃、と付き合うことになったと言ったのは嘘だよ。悪かったね、悟」

まさに「は?」だった。
最後の最後に真実を暴露して逝った傑を、もう一発殴っておけば良かったと今も後悔してる。
傑はに告白したらしいが、「好きな人がいるから」と断られたようだ。でも何で僕にあんな嘘をついたのかは言わずじまい。だから余計にモヤモヤしたっけ。ってかの好きな奴って誰だよって更にモヤモヤ度が最高潮になった。
そのあとくらいからだ。僕の心にも変化が起きた。

と関係を持って早一年。
過去の蟠りも消えたからなのか、との関係も少しずつ変わってきた。
以前は事務的なやり取りをして、会って、セックスして、ただそれだけだった。
普段、高専や任務で顔を合わせても、お互い割り切って接していたし、そこは僕以上には徹底してた気がする。
それが寂しいと感じるようになったのは、傑から真実を聞かされたからだ。

あれはいつものように会って、彼女の部屋で抱き合ったあとのこと。
すぐ帰る気にならなくて、だらだらとベッドに横になっていた僕の隣で、は熱心にスマホの画面を見ていた。

「さっきから何見てるわけ?」
「……別に。五条にはキョーミないものだよ」

チラッと僕に視線を向けた彼女は、そんな素っ気ない言葉をぶつけて、またスマホ画面を見始めた。そうなると余計に気になる。

「興味ないって何でそう思うんだよ」
「……だってミニブタカフェ、五条キョーミある?」
「ミニ……ぶた……?」

意外な名前が出てちょっと驚いた。しかもカフェって!

「渋谷に新しく出来たみたいなの。ミニブタなんて触ったことないし、凄く可愛いから――」

そう言いながらはやっとスマホの画面を見せてくれた。そこには確かに可愛いミニブタの写真がずらりと載っている。

「僕もさすがにミニブタは触ったことないかも……」
「だよね。だから、どんなお店か見てたの」
「ふーん……」

は再びスマホ画面に夢中になった。その横顔を見てたら、何となく。そう何となく思いついて――。

「じゃあ……今度一緒に行く?」
「……えっ?」

ついそんな言葉を口にしたら、は想像以上に驚いた顔で僕を見た。しかも頬がじわじわ赤くなっていくから、こっちまで驚いた。

「な、何それ……何で五条と……わたしとアンタはただのセフレでしょっ」
「いいじゃん。たまには。いや?僕と行くの」
「………べ、別に嫌とかじゃ……ま、まあ……たまにはいい、けど……」

最後は真っ赤な顔でぽつりと呟いたを見ていたら、頭の中で何かが弾けた。

(あれ、って……僕のこと好き?)

そう思ったのは彼女の真っ赤な顔が、僕に好きだと告白してくる女の子達と重なって見えたからだ。そういう女の子は面倒ごとにならないよう常に警戒して会ってたから、相手が僕に好意を持ってるかどうかは地味に見分けられるようになってた。
でもありえない。これまでからは好意を持たれてると感じたことがない。
だけど「で……いつ行く?」とぶっきらぼうに聞いてくるわりに、何となく楽しみにしてるようなの態度が、僕を好きだと言ってるようにしか見えなくて、ちょっとだけ試してみたくなった。

「いつでもいいよ」



「うわ、可愛い!」
「……………」

結局デート、という形ではないにしろ、次の休みを合わせて一緒にミニブタカフェに来た。
は早速あちこちにいるミニブタを嬉しそうにスマホで撮影し始めて、僕のことなんか見向きもしない。
やっぱりが僕のことを好きだなんて、ただの自惚れだったかな。
そう自嘲しながら、せっかく来たんだし、と僕もミニブタの写真を撮って真希たちにでも見せてやろうかとスマホを取り出した。
でもその時、何気なくの方を見ると、沢山のミニブタに囲まれていて。つい彼女へスマホを向ける。
そこには学生時代のように自然な笑みを見せる、僕の好きだったがいたから。
つい指が動いて写真を撮ってしまった。

「五条、なに撮ったの?」

カシャっという音で気づいたのか、がふと振り向いた。

「……可愛いミニブタ」
「え、見たい。見せて」
「……だめ」
「む……」

は何でよって文句を言ってたけど、どうにかそこは誤魔化して、夜は僕のマンションに二人で帰った。思えばマンションを借りたのだってと関係を持ったのが大きな理由だ。
その夜はやけに燃えて、普段は彼女が嫌がるからしないようにしてたキスを何度もしてしまうくらい、胸が疼いて仕方がなかった。案の定しつこいって叱られたけど。
でもが僕のことを好きだという確信めいたものを感じたのは確かで、何故かは分からないけど、彼女が自分の気持ちを僕に悟られないようにしてるというのも何となく気づいてしまった。

だったらもう迷うことはないと、すぐに全てのセフレと関係を解消した。
何度も彼女との普通の関係は諦めてきたけど、彼女も同じ気持ちなら我慢することもない。
次のの誕生日に、僕はプロポーズをすることに決めた。
なのに――。


――2018年・現在。

「今日で終わりにしよう。二人で会うの」

――は?何で?

僕の思考が珍しく固まった瞬間だった。
明日誕生日?そんなの分かってる。だから僕はその日にプロポーズをしようと思ってたんだけど。
彼女から別れを切り出された時、僕の脳内はそんな感じだった。
っていうか「だけを見てる」って本心を言ったのに、軽いとこが嫌だとか、嘘つき呼ばわりされたあげく、好きだった時期もあった?え、何で過去形?

「ばいばい、五条。明日からは呪術師と補助監督とか、ただの同級生で頼むね」

そんな捨て台詞を残して彼女はあっさり帰って行った。

「……マジか」

珍しくの方からキスのおねだりなんかしてくるから、やっと素直になってくれたのかと喜んだ自分が空しくなった。

「……どうすんの、これ」

ベッド脇のチェストにしまってあったジュエリーボックスを取り出し、盛大に溜息を吐く。
学生の頃の女癖の悪さも知られてるし、彼女とも二年もの間、体だけの関係を続けてきた手前、今更プロポーズをしても「冗談言うな」と聞き流されそうだと思ったから、きちんと指輪も買った。これを渡して、これまでの気持ちを伝えて、プロポーズをして、僕が真剣なんだと伝えるつもりだったのに――。

「あー!むり……吐きそう……死ぬ……」

ベッドに突っ伏して情けない言葉を吐き散らかした。っていうか僕の人生の中で同じ相手に二度も失恋気分を味わわされるって、どういう呪いだ、これ。

「やっぱ電話かけて戻って来てもらうか――」

ガバっと顔を上げてスマホを手に電源を入れる。でも何となくは出てくれない気がして、アプリを閉じた。

「ただのセフレとデートなんかするわけないだろ……ったく」

これまでスマホにおさめた彼女の写真を眺めながら、深い溜息を吐く。

「あーあ……見事に隠し撮りばっか」

デートでミニブタカフェに行った時のものや、任務に同行してくれた際のもの。高専の食堂や、グラウンドでのもの。
数枚ほどの写真は全て、彼女が全く別の方向を見てるものばかりで苦笑が洩れた。
スマホを向けると、はすぐに顔を反らしてしまうから仕方ないけど。

「嘘つきって……どっちがだよ」

ひたすら僕への気持ちを隠し続けてきたのことだから、さっき言ってたことは本心じゃない。
よく分からないけど、そこは自信があった。
まさか一年以上も前の、自分の気持ちを誤魔化す為に彼女へ言った戯言を、が今も引きずってたなんて、この時の僕は知る由もなかった。

その数日後、荷物を取りにいくふりをして彼女に会いに行こうと思っていたはずが、何だかんだ任務が入って行けなくなった。
そして出張から帰った夜。宅配ボックスには大きな段ボール。ちょっと絶句した。

「……の奴……マジで送ってきたのか」

少しばかりのショックを受けつつ、仕方なく段ボールを開けると、そこには僕がこっそり男避けのつもりで置いてあった服やら下着、ペアグラス、あとは愛読書やらゲーム機なんかがギュウギュウに詰められてて、僕の傷口に塩を塗りたくってきた。
しかも、その中には見覚えのあるケースまで入っていて、思わず手に取る。
それは去年の誕生日、僕が彼女へあげたプレゼント。
本当ならあの日、これを渡して告白するつもりだった。

――よ、よく分かんないけど……ありがと。

ほぼほぼ僕にはツンのから頂いた貴重なデレは、今も記憶にハッキリ残っている。
僕がこれをつけてあげると、ほんのり頬を赤らめてそう言ってくれたっけ。

「何でこれまで送ってくるわけ……」

あの時の思い出までなかったことにされた気がして、びっくりするくらい泣きたくなった。
でもこれがキッカケで僕の中にあった長年の屈折した想いが爆発する。
本気でを取り戻すと決めて、すぐに部屋を飛び出した。

「――絶対に別れてやらないし、僕のことを好きだと認めさせてやる」