※性的描写があります。途中、夢主が他の相手と行為をする匂わせ描写も含まれるので、そういったお話が苦手な方や18歳未満の方の観覧はご遠慮ください。




――私、悟のことが好きだよ。

中学の頃、幼馴染から告白された時。ガキだった俺は死ぬほど嬉しかったクセに、死ぬほど照れくさくて。
純粋な想いを告白してくれた相手に対し、「もうちょっとオッパイ育ったら付き合ってやるよ」なんて、どこのやりチンだと突っ込まれそうな返しをして彼女にぶん殴られた。
幼馴染への恋心をそんな形で拗らせたまま高専に入学した俺は、結局あいつに好きだというキッカケを今も逃し続けている。



"男がありとあらゆる理屈を並べても、 女の一滴の涙にはかなわない"とは、ヴォルテールの言葉だったっけ。
あいつの涙を見た時、本当にその通りだ、と心の底から実感した。
事の発端は俺の女癖の悪さ。初恋を愚かな失敗で拗らせた俺は、本命にぶつけるはずだった欲望を持て余し、全て他のどうでもいい女へぶつけてた。
昨日も任務の帰りに待ち合わせた、名前も曖昧な女と歩いてるところを、硝子や幼馴染のに見られてたってことから始まった。

「また違う子連れちゃって。そろそろ色んな子と遊ぶのやめたら?」なんて談話室で顔を合わせたが文句を言いだすから、男の性はこうなんだと理屈を並べたて、あげく最後は「オマエには一生手ぇ出さねーから心配すんな」なんて、またしても思ってないことを言ってしまった。に告白された頃から何も変わってない。俺は学習すら出来てないガキのままだ。

「出されたくないし!」

なんて、最初は怒っていたも少しづつ声が震えだして、結果、大きな瞳から涙が溢れてきた。それを見た瞬間、一気に後悔という波が俺の中に押し寄せてきて、ついでに傑のあーあ、みたいな顔が出来たての傷を抉ってくる。
こういう時、幼馴染なんて曖昧な関係が心底嫌になるし、素直に謝れない。いや、素直に好きだと言えないからこんなに拗れてるわけで……こうなるのは当たり前だ。

「――もう、いいよ。悟の好きにしたら」

こいつの涙を見ただけで言葉を失って立ち尽くしていた俺に呆れたのか、はそれだけ言うと談話室を出て行ってしまった。
追いかけなくちゃ、と思うのに、こういう時に限ってフットワークだけは軽いはずの俺の足は金縛りにあったかのように動かない。
追いかけてどうする?どうせ同じことの繰り返しだ。情けない顔で気持ちを誤魔化して、またを泣かせる。
だったらいっそ、このまま今の関係すら終わってしまった方がいいのかもしれない。
――なんて、いつになく弱気になったのがいけなかったらしい。
この後くらいから、は俺に当てつけるかのように色んな男と付き合いだした――。


ちゃん……可愛いよ」

誰もいない寮の空き部屋に連れ込まれ、早速ベッドへ押し倒された。キスしたり、胸を揉んだり、太腿を撫でたり、この人の愛撫はそこそこ上手いけど、何か物足りない。耳元で「好きだよ」と囁かれても、ああ、そうなんだ、としか思わなくて。心の一部が欠けてるみたいに、私の胸の奥からはずっとひゅーひゅー風が吹いてる音がする。

「……ん、先輩……」
「気持ちいい……?」
「うん……気持ちいい……」

適度に濡らされて、挿入されて、腰を振られても、そこそこはそこそこだ。感じてるふりをしてしまうってことは、それだけ彼とのセックスにのめり込めてない証拠だと思う。そういう自覚だけはあった。

(そう言えば、ここ男子寮だっけ……)

私の上で息を荒くしながら腰を振る彼氏を見ながら、ぼんやりとそんなことを考える。でもどうせ悟は任務でいないだろうし、こんな奥まったところにある空き部屋なんか誰も覗かない。だからきっと彼もここを選んだんだろうけど。

「……く、出る……」

結局、彼は私がイったふりをして締めつけてやっただけで呆気なく絶頂を迎えたらしい。ナカに埋まった先輩のモノがゴム越しにびくびくと痙攣してるのを感じながら「先輩……もう一回しよ」と誘ってみる。半分演技で半分は物足りないっていう遠回しの本音。
だけど彼はケータイを確認して「ダメだよ……そろそろ行かなきゃ」と苦笑を漏らした。これから任務で広島まで出張だと言ってたから、新幹線の時間が迫ってるんだろう。

「ごめんね。向こう着いたら電話する」

彼は私から離れるとすぐに身なりを整えて、最後にちゅっと唇へキスを落としてから部屋を出て行った。私の服の乱れすら直さずに。
だったら出張前にやらなきゃいいのに、と溜息が出る。
前の彼と別れたあと、すぐに口説いてきた先輩術師と付き合い始めて二週間ちょい。別にセックスも良くないし、ワンパターンだし、まあ顔だけはそこそこ良いから付き合ったけど、もう飽きてきた感満載だ。

(悟に振られてから、こんなのばっかりだな……)

私の初恋の男は、付き合うわけでもないのに色んな子をつまみ食いしまくってるクズになった。そのクズに振られた私の惨めさといったら言葉では言い表せない。あげく「オマエにだけは一生手ぇ出さねえ」と死刑宣告をされ、あの日、私は悟と決別した。
と言っても普通に今でも言葉は交わすし、たまには任務も一緒に行く。けど確実に幼馴染以下になってしまった気がしてた。前なら寝る前とか部屋で一緒に映画を観たり、ゲームをしたりしてたけど、そういう個人的な付き合いは一切なくなったからだ。それが寂しくて、そういう報われない気持ちをどうにか埋めようと、私も悟と同じように色んな男の子と付き合うようになった。

私もこれで意外とモテる。そういうことを悟はきっと知らない。
高専に入る前だって色々告白されたりして、でも好きな人がいるからって、ずっと断ってたのを悟なんかが知るわけもない。
私が男をとっかえひっかえし始めたら、悟は当てつけかよって顔を引きつらせてたけど、ほんとにそんなつもりじゃなかった。だいたい私が誰と付き合おうが、悟だってどうでもいいと思ってるはずだ。
私だって悟がどんな子と寝ようと今はどうでもいい。
私達の未来はこの先もずっと、ボタンを掛け違えたみたいに歪な関係のまま、きっと続いていく。

(どこで……間違えちゃったんだろう……)

ベッドに寝転がったまま、ぼんやりと考えた。
私は昔から"五条家の坊ちゃん"が好きで好きで仕方なかったけど、悟は年頃になったら何となく私を避けるようになって、告白したらしたでふざけた返しをされた。あげく気づけば最強のチャラさを身につけて今に至る。
でも皮肉なことに、悟がクズになった頃くらいからは、また前と同じような仲のいい幼馴染へ戻れた気がする。

(まあ、それも下らない嫉妬で私がぶち壊しちゃったんだけど……)

幼馴染でいる時間が長すぎたのかもしれない。悟には私が女に見えないんだろうな。
そんなことを考えながら、乱れた服を直そうと上体を起こした。
その時――。ガチャ、という音と共に、何故か悟が部屋へ入って来た。一瞬、目が合い、お互いに固まったのが分かる。
何で悟がいるの?とか、何でこんな奥まった部屋に来たわけ?とか、色んな疑問が頭の中をぐるぐるしてしまう。でもふと悟の視線に気づいた。その先には服を乱され、露わになってる私の――。

「ちょっと……どこ見て――」
「オマエ、あの先輩とヤってたんだ?」

サングラスを外し、私の方へ歩いてきた悟は、不機嫌丸出しといった顔で見下ろしてきた。どうやら悟は彼がここからコソコソ出ていく姿を見かけたらしい。そんなの私の恰好を見ればわかり切ってるのに、何でわざわざ聞いて来るのかが分からない。

「……だったら何。っていうか、そんなに私の体が見たいなら悟もする――?」
「言ったろ……オマエにだけは手え出さねえって。つーか俺でも寮内なんかじゃヤらねえけど?」
「何それ……説教?そんなの悟が高専生以外の子に手を出してるだけでしょ。私は先輩とちゃんと付き合ってるもん」

悟に背を向けて乱されたシャツのボタンを留めてると、背後で大きなため息を吐かれた。

「……オマエ、もっと自分のこと大事にしろよ」

こともあろうに一番その台詞が似合わない男に言われて呆気にとられる。しかも悟は床に落ちていた私のショーツを拾ってこっちへ放ると、それだけ言い捨て部屋を出ていく。また取り残された気分に襲われて泣きそうになった。自分だって色んな子に手を出してるくせに、もっと大事にしろって何?そんなの私の台詞だよ。

「だいたい彼を見かけたからって何で来るわけ……?」

一番見られたくない相手だったのに――。
じわ、と涙が浮かんで慌てて目を擦る。こんな冷めた関係になるなら、ただの幼馴染で我慢すればよかった。
そんな弱気な考えが浮かんで、また泣きそうになった時。再びドアの開く音がしてドキっとした。

「……

ふらりと悟が入って来た、と思ったら後ろ手にドアを閉めて――カチッと鍵をかける音。心臓が一際大きく跳ねた。

「ど、どうしたの?あ、やっぱりその気になったとか?」

悟は俯いたまま何も言わない。さっきと違う空気を出すから、つい冗談めかしてふざけた態度をしてみせた。いつもなら「あ?なるわきゃねーだろ」とか言って悟が怒りだすのに、何故か今は黙ったまま。
何をしに戻って来たのか怖くなって、私は悟の手を引っ張った。

「したいならそう言えば?鍵なんかかけちゃって、悟も確信犯?」

そんな挑発ともとれるようなことを言っても悟は何も言わない。でも不意に顔を上げた悟は「……早く部屋に帰れよ」と呟いた。

「ここ男子寮だし、いつまでもそんな恰好で――」
「何だ……やっぱり説教しにきただけ?」

ベッドに立ち膝をして悟の首へ両腕を回す。こんな恥ずかしい真似、今までしたことがないけど、悟の機嫌が悪そうだからどうにか誤魔化したかった。
腕から悟の体温が伝わってきて、やけにドキドキする。こんな風に密着なんてしたことがなく。中学の頃、ふざけてプロレス技をかけられて以来かもしれない。
サングラスもしてない悟はジっとその青く澄んだ瞳で私を見つめてくる。何か言って欲しい。でも出来れば何も言わないで出て行ってくれたら――。
そんな淡い願いを込めながら見惚れそうなほどに美しい六眼を見つめると、不意に下げられていた悟の腕が私の腰へ回された。腰のラインを撫でていく感触にびくっと体が跳ねる。それを誤魔化す為に、「手は出さないって言ってたけど、結局出すんだ」とわざとらしい軽口を叩いた。こう言えば普段の悟なら「誰が出すかよ」とか言って怒って出て行くはず。
そう、思ったのに――悟の手がするするとお尻のラインを撫でながら下りて、スカートの中へ入ってきた。まだ下着もつけてない無防備な場所を、悟の手が無遠慮に動くから、ぞくぞくっと産毛が逆立つ。

「さ、悟――」
「あの先輩じゃ満足しなかったんだろ」
「あ……っ」

さっきまで彼を受け入れてた場所をするり撫でられ、今度こそびくんと腰が揺れた。同時に今も少し濡れたところへ悟の長い骨ばった指がつぷっと入ってこようとしてる。

「ん……っ」

二本の指がゆっくりと押し入ってくる感覚に思わず声も跳ねた時、悟の手で口を塞がれてしまった。

「あんま声出したらダメだろ。ここまで滅多に人が来ることねぇけど、少し先の通路はみんな通るんだから多少は聞こえる」

さっき俺もそれで気づいたし、と悟は薄く笑った。そんな幼馴染を見上げながら、急にどうしたんだろうと驚く。悟が私に触れることなんて、この先一生ないと思っていたのに。
悟は引きかけた腰を逃がさないように指の動きを速めていく。

「んんっんーっ」
「ホントにさっきまでヤってたのかよ。ナカ、せっま」

ぬちぬちと音をさせながら悟の指が出し入れされるたび、体が勝手に快感を拾っていく。さっきの中途半端な行為で体が焦れていたせいだ。しかも悟にされてると思うと体は正直に反応してしまうから、悟の肩をぎゅうっと掴む。

「……すげー濡れてきた。えろ」
「……ンンンーッ」

ナカで指を曲げて愛液を掻きだすように抜き差しされると、太腿がガクガクして立ち膝をしてるのもツラくなってきた。それを見計らったように、悟は私の体をベッドへ押し倒して圧し掛かってくる。その間も指の動きは一切止めようとしない。
次第にぬちゅぬちゅと音が少しずつ変化してきた。

「どこが気持ちいい?」
「ンン、」
「こうして欲しかったんだろ?物足りない先輩のせいで」

私の口を押えていた手をゆっくりと外した悟は、私の知らない顔をしている。私の知らない、男の顏。

「……んぁ」

悟の手が火照った頬を撫でていく。私だけが、触れたり、繋いだりすら出来ない手だと思ってた。その悟の手が、指が、私に触れている。そう思うと抵抗する気力なんかないに等しくて、ただただ悟から与えられる快楽に身を委ねていた。
悟は器用に片手でシャツのボタンを一つ一つ外していくと、せっかく直したばかりのブラジャーをくいっと指で押し上げる。悟に見られるのは初めてだった。

「昔より育ってるじゃん。綺麗なオッパイしてる」
「……やっ……ちょ、本気……?」
が誘って来たんだろ。悟もする?って。手は出さねえって言っても、オマエから誘われたなら話は別だから」
「な……何それ……んっ」

悟の手は大きいから、私の胸がすっぽりと包まれるのがエッチで、その手にやわやわと揉まれると肌が粟立つ。しかも片手の親指と人差し指を上手く使って両方の乳首を弄ってくるのがたまらない。感じるギリギリの弱さで触られるのが逆にぞくぞくして、その間もナカを指でとんとんされるせいで、じわじわと快感の波が全身に広がってきた。

「や……さ、とる……イク……っ」
「……いいよ」

全然激しくされてるわけじゃないのに、イキにくいはずの私の体がアソコと胸を弄られただけで一気に絶頂を目指して加速していく。

「……ぁあ、んあっ」

ナカ、というより、胸で軽くイってしまったらしい。アソコが更にジンジンしてくる。なのに指は未だに厭らしくナカをぐちゅぐちゅと音をさせながら擦ってくるから、どんどんそこから溢れてくるのが分かった。太腿をグイっと上げられ、恥ずかしい恰好にされてるのに、私は逃げることも出来ずに与えられる快楽を貪っている。

「さ、さと……ん、ふ」

その時、覆いかぶさってきた悟が私の唇を塞いできてビックリした。
それは前に悟と寝たことのある女の子が話してたからだ。

――五条くんはエッチするだけでキスは絶対してくれないんだよね。

その子は任務先で知り合った子で、私も知ってたから時々連絡を取り合ってたりしてたし、よくそんな話を聞かされた。あとで傑から聞いて知ったけど、彼女は私と悟の関係を疑って地味に牽制してたらしい。通りで悟とのエッチを毎回赤裸々に語ってくれたわけだ。二回ヤったら捨てられたらいしけど。
だから、まさか悟からキスをされるなんて思ってなかった。どうせちょっと私をイカせて、からかって終わりかと思ったから――。

「ん……ふ、」

舌を絡めてちゅうっと吸われると、まるで恋人にするキスみたいでだんだんと体が火照っていく。軽くイったはずなのに、体が疼く一方だ。
なのに濃厚に絡みあってた舌が口内から出ていって、ナカから指が引き抜かれる。
え、と思って目を開けると、私を見下ろしながら悟はにっこり微笑んだ。

「んじゃーイカしてやったし、もう帰れるよな?」

悟はどうしても私を帰したいらしい。な?と念を押すからムっとしてそっぽを向く。私から誘った――冗談だったけど――からって勝手に手を出したくせに、涼しい顔をしてるのが癪に障った。

「……イってないけど」
「嘘つけっ」
「ナカではイってないってことー」
「何だ、そのナカ縛り」
「……悟こそ、遊んでるわりに意外と紳士なんだ」
「うっせぇな……」

そんなこと言いたいわけじゃなかった。だけど何の気の迷いか悟が私に触れてくれたから、このキッカケを逃したくないと思ってしまっただけ。

「……あんなのじゃ足りない」

悟に振られて他の男に逃げた時、私もクズになると決めた。もう悟に振り回されるのはまっぴらだから、逆に振り回せるくらいのビッチになってやる。そう決めたのだ。
それもこれも全て悟をこんな風に翻弄してやりたかったから。

「もっとして……」

筋肉質なお腹に抱き着いて大胆なおねだりをすると、悟の頬がかすかに赤くなったような気がした。
まさか、このおねだりのせいで、悟の色んなところに火をつけたなんて、この時の私は全く気づいていなかった。