※ちょい濃い目の性的描写があります。苦手な方や18歳未満の方の観覧はご遠慮ください。




私の不幸は、心にこびりついてしまった悟への想いが、振られたあともずっと剥がれなかったことかもしれない。

お互いに絶頂を迎えても火照った体は重なったまま。私と悟の荒い息が静かな部屋に響いてるのを、ただ聞いていた。
全身が怠くて動くこともできずにいる私の背中へ、悟はちゅっと口づけていて。遊びにしてはサービス精神旺盛だな、なんて自虐的なことを考えていた。

「ん、」

不意に悟の熱が離れて、にゅる……っとした感触で腰を引くのが分かった。その少しの動きでナカからどろっとしたものが垂れる。今、抜かれたら溢れてしまいそうだ、と思った時、悟の熱い両手が再び私の腰を掴んだ――と思った瞬間、勢いよく奥までどちゅんっと挿入された。

「……~……~ぁっ!」

イったばかりの奥を強く突かれて目の前に火花が散る。抜く前にもう復活してたらしい。油断してたところへ強烈な快感が脳天まで突き抜けた体は、がくがくと震えながらまた力が抜けていく。その間も悟は同じく腰を引いては一気に最奥へ突っ込む行為を何度となく繰り返した。

「あっああっ!だ、……め……っ」

ばちゅん、と奥へ挿れられるたびに全身が震えるくらいの快感が襲う。そのうち悟の激ピスが再開して、何度も激しく揺らされ始めた。

「ンっ出る――」
「……あっ……ぁ……ふ……あっ」

パン、パン、と肌のぶつかり合う音が響く。それくらい激しく腰を振りながら悟は私を後ろから抱きしめてきた。まるで獣のオスみたいに激しい動きで、私は連続でイカされている。自分でも何を言ってるのか分からない喘ぎしか出ない。
そのまま顎を上げられ、深く口付けられ、ぬるりと動く舌が息も絶え絶えの私の口内を余すところなく舐めていく。それだけで気分が高揚したらしい。

「……んんんっイク、イク……イクっ!」

私と悟はキスを交わしながら、また二人で絶頂を迎えた。

「はー……は……ん、」

悟はグッタリした私を支えながら、薄っすら開いた唇の隙間から再び舌を滑り込ませてくる。ちゅくちゅくと互いの舌が絡まる音を、沸騰した頭で聞いていた。
何で、どうして、と疑問が次から次に浮かんでくる。そんなことを考えていたら、また悟が腰を引くのが分かった。
悟は私のこと――。

「――んぁっ……イ、イ、ク……!」
「好きなだけイけよ……ほらっ」

――落とそうとしてる?
またしても腰を押し付けられて、軽くイカされてしまった。抜かずの3発なんて都市伝説かと思ってたのに、軽くやってのける悟はどんだけ性欲の鬼なんだとバカになった頭の隅で思う。

……あー……締めすぎだって……すご……気持ち良くておかしくなりそー……」

ギチ、ギチ、と悟の陰茎を締め付けてるのは自覚してる。でもイキすぎて勝手にそうなるだけで自分でもどうしようもない。その締め付けてる隘路を開くように、悟は強引に腰を動かしてナカを擦り始めた。
どろどろの場所からは抽送されるたび、ごぼ、ぐぷ、と卑猥な音が洩れてくる。ナカに出された精液が掻きだされてるみたいだ。そこで少しだけ冷静になった。
生で受け入れた私もたいがいだけど、平気でナカ出しする悟もどうかと思う。デキたらどーすんのよって怒りたいけど、もしそうなったとしても、悟は私をお嫁さんになんかしてくれないんだろうな。
そんな自虐的な感傷に浸りながら、アフピルまだあったっけ、なんて考えてる私も最低のクズ女だ。

「んん……っあっあ、んっ」

容赦ないピストンをされてると、また体が快楽を追い始めて、そろそろ限界に近い。
その時、悟が「そろそろ出せる……?」と訊いてきた。何のこと?と思った瞬間、悟の陰茎がいきなり引き抜かれた。どろり、と太腿に溢れてたものが垂れてくる。

「出す……って、なにを……」

と力のない声で尋ねると同時だった。再び硬いものがずぷっと挿入され、先っぽでぬぷぬぷと浅い壁を刺激してくる。ついでに右手を繋がってる部分の上付近へ伸ばし、ぱんぱんに腫れてるクリトリスに触れてきた。その同時攻めにたまらず背中をのけ反らせる。

「ほら、おいで」
「やぁ……!そ、そこ……ふ……ぁっ」

ごちゅごちゅと陰茎で突いてるのはクリトリスのちょうど裏側。その部分を先っぽで刺激しながら、指の腹でもクリトリスを捏ねてくる。同時にされる気持ち良さは想像以上で、その快感が私の全身を泡立たせた。

「あっ……ぁあっあっ」

ぬぷ、クチャ、と擦られる音と捏ねられる音が入り混じり、また脳内が沸騰してきた。次第に体内から大きな波が押し寄せてきて、ああ、またアレがくるんだ、と自分でも感じる。悟の言ってたのはこれのことなんだと、その時分かった。

「あ、ああ……だ、……だめ……や、や……っ?ああっ!」

先っぽでとんとんされてる場所から、ぶしゅっと勢いよく何かが吹き出すのを感じながら、脳が痺れるほどの絶頂を味わう。なのに悟は抽送をやめず、ぐちょぐちょの場所を攻め立てた。

「あ、あっ……も、だめ……さと、る……や~……や、だ……っ」
「……いっぱい出て気持ち良かったね。かわい」
「よ、よくな……あ、ぁっ……も、う、動かな……いで……ぁっ」
「潮吹き知らないにハメ潮吹かせたり、俺との泡立つくらい掻き混ぜたり、」
「な……何……?んっあ」
にだけ、とだけって……決めてたこと結構あんだよ、俺の中で」

何を言ってるの?と意識が飛びそうなのを必死で保ちながら、悟の声を拾う。何故か聞かなきゃいけない気がしたからだ。聞き逃したら、絶対に後悔する。
どうしてかは分からないけど、蕩けそうな感覚に呑まれながらも、そこだけは感じていた。
悟はぐったりとした私の体を抱え起こすと、久しぶりに向き合う格好になる。涙と汗まみれの顔を見られたくないのに、ぴったりと肌を合わせ、悟は私の片方の太腿をぐっと持ち上げた。それを自分の腕で抑えると、私のお尻を手のひらで支える。こんな体勢でシたことなんてないけど、密着してる胸元が気持ちいい。
悟は器用に立ったまま腰を引いてく。それをまたゆっくりと奥まで挿入されて、あまりの気持ち良さにびくびくと背を反らした。

「ンン……っ」
「あー……気持ちいー……」

悟がぼそりと呟くから、つい私も……なんて、はふ、と唇を震えさせながら口走った。その瞬間、目の前に悟の綺麗な顔が下りてきた。

「――ずっと、こうしたかった。と」

その言葉の意味を理解する前に唇を塞がれて、唇をちゅうっと吸われる。それが凄く満たされるくらい気持ちが良かった。

「ず……っずっと……って?」
「説明……必要?」
「ひゃ……」

悟はもう片方の私の足も抱えると、完全に駅弁状態になってしまった。こんな体位でセックスをしたことなんてない。更に奥をぐりぐりと刺激され、ぞくぞくっと鳥肌が立つ。軽くとん、と突かれただけでイってしまった。

「ん……ぁ、んんっ」
「……あーゾクゾクする。のイキ顔……」

さっきよりも距離が近いせいで、頬を高揚させてる悟の顔もはっきり見えてしまう。言葉の通り、私のナカをイジメてる陰茎が更に大きくガチガチになるのが分かった。悟も興奮してる証拠だ。

「……奥、好き?」
「ん、す、すき……んぁ」

悟にゆっさゆっさと揺らされるたび、言うつもりもない言葉が勝手に出てしまう。もう完全に支配されてる気がした。

「この可愛い声や顔でいつも彼氏たちを悦ばせてんの?」
「……な、ない……よ、そんなこ、と……ぁっ」
「もっと聞きたい」
「……や……ぁ」
「ほんと、の胸きれい――乳首、しゃぶりたい」
「ひゃぅ」

身を屈めた悟は少しだけ体を放して私の胸元にはむ、と吸いついてきた。舌先でコリコリ硬い場所を弄られただけで、繋がってる場所がきゅんきゅん疼く。

「あ…あっ……それ、や……イ、イっちゃ……ぁあっ」

ちゅくちゅく舐められて、ぢゅるぢゅる吸われて、またナカから溢れては垂れていく。どうにも止められない絶頂感に、本気でイキ殺されるかも、と不安になった時。悟がふと顔を上げて「なあ、……」と切なげな顔で私を見つめた。

「彼女になる?――俺の」
「……」

一瞬の沈黙が室内を包む。悟はやけにスッキリした顔で微笑むから死ぬほど驚いたのに、ちょっとだけイラっとした。

「え……やだけど」
「……………………」

悟の動きがピタリと止まり、互いに暫し見つめ合う。

「何で。好きでしょ。俺のことも俺のアレも」
「……バカじゃないの」

そんなことを言いながらも、頬はじわりと熱くなって目を反らしてしまった。いきなりの展開に心も頭も――だいたい理性飛んでる時に言われても!――ついていけてない。

「私……彼氏、いるし」
「別れろよ。どうせ好きじゃねえんだから」
「な、何でそんなこと悟に言われなきゃ――」
「俺が一番、のこと分かってる」
「は……?何も分かってないじゃん……!今までだって――」
「分からせてよ」
「や、やだ」
「んー……もしこれがとの最初で最後になるなら――朝まで抱く」
「やだ……てばっ」
「俺の責任だから」
「……んっぁ……あ、や、やぁ……」

ポロポロと涙が零れてきた時、急に抽送を再開されて涙声が喘ぎに変わる。なのに悟は本気ともつかない言葉を並べ立てるから、すでに頭は混乱していた。

「昔の素直なに戻れるように頑張るから」
「……あ、んっ……ん、も……も、イって……あぁぁっ」

激しく揺らされて何度も絶頂を味わう。なのに悟はやめてくれない。最後はガツガツと腰を振られて、同時にイク羽目になった。

「はー……はー……」

床へ座り込んだ悟に抱き着く形で倒れ込むと、頭を優しく撫でられた。あの悟がエッチのあとにこんなことをしてくれるなんて意外すぎる。

「私のこと……」
「ん?」
「分かってるなんて言うなら……何であの時、あんなこと言ったの……」

一度目は私が告白した時。ふざけた言葉しか返ってこなかった。そして二度目は私に手を出さないとまで宣言した。
なのに何で今更、彼女になる?なんて言うんだ、この男は。
悟は私の問いに「んー……」と唸りながら天井を仰ぐ。

「今、難しい話むりそ……」
「……何それ。これだから男って――」

と顔を上げたら体を抱えられて反転。後ろからぎゅうっと抱きしめられた。こんな風にされるのも初めてで普通のドキドキが復活してしまう。だけどそんなキュンな状況を覆すような光景が目の前に広がっていた。

「げ……床、えぐい」
「あー湖が出来てるなー」

ベッドの付近は二人分の体液が零れてびしょびしょだった。そのリアルな感じが恥ずかしくて「悟のせいだけど?!」と言い返す。なのに見上げた先の悟の顔には満足そうな笑みが浮かんでいた。

「おかげでツヤ悦」
「……は?何それ」
「ハートもツヤツヤってこと」
「……」

本当に嬉しそうな顔で微笑むから、ついキスがしたくなって唇を近づけた。なのに大きな手が私の口を塞ぐ。

「……ふむっ?」
「だめー。彼女以外はキスしない」
「ぷは……ッ何よ、それっ……人の体、散々犯しておいて――」

と言ってる矢先から、悟が私のオッパイを揉んでくる。後ろから揉まれる感じがエッチすぎて、顏がかぁぁっと熱くなった。今更って感じなのに、たったこれだけの行為でも、やっぱりドキドキしてしまうのは、相手が悟だから。

「ん……ふ」
のオッパイ、マジかわいー」
「ちょ、と……」

大きな手でオッパイを包まれて、親指で両方の乳首をくにくにされてると、またアソコがじわっと疼いてきた。私の体もどんだけ感じやすいんだと呆れるのに声が勝手に漏れてしまう。

「……だ、め、イ、イク……」
「オッパイでイクとかかわいすぎ」

気持ち良くてグっと首を反らすと、唇の隙間から舌がするりと入り込んでくる。さっきはキスしないって言ったくせに、と思うのに拒めないのは、私も悟とキスをしたかったからだ。

「ん……ふ、ぁ……ア、ン」

乳首をきゅっと摘まんだり、ぐにぃっと押し込まれるたび、アソコがキュンキュンしてくる。軽い波が寄せては引いて、何度でも甘イキしてしまう私は、すっかり悟のテクニックに溺れてるかもしれない。

「なあ……のアンアン声も可愛いし、甘イキでそんなお股突き出されたら、また挿れて欲しいって思っていいわけ?」
「……だ、だめ」

視線を下げたら、悟のアレが真っすぐ上を向いて私のアソコへすりすりしてくる。ぬちぬちとあまりに厭らしく動くから、それをぎゅっと握ってやった。

「あー……それヤバい」
「悟のスケベ」
「オマエが扱いてんだろ。スケベ」

そんなつもりはなかったのに、つい握ってしまったらヌルヌルで手が滑っただけ。そんな言い訳をしながら、悟のモノをぬちぬちと上下に擦ってやる。こんな行為も初めてなのに、悟のだと思うと全然嫌じゃない。
むしろ私に興奮してこんなに硬くしてるのかと思うと、また変に体が疼くんだから、私も悟のことを言えないくらいスケベになってしまった気がする。

が男なんて作るから……」
「……え?」
「……余計に意地張ってたかも」
「何それ……私の台詞なんだけど……」
「く、先っぽやめろ……」
「散々コレに虐められたから仕返しだもん」
「こんなの……としか出来ねえし……挿れて……イキそ」
「イけばいいのに。ほらほら」
「うー……の中で出したい」
「ちょ、」

突然ひょいっと体を持ち上げられて、また悟のがナカへググっと挿入されていく。そのまま下ろされた瞬間、子宮口にずんっと当たる感覚がした。

「ア、ンっ……さ、悟……待っ」
「ナカじゃなくて、中って言ったろ」
「ン、んっ」
「帰る前にガチイキしてって」

その言葉にぞくりとした瞬間、一気に快感が広がっていく。言葉イキした事実に驚いた時、締め付けられた悟も限界だったらしい。びゅるっと奥に射精したのが伝わってくる。その感覚にすら感じて、更にナカがぎゅううっと収縮した。

「ああ……締まる……っ搾り取られ……マジ、か」

悟の体がぶるっと震えたのが伝わってくる。私の全身もガクガクで、悟のを受け止めただけで達してしまった。

「……のナカ、気持ち良すぎ……」

深い吐息と共に悟が呟く。私も気持ち良すぎて意識が飛びそう。そう口にしようと思ったのに、上手く言葉すら出てこない。それくらい脳が痺れるようなオーガズムを感じてる。
何とか言葉を絞り出したいけど、脳が溶けてるのか上手く話せない。まるで酔っ払いみたいだとおかしくなった。

「…全身ガクガク。こんな体力使ったの初めてだわ」
「う、うそ……ら」
「嘘じゃないし。だから彼女んなる?」

悟は耳元で囁きながらこめかみにちゅっとキスをしてきた。どんな口説き方だよ、って思うのに、何故かそれだけで泣きそうになってしまうんだから私もちょろいかもしれない。

「や、やらぁぁっ」
「お、わ……でっけー声。もっと気持ちいー声、聞かせて」
「も……いい……も……」

もう限界で、終わって欲しいのに、終わって欲しくない。知らないセックスも、さっきまでの激しさも、この優しさも――。

「ひゃ……んぁ」
、ずっと濡れててかわいい」

悟の指がクリトリスをくにくに触るから、また腰が跳ねてしまう。ナカへ埋め込まれたままの陰茎が復活してるのさえ気づかなかった。

「ん、や、ら……動くの……らめ……っ」
「ん、かわいい」
「ンッあっ」
、かわいい」

厭らしく指でクリを弄りながら少しずつ腰の動きを早くしていく。ずっと可愛いなんて言ってくれるから、ゾクゾクが止まらなくなった。もう体も心も限界なのに、悟はもっともっとと言いたげに私を求めてくる。
こんな意地の張り合いのようなセックスは初めてだし、セックスというよりまるで戦争をしてるみたいに思えた。
なのに気づけばその意地すら綺麗に浄化されていて。
最後は互いの肌を確かめ合うように、二人でガチイキして終わりを迎えた。

「可愛い、……とろんと蕩けてちゃってる」
「ん、」

悟の腕に抱かれながらボーっとしていると、涙でべしょべしょの頬を撫でられた。動けない私の唇が悟の唇に食むられる。ちゅむ、と唾液と涙と汗の入り混じった唇を吸われていると、空洞だった心が温かいもので満ちていく気がした。


「……ずっと童貞で良かったのに」
「ハァ?そんなの女だからそう思うんだろ」

空き部屋を綺麗にしたあと、フラフラになりながら女子寮へ向けて歩く。悟が送ってくって聞かないから、仕方なく送ってもらうことにした。そもそも一人で歩けないから悟の腕にしがみつく格好だ。

「男はそういうわけにもいかねえの」
「……何それ。ただ尻が軽いだけじゃん」
「いや、それオマエが言う?」
「……私は……知りたかったんだもん」
「何を」
「だから……悟が色んな子に手を出してたから、そんなにセックスって良いもんなのかなぁって」
「……バカか。そんなの俺に言えば即解決だったのに」
「私にだけは手ぇ出さないって言ったのだーれだ!」
「……あ、やぶへびでした」

結局、私と悟はエッチをした後もする前とあまり変わらない。でも確実に違うのは二人の距離だ。

「俺はさ……本命とする時に悦ばせたいと思ってたし、だから色んな子で試してたのもある……」
「は?サイテー」
「分かってるよ。そんなの俺が一番。でもまあ……オマエに好きって言われた時、めちゃくちゃ嬉しかったくせに恥ずかしさの方が勝って訳の分からない返しをしちまったけど……ホントはあの時、俺もって言いたかったし、出来ることなら他の男にだって渡したくなかった。でもオマエにそうさせたのは俺だからさ」

悟は少し拗ねたように目を細めると、足を止めて私を見下ろした。

「だけど、オマエの暇つぶしにされんのは違うだろって思って、さっき誘われた時も一度は帰ろうと思ったんだよ。でも……」
「で、でも……?」
「本気で誰でもいいからヤりたいって思ってんなら、それも嫌だし。もう他の男に渡したくねえって思ったのもホント。だから――戻るしかなかった」

今までで一番真剣な顔で悟は言った。私の手をぎゅっと掴んで見つめてくる宝石のような瞳は、もう前のような悟じゃない。

「俺じゃ……だめ?」

月明りを背に柔らかい笑みを浮かべた悟は凄く綺麗で、その顔を見てたら何故かまた泣きそうになった。
心の奥で燻ってる不安や恐怖を、全て取っ払ってもいいのかな。私もまた悟の隣を望んでもいいのかな。

「だめじゃ……ない」

悟を見上げると溢れていた涙が零れ落ちて、でも自然と私も笑顔になった。

「悟が好き……ずっと好きだった」
「俺も……がずーっと好きだった」

私達はこんな簡単なことさえ、上手く伝えられてなかったんだね。
いや、だからそれは俺のせいでしょ。
そんな会話を交わしながら、手を繋いで歩き出す。
結局、悟に分からせられる形で付き合いだした私達は、少し遅めの春を謳歌することになった。
拗れに拗れて色褪せたはずの青が、彩った春だったと、今なら語れそうだ。


――OMAKE――


「あれ、お帰り、悟。早かったね。今日は泊りかと思ってたよ」

を女子寮へ送ったあと、寮の部屋へ戻ったら傑が顔を出した。任務を終えて帰ってきたところらしい。でも俺は未だに脳内がふわふわしててボーっとしてしまう。
少し強引だったとはいえ、やっと、やっとこの長い両片思いを実らせた俺は、大好きなを抱けたことも重なって少し逆上せてたらしい。
傑に「どうした?顔が真っ赤だけど」と突っ込まれてしまった。
でも返事を出来なかったのは、今も可愛いの姿が脳内にべっとりとこびりついてるせいだ。……ヤバい。またムラムラしてきた。

「あーーっ!4回じゃ足りねえ~っ!」
「帰宅早々、何してるんだ、悟!」

ベッドへダイヴして抱き枕相手に盛っていると、傑に後頭部を思い切り殴られてしまった。
ムカつくから今夜は朝まで惚気てやろうかな。
なんて思いつつ。さっきまであんなに抱き合ったのにもうが恋しい。

(早く会いたい……)

そんな切ない幸せを噛みしめる夜だった。


――終――