14-全部オマエのせいだから




顔面凶器かと思うほどのいかつい顔を更にいかつくさせた夜蛾から、五条も重いと感じる程度の呪いを向けられていた。

「うーん……この感覚、懐かしい」

まさか卒業してまで正座をさせられるとは思わなかった五条が苦笑交じりで呟く。その瞬間、これまた懐かしい強さでゲンコツが振り下ろされた。ゴツっという鈍い音が家入の私室に響く。

「ばっかもーん! 何故すぐに報告しなかった! そして何故勝手に殺したんだ!」

さすがに高専所属の補助監督を手にかけたとあれば上に報告しないわけにもいかず、五条は学長となったばかりの夜蛾へ事の顛末を話すことにした。そこで目立たぬよう家入の私室へ夜蛾を呼び出し、これまで起きた出来事を説明したら――このありさまだった。
術式を解除し、甘んじて夜蛾のゲンコツを受け止めた五条は、ジンジンする頭頂部を擦りつつ。それでも納得いかないとばかり、昔のように不満げな顔で唇を尖らせている。

「それだけどさぁ……の気持ちを考えたら勝手にペラペラ話せないでしょ。それに渡久山を祓ったのだって仕方なくない? 一級相当に育ってたわけだし、っていうかアイツ、自分の生み出した呪いに喰われちゃってたんだから」
「く……っ。ああ言えばこう言う。相変わらずだな、悟」
「いや、ホントのことだし」

勝手に正座を解除して立ち上がった元教え子を、夜蛾は溜息交じりで睨む。五条の言いたいことは理解できるが、それでも元担任の自分をもっと信用して欲しかった。

「それでも、だ。俺にくらいは報告しろ。そうすればの気持ちを考えて内々に収めてやれただろうし、犯人捜しも高専内部の人間の可能性が出た時点でもっと早くデータを見せられた」
「……はいはい。悪かったよ」

夜蛾の気持ちを受け止めつつ、五条はソファに腰を下ろして夜蛾の持って来た素行調査の資料を眺めた。
五条の睨んだ通り、そこには渡久山の名前がある。しかし、それは過去に問題を起こしたという内容ではなかった。

「まさか呪いに恋人を殺されてたとはね……」
「渡久山武、29歳。彼は高専在学中、術師を諦め補助監督志望となった。理由は渡久山が三年の頃、結婚を誓った恋人を呪いに殺され、情緒不安定になったからだ。それがキッカケなのか呪力コントロールも出来なくなったことで、しばらくは監視対象として普段の素行調査も行われた。だが少しずつ精神的に安定してきたのを機に監視対象からも外され、本人の希望で卒業後は補助監督へ配置換えとなってるな。その際に調べた時は呪力も入学当初より減っていたらしい。精神的なものだろうが、それも踏まえての配置換えという結論は間違ってない」
「んで……その後は特に問題を起こしたりは――」
「一度もない。彼は本来、オマエと違ってクソ真面目なタイプだったからな」
「……そこ僕を引き合いに出す必要ある?」

さらりとディスられ、五条は不満げに目を細めたものの、夜蛾もソファへ腰を下ろし真顔で話を続けた。

「彼は自分が補助監督になった理由を学生たちには隠していたらしいな。まあ、ツラい過去を忘れたかったんだろうが……やはり立ち直れてなかったのかもしれん」
「でもそんな真面目な男が何で一回りも歳の離れたに執着するわけ。ロリコンだったとか、そういう事件起こしてるかと思ったのに」

五条の素朴な疑問を受け、夜蛾は深い溜息と共に資料の中から一枚の写真を取り出し、それをテーブルの上へ置いた。「何これ」と写真を手にした五条は写っている人物を見て小さく息を呑む。そこには高専の制服を着た女の子と渡久山が、幸せそうな笑顔で写っていた。

「……この子が?」
「当時、渡久山の恋人だった子だ。その子も呪術師を目指してた。だがある日の任務で……呪いに殺された。17歳・・・だった」
「そう……だからか」

五条は手の中にある写真を見下ろし、明るい笑顔で写る二人を眺めた。その幸せそうに笑う女子生徒は、驚くほどに似通っている。柔らかい笑顔、日に透ける黒髪、その一つ一つがと重なった。

「渡久山の部屋からは彼女が亡くなった直後から毎日つけてたらしい日記も見つかった。最初はと会った時、彼も戸惑ったようだな。亡くなった当時の彼女とよく似ていたから。日に日に不安定な文に変わっていった。を過去の彼女と重ね、想いが抑えきれなくなっていった様子が綴られてたよ。ここ何カ月かは自分にしか聞こえない声がしてたようだし、自ら生み出した呪いに渡久山も呪われてしまったのかもしれないな……」

夜蛾はそこまで言うと静かに立ち上がり、黙ったまま写真を見つめる五条を見下ろした。

「報告義務違反ではあるが、オマエがしたことは呪術師として当然のことだった。上には俺から説明しておく」
「……頼むよ」
「ところでは? まだ硝子の検査を受けてるのか」

今回の件はどうしても内々に済ませたかった五条は、信頼していた男に襲われショックを受けているであろうを心配して家入の元へ運んだ。今は検査室で家入から詳しい検査をされている。

「ああ。ちょっとショック受けてたみたいだし」
「そうか……でもオマエもよく間に合ったな。あの家は高専にも届け出がなかった場所なのに」
「伊地知が調べてくれたんだよ。渡久山が去年家を買ったって話を聞いてたみたいで、もしかしたらそこにいるのかもって――」

が連れ去られたかもしれないと伝えると、伊地知が渡久山との会話を思い出してくれた。そこで伊地知と合流し、すぐにその場所へ案内させたのだ。そこは高専からほど近いところにある別荘地。場所が山に近いこともあり、普段は人気のない監禁するにはもってこいの家だった。

数件ほどの別荘も立ち並んでいたが、高専所有の車が止まっている家を発見し、そこが渡久山の家だと分かった時点で五条は中の様子を六眼で確認、が危険と判断して、まずは家の壁を"蒼"で破壊した。
今回は帳を下ろしたこともあり、周りの建物には一切の被害もなく、そこだけは夜蛾にも褒められたのだが、実はそれも伊地知の判断で帳を下ろしてくれただけ。多少冷静さを失っていた五条はそんなことすら忘れていたというのが実際のところだ。ただそれを馬鹿正直に報告したらタンコブがもう一つ増えることになる。なので当然、五条は何も言わないでおいた。

「ところで……その伊地知はどうした? 無事なんだろうな」
「無事、と言えば無事かな。飛んできた瓦礫に当たって眼鏡は割れてたけど」

これは本当の話だ。を連れて避難した伊地知だったが、五条の"赫"の影響で飛ばされた瓦礫に当たり、愛用の眼鏡が木っ端微塵に吹っ飛んだらしい。そのおかげで顔に擦り傷を負ったくらいで済んだのだから、運の強い男とも言える。
が伊地知に抱き着いた件で、イラついていた五条から制裁を加えられなかっただけマシ、伊地知にしたら不幸中の幸いだったかもしれない。

「ったく……優秀な未来の補助監督に怪我をさせるなよ?」

夜蛾はしっかり釘を刺すと「じゃあ後のことは俺に任せておけ」と言って部屋を出て行った。これから上層部へ今回の件を報告に行くんだろう。優秀だった補助監督が生徒へ劣情を抱き、呪いに転ずるなど前代未聞の事件ではあったが、その辺は上手く説明してくれるはずだと五条は思った。
渡久山にも同情すべき背景はあったが、だからと言って彼女を傷つけていい理由にはならない。

「ま……自分で生み出した呪霊に喰われた時点で罰は受けてるか」

愛した恋人の面影をに重ね、かろうじて保っていた心の隙間から呪いが滲み出たことで、過去に叶えられなかった想いを遂げようとしたのかもしれない。

「……愛情が重ければ重いほど、歪んだ呪いは生み出される、か。怖いねえ……」

と、独り言ちて五条は溜息を吐いた。それを分かっていてもなお、人を想う気持ちは自分で止められないものだから厄介なのだ。それを理解してしまった今、渡久山の想いを笑うことは五条でも出来なかった。

「――何が怖いって?」
「――っ」

唐突に聞こえてきた声にハッとして振り返ると、そこにはニヤついた家入が立っている。思わず舌打ちをしそうになった時、家入の後ろからが顔を出した。救出した際、怪我はないか確認はしていたものの、改めて見ても目につく外傷は見当たらない。

「あ、五条先輩!」
……オマエ、大丈夫か?」

自分の方へ駆けて来たを見て、五条はホっと息を吐きながら彼女の顔を覗き込む。少し顔色は悪いものの、はかすかに笑みを浮かべて頷いた。

「もう平気です……。嗅がされた薬の後遺症もないと言われました」

その言葉を受けて五条が家入を見ると、彼女も認めるように頷いてみせた。

「多分、それほど強い薬は使ってない。の体を調べたけど影響はなかったよ。もちろん外傷もなし!」
「そっか。良かった……」

家入からもお墨付きをもらい、今度こそ心から安堵の息を漏らす。すると家入が思い出したように指を鳴らした。

「ああ、あと伊地知の額の擦り傷は私の反転で元通り――」
「いや、その報告はいらないけど」

若干被り気味で返す五条に、家入は「冷た!」と突っ込み、は小さく吹き出した。

「散々コキ使っておいてそれはないでしょ、アンタ」
「いいんだよ。アイツだって下心ありきで手伝ってたんだから」

下心、とはもちろん家入のことだ。当然、家入も伊地知の気持ちは薄々感じているので、そこは笑うしかない。久しぶりに和やかな空気が流れたところで、家入が「それで……」と振り返り、交互に二人を見た。

「何か話があるんじゃないの? 二人は」
「は?」
「え?」
「何なら――またこの部屋、貸そうか?」

その言葉の意味を分からないほど鈍感でもない二人はギョっとしたように目を剥いた。
の頬が真っ赤に染まり、五条は「何言ってんだよ、硝子!」と珍しく慌てている。何とも青い反応を見せる二人に、家入もやれやれと苦笑いを浮かべながら肩を竦めた。

「何を勘違いしてるのか知らないけど――二人で話すなら場所貸そうかって意味だから」
「……ぐっ」

言った後にぺろっと舌を出す何とも憎たらしい家入の顔を睨みつつ、五条までが色白の頬を赤く染めた。

「ま、私はサボってた分の勉強を研究室の方でやってるから、帰る時は鍵だけかけてってねー。あ、でも鍵は返しに来いよ?」
「おい、硝子――!」

と呼んだと同時に家入が振り向いて鍵を放ってくる。それを見事にキャッチした五条は、すでに歩いて行ってしまった同級生に軽く舌打ちをした。と話がしたいと思っていたのは事実だが、何も言わないうちから全てを察したような態度をされると何とも落ち着かない気分になる。それにの方はこの状況をどう思っているのかも分からない。
この部屋はある意味、二人にとって密事の場でもある。そんな場所で二人きりになれば嫌でも思い出すのが普通だ。五条はどういう顔で彼女と向き合えばいいのか分からなかった。

「あ、あの五条先輩」

五条が悶々としながらアレコレ考えていた時、は伏せていた顔をパっと上げて、いつもの明るい笑顔を見せた。

「……ん?」
「コーヒー飲みませんか」
「あーうん」

こういう時、女の子の方が男よりも度胸が据わるらしい。一応、ストーカーの件は片付いた安心感もあるのだろう。は腕まくりをしながらカップにコーヒーを注いでいる。因みに彼女は未だに五条の上着を羽織ったままで、サイズの大きすぎるソレは袖をまくらないと手が出ないらしい。そういう仕草を見ていると、五条の顔にも自然と笑みが浮かぶ。

「どうぞ。お砂糖とミルクも」
「さんきゅ」

自然とソファに並んで座り、淹れたてのコーヒーを飲む。二人きりで話すのは久しぶりということもあり、何をどう切り出そうかと考える。しかし――今度も先に口を開いたのはの方だった。

「あ、あの五条先輩……」
「……ん?」
「色々と……本当にありがとう御座いました」
「……(可愛い)」

真っすぐ自分を見上げてくると目が合い、胸がざわりと音を立てる。つい視線を反らして「いや」と応えたものの、以前のように自然な態度で言葉を続けることが出来ない。
これまで通り、先輩後輩として接するのが一番いいのだと分かっているのに、心臓が勝手に反応してしまうせいだ。

――意識してんでしょ。

家入に言われた言葉が脳裏を過ぎり、五条は舌打ちしたい気分だった。そんなものはとっくに通り越している。
あれ以来、と会うたび、また触れたいという思いがこみ上げ、日増しにそれは強くなっていく。他の男と話してるのを見るだけで焼けつくような痛みが胸を焦がし、身勝手な感情が暴走しそうになったのも一度や二度じゃない。
そんな己の欲をへぶつけたくなくて、なるべく平静を装っていた。

「そういえば、アイツの話聞いた? 亡くなった恋人がオマエによく似てたって」
「あ……はい。硝子先輩にさっきチラっと」
「そっか。まあ……そういう身勝手な感情をぶつけられて怖い思いをしただろうけど、もう大丈夫だからも早く忘れて」
「はい……あの――」
「明日からってのはまだ無理だろうけど、気分が落ち着いたら前みたいに任務にも出られるだろうし、も体力戻しておけよ」
「あ……はい」

が何かを話したそうに五条を見ているのは気づいていた。なのに目を合わせることも出来ないまま、五条は唐突に「じゃあ行くわ」とソファから立ち上がる。このまま二人でいればうっかり抱きしめてしまいそうだった。
なのに――。

「待って下さい……!」

五条が部屋から出て行こうとした時、に腕を掴まれ、どきりとした。

「何……?」
「あ、あの……」
「どうした? 用がないなら――」

と彼女の手を外そうとした時、その華奢な手がかすかに震えていることに気づき、ハッと息を呑む。見ればの顔は緊張したように強張り、目は真っ赤に充血していた。その瞳にじわりと涙が浮かぶ。

「な……何だよ。何で泣くわけ――」
「ご、五条先輩がわたしに幻滅しても仕方ないと思ってます……」
「……は?」

唐突に、それも思ってすらいないことを決めつけたように言い放たれ、五条は心底驚いた。しかしは本気でそう思い込んでいるのか、五条の腕を掴んでいる手にぎゅうっと力が入る。泣くのを必死で堪えているらしい。唇をきゅっと噛みしめている。
そのいじらしい表情は容易く五条の心臓をどでかい矢で射抜いてきた。
しかし理性が落ち着け、諭すように訴えてくる。

「いや、何の話? 僕が何でオマエに幻滅しなきゃならないの」

なるべく冷静に、普通のテンションで言ってみたが、は「だって……」と潤んだ瞳で見上げてきた。その顏は反則だろ、と心の声が叫ぶ。

「五条先輩……最近わたしに素っ気ないし……嫌われたのかなって……あんな乱れた姿……何度も見せちゃったから……」

ぐす、と鼻を鳴らすは今にも泣き出してしまいそうだ。嫌われたと思い込んでのこの反応は、五条の心臓に相当悪かったらしい。彼女の可愛さでぐりぐりと男心が刺激されてしまう。

「い、いや、嫌ってもないし、まして――あんな可愛い姿を見て嫌うはずないでしょ」
「……えっ」
「あ」

驚いた様子で顔を上げるを見て、初めて自分の本音が駄々洩れになったことに気づく。マズい、と冷や汗が垂れた五条は「ごめん、嘘。今のなし」とすぐさま否定しようと思った。思ったのだが――その前に彼女の方から「ほんと……ですか?」と問われ、つい「ほんと」と肯定してしまった。
どう言い訳しようかと悩んだのだが、言ったことは正真正銘、自分の本音なのだから何も言い訳が思いつかない。

あげくが「良かった……」などと言いながら頬を染めたせいで、五条のど真ん中がぎゅぅんとおかしな音を立てる始末。五条の中で「無理」という答えが導きだされてしまった瞬間、盛大な溜息が洩れる。もう強がるのも意地を張るのも限界だった。

「……せっかく我慢してたのに」
「え……?」

ぼそりと呟く五条に、が何のことだと言いたげに瞬きをした。それさえ可愛い、無理、と情緒が激しく乱されていく。
改めて彼女の方へ向き直ると、五条は自分の腕を掴んだままの手をそっと外した。

「僕が今からすることは全部オマエのせいだから」
「……へ?」

今では真っ赤に染まっている彼女の頬へ優しく触れると、指先からその熱が伝染する気がした。

「ご、五条……せんぱ」
「抱きしめてい?」
「……っ?」
「嫌なら――そう言って」

サングラスを外しながら真剣な顔で告げると、の濡れた瞳が揺れる。そこからぽろりと大きな粒が零れ落ちた時、彼女はゆっくりと首を振った。

「い、嫌じゃな――」

言い終わる前に五条の腕が彼女の背中を抱きよせ、包むように抱きしめる。すっぽりと埋まる華奢な体が大きくしなった。少しずつ体温が交わるのを感じながら、ずっとこうしたかったんだと改めて気づかされる。

「ご、五条先輩……」
「……苦しい?」

柔らかな髪へ頬を寄せると、彼女はまた小さく首を振ったようだった。

「……れしくて」
「ん?」
「う、嬉しくて……わたし……五条先輩に嫌われたと思ってたから……」
「……ごめん。ああしないと……自制できそうになかったから」

腹に顔を押し付けながらぐすぐすと泣き出すが可愛くて、つい五条の頬が緩む。素直になるとこんなにも気持ちが軽くなるのかと少しだけ驚いた。
といるとどうにも自制が効かず、素の自分を曝け出してしまう気さえする。それは五条にとっても新鮮だった。

「お詫びにオマエの言うこと何でも聞く――」
「え?」
「ってのはどう?」

僅かに体を放し、見上げてくるを見下ろすと、涙でぐずぐずの顏に可愛らしい笑みが零れた。その顏を見た瞬間、ヤバいな、と五条は思う。何がって、すでに胸の奥がきゅんの大渋滞でヤバいのだ。女の子を見てここまで心臓に負担がかかったことはなく。五条にとっても明らかな初体験だった。

「な、何でもいいんですか……?」
「……いいよ」

ごく、と喉を鳴らしながら訪ねてくるが可愛い。いったい何をお願いしてくるのかと想像するだけで五条の頬が緩んでいく。ここに家入がいたら「きも」というツッコミが飛んできたに違いない。
は眉間を寄せながら真剣に考えていたが、不意に何かを思いついたように再び五条を見上げてきた。

「じゃあ……デート、して欲しい……です」
「デート……?」
「ダ、ダメ、ですか?」
「いや、いいけど……何でデート?」

てっきりアレが欲しい、とか、何か奢ってと言われる気がしてただけに、の可愛いお願いを聞き、ちょっとだけ笑ってしまった。これまで相手にしてきた女達とは明らかに違う。

「え、えっと……わたし、デートとかしたことなくて、だから……初めてのデートは五条先輩がいいなと思って」
「……っ(いや、何、この可愛い子!)」

ポッと音が出そうな勢いで頬を赤く染めるが可愛すぎて、軽い眩暈を感じた。
こんな可愛いお誘いを断る男いる? いや、いないでしょ!といった心境ながら、そこは先輩らしく顔を取り繕って「わかった。デートね」と優しい笑みを浮かべた五条だった。


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