16-呪いを召しませ
※性的描写あります。苦手な方や、18歳未満の方は観覧をご遠慮下さい。
「が好きだよ」
五条の告白を聞いた時、は夢かと思った。あんなにも怖い悪夢を見たから、神様がご褒美に見せてくれた幸せな夢だと。
気づけば「わたしも――」と答えていた。
そのまま二人で近くのホテルへ来たのはごく自然なこと――というわけではなく。
いざ「――好きです」と想いを伝えようとした直後、のクシャミが止まらなくなったせいだった。
「少しは落ち着いたみたいだな」
互いに別々でシャワーを浴びて体を温めたあと、五条は心配そうに彼女の濡れた髪をバスタオルで拭いてくれた。水族館で濡れた衣類は全てクリーニングへ出し、今はが再びイルカのTシャツを一枚羽織っただけで、五条はバスローブ姿。服の仕上がりまではここで待つしかない。
「でもそんなの一枚だけで寒くない?まあ、フリーサイズでオマエには大きいけど、足元寒そう」
「シャワー浴びて温まったから大丈夫、です。ほんとすみません……わたしのせいで」
ずず、と鼻を啜りながら情けない顔で項垂れる。せっかく告白しようと思った矢先、まさかのクシャミ地獄で中断することになろうとは思わなかった。恥ずかしさから言葉が詰まり、膝の上に置かれたままの手にぎゅっと力が入る。
「別にオマエのせいじゃないでしょ。全部イルカのせいだし、館内のエアコンが効きすぎだったせいだから」
五条が笑いながらルームサービスで頼んだ温かい紅茶をへ差し出す。
濡れた状態でエアコンの効いた館内を歩いていたせいか、やけに体が冷えてしまった。おかげでクシャミが止まらなくなったのを心配した五条が、近くのホテルへ移動して部屋をとってくれたのだ。
もちろん普通のシティホテル――といっても高級がつくホテル――だ。
「でもイルカTシャツは濡れてないから着て帰れたのに」
紅茶を飲みながらふと思ったことを口にすれば、五条は「げ」と徐に嫌な顔をしてみせた。どうしてもあの恰好で高専に帰りたくなかったらしい。ホテルに移動する間、びしょ濡れだった自分のシャツを着直してまで中のTシャツを隠していた。
そこまでしなくても、とは思ったのだが、滅多にあんな五条は見られないので、ついつい笑ってしまう。
「笑うなって」
「だって……五条先輩がイルカTシャツ……レアすぎて」
「着せたのだーれだ」
ジト目で睨んでくる五条の唇は僅かに尖っている。どちらかと言えば後輩の前だと厳しい先輩の顔を見せる方が多かった。五条のこういった顔を見るのはも初めてで、前よりもずっと身近に感じられた。
ついこの間までは雲の上の存在ともいえる先輩だったはずなのに、今は誰よりも近い場所にいる。
(やっぱり信じられない……)
さっき言われた言葉を思い出すと、じわじわ頬の熱が上がっていく。
当然あの日以来、五条と二人きりになるのは初めてで、こういった場所へ来たのも初めて。
自分は大きめとはいえ下着の上にTシャツ一枚、五条はバスローブといった格好だ。冷静に考えれば、少しエッチな状況ではある。
(五条先輩は服を乾かしたかっただけなんだから意識しちゃダメ……)
俗にいうラブホと違う空間ではあるものの、密室で二人きりだと思うと一気にドキドキが襲ってくる。仮にも好きだと告白をされ、自分も中途半端ながら「わたしも」と返したのだから何が起きても不思議じゃない。
経験はなくても、それに近い行為をした五条とこうしてくっついているのだから、どうしてもドキドキしてしまう。
呪われたことに端を発し、大人への階段を三つ飛ばしくらいで上がってしまった感はあれど、はまだ世間でいうところの高校三年生。好きな相手と大人空間で二人きりなのだから、変に意識をしてしまうのは当然だ。
……とはいえ。促されるままバスルームへ連れて行かれた時も、五条はバスタオルやバスローブといったものを彼女へ渡し、そのテキパキとした様子を見ながら、五条が普段もこういったホテルを使用してるのが伝わってきた。
もちろん出張で、というのが大半だろうが、女性と来たこともあるんだろうな、くらいは想像してしまう。
呪印を祓うために肌を晒した時、五条がやけに慣れていたのを思い出す。
それを思うと胸の奥がずぉんと重くなり、は軽く頭を振った。
(モテるんだろうし、そんなの当たり前だよね……)
呪術界の女性陣からは散々な評価でも、一歩外へ出れば五条がモテる先輩だというのは薄々分かっていた。今更そんなことで落ち込んでても仕方がない。
家入に「五条はやめときな」と言われても、この気持ちを消すことは出来なかったのだから。
――助けてもらったから好きだと思い込んでるだけなんじゃないの?しかもあんな行為をした相手だし。
家入にそう言われても、心に芽生えた五条への恋心は強くなる一方だった。もちろん家入が自分を心配して言ったことだと分かっている。でも今感じている五条を好きだという思いは決して思い込みなんかじゃない。
確かに五条とああいう形で肌を重ねたことが意識するキッカケにはなったと思う。でもそれだけじゃなく、あの行為の最中にも改めて五条の優しさに触れたことが大きい。
――ナカでするのは、本当に好きな奴ができた時の為にとっておけよ。
理性が飛んでる状態にも関わらず、の未来を気遣ってくれた時、すでに心は傾いていた。その相手は僕じゃない、と言われて少なからずショックだったのを思い出す。
あの時、出来ることなら初めては五条がいい、と思ってしまったことも。
でもきっとその想いは叶わない。そう思ってたのに。
――が好きだよ。
あの告白を思い出し、静かに鼓動が動き出す。
「?急に大人しくなったけど……やっぱ具合悪い?」
大きな手が頭へ乗せられ、顔を覗き込んでくる五条と目が合う。クシャミは収まったが風邪を引いてないか心配のようだ。こうした気遣いも何か特別な気がして自然に笑みが零れた。好きだなぁ、と改めて思う。吊り橋効果でも何でも、その想いが持続すれば、それはもう恋なのだ。
「だ……大丈夫です。ちょっと緊張して……」
そこまで言ってからは意を決したように、五条の方へと体を向ける。さっき言いそびれた言葉を伝えたい。そう思った。
「あ、あの……さっきちゃんと言えなかったんですけど……」
先ほど五条に好きだと言われ、「わたしも」と返したが、本当はそのあとに「好きです」と続けるつもりだった。でも直後、例のクシャミに襲われ、の告白は中途半端なまま終わっていたのだ。
だから、もう一度はっきり言おうと、サングラス越しに五条の目を見つめる。
その時――突然ガチャン、と耳障りな音が響いた。
ソーサーに置こうとした紅茶のカップを、五条がひっくり返したらしい。
「げ、ごめん」
「あ、わたし拭きます」
傍にあったバスタオルへ手を伸ばす。ただ同時に五条も手を伸ばしたことで互いの指先が触れた。
どきりとして手を引こうとした時、先に引っ込めたのは五条の方だった。
「……先輩?」
驚いて顔を上げると、五条は何故かそっぽを向いている。微妙に頬が赤く、それを手で隠すようにしている姿は何となく照れているようにも見えた。
「ごめん。僕もちょっと緊張してる」
「……えっ」
驚きすぎて、つい大きな声が出てしまった。強気で自信に満ちた姿しか知らないにとっては、まさかという思いだ。
五条もその空気を感じたらしい。「そこまで驚く?」と苦笑を漏らす。
「……まあ、自分らしくないってのは自覚してるけど。女の子を好きになったのも、その子と今こうして過ごしてることも初めてだから、どう接していいのか分かってない。ごめん」
「え……そんな風に見えなかった」
相変わらずそっぽを向いたままの五条を見ながら呟く。部屋をとった時も、入った時も、こういった場所が初めてで戸惑うの為に五条があれこれ世話をしてくれていた。随分と慣れた動きを見て、他の女の子とも来たことあるんだろうな、と寂しくなってたくらいだ。
「緊張してるとこ見せたくないでしょ。ダサいし」
「そんなこと……」
むしろ新鮮で可愛い、なんて思ってしまう。あの五条が自分のことで緊張してると思うだけでドキドキしてくる。
「五条先輩……こっち向いて下さい」
「……やだ。顏、赤いと思うし、オマエの恰好もエロいし」
「……(可愛い)」
普段とのギャップ萌えで胸が変な音を立てる。今、どうしようもなく五条のことが好きだと思った。
「ちょ、何して――」
かけていたサングラスをとったのは、ちゃんと顔を見て言いたかったからだ。その予想外の行動に慌てたらしい。五条がの手を掴むと、至近距離で目が合う。
近くで見る五条の瞳は澄んでいて、映るもの全てが輝きを放つようだった。その瞳に自分の惚けた顔が映り込んでいるの見ながら、意を決したように口を開く。
「わたしも……五条先輩のことが好き、です」
言った傍から顔の熱が上昇して、脳天まで突き抜けるようだった。耳まで一気に火照っていくのが分かる。
「さっき……そう言いたかった」
彼女にとっても生まれて初めての告白。心臓が口から飛び出るんじゃないかと心配になるくらいに早鐘を打っている。
伝えたはいいが、この後どういう顔をしていいのか分からない。
その時、五条に掴まれたままの手に僅かながら力が入った。ぐいっと引き寄せられ、背中へ腕が回る。
「ご……五条せんぱ、い」
「……ヤバい。何かこう胸の辺りが苦しい」
「え……だ、大丈夫ですか……?具合でも――」
どこか具合が悪いのかと僅かに体を放して五条の顔を見れば、さっき以上に赤くなっている。綺麗な青が潤んでいるのは気のせいじゃない。
五条は心配そうなを見て困ったような苦笑いを浮かべた。
「嬉しいってこと」
「あ……」
その一言にの熱も更に上がる。互いに初めての状況だからか、どこかぎこちない空気が流れた。
しかし、そんな二人でも思うことは一つだったらしい。
「もっと――」
「もっと――」
と同時に言ったあと、え、と顏を見合わせた。
「ん?何?」
「い、いえ……五条先輩から……」
「いいよ、から言って」
ほらほら、といつものノリに戻った五条が笑う。改めてそれを言うのは恥ずかしかったが、どうにも我慢が出来なかった。
「え、えっと……もっとくっついてもいい、ですか」
モジモジしながら思っていたことを口にすれば、五条が小さく吹き出した。
「僕も同じこと言おうと思ってた」
「え」
言った瞬間、五条がの体をそっと抱き寄せる。その動作はあくまで優しく、どこか遠慮がちだ。
「ごめん。さっきの告白で舞い上がってこんなとこ連れてきたけど……触るのちょっと怖い。暴走しそうで」
「え……?」
「もし嫌だったら……ぶん殴って。じゃないと……離れられないから。それくらい今、に触れたいし、ずっとくっついてたいって思ってる」
背中へ回った腕にぎゅっと少しだけ力が入ったのを感じて、は泣きそうになった。五条と全く同じことを考えていたからだ。
「嫌なはずないです……。先輩にこうして欲しかった。キスも、それ以上のことも……全部上書きして欲しい。あの時の気持ちは今も変わってない、です」
「前にも言ったけど……オマエ、それホントに意味分かって言ってる?」
ギョっとした様子で体を放した五条は、俯いているの顔を上げさせた。彼女の頬は赤く染まり、瞳もどこか潤んでいる。恥ずかしいのを必死にこらえてるような顔だ。
「わ、分かってます」
「……そんなこと言われたら、マジで離してやれないけど。それでもいいの?」
こつん、と額同士を合わせながら最終確認をされ、の喉が小さく鳴った。今の気持ちに嘘も迷いもない。
小さく頷いてみせると、五条は呆気にとられたあと、ふっと笑みを浮かべた。
「だから僕のこと煽るのうますぎ」
言いながら五条の手がの火照った頬へ触れ、そっと顎を持ち上げられた。どくんと鼓動が跳ねた瞬間、ちゅっと軽く口づけられ、彼女の頬がじわりと熱を持つ。
しかし余韻に浸る間もなく、すぐにまたちゅうっと唇を吸われ、は五条にしがみついた。
人生で初めてのキスは、甘くて、ドキドキして、少し切ない。優しく交わる唇の熱に、自然と涙が溢れてきた。
「ん……ん、ふ」
寝室へ運ばれ、ベッドへ押し倒されたあとも、延々とキスを交わしていた。最初は触れあうだけだったそれも少しずつ深いものへと変わる。やんわりと舌を絡め合えば、その行為に慣れていない彼女のたどたどしいキスで、逆に火がついてしまった。五条の手が彼女のTシャツの裾からするりと入り込む。
しかし過剰に反応したは突然五条の体を押し戻し、脱兎のごとく身を離して距離をとった。
「や、やっぱり恥ずかしい……!」
体を放した瞬間、何故か布団をかぶり、アルマジロのように丸くなってしまった彼女を見て、さすがの五条も唖然とする。こんな場面でこんな反応をする、こんな女は初めてだった。
「今更……?もう散々見てんのに」
「あ、あの時の行為とこれは全く別ものです……!」
「えー……」
五条はベッドの上に座り込み、丸まっている布団の上からツンツンと催促するよう指でつつく。しかしはぴいぴいと叫ぶだけで一向に顔を見せてくれない。
「あの時は……い、命かかってたし、わたしの為に協力してくれてる先輩にこれ以上迷惑かけられないって必死だったから何とか出来ただけで……」
「それは分かってるよ、僕だって。でもこの状態でお預けはキツいんだけど」
「う……」
「あの時は僕も割り切ってたから我慢できてただけだし……。でも今は状況もお互いの気持ちも全く違うだろ」
「は、はい……」
諭すように言われ、もそっと布団の塊が動く。それを見た五条はかすかに笑みを浮かべ、布団ごとを抱きしめた。
「じゃあ……僕は目を瞑っておく。それなら恥ずかしくない?」
「う……は、い」
耳元で聞こえる優しい声にきゅんっとして、つい頷いてしまった。もぞもぞと顔を出せば、言った通り五条は目を瞑ったまま背中を向ける彼女のTシャツをゆっくりと捲っていく。露わになった背中へちゅっとキスをされ、びくんと肩が跳ねた。細い指が背中を伝い、ブラジャーのホックに行き当たる感触にドキドキが加速していく。目を瞑ってくれていても恥ずかしい気持ちは少しもなくならない。
「……あ」
五条の指がぷちんとホックを外すと同時に、の鼓動が大きな音を立てる。カップが浮く感触にどうにも心許ない気持ちになった。先ほども言ったように、前にされた行為と今とでは全く別物。前は呪印を消すと言う最終的な目的があったからこそ腹をくくれた部分もあり、あとは呪印の効果で性欲が爆上げされてたのもある。それくらい普通の状態ではなかった。
でも今は何の目的もなく、ただ五条に抱かれるためだけに肌を晒すのだから、前と意識が違って当たり前だった。
今、彼女を襲っている羞恥心は紛れもなく、の素の心から生まれてくるものだ。
「ん、」
もう片方の手が腹に回り、手のひらが肌を撫でながら上がってきたかと思った瞬間、下胸をふわりと包み、指先が乳首をくにっと弄る。それだけの刺激で心臓が更に加速し始めた。
(ど、どうしよう……!胸に触られたらドキドキしてるのバレちゃう……)
こめかみにキスをされ、Tシャツを脱がされる。でも不意に五条の動きが止まった気がして、はふと振り返ろうとした。
「ごめん、ちょっと……待って」
「え――?」
「こっち見るなって」
「あ、あの……少しだけ見ちゃいました」
「……いや、見ないで」
目の前に翳された大きな手のひら越しに五条を見上げると、に負けず劣らず透き通るほどに透明感のある五条の顏が、さっき以上に赤くなっていた。いや、何気に耳まで赤い。
「さっきも言ったけど……これでも緊張してんの」
「え……」
「の初めての相手は僕じゃないと思ってたし……だからこうして触れられることが嬉しくてちょっとドキドキしてるかも――」
と、五条のその言葉を聞いた瞬間、ぶわっと肌が粟立ったのは、言葉に出来ない愛しさがこみ上げてきたせいだ。思い切り抱き着き、の方から五条をベッドへ押し倒す。
「って、おい、――」
突然の行動に五条の方が驚いたらしい。起き上がろうと上体を起こす。しかしそれより早く彼女の指先が五条の昂ったものを探し当てた。バスローブの腰ひもを解き、硬く反り勃ったものへ指先を伸ばす。
「ちょ、何やって――っ」
「前はわたしが気持ち良くしてもらったから……今度はわたしが先輩を悦ばせたいんです」
「……は?」
「したことないから上手くはないかもだけど……さ、させて下さい……」
一瞬で恥ずかしいという気持ちが吹き飛んでしまったのは、そんなものより早く五条と繋がりたいという思いが高まったせいだ。呆気に取られている五条が制止する前にその場所へと口元を近づけた。男の性器を間近で見るのは初めてで、想像以上の大きさと硬さにごくりと喉が鳴る。これを全て口へ納めることが出来るか不安はあったが、は迷わず五条の陰茎を勢いよくはむっと咥えた。その瞬間、口内でびくんと反応したのが分かる。気持ちいいと思ってもらいたい一心で、やり方は分からないまま舌を使って陰茎を刺激していく。
その大胆な行動に五条も慌てた。股間に屈んでいる彼女を引きはがそうと手を伸ばす。しかし同時に襲ってくるヌルヌルとした刺激と快感で腰の辺りに欲が集中してきた。
「、そんなことしなくても――ちょ、あ」
と言った先から五条のモノがグっと大きさを増した。拙い動きながらの小さな口で扱かれ、感覚的にも視覚的にも興奮するのか一気に射精欲が襲ってきたらしい。
「んっ……ヤバ、そんなにされたら出る――」
「ん、」
経験のない子は限度を知らない。必死で扱かれれば快感は加速していく。それも惚れた女の子に初めての口淫をされているというプラスアルファ的な効果も大きかったらしい。自分の意志とは関係なく体が暴走し、あ、と思った時にはの口へ吐精してしまっていた。これまでの欲を吐き出したことで一瞬、ジーンと頭が痺れていた五条だったが、ふと目を開けた時、の口端から白濁した精液が垂れているのを見てギョっとした。しかもゴクン、というおぞましい音がする。
「うわ、何飲んで……!」
「ひゃ、せ、先輩、目瞑ってるって言ったのに……!」
「いや、そっち?!」
Tシャツを脱がされ、ショーツ一枚というのが恥ずかしかったのか、は慌てて五条から身を引いた。それを捕まえた五条はバスローブの袖で彼女の濡れた口元を丁寧に拭きながら「無理すんなって……」と困惑顔で溜息を吐く。
「わ、わたしが先輩にしたかったから……」
「……またオマエはそういう煽るようなことを……」
の真っすぐな想いを向けられ、五条の頬がじわりと熱くなる。
「い、嫌でしたか……?下手くそでしたよね……」
「まさか。そんなことないよ」
しゅん、とした様子で項垂れるが可愛くて仕方がない。もう一度ぎゅっと抱きしめながら「オマエが素直すぎて可愛いから、どんな顔していいのか分かんないだけ」と彼女の頬にちゅっと口付けた。
「……でもこっからが本番ね」
「あ……」
ベッドへ押し倒され、五条が彼女に乱されたバスローブを脱ぎ捨てる。も全裸を見るのは初めてで、一気に顔の熱が復活してしまった。スタイルがいいとは思っていたが、一糸まとわぬ五条の筋肉質な肉体は、まるで彫刻のように美しい。そう思ったら急に自分の肌を晒してるのが恥ずかしくなった。
「何で隠すの」
「え、だ、だって……」
「見せて。綺麗だから」
「……ふぁ、」
やんわりと胸元を隠していた腕を外され、シーツの上に固定された。と思った瞬間、五条が身を屈め、すでにツンと上を向いている乳首をかぷっと食む。同時にぬるりと舐められ、ちゅうっと吸われた刺激でびくんと何度も肩が跳ねた。
「あ……」
五条に触れられることは初めてじゃないのに、今日はやはり緊張してるらしい。体の強張りが伝わったのか、「力抜いて」と言われた。
「あっ」
胸が潰れるくらいに抱きしめられ、首筋から鎖骨へ口付けられていく。同時にもう片方の手が下腹を滑り、ショーツの中へ吸い込まれた。
「ここ好き?もう音がしてる」
「ん、ぁ」
再び乳首を舌先で弄られ、指先で割れ目をなぞられる。上部分の小さな芽をむにゅっと刺激されるだけで、奥から熱いものが溢れ出てくるのが分かった。五条に触れられた場所は全てが気持ちいいと思えるほどの快感に襲われていく。
つぷつぷと指先で浅い場所を犯されただけで、全身が粟立つほどに体が反応してしまう。
「前に何回も触ったから濡れるのも早いね。気持ちいい?」
「ん……ぁ、ん」
ゆっくりと指が深く挿入されて少しずつ動きが加えられると、次第にぬちぬちと卑猥な音が洩れてきた。前にされた時以上に気持ちが良く、頭がふわふわしてきた。もっといっぱい触って欲しい、と思う。
(何か体が変……五条先輩に触って欲しくて、体中がむずむずする……)
するりと手際よくショーツを脱がし、五条が無防備になった場所へと顔を埋めていく。蕩けた頭でふとそれに気づいたは「だ、だめ」とか細い声で啼いたものの、五条を止めるほどの威力はなかった。
「さっきのお返しだよ」
「……ふ、あっ」
ぐいっと両腿を広げられ、恥ずかしい場所をぬるりと舐められる感触にびくんと腰が跳ねる。その腰に五条の腕が絡まり、固定されると、次々に襲って来る快感から逃げる術を失ってしまった。容赦ない動きで柔らかい舌が襞をかき分けるように滑り込み、筋に沿って舐め上げていく。
「どんどん溢れてくる……」
「……ひゃ……っぁ」
恥ずかしい。そう思うのに、それ以上に嬉しくて幸せで、下腹の奥がやたらと疼く。
「……、いっぱい濡れてて可愛い」
「ん、ん、ぁっ」
ぢゅるる、と敏感な場所を吸われ、舐め転がされるたび、奥から更にとろりと溢れてくる。それをまた五条の舌が舐めとり、指でもナカを犯される。ぐちゅぐちゅと淫らな音がたつせいで、すっかりとその場所が蕩けている自覚はあった。
「も、だ、め……ぁ、んぁあっ」
ナカと外を同時に刺激され、そこから快楽の波が広がった瞬間、ぱちんと目の前が真っ白に弾ける。頭が沸騰したような熱を帯びて、全身が気怠くなった。
「……上手くイケたね」
ゆっくりと体を起こした五条が覆いかぶさってくる。唇から、は、は、と浅い呼吸を吐き出していると、不意にちゅっと口づけられ、もう一度「」と名を呼ばれた。それが凄く幸せで、潤んだ瞳を五条へ向けると「好き……」と呟かれる。
「僕にオマエの初めてちょうだい」
「ごじょ……せんぱ……い」
はい、と応えると同時に唇を塞がれ、質量のあるものがたっぷりと濡らされた場所から入ってくる。くぐもった声ごと五条の口内へ飲み込まれ、手に僅かな力が入った。濡れてるおかげでするすると入っていくわりには想像以上に圧迫感が凄く、呼吸も浅く、短く、早くなっていく。
「ん、んん」
「……痛い?力入ってる」
「い、痛くは……」
「ゆっくり息吸って、吐いて……もう一回」
「ん……」
息をするのも忘れそうなほど、意志とは関係なく五条と繋がってる場所にも力が入ってしまう。言われた通り呼吸を整えながら、は五条を見上げた。
「ん。良く出来ました」
言われた瞬間、ずぷん、と奥まで入ってくる。
「んぁ」
「……全部入ったよ」
そう呟いた五条の息も乱れていて、少しだけ苦しそうだった。初めての自分を気遣い、いつも以上に時間をかけてくれてるのかもしれないと思う。その優しさが嬉しくて泣きそうになった。
「五条……せん、ぱい……と繋がれたの嬉しい……」
「……またオマエはそうやって煽る」
「だ、だって……ほんとの……ぁっ」
「これ、痛くない?」
ぐっと腰を押し付けられながらぐっぐ、と短く抽送され、僅かに声が跳ねた。ひたすら苦しいだけで思ったよりも痛みはない。
「のナカ、凄い狭い……気を抜いたら押し戻されそう」
「……せ、せんぱ……痛くないから……もっと、ちゃんと奥まで――」
「だから煽るなって言ってるでしょ……」
ハァ、と吐息を漏らした五条は、グイっと腰を押し付けた。とん、と最奥に当たった感触にの背中が反りかえる。
「一番奥だけど……大丈夫?」
「だ……だいじょ……ぶです……」
ハァ、ハァ、と苦しげな呼吸を繰り返し、涙をぽろぽろ零しながらも応える。全てを受け入れることが出来た幸せしかなく、繋がった場所からはジンジンとした疼きが次から次に生まれてきた。それがまた幸せだと感じる。
「……動くよ」
両手での細腰を掴み、ゆっくりと抽送を始めれば、更に圧迫感が増す。ぱちゅ、ぱちゅ、と一定のリズムで、繋がった場所から、触れあう肌から、音がする。それを耳の片隅で聞きながら、の体が少しずつ快感を拾い始めた。
「……あ、ぁ……ん……ぁ、あっ」
「かわい……気持ちいいって顔してる」
「ご、五条……せんぱ……くっつき、たい……キス、してほし……」
「……っ」
甘えるように両手を伸ばしてくる彼女を見て、五条の体も素直に反応した。一気に奥を突き、ぐいっと抱き起してから唇を塞ぐ。
「……んんっ」
下から突き上げられる形になり、は苦しげな声を漏らした。
「……痛い?」
「い、痛くない……奥、まで……先輩のが入って気持ちい……ひゃ、」
「……ったく、マジでオマエ、煽りの天才すぎ」
「ご、五条……先輩……ふ、あっ……激し……」
激しく腰を振られ、揺さぶられる。陰茎の先でぐ、ぐ、と突いてナカをぬぷぬぷと擦りながらかき回され、子宮口を何度も突かれるたび、ぞくぞくとした快感が背中に走った。好きな人に抱かれてると思うと、かすかな痛みも全てが快感へと変換されていく。
五条の首に腕を回してしがみつきながら、何度目かのキスを交わす。白い絹のような髪を撫で、五条の頭を抱きしめるように額にも口付けた。
自分の腕の中にいる五条が愛しくてたまらない。今までよりもずっと近くに感じる。それがこんなにも――嬉しい。
「先輩……ぎゅってして……ぁ、」
「ん」
「くっついて……たい……」
「……かわいい」
こんな風に素直に甘えられたことはなく、普段の真面目な姿からも想像できないところが可愛いと思う。
彼女の望み通り華奢な体をぎゅうっと抱きしめながら「好きだよ」と呟く。この溢れる想いを口にするだけで快感がいっそう高まる気がした。
好きな子を抱くのがこれほど幸せなことで、これほど苦しいなんて思いもしなかったと、蕩けた頭の隅で思う。
自分がこれほど素直に好意を口に出来る男だったというのも、を好きになって知った。
「……好意、なんて可愛いもんでもないか」
「……ん…んん?」
「何でもない……」
まるで呪いだな、と思ったことは口にしなかった。一度呪われた彼女に言うべきことじゃない。
だけどその時に気づいた。人が人を強く思う時。そこには必ず並行して呪いが生まれるということを。
「……好きだって言ったの」
彼女の額に口付けなら、心に生まれてくる想いを告げる。
それが愛という名の呪いでもあることを、五条だけが知っていた。
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