※性的描写がありますので18歳未満の方の観覧はご遠慮下さい。



02.

七海は静かな朝が好きだった。カーテンの隙間から差し込む陽の光で自然に目が覚めたあとは、熱いシャワーを浴びて、寝起きの頭をスッキリさせる。そしてバスローブ姿のまま、まずはモーニングコーヒーを飲みながら、一日のスケジュールのチェックをしていく。そこで補助監督から任務依頼があれば、概要を確認して出かける準備をする、といった具合に、朝のルーティンはだいたい決まっていた。
しかし、しかし、だ。今朝は自然に目覚めるどころか、強制的に起こされてしまった。いや、朝と言うにはまだ暗い。帰宅して寝てから、まだ二時間ほどしか経っていない。普段なら――突発的な任務さえ入らなければ――七海もぐっすり寝ている時間だ。そんな七海を起こしたのは、寝室で寝ているはずの彼女・・だった。

「…何してんですか、さん」
「…あ…お、起こしちゃいました…か?」

ソファで寝ている七海の隣でもぞもぞと動いた彼女は、えへへ、と誤魔化すような笑みを浮かべた。未だ睡魔の残る目を擦り、少しだけ頭を擡げていた七海は、自分にべったりとくっつくようにしながら――勝手に腕枕にされている――見上げてくるを見て、盛大に溜息を吐いた。

「…あなたは寝室で寝て下さいと言ったはずですが」
「う…だ、だってぇ…」

じっとりとした目で睨めば、はしゅんと目を伏せた。寂しかったんだもん、と呟きながら、七海に擦り寄ってくる姿はまるで仔猫のようだ。一人で寝るのは相当寂しかったのか、七海にくっつき、胸元にすりすりと頬を寄せてくる。七海は彼女のこういった行動に非情に弱い。最初は苦手だと思っていたはずの無防備さを自分に向けられると、どうしても庇護欲が刺激されるからだ。

最終的に彼女のこういった純粋な素直さに惚れてしまったという自分に対する若干の苛立ちはあったものの。それは彼女の想いを知った時に綺麗に消化され、あとは七海なりに覚悟を決めた、はずだった。しかし、いざ付き合ってみれば、やはり最初の始まりに罪悪感を覚えてしまったのは、七海の真面目さゆえかもしれない。あの時のタガが外れた自分の行動を未だに許せないのだ。なのであの夜以来、反省もかねて七海はにキス以外の行為はしていない。

今日も任務後に食事デートをして、その後に軽く飲みに行ったのだが、本当なら帰りはきちんと彼女を家まで送るはずだった。
なのに、そこでは「帰りたくない」とゴネだし、一向にタクシーに乗ろうとしないので、仕方なく七海は自分のマンションへ彼女を泊めることにした。だが当然、一緒に寝る気はないので、彼女に寝室のベッドを使わせ、自分はソファで寝入ったところだった。
なのに二時間でこれだとは、と七海は擡げていた頭をソファクッションへと沈めて、今度は小さく息を吐く。いや、彼女が人一倍、甘えん坊だというのは、彼女が補助監督になった頃から見てきたので理解してるつもりだった。だが、の七海に対する想いが想像以上に大きかったのは誤算だったかもしれない。

と言っても、それが嫌なわけじゃなく。七海もまた同じくらいに惹かれていると同時に、とても大事に思っている。だからこそ、自分の欲のままに抱くことに躊躇いが生じていた。
今更と言われればそうなのだが、あの夜の自分はどうかしていたのだ。彼女が他の術師の前でも同じことをする、またはしてるんじゃないか、という苛立ちが、七海から冷静さと理性を失わせたとしか思えない。
そう、冷静になればこうしてくっついて寝てようが、何の問題もな――。

「七海さん…怒ってる…?」

おずおずといった様子で訊かれ、「いえ…」と応えた時だった。七海の脇下付近にむにゅっと柔らかいものが押しつけられ、思考がビシっと固まった。が更に体をくっつけ、七海の顔を見上げているせいだ。
急遽、七海のマンションに泊まることになったので、当然はパジャマの類など持っていなかった。仕方がないので自分の普段着用のシャツを貸したのだが、きっと中は下着すら付けていないんだろう、と予測ができる。それくらい柔らかさが直に伝わってきた。

「……狭いのでベッドへ戻ってくれませんか」
「えっ!やです…ひとりで寝るの寂しいもん…」
「子供じゃないんだから…それに何も狭いソファで一緒に寝ることないでしょう」
「え、このソファ、幅広だし全然狭くないですよー。くっついてれば落ちないし」
「だから………」

その密着が困るんです、と言いかけて、七海は口を閉じた。確かにゆったり座れるソファが欲しくて、幅の広いものを選んで買った。おかげで二人でも寝ようと思えば寝れるし、くっついていれば彼女が落ちることはない。しかし七海はそういうことを言いたいわけじゃなかった。
何だかんだと言い訳をしてみたものの、やはりそこは惚れた女の子。シャツ一枚という格好でくっつかれれば、七海の強固な理性が、またしても粉々に破壊されそうで怖いのだ。

そもそも順番を間違えて付き合いだしたのだから、まずは一旦落ち着いて、きちんとやり直したいという思いもあった。彼女とあんな形で抱き合ったのも、あの軽薄を絵に描いたような先輩の仕掛けだったというのも気に食わない。
例の出張先で彼女と七海がそう言う関係になったことまでは当然話してもいないが、ふたりが付き合いだしたことは知っている。その時点で自分の作戦が上手くいったのだと察したんだろう。最近は顔を合わせるたび「と上手くいってるー?」とニヤケ顔で訊いてくるのだから嫌になる。

そういったその他もろもろの色んな事情があり、とはゆっくり関係を深めていきたいと考えていた。
責任は取ります、と言った以上、七海は本気でそう思っていたし、何なら結婚も視野に入れている。そこまで考えている相手を、付き合ったからといって自分の欲求のまま抱きたくはない――が、このままでは遅かれ早かれ、まずいと思った。さっきから柔らかいものを押し付けられてるせいか、すっかり目が冴えてきてしまった。これではあの夜の二の舞になってしまう。そう思った七海は徐に上体を起こすと、彼女をまたいでソファから下りた。

さんがソファで寝るなら私はベッドで寝ます」
「…え、何で?」

サッサと寝室へ向かう七海を、は母猫に置いて行かれた仔猫のように慌てて追いかけて来た。どうしても一緒に寝たいらしい。七海がベッドへ潜り込むと、またしても隣に入ろうとしてくる。それを「ダメですよ。あなたはソファで寝たいんでしょう?」と溜息交じりで制止した。

「わたしは七海さんと寝たい…」
「……ダメです」
「だから…何でダメなの…?」
「それは…」
「七海さんとわたし…付き合ってるんじゃないの…?」

悲しそうに眉を下げているは抱きしめたくなるほど可愛い。本当は七海だって一緒に寝たい気持ちはある。しかし、そうしてしまえば自分の理性が危うい。以前なら自分のそれに確固たる自信があった七海も、今は自分の理性を信じられなくなっているからだ。

「もちろん付き合ってますよ。私はあなたのことが好きですし、大事に思ってます。だいたい好きでもない女性を家に上げたり泊めたりはしませんから」
「なら何で意地悪するの…?」
「意地悪してるつもりはないんですけどね…」

こんな深夜に押し問答しても仕方がない。ここは彼女の要望通り、一緒に寝ようか、という思いも過ぎる。ただ、そうなると色々と問題が…と考えていると、七海は喉が渇いてきた。デート中に酒を飲んだせいだ。あとは残暑が厳しい時期だけに、この時間でもクーラーなしでは眠れないくらいには暑い。

「ハァ…ちょっと水を飲んできます」

そう伝えてから、先ほど冷えすぎたために一度止めたエアコンを再び入れておく。今度はも追いかけて来なかった。

「…どうするかな」

冷蔵庫から冷えたミネラルウォーターを出して一口飲むと、七海は小さく息を吐き出した。自分の態度に彼女が不安を抱いているのは何となく分かっているのだが、性格上、どうしても素っ気ない態度になってしまう。五歳も年下の女の子、それも同じ高専関係者と付き合うのは七海も初めてというのも理由の一つだ。
これまで付き合った大人の女性なら色々と察してくれるのだが、は素直に自分の想いを七海にぶつけてくる。そんな彼女をどう扱っていいのかも分からない。というか気を抜いてしまえば、ベタベタに甘やかしてしまいそうで怖い、といったところだ。そういう自分が想像できないだけに、七海も地味に困っていた。

「…ガキじゃあるまいし」

ふっと自嘲気味にボヤきながら、もう一口水を飲んだところで、不意に背後から「七海さん…」と声をかけられた。そして一度あることは二度ある、という世の戒めを、この時の七海は実感させられた。
呼ばれて何の気なしに視線を向けた瞬間――口に含んだばかりの水を「ぶーっ!」と吹いてしまったのは、やはり彼女が原因だった。の恰好を視界に入れた瞬間、思わず目が丸くなる。

「ゴホッ…な…何で……脱いでるんですか」

おずおずと恥ずかしそうにしながら薄暗いキッチンに立っていたのは、黒いレースの下着を身に着けただった。真っ白な肌に黒がよく映えて、しかしその柔肌はかすかに震えている。しかもレースだけに全てが透けて見えて、不覚にも七海の腰がずんっと反応してしまったのは、先ほどすでに下地が出来ていたせいだ。下着をつけてないと勘違いしたのは、下着が透け透け素材のレースだったからのようだ。

「だ、だって…七海さん、あれ以来触れてくれないから…」
「だからって、またそんな恰好で…あなた、私に言われたこと忘れたんですか?」
「で、でも…今は付き合ってるんだから問題ないかなって…」
「問題…あるに決まってるでしょう…。おかげで勃ってしまいました」

あまりの衝撃で、つい正直に言ってしまった。

「…ぇっ…ひゃ」

言うや否や、七海は小柄な彼女の膝裏に手を入れて軽々と抱き上げた。その突然の行動にも驚き、慌てて七海の首にしがみつく。

「…今夜はあなたが責任とって下さい。せっかく我慢してたのにこんなにしたんですから」
「え…っは、はい…責任…とります」

今にも泣きそうなほどうるうるしている瞳を更に潤ませ、素直に頷く彼女はクソ可愛かったらしい。七海は反省という鎧を脱ぎ捨て、をベッドの上へそっと押し倒した。

「…ところで、この下着は?いつもこんなの身に着けて仕事してるんですか、さんは」
「ち、違う…けど…七海さんがあれから触れてもくれないのは…わたしに色気がないせいかなって…思って…」
「だから、こんな格好を?」
「う…ご、ごめんなさ…」
「いえ…エロくて可愛いです」
「え…んぅ」

今夜ほど素直になった自分はいないだろう、と思うくらい、七海は正直な気持ちを口にして、彼女の小さな唇を塞いだ。惚れた子が自分の為にこんな下着を身に着けてくれたと思うだけで、また腰の辺りがずんと重くなり、勃ち上がっている場所が更に硬さを増していく。
こんなに可愛い姿のを抱けると思うと、何を今まで躊躇していたんだと自分でおかしくなった。ただ、あまり暴走しないよう欲望が鎌首を擡げるのを必死にこらえて、の口内を余すとこなく舌で解していく。
欲望とは、つまりを貪りつくしたいという、飽くなき男の欲求だ。最奥まで貫いて、子宮口を突き上げてナカをどろどろにしてやりたいという衝動。
しかし、それは彼女を失いかねない。純粋に自分を想ってくれているのふんわりとした眼差しが、恐怖や嫌悪に染まることを想像するだけで背筋が凍り付く。

「…んっ」

長いキスを終えて、の首筋から鎖骨辺りまで唇を這わせていく。黒のレースに包まれた彼女の小ぶりな乳房は乳首すら隠せていない。それが視覚的にクソエロいと七海は思った。優しく太腿を撫でていくと、の膝がかすかに震えている。透けた黒いレースがひときわ白い太腿とのコントラストで、酷く淫らに見えた。

「…本当にエロいですね、これ」

ちゅっと首に口付けながら言えば、は「ほんと…?」と訊いてきた。自分ではよく分からないらしい。

「ちゃんと…えっち?」
「…えっちですよ、ちゃんと」

七海にエロいと言われたのが嬉しいらしく、は頬を染めながら七海にしがみついた。この瞬間、七海の脳内が可愛い、エロいで埋まっていく。反省に続き、"理性ある七海建人"すら脱ぎ捨てた瞬間だった。

「七海さ…ンっ」
「少し黙ってて下さい。あまり煽るのは良くない」

触れる前からツンと主張している乳首をレースごと舌先で捏ねながら、太腿を撫でていた手を股の間へ滑らせると、薄い生地のショーツの上から割れ目をなぞる。レースのみだからか、柔らかさがもろに指から伝わってきて、いっそう七海の欲が高まっていく。

「んんっぁ」
「濡れてますね…まだ何もしてないのに」
「だ…だって…」

七海さんに触られてるから…と消え入りそうな声で呟かれた時、僅かに残っていた理性すら消し飛んでしまった。

「ほんとにあなたという人は…私を欲情させる才能がありすぎますね…」
「…っぁあ」

ショーツを片寄せ、濡れた入口を指で開いただけなのに、の腰が揺れる。快楽に瞳を滲ませながらも、七海の腕にぎゅっとしがみついてくる姿がいじらしくて可愛い。
くちゅ、と、すでにとろとろになっている場所へ指を埋めていけば、ははくはくと浅く息をしながら、白い頬を赤に染めた。
のナカは指に吸い付いてくるほど肉襞がうねり、指が溶けそうなほどに熱い。ゾクゾクして一本指を増やし、締め付けてくる粘膜を掻き混ぜると、甘ったるい声でが啼いた。ゆっくり円を描くように動かすと、彼女の腰が震える。にちゅにちゅという粘膜の蕩ける音が恥ずかしいのか、の頬が淡く朱をはいた。
狭いのナカは充溢してしまっている。最奥を指の腹でぐうっと押すと、の華奢な体がびくびくと震えた。

「な…なな…みさ…んン…っ」
「だいぶ限界みたいですね」

ゆっくり指を抜きながら七海は息を吐いた。限界なのは自分も同じで、今では痛いほどに硬くなっている。

「せっかく可愛い下着で誘ってくれたので…着たまましましょうか」

七海の言葉には真っ赤になり、潤んだ瞳を泳がせたあと、小さくこくんと頷いた。その仕草さえ可愛くて、七海はかすかに笑みを噛み殺した。
ベッドボードの棚に入れたままのコンドームを出して装着すると、クロッチ部分をずらしたまま、そこへ昂った自身の陰茎を宛がう。蕩け切った彼女の膣口はそれだけで先端に吸い付き、ナカへと導くような感覚にゾクゾクした。

「…挿れますよ」

脳は沸騰しかけていても、この間よりは冷静に事を運んでいるのは少しでも優しくを抱きたいからだ。
そうして腰を進め、半分ほど埋めていく。この瞬間、すぐに持っていかれそうなほど吸い付かれ、死ぬほど気持ちいい。

「んあ…な、七海…さん…」

が甘い声で七海を呼ぶ。

「…何?」

知らず知らず、返していた。自分の声じゃないみたいな糖度の高い甘ったるい声に、つい失笑してしまいそうになる。

「痛く…ないですか?」

奥までぐっと押し込んだ時、先端が柔らかい場所へ当たり、ついそう聞いていた。しかしは「い、痛くない…」と苦しそうな、それでいて朱に染まった顔で応える。その健気な姿が、また七海の男の部分を昂らせていく。
はぁ…っと息を吐きながら、ぐいっと腰を押しつける。その瞬間、が「んぁ、ぁっ」と一際高い声を上げた。

「…?」

慌てて名を呼んだのは、痛がらせてしまったのかと思ったからだ。しかしナカはうねるように動いて七海の陰茎を締め付けてくる。頬を高揚させたの瞳も、一目で達したのだと分かるくらいに蕩然としていた。浅く呼吸を繰り返す彼女のナカは容赦なく七海を締め付け続けている。

「…さん、イキました?」

が恥ずかしそうに頷く。この前、初めて経験したというのに、相変わらず彼女は感度がいい、と七海は苦笑した。しかもそれは大好きな七海に触れられるからだという。その想いは男としてこの上なく嬉しいものだ。

「……クソ可愛いのが困りますね、さんは」
「…ふぁ…」
「…また軽くイキました…?」

またしてもナカできゅうっと締め付けられ、七海は少し驚きつつ尋ねると、は「だ、だって…」と恥ずかしそうにもじっとした様子で目を伏せた。

「七海さんに…可愛いって言われたから…」
「………ちょっと。私まで危うくイキかけたじゃないですか…まだ挿れたばかりだというのに」

ぽっと頬を赤らめる彼女に、言った通り腰が疼き、一気に射精欲が高まりかけた。挿れただけでイクなんて童貞じゃあるまいし、と自嘲してしまう。ゆっくりと腰を引けば、彼女の肉襞が追いかけるように吸い付いて来るのがたまらなく気持ちがいい。再び最奥までぬぷぬぷと押し込めば、蕩けた粘膜が悦ぶようにうねるのが分かった。

「…んぁ…あっ…」
「あー…気持ち良すぎて本当にイキそうです…」

思わず低い声で呟く。それくらい彼女のナカは気持ちが良く、頭もナカにあるモノも蕩けてしまいそうだった。最奥を突きあげるように根元まで押し込むと、の足がばたついて、細い腰がかすかに浮く。

「んんん…っ」

切なげに眉根を寄せ、握った手を強く握り返してくる細い指、ナカもびくびくと痙攣するのを感じて、「また…イキましたね」と彼女の唇に吸い付く。浅い呼吸ごと飲み込むように口付けながら、少しずつ腰の動きを速めていけば、彼女の瞳からじわりと涙が浮かんできた。

「…気持ちいい?」
「…ん…き、きもち…いい…です」

かすかに微笑みながら即答する彼女の唇にもう一度キスをしながら、律動を開始する。七海が動くたび、彼女が喘ぎ、その声すら逃したくないと舌を絡めて吸い上げた。
淫らな水音と腰の当たる音が、静かな寝室に響く。根元まで七海を咥えこんだのナカを擦り、突き上げ、一気に貫く。腰を動かすたび、繋がっている場所からぐちゅぐちゅと卑猥な音が漏れて、それさえ七海の鼓膜を刺激し、更に体が高揚した。
そして再び奥まで突いた時、七海の陰茎が子宮口ごと押し上げて、の腰が厭らしく揺れる。それに誘われるように奥をぐりぐりと突き上げると、は白い首をのけ反らせ、小さな悲鳴を上げた。

「…んぁ…ぁあ」

ひくひくと薄い腹が痙攣しはじめ、繋がっている場所からぷしゅっと僅かに零れる液体。愛液とも違うそれは、いわゆる"潮"と呼ばれるものだと、七海は気づいた。

「え…な…なに…?」

彼女は綺麗な眉を潜ませ、戸惑い顔で七海を見上げる。初めてのことで不安げに目を潤ませたの額へ、七海はちゅっと軽く口付けた。

「大丈夫ですよ、変なことじゃない」
「…ほん…と?」
「あなたが凄く感じてくれた証みたいなものですので」

七海がそう告げれば、彼女はホっとしたような笑みを見せた。その顔を見た七海は再び抽送を再開させる。今ので更に欲も上がり、すでに蕩けすぎていたせいか、もう出る寸前だった。
を抱きしめ、腰を動かし、更に奥を貪る。根元までびっちり埋めているおかげで、腰を動かすだけでぬちゅ、くちゅと音を立てる。

「…ふあ…ぁ」

すでにの声は掠れ、喘ぐのもツラそうだった。とろとろに蕩けた体が七海の気持ちを高め、一気に射精欲も高めていく。抽送を速め、ぐうっと奥まで突きあげれば、柔らかな奥が七海の陰茎をきゅうっと締め付け、たまらず被膜ごしに己の劣情を一気に吐き出す。

「あー…」

脳が痺れるほどの快感が襲い、つい声が漏れる。一度深く息を吐き、ゆるゆると腰を動かした。

「…ん」

がかすかに喘ぐも、あまり声が出ないようだ。まだひくついている彼女のナカから自身を引き抜き、ゴムを外すとティッシュに包んでダストボックスへと捨てた。全身が気怠いが、気分はスッキリしていた。彼女に触れるのを我慢していたせいで、知らず知らずに欲求不満だったのかもしれない。

さん…大丈夫ですか?」

くったりして呼吸を整えているの額にちゅっと口づけながら訊くと、彼女は恥ずかしそうに微笑んだ。その笑みがとても幸せそうで、七海もつい苦笑いを零す。

「大丈夫そうですね…」

少しホっとして彼女の小さな唇にもキスを落とすと、動けないに変わって、事後の処理をしてあげた。それが恥ずかしいのか、「じ、自分でやるから…」と頬を赤くする彼女を見て、七海は軽く吹き出した。

「大胆かと思えば、こんなことで照れるんですか…ほんとにあなたはよく分からない子ですね」
「だ、だって…それとこれとは…ていうか…シャ、シャワー入りたい、かも…」

先ほどの潮を気にしているのか、下着の乱れを直しながら恥ずかしそうに呟く。そこで彼女の腕を引いて体を起こしてやると、七海はぎゅっと彼女を抱きしめた。

「一緒に入りますか…?」
「…え、そ、それは…恥ずかしい…」
「だから、あなたのそのよく分からない照れのツボ、何なんです?」

大胆な下着を身に着け、大胆に誘ってくるくせに、変なところで恥ずかしがるに、七海は苦笑しか出ない。そこで、ふと気になったことを尋ねた。

「そもそも…この下着、さんが自分で買ったんですか…?」

あまり、こういう大人っぽい下着を買うのは彼女らしくない。そう思っただけなのだが、その問いにの目が左右へ泳ぎだした。その様子を見ていた七海は、ふと嫌な予感がこみ上げてくる。そもそもが大胆になる時は、裏で軽薄という服を着ている先輩がいたりするものだ。前回の反省を踏まえ、七海は彼女の顔を覗き込んだ。

「まさか…これも五条さんの差し金とか…?」
「えっ」
「………ハア。いいです。今のあなたの反応で分かったので」

一度ならず二度までも。五条悟にしてやられたらしい。大方、あの日以来、手を出してこないと彼女が相談したんだろう。そして例の如くバカなアドバイスをしたに違いない。沸々と怒りがこみ上げて来た時、七海はもう一つ気になったことを尋ねた。

「まさか、あなた…この下着、五条さんと買いに行ったなんてことは――」
「え、な、ないです、そんな…!」
「本当ですか?嘘をついてもすぐにバレますよ」
「ち、違うの…!こ、これは硝子先輩に見立ててもらって…」

もう一人の七海の先輩。家入硝子の名を出され、七海は一瞬眩暈に襲われた。どんどん自分の恋愛事情…いや、セックス事情が先輩方に暴れていってるような気がしただけだ。これにはもう溜息しか出なかった。

「…さん」
「は、はい…」
「彼らに私の相談するのはやめてくれますか。クソ恥ずかしいので」
「……はぃ…ごめんなさい…」

久しぶりに七海のマジ説教を受け、しゅんと身を縮こませたはやっぱり可愛いしかないので、七海はとりあえずバスルームへ彼女を攫うことにした。
手を出さないという反省は、すでに七海の中で綺麗さっぱり忘れている。可愛いを前にしてしまえば、我慢などクソだ、と悟った七海だった。



||| omake |||



「今頃、七海、あの下着見て鼻血拭いてるかもなー。想像するとウケる」
「私は七海が二回目に突入してを襲っちゃう方に一万かけよう」
「一万って硝子、それはしょぼくない?僕は朝までヤりまくって明日は腰をガクガクさせてくるに五万!」
「さすがに朝までは無理じゃないか…?アラサーだし」
「いや、僕は奇跡のアラサーだから朝まで出来る」
「……五条のセックス事情なんてどうでもいいんだけど」

後輩のセックス事情で賭けをしてるクソな先輩達は、今宵も美味しいお酒+ソフトドリンクで盛り上がっていたらしい。