
くちゅくちゅと淫らな音に鼓膜を刺激され、なおかつ、その場所から休むことなく甘い快感が押し寄せてくるので、彼女は溜まらず腰をくねった。
「あ…ぁっあか…ん、ゆーた…くん…もう…」
大きく開かされた両脚の付け根部分に顔を埋めている男の頭へ、どうにか一つに縛られた手を伸ばしたものの。弱々しい細腕では彼を押し戻すまでの力はなく。再び快楽の核心部分にちゅうっと音を立てて吸いつかれれば、背中を大きく反らして喘ぐことしか出来ない。この甘い責め苦をかれこれ二時間以上はされている。彼女からすれば拷問に等しい行為だった。ベルトで一つに縛られている両腕も、すでに感覚はない。乱されたシャツの合わせ目から覗く膨らみも、最初に散々弄られ、舌で転がされ、吸われまくった場所が今も硬さを保ってツンと上を向いたままだ。この状況だけ見れば、彼女が見知らぬ男に犯されていると誤解を受けそうだが、この喘ぎっぱなしの彼女と、彼女を喘がせている男はれっきとした恋人同士だった。
ただし――行為に溺れている男の方は、いつもなら彼女が蕩けるくらいに優しい性格なのだが、ある誤解をしている為、今はそんな優しさなど微塵もない。彼女を快楽のそこまで落としてやろうと、あらゆる快感を与えながら虐めている。
「ねえ、ちゃん。気持ちい?」
「…あ…や…ぁ…あか…んて…ぇ…」
「っふ…かわい。こんなに濡らして"あかん"って…響きがえっちいね」
たっぷりと愛でたおかげか、彼女の秘部は愛液でとろとろになっている。そこを無遠慮に舐めながらも、ひくひくしてる場所へ指も埋めていった。少し出し入れするだけで、ちゅぷちゅぷと卑猥な音がして、更に彼の欲を煽ってくるのだからたまらない。制服のスカートは腰まで捲れがり、履いていたショーツはとっくに脱がされ、剥き出しにされた白い太腿は左右に大きく開かされていた。こんな格好は恥ずかしいのに、何度あかん、と拒んでも、彼が許す気配はない。許すどころか、彼女が何かを言うたび、男は徐々に行為をエスカレートさせていく。
「…処女なのにこんなに濡らして…意外とちゃんはえっちだったんだ」
「ちゃう…もん…ん、こんなん…むり…あぅ…っ」
男の指で膣壁をぬぷぬぷと擦られ、彼女は快感に打ち震えながらも、可愛い声で喘がされてしまう。まだまだ寒い時期だというのに全身から汗が吹き出してくるのは、何度も強制的にイカされてるからだ。男を知らない体のはずが、彼女の意志に反して勝手に暴走するくらい、彼からは時間をかけて身体を開発されていた。
「んぁあ…っあかん…そんなとこ…舐めたら…イ…イっちゃ…ぁあっ」
次第に舌も、そしてナカをぐちゅぐちゅと犯していく指の動きも激しくなり、彼女は何度目かの絶頂を迎えた。びくびくと足が痙攣して、指を咥えこんでいる場所がきゅうぅっと閉まるのが自分でも分かる。なのに指の動きを止めてもくれず、彼は「ハァ…かわいすぎ…」と言いながら体を起こすと、おもむろに彼女の上へ覆いかぶさった。
「もう挿れても大丈夫そう…かなり解したから、そんなに痛くないと思うし」
「ゆ…憂太…く…ちゃう…の…っうちな、ほんまは――」
ぐりっと硬さを主張するものを未だにひくつく場所へ押し付けられ、彼女は慌てて首を振った。こんな形でのロストヴァージンは不本意でしかない。腕も縛られたままだし、これじゃ何だかそういうプレイみたいで恥ずかしすぎる。出来ることならデートをしたあと、お洒落なホテルへ泊まって、彼と甘い時間を過ごしながら自然の流れでそうなりたい。彼女もそんな淡い夢を見がちな女の子だった。なのに何故、今日こんな状況になっているのかと言えば、それはやはり彼女の自業自得でもある。
ただ、ちょっとした悪戯心で、小さな――彼女にとっては――嘘をついただけ。ただ、それだけのはずだった。
それもこれも、今日。四月一日は、世間でいうところの"エイプリルフール"だったから。そんな可愛い理由だった。
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そもそも彼女――が、彼――乙骨憂太と付き合いだしたのは、宿儺との最終決戦も終わり、以前の日常が戻ってきた頃だった。
は京都姉妹校の生徒であり、乙骨は彼女の一つ先輩に当たる。そんなふたりの距離が近づいたのは、が東京に沸いた死滅回遊の置き土産的な呪霊討伐援護の任務を任されたからだ。もともと特級術師である乙骨に憧れていたは、実際に会ったときの彼の温厚で優しい人柄に惹かれて、憧れをガチ恋に変化させてしまった子だった。そして乙骨もまた、任務中や、それ以外でも自分のあとをちょこちょこくっついて来ては「乙骨先輩」と可愛く甘えてくる彼女に恋をした。特に彼女の話す柔らかい京都弁には弱いらしく、と付き合いだしたあとは常にデレデレだと、同級生の棘や真希から毎度突っ込まれるほど、彼女にベタ惚れしている。
とにかく小柄な彼女が必死になって乙骨のあとをくっついて来る健気な姿も、向日葵のように可憐な笑顔も、触れたらぷにぷにな頬も、全てが可愛くて仕方ない。そんな彼女の口から「乙骨先輩、今日は何してはったん?」とか「明日はおそなるから、電話できひんかもー…堪忍な、乙骨先輩」等々、可愛い京都弁が飛び出すのだから、さすがの乙骨も毎回ノックアウトされる始末。そんな感じなので、鈴を転がしたような声での京都弁は反則すぎる、と乙骨は常々思っている。
そもそも、京都弁を聞き慣れていない乙骨には、彼女が話す全ての言葉がえっちく聞こえてしまうので、と話したあとは、つい悶々とした気持ちで過ごす羽目になってしまうのが困りものだった。
互いに異性とちゃんと付き合うのは初めてで、そんな初心いふたりはキス止まりの清い関係を一年も続けているため、余計に下半身には良くない。ただ、乙骨としてはそろそろ次の段階までとの関係を深めたいと思い始めていた。
ちょうど、そんなときだった。彼女が温厚で優しいはずの、乙骨の地雷を踏みぬいたのは。
春一番が吹いた今日。ふたりは一カ月ぶりのデートをする約束をした。彼女が任務で東京まで出てくると聞いた乙骨は、自分もサッサと任務も終わらせ、彼女からの連絡を寮の部屋で待ちながら、早く早くと時間が進むこと願う。久しぶりに大好きな彼女と会える。そう思うだけで自然と顔がにやけてしまうのは仕方のないことだった。もまだ卒業するまでは京都校に通わねばならず、卒業するまで、ふたりは遠距離恋愛をしなくちゃいけなかったからだ。なので時々任務で乙骨が京都へ行ったり、彼女が東京に来たりするときくらいしか、ゆっくり会う時間もない。
だからこそ、今日はどこへ連れていってあげようか。映画も一緒に行きたいし、彼女の好きな遊園地にも連れて行ってあげたい。その後は都内のどこかで食事をして、もし彼女がいいというなら、朝まで一緒に過ごせる場所に泊まりたい。そう、そして出来ることなら彼女ともっと深い関係に――と、乙骨の願望は尽きることなく溢れてくる。
ただ、乙骨も強引なことをして可愛い可愛い彼女に嫌われでもしたら明日から生きていけないという思いもあるので、もしの覚悟が出来ていないのなら、もう少し待てる自信くらいはあった――はずだった。
午後五時を回ったところで、遂に待ちわびていた電話が鳴った。だが、嬉々とした声で電話に出た乙骨は、彼女のひとことで天地がひっくり返ったかと思うほどの衝撃を受けた。
『うち…他に好きなひと出来てもーて…せやし、もう別れてくれへん?』
その言葉を可愛い京都弁で言われた乙骨は、世界の終わりが遂に来たのかと思うくらいに驚いた。いや、遠恋にありがちな想像くらいはしたことがある。会えない時間が愛を育てるなんて、そんなどっかの歌の歌詞みたいな綺麗ごとで済めば、世界中の男女が遠恋するだろうと思っていたし、そのうちから「他に好きなひとができてん」と言われるんじゃないかと、電話で話すたび、密かにドキドキしてたりもする。けど、だけども。本当にそんな日がくるとは乙骨も考えてはいなかった。
なので彼女から『返したいものあるし、今から会えへん?高専の前におるんやけど…』と言われたとき、乙骨は速攻で彼女のもとへ走った。あまりに慌てたせいで、ベッドや椅子やらにガンゴンと足の小指をぶつけて悶絶しながらも、必死に彼女がいるという正門に向かう。
最初はにどういうことかと問いただそうと思っていた。でも結局は別れることになるんだろうと、少しの諦めもあった。他に好きな男が出来たのなら、どんなに引き留めたところで無駄な気がしたのだ。
だが、門へ向かうまでの間に、乙骨の中で何かが変わった。自分の知らないところで他の男と会ってるを想像したら、悲しみよりも、これまで感じたこともない怒りが物凄い熱量で湧き上がってくる。自分の中のどこに、これほどの怒りという感情があったのかと驚くほど、その怒りは大きく膨れ上がっていく。
このまま彼女の言う通りに別れてしまえば、一生後悔するだろう。そう思ったとき、乙骨の中でと別れるという選択肢は消えてしまった。代わりに、彼女を自分だけのものにする方法はないかと考える。そして、やはりと言うべきか。その答えは一つしかなかった。
その結果が――これである。
「……んあっ…あ…ゆ、ゆーた…く……」
門の前にいたを見るや否や、乙骨は彼女を寮の自分の部屋へ連れ込んだ。何かを言いかけた彼女のくちびるを強引に塞ぎ、ベッドへ押し倒したあと、驚いて固まった彼女の制服を半ば強引に乱していく。必死に伸ばしてくる手は邪魔なので、自分のベルトを外してそれで縛ってしまった。もう、ここまでしてしまえば止めることも出来ず、また止める気もなかった。いつもは優しくキスをする彼女のくちびるを無理やり塞ぎ、最初から舌を捻じ込んで口内を貪ると、の口からはすぐにくぐもった喘ぎが漏れてくる。この可愛い声も、この艶めくくちびるも、彼女が好きになったという男は知ってるのか、と思えば思うほどに怒りがこみ上げた。
上着の合わせ目を開き、中に着ているシャツのボタンを一つ一つ外していけば、その下は可愛らしいブラジャーをつけた膨らみが現れた。それを見た瞬間、腰の辺りがずくんと疼き、乙骨は躊躇うことなく指でブラジャーを押し上げる。ぷるんと揺れて現れた乳房に、乙骨の残り僅かだった理性は完全に崩れ去った。大好きな彼女のおっぱいを生で触れるのだから煩悩しか湧かないのは当然といえば当然だ。
「や…ぁ、ゆ、ゆーたく…待っ…ってぇ、ひゃぁんっ」
恥ずかしがる彼女の制止にも耳を貸さず、乙骨は容赦なく淡いピンク色をした乳首に吸い付いた。初めて味わう彼女のもちもちとした肌と、口内で少しずつ硬さを増していく乳首に興奮し、乙骨の下半身が痛いくらいに勃たちあがる。これまで我慢してきた分、触れなくてもイけそうな気がするほど、勃起した部分が敏感になっている。ただ乙骨は自分の欲を吐きだすよりも、のことを感じさせたいという欲の方が強かった。どろどろによがらせて、自分以外の男なんか忘れさせてやる。乙骨の願いはその一点のみだった。
そして、にとっては長い長い責め苦が続き、それは現在も続いている。身体中、赤い跡を残されながら、乙骨のくちびるが触れなかった場所はないと思うくらい、全身を可愛がられている。
「…んあっあ」
「…またイけたね。えらいえらい」
彼女のぷっくりとした可愛らしい花の芽は、すでに唾液と愛液にまみれて、てらてらと厭らしく光っている。そこへ舌を伸ばすだけで、ナカへ埋めた指を掻きまわすだけで、「ちゃんは簡単にイってしまうんだから、ほんとえっちだね」と言葉でも攻めたて、彼女の羞恥心を煽った。中へ埋めた指をぎゅうぎゅう締め付けてくる感覚に満足げな笑みを浮かべながら、乙骨は「そろそろ大丈夫かな」と、再び体を起こし、彼女の半開きのくちびるへ吸い付いた。何度もイったせいか、はすでに口をはうはうと言葉にならない声を震わせるだけで精一杯のようだ。じゅっと小さな舌を吸い、口蓋を舌先でなぞり上げ、口内を余すとこなく味わったあと、乙骨はとろんと呆けているの顔を覗き込む。口元からツツツと唾液が垂れるのを見れば、すでに全身の力が抜けているようだった。
「…もう僕以外の男を見たらダメだよ。分かった?ちゃん」
「…はう…ま、待って…さ、さっきの…はちが…っ…ん」
すでにガチガチになってる自身の劣情を、たっぷり濡らした蜜口へぐりっと押しつければ、彼女が何やら慌てたように首を振りだした。でも乙骨はその意味など気づきもせず、今日まで溜め込んでいた情欲を解き放つべく、彼女のナカへ強引に挿入していく。ねちっこく何時間も可愛がられたその場所は、乙骨の劣情を容易く飲み込み、じゅぷという卑猥な音を立てて奥へと誘うようにうねった。だが処女なだけにさすがにきつく、油断すると押し戻されてしまう。
「んんっぁっ」
初めて男を受け入れた彼女の声がいっそう跳ねて、苦しげな吐息を漏らす。その顏にすら欲情して、乙骨は本能のまま腰を押し進めた。
「ちゃん…痛い?」
物凄い圧迫感はあれど、あまりにするすると入っていくので、乙骨はつい訊いてしまったが、が左右に首を振るので、ほっと息を吐いて、ゆっくりと腰を動かしていく。途中、何かに当たった気がしたのは処女膜というやつだろう。そのときだけはもひゅっと息を吸ったようだが、だいぶ濡れているので痛みはないようだった。心配だった出血も思ったよりは少ない。
とにかく繋がってる部分が熱く、また腰を動かせばぬちぬちとした音が漏れるくらいに彼女のナカも蕩けているので最高に気持ちがいい。
「すご…気持ちいい…ちゃんのナカ…すっごいとろとろなのにいい感じに締まるから、すぐイっちゃいそう…」
「あ…う、動かんと…いて…ぇっ」
「むり…そんな可愛いこと言われたら、余計に腰がとまらなくなる…」
に好きな男が出来たと言われたとき、もしやその男とシてしまったかも、という一抹の不安もあったのだが、こうして抱いてみれば彼女が処女のままだという事実にも安堵の息を漏らす。ただ、は乙骨が腰を動かすたび、「ァ、待って…」や「話…き、きいて…ぇ」と、必死に何かを訴えてくるので、そうなると乙骨もだんだん気になってくる。なので一時、動くのを止めてあげると、は涙をぽろぽろ零しながら「ご、ごめんなさい、憂太くん…」と何故か謝ってきた。よく分からない謝罪を聞いた乙骨の脳内に、ぽんぽんクエスチョンが並んでいく。
いや、謝るならむしろ強引に彼女を抱いてる自分が謝るべきだ。なのに何故、半ば犯された感じで処女を奪われた彼女が謝るのか乙骨には理解できない。とりあえず零れた涙を指で優しく拭いながら、「何でちゃんが謝るの?謝るなら僕の方でしょ…」と聞いてみる。怒りに任せて強引なことをしてしまったが、を大事に思う気持ちに嘘はない。ただ、自分から離れていこうとする、その一点だけが許せないのであって、出来れば彼女を泣かしたくはなかった。
だが、がべそべそと泣きながら言った「ちゃうねん…さっきの…嘘やねん…」という言葉を聞いたとき、乙骨の思考が一時停止をした。
「え…?…」
何が?と聞こうとしたとき、彼女は涙の溢れた目を乙骨に向けながら「好きなひとができた言う話も、別れて言うたんもぜんぶ…」とあっさり白状した。
「……は?!嘘?」
その言葉を理解するまでに数秒を要し、理解したときは死ぬほど驚いてしまった。何から考えればいいのかも考えられず「嘘って、何で?」と問いただすことしか出来ない。そこでは「今日、何日か分かる?」と恐々訊いてきた。はて、今日?と乙骨は首を傾げたものの、今日はと久しぶりに会う日、としか出てこない。他に何か特別なことでもあったのか?と考えた。
そんな乙骨を見上げていたは言いにくそうに、でも小さな声で「…四月一日…やろ?」と呟く。それを聞いた乙骨は確かに朝、起きたときは今日から四月だなと認識した覚えはあれど、それ以上の感想は出てこない。ただ繰り返し考えていたとき、の言った「嘘」というキーワードが脳内で弾けた。
「四月一日…四月の…って、ああぁ!」
四月一日。この日は嘘をついても良いとされ、世界各国でも行われている風習のある日だ、というのを乙骨は理解した。そして自分の下で未だに目を潤ませているを見下ろす。
「え…ってことは…ほんとにさっき僕に言ったことは…全部うそ…」
「せやから、そう言うたやん…なのに憂太くん、ちいとも聞いてくれへんし…強引にえっちぃことするし…」
と言いつつ、彼女の方も特に怒った様子もなく、何となく頬を染めてるので、強引にエロいことをされたのが嫌だったわけでもないらしい。ただ、乙骨の方はそうもいかなかった。彼女を初めて抱くときは、ムードのある場所で優しく…などと夢を見ていただけに、自分がした行為に激しくショックを受ける。こんな話をしている間も、ふたりは依然として繋がったままであり、気まずさでひとが死ねるなら僕は今死ねる、と乙骨は思う。さっきまで昂っていた場所が彼女のナカにあるにも関わらず、罪悪感という重みで一気に萎えていく気がした。
だが、その前に、固まった乙骨が心配になったのか、彼女が潤んだ瞳を悲しげに揺らし、縛られた手を伸ばして乙骨の腕に触れてきた。
「あ、あの…憂太くん…怒ってはるん…?ほんまにごめんなさい…堪忍して」
「……ぁっ」
その可愛らしい謝罪を受けた瞬間、萎えかかっていた場所がむくむくと起き上がっていく。それはにも伝わったらしい。「ひゃ、おっきくなった」と可愛い声をあげた。
「…ちゃんが可愛いこと言うから…っていうか…僕もごめん…エイプリルフールなんて忘れてたし勘違いした上に強引にしちゃって」
はあっと項垂れながら乙骨が謝ると、はううん、と首を振って微笑んだ。その顏も可愛いなぁと頬が緩みそうになるのを必死で堪える。
「うちは…ちょっと嬉しかったし…」
「…嬉しい?怖かったじゃなく?」
「うん…だって憂太くん、いつも優しいやん?でもさっきみたいな強引な憂太くんも好きやなぁ思て…」
そう言いながらポっと頬を染める彼女は、死ぬほど可愛かった。ついでに言えば、耳に心地よく響く彼女の京都弁だけで、更に埋め込んだままの場所がむくりと硬さが増していく。がまた少し驚いたような顔で、大きな目をぱちぱちと瞬かせた。
「ゆ、憂太くん…またおっきくしたん?」
「いや、もう…さっきからその京都弁が反則なんだって…」
「…もぉ…京弁話す子なら誰でもええんちゃうの」
「そんなわけないでしょ。ちゃんが話すからえっちな気分になるんだよ」
スネるが可愛くて、乙骨は僅かに尖ったくちびるをちゅっと啄む。実際、今言ったことは本当で、彼女が話すから可愛くもあり、えっちでもあり、こんな風に欲情してしまうのだ。現にさっきから動きたくて腰がうずうずしてしまっている。
「…ってことで続き、していい?」
「…そ、そんなん聞かんといてよ…恥ずかしいやん…」
「だから可愛すぎ…」
ポっと頬を染めてそっぽを向くに、乙骨の語彙力はどんどん奪われていく。もう頭の中は可愛い、大好き、可愛い、抱きたい…以下エンドレス。
誤解をしたことで強引に事に及んでしまったものの、ここまで来れば最後まで抱かないと気が済まないし、さっきよりも優しくしてあげたい気持ちが強かった。
「今度は優しくするから」
「…ん。優しくして」
見つめ合いながら微笑を交わし、ふたりのくちびるが重なる。ゆっくりと抽送を再開し始めると、再び可愛い声が部屋に響き始め、繋がった場所からもじゅぷじゅぷと卑猥な音が漏れ始めた。腰がぶつかる音さえ、静かな室内に響く。
「かわい…ちゃん。気持ちいいんだ」
再び赤く染まっていく彼女の頬にちゅっと口づけながら、ついさっきの余韻で意地悪を言いたくなってしまう。そのたび締め付けられるので、もまんざらでもなさそうだ。恥ずかしそうにしながら「い、言わんといてよ…」と瞳を潤ませる。その表情と言葉に更に欲情したことで、ぐいっと腰を押し付け、最奥を突いたときだった。彼女の子宮を刺激したのか、一際甘い声を上げて――
「んあっぁ、そ、そこ堪忍して…ゆーた、くん」
「……あ」
乙骨の中では鉄板ともいえる、あまりに可愛いワードが出た瞬間、限界だった場所が一瞬で上り詰めていく。もイったことで一気に締め付けられ、今の状態でその台詞はほんとのほんとに反則だったらしい。彼女の声で「堪忍して」は本気で乙骨を殺しにくるくらい、エロ可愛かった。おかげで、まだイキたくもなかったのに強制的に吐精させられてしまった気もするが、彼女が死ぬほど可愛いので幸せなことに変わりはない。
「ね、今のもう一度言ってみて」
「え…か、堪忍して…?」
「ヤバい…かわいい」
たったひとこと言っただけなのに、乙骨は蕩けたような顔をする。そんな乙骨の意外な一面に、「どんだけ京都弁に弱いん?」と笑いつつ。彼女もそんな彼を見て「憂太くん、ほんまにかわええなぁ」と思ってることを、乙骨だけが知らない。
「何で笑うの」
「だって…憂太くんがえっちやし」
「男はみんなえっちだよ。好きな子を抱いてるときはなおさら」
「…あ…んっ」
意地悪な笑みを浮かべながら、また彼女の乳房をやんわり揉むと「だから、もう一回していい?」と甘い顔で彼女を誘惑してくる乙骨は、彼女の知る「温和で優しい紳士な憂太くん」ではなく、ただ、ひたすらという女の子と、その子が話す京都弁に弱いだけの男だった。
おかげで彼女は朝まで啼かされる羽目になり、乙骨の部屋からはひたすら可愛い「堪忍して」という京都弁が聞こえてたそうな。
||| おしまい |||