はぁはぁと自然に息が上がって来るのを感じながら、瓦礫が転がる暗い通路をはひたすら走っていた。こんなに走ることになるなら革靴じゃなく、家入に入学祝いとして買ってもらった運動シューズを履いて来れば良かった、と思ったところであとの祭り。
行き先を聞いてもピンと来なかったは高専の制服に革靴のまま、この場所へと来てしまった。
「みんな、どこ行っちゃったの~?」
先ほどから五条や夏油、そして同級生ふたりの気配がない。
少し遅れて歩いていたのだが、角を曲がった時にはすでに4人の姿はなく、勝手に歩き回ったことでは道に迷ってしまった。あげくに"アレ"だ。
「何よ、アイツ…まだついて来る…!」
走りながらも後ろを見れば、顏が沢山くっついている気持ちの悪い呪霊が《チューしよぉ~》と言いながら追いかけて来る。
一応、呪術師としての勉強や体術は高専で、そして鬼の力の使い方などは天夜に指導してもらっているのだが、皆とはぐれ、ひとりのところへ突然呪霊が現れたことで軽くパニックになったは、呪霊を前にした時に一番してはいけない方法をとってしまった。
「呪霊に遭遇したら絶対に背中は見せるな」
五条にそう言われていたにも関わらず、は気持ちの悪いソレを見た瞬間、考えるより先にくるりと踵を翻してしまった。
言ってみれば条件反射だ。その後は足が勝手に動き、そのまま逃げ続けて今に至る。
「もぉー!いくら繁忙期で人手不足だからって初任務でこんな呪霊の巣窟に1年を連れて来るなんて、どんな学校よ…っ」
そんな文句を言いながらも、は先の見えない追いかけっこに少々草臥れて来た。
言われるがまま高専に入学して3ヶ月。
術師として、鬼として、両方の戦闘の基礎などを学んで来たが、今日は初めて先輩である五条と夏油の付き添いで1年のたちは祓徐の任務を任された。
しかし連れて来られたところは以前から五条たちがたびたび祓徐に訪れている、いわば呪霊の巣窟のような寺院で、低級呪霊からそれこそ一級相当の呪霊までいるらしい。
「実戦練習にちょうどいいだろ」
五条はシレっとした顔で言っていたが、初任務にしてはハードな場所であることは間違いなかった。同級生である灰原は初の任務に喜んでいたが、もうひとりの同級生、七海建人は「1年の私達が来ていい場所じゃないでしょう」とウンザリした顔をしていたのを思い出す。
「も~!いくら先生に引率を任されたからって、悟のヤツ、こんなとこに連れて来るなんて…って…はぁ…もうダメ…疲れた…」
鬼のくせに体力ねぇなあ、と五条にも笑われたが、今日はちょうど先週の儀から1週間目。
昨夜当たりから空腹感が出て来たのもあり、余計に体力を消耗している気がした。
「アイツが喰えればマシなんだろうけど――」
と言いつつ後ろを振り返る。
未だに追いかけて来る"ソレ"はウネウネとした不気味な動きをさせながら、の方へ向かって来る。
《チュ~しよぉ~よぉ~》
「……げ…無理。生理的に無理!」
あの気色の悪い呪霊を喰うなんて、とてもじゃないが出来そうにない。
というより近づきたくもない。
かと言ってこれ以上走って逃げるのもさすがに疲れたは、仕方ないとばかりに足を止めようとした。しかしすでに走り回ってフラフラだった足が、落ちていた瓦礫につまづき、の体は無情にも前のめりに倒れて行く。
ズザっという音と共に派手に転んだは「いったぁ…」と痛みに顔をしかめたが、ふと目の前の地面に影が落ちたのを見て小さく息を飲む。
慌てて振り向いた背後には、気持ちの悪い呪霊の顏と言う顔が口らしきものを尖らせて《チュ~しよぉ~》と迫って来るところだった。
「きゃぁぁぁっ」
実戦など慣れていないにこの状況を対処するという頭はなく、ただ近づいて来る呪霊の口から顔を背けることしか出来ない。
ダメだ、と目を瞑ったその時、突如目の前にいた呪霊の顏が、まるで掃除機にでも吸われているかのようにグニャリと歪みながらどこかへ流れていく。
慌てて後ろを振り返ると、そこには夏油傑の姿があった。
今の呪霊は夏油の差し出した手のひらへ、まるで吸い込まれているかのように引き寄せられ、次第にその形がまん丸いボールのような形状になっていく。
「…す…傑…」
「大丈夫かい?」
夏油は手のひらに出来た黒いボールのようなものをポケットへ突っ込むと、苦笑交じりでの方へ歩いて来た。
「あ…ありがとう、傑」
「もう大丈夫。今のは私がとりこんだから」
夏油の術式は以前に聞いている。
とりこむところは初めて見たが、あんなコンパクトになってしまうものなんだとは少しだけ驚いていた。
「あぁ…膝を擦りむいてる」
夏油はしゃがみ込んでの上半身を起こすと、の膝から血が出ているのを見て顔をしかめた。当の本人は苦笑交じりで首を振ると、
「大丈夫だよ、これくらい…。すぐ治せるし」
そう応えた時、ふたりの背後から「なーにやってんだよ、」と呆れたような声が飛んでくる。顔を上げて見れば、五条が苦笑交じりに歩いて来るところだった。
「悟…」
「あんな雑魚、オマエなら一瞬でやれるだろーが」
「だ、だって急に出て来るから驚いて―――」
「当たり前だろ。呪霊が"今からアナタを襲いまーす"なんて親切に前置きしてくれるとでも思ってたのかよ」
肩を竦めながら呆れ顔で見下ろしてくる五条に、はむっと目を細めたが夏油は「悟…言い方」と窘めるように言って溜息をついた。
「彼女は実戦に慣れてないんだ。仕方ないだろ」
「実戦なんかなくたって本能ってもんがあんだろ。は階級で言えば特級クラスの鬼なんだからな」
「……分かってるよ」
五条の言っていることは最もだ。
が本気で戦おうと思えば今のような低級呪霊など一瞬でやれる。
しかし経験のないは突発的に起きた状況にはどうしても反応が鈍くなり、対応が遅くなるのだ。
「チッ。天夜が小さい頃からを鬼として育てていればもう少しマシだったのによ」
「悟。今更そんなこと言ったって仕方ないだろ。だからこそ、こうして経験を積ませようとここへ連れて来たんだ」
「わーってるよ。つーかも俺達から離れんな。足が遅いんだよ、オマエは」
五条はムっとしているの頭をぐりぐりっと撫でると、寺院の奥へと歩いて行く。
それを見ていた夏油は苦笑いを浮かべながら、の腕を引っ張って立たせた。
「口は悪いがあれでも多分心配してるんだと思うよ」
「…そうかなぁ。どうせ足手まといとしか思ってなさそう」
は口を尖らせつつ、スカートについた土を払うと、出血のしている傷口へ手を当てた。
するとアッという間に血が止まり、傷などまるでなかったかのように綺麗に治る。
「へぇ、大したもんだな」
「私、ドジだから鬼の力の中でもこれだけは最初に覚えたの。今は多少の傷なら他人も治せるようになったから、もっと極めたいと思って」
「術師の中でも反転術式を使えるものは少ない。特に他人を治せる術師は硝子くらいだ。も出来るなら頼もしいよ」
「そうなったら傑が大怪我した時、治してあげるね」
「そりゃ心強いな」
夏油はの頭を撫でながら優しい笑みを浮かべる。
そんな夏油を見上げながら、悟もこれくらい堂々と優しければいいのに、とは思った。
優しいところがあるのは分かっているが、あの軽薄さと口の悪さでそれをわざと隠してるんじゃないかと時々思ってしまう。
「おい、早く来いよ。ふたりとも!まだまだ呪霊はわんさかいるんだからな!」
サッサと歩いて行った五条が苛立ったように怒鳴って来るのを見て、夏油は片手を上げた。
「悟がイライラしてるから行こうか」
「うん」
夏油に手を引かれながら、も五条の後を追いかけて行く。
灰原と七海はふたりで別の場所を祓っているのか、姿が見えない。
「…なーに手ぇ繋いでんの、オマエら」
「…え?」
同級生の気配を探るのにキョロキョロしながら歩いて行くと、不意に不機嫌そうな声が降って来た。視線を前へ戻し、少しだけ見上げると、五条がサングラスをズラして目を細めている。
アパタイトブルーの眼が見ている先には夏油に繋がれたの手があった。
「あ…こ、これは別に引っ張って起こしてもらってそのままだっただけだもん」
特に意識などしていなかったが、突っ込まれると急に恥ずかしくなり、はパっと夏油の手を離してしまった。
「あっそ。つーか転ぶなよ。ドジ」
「あれ、ヤキモチかい?悟」
「はあ?何で俺がオマエらに妬くんだよ。バカじゃねーの」
呆れたように吐き捨てると、五条は再び先頭を歩き出した。
夏油は笑いを噛み殺しながらその後をついて行ったが、は五条の後ろ姿を見ながら小さく溜息をついた。
(やっぱり足手まといと思われてるのかな…)
本来なら五条と夏油だけで簡単にここの呪霊くらいは祓えるのだ。
しかし今日は1年の引率もかねている為、後輩のペースに合わせなければならない。
五条ほどの強い術師になると、あれくらいの呪霊でモタついてるのがイライラするんだろうなと思った。
(練習してきたんだし、ちゃんと落ち着いてやらなくちゃ)
さっきは急なことでパニくって失敗したが、今日は実戦練習なのだからしっかりしないと、と気を引きしめる。
「、早くしろ。またはぐれるぞ?」
「ご、ごめん」
随分と先に行ってしまった五条と夏油だが、が追いつくまで待っていてくれた。
は急いでふたりの方へ走って行く。――その時だった。
五条が何かを叫んだのと同時に、右側の壁が吹き飛び、そこから巨大な呪霊が顔を覗かせた。
が大きく瞳を見開いた時にはすでに身体は呪霊の巨大な手に捕まれていて、ミシミシと骨の軋む音が辺りに響く。
「あぁぁ…っ!」
「…!!」
激痛に思わず声を上げる。
五条はすぐに攻撃態勢に入ったが、このまま呪霊に術を使えばまで巻き込みかねない。
夏油も呪霊操術を発動させ巨大呪霊を囲んだが、は呪霊の手の中だ。
攻撃を仕掛けたとして絶対にケガをさせないという保証はない。
は自分で治せるとは分かっていても故意に肉体を傷つけると思うと躊躇してしまうのだ。
「おい、!オマエの力でどうにかしてそこから出ろ!」
「…わ…分かって…る…っ」
両腕ごと掴まれた状態の身体は全身の骨が折られそうなほどの圧迫感と激痛で、は意識が飛びそうだった。
それでも、自分のせいでふたりが攻撃出来ないとすれば、それは本当に足手まといでしかない。
せっかく今日まで色々と教えて貰ったのだ。それを活かさなければ――。
そう思った時、巨大呪霊の出て来た壁の向こうから七海と灰原が走り出て来るのが見えた。
「あぁぁ!ちゃん?!」
「チッ…私達が仕留め損ねたせいで…!」
灰原は驚愕し、七海の表情には悔しさが見て取れる。
この呪霊はふたりが追い立てたものだったらしい。
「…くっ」
この巨大呪霊を4人の呪術師が囲んでいる。
早く抜け出さないと、このままでは他にも怪我人が出てしまうかもしれない。
は全身に巡る妖力に意識を集中させ、掴まれている力に抵抗するイメージを持って力を発動させた。天夜に教えられた通り、呪霊の呪力を喰うのも忘れない。
その瞬間、を取り囲むように青い炎が出現し、巨大呪霊の手に燃え移る。
大きな悲鳴を上げ出したところをみると効果はあるようで、呪霊の手の力が一瞬だけ緩んだ。
「…!」
手からするりと抜けたの身体は、真っすぐに落下していく。
それでも足から上手く着地出来ればダメ―ジは最低限で済む、と思った時だった。
下からの風を受けてふわりと制服のスカートがめくれたのを、は慌てて手で抑えた。
しかし、そのせいでバランスを崩したは、足からではなくお尻を下に落下するはめになった。
「きゃー-っ」
これでは尾てい骨が粉々になってしまうと目を瞑った時、自分の体がふわりと抱えられたのを感じて目を開けた。
「ったく…パンツ見えそうになったくらいでパニくんなよ…」
「悟…?」
空中での身体を受け止めてくれたのは五条だった。
無限を操り、自らの身体も宙に浮かせた五条は、呆れ顔のままを抱えて静かに地面へ下りた。
「あ…ありがとう…」
「マジ、どんくせーな、は。俺が動くなっつったのに」
「き、聞こえなかったもん…」
くしゃりと頭を撫でられ、はムっとしながら反論した時、大きな地響きと共に巨大呪霊が後ろへひっくり返った。
見ると同級生の七海と灰原が呪霊の足を片方ずつ斬り落としている。
「七海くんと灰原くんにやらせてるの?」
「あー何かアレ、アイツらが逃がしたヤツみてえだぜ?後始末は自分達でつけるとさ」
「…そっか」
「つーか、オマエ、体は大丈夫かよ?」
「…うーん…肋骨が何本か折れた」
「マジ?」
「でも治せるから…。それよりごめんね、悟。私が捕まったせいで攻撃出来なかったんでしょ…?」
あの時、五条が攻撃態勢に入ったのをは気づいていた。
なのに術を発動するのを一瞬躊躇ったのだ。
の言葉に五条は僅かに顔を反らすと「あれ以上オマエがモタモタしてたら攻撃してたよ」と皆の方へ歩いて行く。その後ろ姿はどこか照れているようにも見えて、は小さく吹き出した。
「ほんと…分かりにくい」
見れば灰原と七海が瀕死にした巨大呪霊は、最後夏油が取り込んだところで決着がついたようだった。七海はげんなりした顔で「こんなの1年の仕事じゃない…」とボヤき、灰原に至ってはその場に座り込み、夏油に何やらお礼を言っているようだ。
それでもが歩いて行くと、灰原は慌てたように立ち上がった。
「ちゃん、ごめん!俺達が逃がしたせいであんな――」
「ううん。私は平気だから気にしないで。どんくさくて捕まっちゃたわけだし…」
「でも俺達があそこで確実に仕留めておけば…ケガは?大丈夫?」
「うん。もう治したから」
「そっかー。良かったぁ」
灰原は大げさなほどに息を吐き出し、安堵の表情を浮かべた。
初めて会った時にも思ったが、この灰原雄という同級生は真面目で正義感の強いタイプらしい。
「さん、すみません。大丈夫でしたか?」
そこへ七海もやってきた。
七海は灰原とは真逆のタイプで、彼は正義感というより仕方なく術師をやってるようなタイプだった。無駄なことはせず、出来ることなら時間外労働は避けたいと前に切々と訴えていた。
「うん。私は大丈夫。それより…まだ他にもいるんだよね」
「そうみたいですね…。だから五条さん達はこの場所を選んだんでしょう。実戦練習になりますしね」
「はあ…この任務が終わる頃には何回ケガしてるんだろ…」
が深々と溜息をついていると、五条が「おーい、1年!次いくぞー!」と呼んでいる。
それを虚ろな目で見た七海は「…サッサと終わらせましょう」と呟き、足を引きずるように先輩二人の方へ歩いて行った。
「七海くんって何で呪術師になったか分かんないくらいやる気が感じられないよね」
嫌々と言った様子の七海を見て、が笑った。
「あ~分かる。でもアイツは術師の才能あるし、俺はもっと張り切って欲しいけどねー」
「灰原くんも才能あるじゃない」
「そう、なのかな。まーでも俺は自分がやれることを精一杯やるだけかな」
とてもシンプルな灰原の言葉は、の胸にもスっと入って来る。
そうだ。今自分が出来ることを精一杯頑張るしかない。
高専で術師をやって欲しいと言われたが、やると決めたのは自分自身なのだ。
「そうだね…。私も…そう思う」
「うん。頑張ろうね、ちゃん」
灰原は爽やかな笑顔を見せると「夏油さーん!待って下さいよ~!」と急いで前を行く先輩を追いかけて行く。も笑みを浮かべながら、その後をついて行った。

「はぁー…もう無理…動けない…」
初めての実戦任務から帰って来たは、寮の自分の部屋へ戻ってすぐにベッドの上へ倒れ込んだ。あれから数十体の呪霊を見つけて祓うの繰り返しで、と灰原、七海の3人でほぼ終わらせたようなものだった。
「オマエらの実戦訓練なんだし、俺と傑が手を貸したら意味ねーじゃん」
五条はそう言って殆ど高みの見物をしていた。
言われてみれば確かにそうなのだが、何せ呪霊の数が多かったこと、そして初めての実戦で緊張していたのもあり、帰りは疲労がピークに達したのだ。
ついでには空腹も重なり、全身が疼いて来るのを感じた。
なのに手足が鉛のように動かない。
「どうしよう…お風呂にも行きたいのに…」
高専に戻って来た時、今日は交換の儀ということで五条がこっそり「後で部屋に行くから待ってろ」と言って来た。この状態では五条に生気を貰うまで動けなさそうだ。
「悟と傑は今日の任務の報告しに行くって言ってたっけ…」
寝返りを打ち、天井を見つめながら小さく息を吐く。
普通にお腹も空いて来たが、生気が足りないと時に食べる人間の食事はとても不味く感じる為、仕方なくは五条を待つことにした。
「明日は体術訓練だっけ…高専ってなかなかハード…」
以前は五条家で何気にのんびり過ごせていたが、いざ今年の春から高専に入って見れば、自由な時間など殆どないようなものだった。
一応休みはあるが、疲れすぎてどこかへ遊びに行こうという気力も湧かない。
結果、高専の敷地内で灰原や七海とテニスなどのスポーツで時間を潰すか、部屋で読書をするといったくらいしかやることがなかった。
「今度、3人で映画でも行こう」
と灰原に誘われたので、の目下の楽しみはそれだった。
七海は面倒そうだったが、灰原がしつこく誘ってたので最終的には渋々ながら行く事になるだろうな、とは思う。
その時――コンコンとノックの音が聞こえてはハッとしたように目を開けた。
「いけない…寝ちゃってた…」
気づけば室内は真っ暗で、時計を見れば帰って来てから一時間も経っている。
まだ眠たい気もするが、はゆっくりと体を起こして何度か目を擦った。
するとドアが開き「~?いねーの?」と五条が入って来る。
「…悟?」
「うぉ!い、いるなら返事くらいしろよっ」
暗い部屋でベッドの上にボーっと座っているを見て、五条はギョっとしたような顔で歩いて来た。
「何だよ、寝てたの?」
「…うん。疲れちゃって…」
「はあ…あれくらいで疲れんなよ…」
五条は苦笑交じりでベッドに腰をかけると、未だ眠そうなの顔を覗き込んだ。
「…そりゃ悟は慣れてるかもしれないけど、私達は初めての実戦だったし疲れるよ…あんな数いるなんて思ってなかったし」
「あーあそこは呪霊にとっちゃパラダイスみたいな場所だからな。祓っても半年も経てばすぐ別のが発生すんだよ」
五条は笑いながら肩を竦めると「それより…明日の体術訓練も俺と傑が指導しろって言われたからな」と言って来た。
それにはも思わず顔をしかめる。
「お、何だよ。その嫌そうな顔は」
「だって…悟、絶対めちゃくちゃ厳しそうだし…」
「そら厳しくしなきゃ指導じゃねーだろ。オマエはケガしすぎだから少しは回避ってもんを覚えろ」
「……分かってるよ」
確かに、五条の言う通り今日大なり小なりケガをしすぎた。
そのせいで治癒の力を使いすぎたので、更に空腹感が早まった気がする。
今も五条からは誘うような甘い香りがしてきて、は喉の渇きを覚えた。
「…悟…」
「ん?お腹空いた?」
「…うん」
素直に頷くに五条は笑みを浮かべると、かけていたサングラスをゆっくりと外した。
暗い室内にキラキラと輝くふたつの虹彩が、の碧眼を射抜くように見つめる。
「こういう時だけ素直だよな。は」
「……さと…る」
「…それにやたらと色っぽい」
碧眼を潤ませ、欲しいと強請るように手を伸ばしてくるを見て、五条は艶のある笑みを浮かべた。伸ばして来たの手を絡めとると自分の方へ引き寄せ、その細い身体を腕に収める。
そして顎を持ち上げると、薄っすらと開いているの唇へ自分の唇を重ねた。
「……ん…」
熱いものが互いの口内から体へと注がれていくのを感じながら、五条はを抱く腕に力を入れた。今日の任務で擦り減っていたらしいは、先週よりも食欲が旺盛のようだ。
暫し暗い室内に唇が交じり合う音が響く。
「…ん、もっと…」
僅かに唇が離れた合間にが呟き、五条は苦笑いを浮かべた。
薄暗い部屋で男女がふたり、ベッドの上で口付けをしているのに、それが空腹を満たすためだと誰が思うだろう。
その時、五条の脳裏に先日、当主である父に言われた言葉が過ぎった。
"オマエもかなり呪力量が増えて来たことだし来年は18歳だ。そろそろ次のステップへいくことを考えろ"
"次…?"
"そうだ。と交わることで今のオマエに足りないものを補える。その覚悟をしておけ。そして彼女にもそう伝えなさい"
父に言われ、五条は顔が引きつったものの、それを一度も考えたことはないかと問われれば、答えはNOだ。やはり術師をしている以上、今よりも更に高みを目指したいと思う。
最強だなんだと周りにもてはやされはしても、五条は今の自分に満足などしていない。
とはいえ、五条が18、が17になった時、17歳の少女にそれを頼めるかと問われると、さすがの五条も多少は二の足を踏んでしまう。
そういう制約だと言われればそうなのだろうが、実際今より遥か昔に交わされ、男女の事情も今とはだいぶ違う。
制約だから、と割り切って恋人でもない女の子を抱けるほど、五条もまだ大人になり切れてはいない。どうしたって私情は入ってしまうのだ。こうして、唇を重ねているだけだとしても。
「……ん、もういいだろ…?オマエ、喰いすぎ」
「…ん…」
ゆっくりと唇を離した五条は、とろんとしたの瞳を見て、僅かに視線を反らした。
父に言われないでも、何度もこうして唇を合わせていれば、男なら自然とそういう欲求が出てきてしまうのも事実だ。
交換の儀を始めてからというもの、何度このまま深く口付けてしまいたいと思ったかしれない。
しかしそこは五条の中に残っている僅かな理性が引き留めてくれているのだ。
力を手に入れる為の行為なのに、違う方へ意識を持って行かれそうになるのは五条の歳なら仕方ないのだろうが、制約に付け込んでまで肉体の欲求を解消したいとは思わない。
もし、五条がその行為をに求めるとするならば、それは心の底から純粋に力を欲した時、それか―――をひとりの女性として、本気で愛した時だろう。
(まだ…早い。まだ焦る時じゃない…)
自分に言い聞かせるように、五条は腕の中のをそっと抱きしめた。
まだまだ恋には至らないふたり…どっちが先に状態です笑。
そして映画0のラスト、先生のご尊顔がどーんと来て、その美しさにビビりました笑
テレビアニメよりも美しいのでは…💡( ゚д゚)ハッ!
目隠ししてる時と外した時の雰囲気がガラリと変わるので、まるで別人…
あんな先輩や同級生がいたら常に拝んでしまいそうですね笑
全ての戦闘シーンもめちゃくちゃカッコ良かったです🥰
今夜も見て寝よう…笑👈
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目隠ししてる時と外した時の雰囲気がガラリと変わるので、まるで別人…
あんな先輩や同級生がいたら常に拝んでしまいそうですね笑
全ての戦闘シーンもめちゃくちゃカッコ良かったです🥰
今夜も見て寝よう…笑👈