逢瀬・後編-03



しばし過去の自分の行いを思い返していた五条は、我ながら鬼畜なことをしてたな、と内心苦笑した。なのに彼女へ触れてしまうと、そんな罪悪感も簡単に消える。
逃げんな、と言った五条に対し、は困ったように、それでも恥ずかしそうに頬を赤らめた。同時に、早く庭へ戻らないと、という気持ちもあるのか、視線が窓の外へと向いている。そんな彼女の意識を自分に向けたい五条は耳元で甘えるように囁いた。

「やっぱダメ?」
「…え…だから…」

それまで腰を抱きよせていた五条の手がの尻の丸みを撫でていく。その刺激に恥ずかしさがこみ上げ、は僅かに体を捻った。
そのとき、五条があることに気づき、尻を撫でていた手を、はたと止める。

「…つーか…、お前、まさか下着つけてねえの?」
「き、着物だし…」
「いや、普段仕事用のは穿いてんじゃん」
「こ、こういう公の場では昔に倣って…下着はつけないのっ」

恥ずかしさのあまり、つい昔のような口の利き方をしてしまった。しかし五条は怒るでもなく、むしろ嬉しそうに口元を緩めている。
ただし、その笑みは悪戯を思いついたような、幼い頃のヤンチャな五条と重なって見えて、は軽く笑みを引きつらせた。こういう顔をしたときの五条は彼女にとって嫌な予感しかしないのだ。

「さ、悟…?あの、ほんとに戻らないと――ん…っ」

スーツの上からでも分かる筋肉質な胸を両手で突っぱね、体を離そうとした瞬間、尻を撫でていた手が動く。着物を合わせた裾から冷んやりとした手が侵入して、その悪戯な手は無防備な内股をゆっくり、厭らしい手つきで撫でていく。そのくすぐったさと甘い刺激で思わず声を洩らしたを見て、五条は更に悪い笑みを浮かべた。

「着物、乱さなきゃいいんだろ?」
「え、ダ、ダメ…ぁっ」

内股を撫でていた手がするすると上がり、彼女の秘めた部分へ触れると、五条の指先にとろりとしたものが絡みつく。その瞬間、男の欲を煽られ、腰の辺りでずくん、と滾るものがこみ上げた。

「ダメって言うわりに、ここ濡れてんだけど?」
「や…ぁっ…ん…う、動かさないで…」

着物を乱さない程度に足を開かれ、無防備な場所を指先で擦られるたび、体の奥から熱いものが溢れてきてしまう。それがどうしようもなく恥ずかしい。言葉とは裏腹に、体は五条を求めているのは自分でも分かった。五条もそれを敏感に察したのか、次第に息を乱し、の白い首筋へと口付ける。すっかりと濡れた場所を何度も指を往復させ、時々は膨らんできた芽を指でくにくにと弄る。そのたび彼女の腰や肩が跳ね、五条の欲を更に煽ってくるのだから、我慢などできるはずもない。本能のままに泥濘の奥へと指先を挿入すれば、すぐにきゅぅっと締め付けられた。

「…指先ちょっと挿れただけでイったのかよ…えろ…」
「…やっぁ…さ、悟…」
「は…こういう時のは素直で可愛いし好き…」

真っ赤な顔で五条の胸にしがみついてくるの額に口付けながら、つい口元を緩ませる。すっかり濡れてぐずぐずになったナカを掻きまわすように奥の奥まで出し入れを繰り返せば、静かな室内に卑猥な水音が響き、の甘い声がいっそう息を乱していく。その顏はすでに少女ではなく、女そのものだ。

「も、無理…挿れるぞ」
「え…ひゃ…」

ナカから指を引き抜いた瞬間、五条はの体を反転させ、着物の裾をまくった。そのまま彼女の細い腰を引き寄せると、五条に向かって尻を突き出す格好になり、の頬が別の意味で赤く染まる。

「この恰好は…は、恥ずかしい…悟…」
「仕方ねえだろ。こうすれば髪も着物も崩れないんだし…ちゃんとここに掴まってて」

五条はベルトを緩めながら、の手を取って壁に置く。その体勢のまま固定させ、自身の硬く昂った陰茎を濡れそぼった膣口へと宛がう。だが挿れる前に焦らすよう亀頭をヌルついた割れ目で一度往復させてから、一気に腰を押し付けた。

「んん…っ」
「…は…ヤバ…のナカ、熱くて蕩けそう」

呼吸を乱しながら呟くと、五条はゆっくりと腰を動かし始めた。こうなればの理性も崩れ去り、後は五条の好きなように揺さぶられる人形になり果てる。

「…

後ろから五条の手が伸びて、顏を後ろへ向けられると、すぐに唇を塞がれる。

「んん…っ」
「かわい…気持ちいいって顔しちゃって」

キスを交わしながらも後ろから腰を打ち付けると、が苦しげな声を上げて唇が離れた。いつもは下ろしている長い髪を上げているせいで、普段は隠れている項も、そこを飾る後れ毛さえ、五条を煽ってくるほど色っぽい。

「ん…っぅ」
「あー…ヤバ…んな可愛い声、聞かされたら腰止まんねぇわ…」
「…っひゃ…んっ」

急に動きが激しくなり、声も絶え絶えになりながら、は必死に壁へ縋っていた。気を緩めたら全身の力が抜けてしまいそうなほど体のどこもかしこも性感帯になっているようだ。項に五条の吐息がかかるだけで、ゾクゾクとしてしまう。

「あ~…そんなひっかくな…爪…割れちまう」

快楽に耐えるよう壁に添えていた彼女の手を、五条の大きな手が包む。男らしい指先が、白く細いの指に通され、ぎゅっと握られた。その間も媚肉に擦りつけ、ぐちゅぐちゅと音を立てながら快楽を貪る。柔らかくトロトロの彼女のナカを味わうように軽く引き抜いては、再び奥まで押し込んだ。そのたびぐちゅんと卑猥な音が漏れて、五条の耳を刺激し、またの羞恥心を煽っていく。濡れすぎているのか、繋がっている部分から愛液が垂れて、彼女の白い太腿すら濡らしていく様は、余計に五条を興奮させた。言った通り全然腰が止まらない。一時、夢中で腰を動かしながら、射精欲を高めていく。の可愛い喘ぎを拾い、赤い頬へ口付け、彼女の全てを感じていると、それはいつも突然襲ってくる。

「あー…イク…っ…」

夢中で快感を貪っていた五条が呟いた途端、何度か激しく腰を打ち付けたあと、彼女のナカから陰茎を引き抜き、もう片方の手に射精した。手にぬるりと己の劣情が垂れていく。簡単にティッシュで処理したあと、五条は深い深い息を吐いた。

「ハァ…頭クラクラする…」
「え…だ、大丈夫…悟?」

五条の体が離れたことで乱れた裾を手早く元に戻すと、が慌てたように振り返る。しかし五条はニヤリとしながら「が良すぎて」と付け足し、舌を出した。その一言では耳まで赤く染まってしまった。

「バカ…」

普段は決して言わない軽口を吐きながら、今度はが丁寧に五条の汚れた手をティッシュで拭いていく。

「いいって、そんなことしなくて。それより着物、大丈夫か?」
「うん。じゃあ悟も手を洗ってきて。シャツ乱れてるからそれも直さないと」
「……」

終わった途端にテキパキと仕事のように世話をしてくるを見て、五条だけは不満そうだ。余韻を楽しむ暇もないとばかりに、自分の服の乱れを直しているをぎゅっと抱きしめた。

「さ、悟…?」
「お前、もう少しこう…余韻を楽しもうとかないわけ」
「…よ、余韻って…だって時間が――」

そう言いながら顔を上げた途端、ちゅっと唇を啄まれた。その後、濡れた唇を五条の指が優しく拭っていく。塗っていた口紅はすっかり落ちてしまったものの、今も赤く色づいているのは、少々強引な幼馴染のせいだ。

「好きな子とエッチしたあとくらいはこんな風にイチャつきたいんだけど」

五条に好きな子、と称され、の心臓が素直に反応する。まさか、五条が自分のことを好きになってくれるとは、彼女自身考えてもいなかったせいで未だに信じられない。

「わ…わたしも…悟とゆっくりしたいけど…」
「ってかさー。別にと会うたびエッチしたいわけじゃなくて…」
「え…?」

抱きしめていた腕を解き、五条は困ったようにそっぽを向く。その頬はかすかに赤くなっていた。

「……もっと…と普通にデートとか…してぇんだけど」
「悟…」

ポツリと漏れた呟きが、五条の本心なのだと伝えてくるから、余計にの中で困惑にも似た想いが広がっていく。本来なら、巫女の自分が安易に踏み入ってはいけない相手だ。なのに五条は彼女に幼馴染以上の感情を抱いている。過去にそれを思い知らされたは、未だにその想いと、どう向き合えばいいのかも分かっていなかった。幼馴染で、自分の主でもある五条に覚えさせられた快楽に、どう頑張っても抗えない。触れられると、全身が熱く火照って胸がどきどき勝手にうるさくなっていく。この気持ちをどう呼ぶのかも、まだよく分かっていなかった。