淡い濁りの輪郭-04

――を自分の世話係に。
五条がこの世に生を受けてから初めて――多分――の最大級の我がままを通したのは、彼女を自分の傍に置いておくためだ。
は五条にとって大切な幼馴染であり、家族でもあり、誰より理解し合える唯一の存在だから。
だからこそ絶対に守る、なんて幼いながら真剣に思ったりもしたし、約束もした。それ以来、彼女を常に傍に置いて、何をするにも一緒で、このままずっとそれが続くのだと思っていた。
なのに――と離れて暮らすことになる現実が明日に迫っていた。
「悟兄さま。他に持っていくものってある?」
大きなボストンバッグに衣類を詰めながらは振り向いた。出会った頃は可愛らしい女の子だった彼女も、もう15歳。肩までだった黒髪も今では胸元まで伸びて、最近はすっかり女らしくなってきた。代々御子の家系で、彼女の持つ神秘的な雰囲気はいつだって五条の胸を疼かせる。
心配なのは、その容姿のせいで同じ中学の男どもがを狙ってるということだ。五条が目を光らせていた間は誰ひとりに告白をする男はいなかったが、明日からはそれも難しくなる。
「もう~悟兄さま?聞いてる?」
不意に視界を遮る影が落ちて視線を上げれば、目の前に怖い顔で五条を見下ろすがいた。ソファで横になり、荷造りをしてくれている彼女をボケっと見ていた五条に少しイラだってるようだ。
「え…っと何だっけ?」
彼女の迫力にずり落ちたサングラスを直しながら体を起こすと、は「やっぱり聞いてない」と軽く唇を尖らせる。その可愛い怒り方を見た五条の口元が、自然に緩んでしまうのは毎度のことだ。
「ごめん。ちょっとボーっとしてた。明日からに会えなくなんのが寂しくて」
「またそんな大げさなこと言って…。海外に行くわけじゃないのに。同じ東京じゃない」
は困ったように笑っている。それはそうなのだが、やはり毎日会えてた昨日までとは全く違う。今日まで一日たりとも会わなかった日はなく、そばにいるのが当たり前の存在なのに、明日から長いこと会えないというのは五条にとって地獄でしかない。
「東京つっても郊外だしめっちゃ遠いだろ、あの学校」
五条がサングラスを放り投げ、溜息交じりで説明してもはまだ笑っている。俺と離れ離れになっても寂しくないのかよ。そんなことを考えたら余計にへこんだ。
「悟兄さま?それで荷物は他に――きゃっ」
「荷造りなんて後でいいって」
まだ荷物のことを気にしているの手を強引に引っ張り、無理やり隣に座らせると、彼女は驚いたような、それでも何も分かってないような表情で五条を見上げた。それがまた余計に愛くるしいので、五条の胸がきゅんきゅん祭り状態だ。でも違う、と一瞬浮かんだ邪な考えを振り払う。
「悟兄さま…何を怒ってるの?」
「怒っては…ねえけど」
「その顔は怒ってる顔でしょう?」
「………」
僅かに首を傾げ「わたし、何かしました?」と不安げに聞いて来るは、やっぱり何も分かってない、と五条は思った。そもそもの話。ふたりきりの時は敬語を使うなと言ってあるのに、と内心溜息を吐く。外ではともかく屋敷内だとは使用人、または義妹モードに切り替わってしまうらしい。
「はさ、俺と会えなくなって全然平気なわけ?寂しいとか思わねえの?」
「え…?」
「俺はめちゃくちゃ寂しいんだけど」
どストレートにそう伝えると、の頬がかすかに赤く染まる。いくら同じ東京都でも電車で30分、車だと一時間もかかるような場所で明日から暮さなきゃならない。
何度も家から通うと言ったのだが、高専の学長ときたら頭が固くて辟易した。
「急を要する場合、迅速に任務に当たれるよう、高専の学生は全員が寮に住むのが規則だ!それが守れないなら入学はさせない」
の一点張りだった。
高専に入学しない、という選択肢はあるものの、呪術師をしていれば必ず高専の力が必要になることは五条だって分かっている。だからこそ渋々寮に入ることを決めたのだ。それでもこの家に残していく存在が心配だった。
「…は俺と離れて暮らすの平気なのかよ」
だんだんと切ない思いがこみ上げてきて、ついそんな女々しい言葉が口から零れ落ちる。ガラじゃないのは分かっているが、やはりが平然と自分の荷造りをしていることが、五条には我慢ならない。
五条の問いかけには思い切り首を振りながら、その綺麗な瞳を揺らした。
「へ、平気では…ないです。わたしだって…その…」
「わたしだって…何?」
「う……」
答えを急かす五条に、彼女は困ったように目を伏せた。こういう時、は決まって恥ずかしそうに下を向く。その顏が見たいが為につい意地悪をしてしまうのも、五条の常だ。
でも今日は意外と早く折れたようで――。
「さ、寂しいです。悟兄さまと会えなくなるのは…わたしだって」
そう言いながら頬を染めるは、五条の男の部分をくすぐるほどに可愛い。
やっぱり一緒に連れていってしまおうか――。
内心そんな無謀なことを思いながらも、目の前で恥ずかしそうにしているの手を引き寄せた。
「さ、悟兄さま…?」
小柄な身体を腕の中におさめながら少しだけ力を入れる。そしてふと幼いの頃もこうして彼女を抱きしめたことを思い出した。あの頃よりも大人になった五条の腕に、今ではすっぽりとおさまってしまう。
「やっぱ抱き心地いいな、は」
「……な、何を言って…」
の頭に頬ずりすれば、彼女はすぐに五条の腕から逃げようとする。まるで子猫がふぎゃふぎゃと暴れてるみたいな可愛さだ。どこにも行かせないと言わんばかりに、抱きしめる腕に力を入れてやった。
「逃がさねーよ」
「さ、悟兄さま?」
「つーか、いい加減それやめろ。悟って呼べよ」
「…う、そ、んなこと言ったって…」
五条の我がままにすぐ言葉を詰まらせる彼女は、しきりにドアの方へ視線を向けている。どうせ誰かが来やしないかと心配してるに違いない。でもここは五条の私室で、以外の使用人の立ち入りを禁じている。よほどの緊急案件がない限りは、家の人間、両親でさえ、ここには来ない。そう何度も言ってるだろ、とせっつけば、彼女は分かってるけど家だとつい…ともごもご言い訳をしだした。でも結局は最後に折れるのだ。
「さ、さとる…」
「良く出来ました」
抱く腕に更に力を入れる。こうしてるだけで安心するんだから不思議だ。六眼なんてものを持って生まれてきたばかりに、子供の五条に寄ってくるのは大人ばかりで。格式ばった話しかしてこない親と一族の人間たち。
あれやこれやと言ったところで、俺が一番強いんだから説得力も何もあったもんじゃねえだろ、と五条は思う。
結局、今ではこの家も五条悟のワンマンチームと周りに言われるくらい、全ての決定権が五条にある。そして、そうなるであろうことは最初から知っていた。それくらい機嫌を損ねないように、腫物を触るみたいに、五条は扱われてきた。
そんな冷めきった一族の中で、ずっと孤独だった五条を、人の温もりに飢えていた五条悟を、救ってくれたのがだった。自分にも人並みにそんな感傷があったんだと、彼女が気づかせてくれた。
妹のように、時には友達のように、または恋人のように。
はずっと五条の傍にいてくれた。
「…悟…兄さま?」
「だから悟だって」
「あ、そ、うだった」
まあ書類上は兄妹なのだからおかしなことはない。だが五条としては彼女に名前で呼んで欲しい。しばらくの体温に癒されていると、苦しくなったのか彼女が軽く五条の背中を叩いてきた。
「悟……そろそろ離して」
「ん…もう少し。今パワー充電中」
「じゅ、充電って…わたしは悟の充電器じゃないですからね」
少しだけ力を込めて彼女の顔をぎゅっと胸に押し付けると、くぐもった声でそんな苦情を言ってくる。この愛しい存在を守らなければ、と改めて思う。
「はー…充電完了」
そう言いながら少しだけ腕を緩めれば、が不満げな顔で五条を見上げる。その顔はさっき以上に真っ赤に染まっていた。苦しいというよりも恥ずかしかったんだろう。
「ぷ…っ、真っ赤じゃん。リンゴみたいになってるし」
「リ、リンゴっ?もー…悟ってそういうとこ、ちっとも変わらない…」
「変わらないって?」
「わたしをからかって楽しむとことか」
ジトっとした目で俺を睨んでくるを見て、五条は更に吹き出した。可愛いからついからかってしまうってことに気づいていないようだ。
(…って俺は小学生か…。好きな子いじめて喜んでるガキみてーじゃん)
明日から世間でいうところの高校生になるってのに、のことに関しては全く成長してないな、と少し落ち込む。いつまで経っても小学生レベルでかまいたくなってしまう。
そんな五条の気持ちを知ってか知らずか、腕の中の彼女がもぞもぞと動き出した。
「そ、そろそろ離して。他にもやることあるんだから」
「ダーメ。が俺を追い出すための荷造りならしなくていーし」
「お、追い出すって…」
「さっきからせっせと服詰めてただろ」
「あ、あれはわたしがやらないと悟が何もしないから…朝になって慌てるの目に見えてるし…」
「あー言われてみれば…だな」
妙に納得してしまい、五条は溜息を吐いた。自分よりもの方がよく分かっているようだ。これまでも何度彼女に助けてもらったか分からない。
「まあ、でも…」
「え?」
「まだこうしてたいから、やっぱ荷造りは後でいい」
そう言いながらもう一度を抱き寄せた。明日になれば、しばらくこの温もりを感じることもできない。
「もう…悟ってほんと甘えんぼ……」
ついに諦めたのか、はそう言いながらも五条の腕の中で大人しくなった。
(甘えんぼ…ねぇ…)
それは違う、と思った。五条はにだけ甘えたいし、甘えられるのだ。他の誰にもこんな自分を見せようとは思わないし、また見せる気もない。
内心苦笑しつつ、明日からの彼女がいない生活を思った。
「なあ、」
「……なに?」
「一週間に一度、会いに来てくれるってあり?」
「…無理」
「は?即答かよ?」
「学校の他に五条家の厳しい呪術訓練や、他にもやらなきゃいけないことがいっぱいあるんですー」
「呪術のことなら俺が手取り足とり教えてやるって言ってんのに…」
「悟には自分のことだけ考えて欲しいから」
そこまで言われると、さすがの五条もスネたくなった。もちろん呪術師としてやるべきことは多くある。だが大切な子のことを、それが理由でないがしろにしたくはない。
そんな五条の気持ちを知らないは、いつものように明るい笑顔で五条を見上げた。
「それに来年の春にはわたしも高専に入ることになったから、また毎日会えるもの」
「まあ…それはそうだけど…」
それを言われると何も言えない、と溜息をつく。一年も待つなんて今の五条に耐えられる気がしないのだ。
だが、は少しだけ五条の胸に顔を押し付けて、小さな声で言った。
「わたし…それまでにもっと呪術を磨いて悟の役に立てるように…なりたい」
ふと呟いたを見下ろし、五条は自然と口元を綻ばせた。やっと素直になってくれたのが嬉しい。
「…俺の役に立ちたい…?」
「もっとずっと…この先も…悟の巫女でいられるように」
「あ?巫女だけかよ」
「…あ…えっと…違う、けど…」
小さく囁くような声で、は言った。その顏には少しの戸惑いが見られる。でも五条は分かっていた。ふたりの関係を無理やり捻じ曲げたのは自分だと。
何も知らないを少しずつ調教し、自分のものにしたことは後悔してない。ただ、彼女の気持ちがまだ追いついてにことに少しの憤りを感じるだけだ。
「バーカ…悩むくらいなら巫女でもいいわ」
「……バカって言わなくても」
不満げに顔を上げたの額にちゅっと口付ければ、彼女の顔がまた赤に染まった。
「な…何して…」
「何って…愛情表現にはやっぱ…ちゅうでしょ。ああ、それとも今夜は一緒に寝る?朝までエッチしようか」
「……あ、朝まで…?」
耳まで赤く染めながら、口をぱくぱくさせるが可愛くて仕方がない。五条はゆっくりと身を屈めて彼女の唇をやんわりと塞ぐ。柔らかい彼女の唇を堪能するように吸いながら、空気を求めて薄っすら開いた隙間へするりと舌を滑り込ませた。
「んぅ…」
口内を優しくかき混ぜながら舌を絡ませ合うと、は苦しげな吐息を洩らす。それごと飲み込むように余すとこなく彼女の口内を貪った。小さな舌を吸い、じゅるっと音を立てながら、唾液も丸ごと飲み込むくらいに深く口付ける。こうして触れあえば当然のようにこみ上げてくる欲求に、五条は素直に従った。
「ん…さ、悟…」
ソファに押し倒されたのが分かり、が驚いたように目を開ける。今はまだ夕方であり、抱き合うには少し早すぎる。だが五条は止まらないといったように、の帯を乱暴に解いた。仕事用の着物はそれだけで容易く緩んでいく。
「悟…ダメ…まだ――」
「誰も来ねえよ。言ったろ?」
五条が耳元で囁く。口ではああいったものの、もそれは分かっていた。五条の自室は本宅の一番高く奥まった場所にあり、この階に足を踏み入れられるのは限られた人間だけだ。
ただ拒む理由を探したかっただけかもしれない。
「…ん…」
長襦袢を乱され、白い太腿が露わになった。室内の空気が内腿に触れる瞬間、はいつも羞恥を覚えてしまう。そのまま大きな手が下へとおりて、ショーツの中へ吸い込まれていった。今のキスだけで、すでにしっとり濡れているそこは、が自分を求めている証拠のような気がして、五条の体も昂っていく。そうなるように、五条が長い時間をかけて彼女の体を開発したせいだ。現に割れ目を指でくちゅくちゅとなぞるだけでは身悶えし、控えめな喘ぎ声が濡れたくちびるから洩れてくる。ぷっくりと膨らんだ陰核も人差し指と中指でやんわり挟みながら軽く擦ってやれば、いっそう甘い声を上げるのだから、もっともっと虐めてやりたくなる。
「ここ、気持ちい?」
「…ひゃ、ぁん」
くにくにと陰核を弄りながら、形の添って円を描くように撫でると、彼女の口から切なげな吐息が漏れ始めた。それを確認しながら、ゆっくりと泥濘の奥へ指を挿入していく。
袖の隙間から右手を差し込み、乳房や乳首を弄ぶだけで、の口から甘い声が上がる。同時に指でナカを掻きまわし、深い口付けを唇へ仕掛けた。
五条のキスは甘く、の脳まで蕩かしていき、次第に熱で浮かされるように快楽の波を漂う。すっかり蕩け切ったところで、乱れた長襦袢の裾を大きく割って脚を開かされた。どろどろに濡れている場所を視姦され、厭らしい言葉で攻められ、指や舌で可愛がられる。すっかりと剥かれた場所を口に含まれ、じゅうっと吸われながら柔らかい舌で捏ねられるのはたまらず、開かれた両脚がびくびくと震えた。
「ぁぁあっんん…っ」
「すげ…溢れてきた…」
一際高い喘ぎと共に、容易く堕ちた彼女の蜜口からは、達した証のようにとろりとした愛液が溢れてくる。それを見てしまえば、五条の余裕も根こそぎ奪われていく。彼女の愛液で濡れたくちびるをペロリと舐め、半ば強引に腰を押し付けると、昂ぶりガチガチになった陰茎を蕩けた蜜口へと一気に押し込む。濡れすぎてるせいか、ぐちゅっと卑猥な音をさせ、そこから蜜が垂れてくる光景すら、五条の興奮を煽ってきた。その感情のまま乱暴に腰を振る。激しい抽送のせいで繋がっている場所からじゅぷじゅぷという音が大きくなっていった。気持ち良すぎて腰が止まらない。
まるで猿だな、と熱で浮かされた頭の隅で、冷静な自分が笑う。今日こそは手を出すのをやめようと思うのに、一度でも触れてしまうとこれなのだから、男という生き物は本当にどうしようもない、と自虐的なことを考える。もっと優しくしてやりたいのに、思いながら、徐々に乱暴になってしまうのだから、我ながら鬼畜だと呆れてしまうばかりだ。
一方、は何度も何度も身体を突き上げられ、目の前が真っ白になった。何度体を重ねていても、五条との行為は酷く甘美で、また一つ体が溺れていく。
本当は、泣いて縋って一人にしないで、と言いたかった。常にそばにいた存在がいなくなるのは、にとっても怖いことだ。
でも言えない。この想いが五条の想いと同じ類なのかさえ、分からないから。
こういう行為がどういったものなのか分からないうちから快感を覚えさせられ、今もそれに溺れている自分に困惑している。それでも五条に触れられると、自分でもどうしようもない劣情に支配されて、拒むことすら出来ないでいた。
ただ、こうして自分の上で快楽を貪る五条を見ていると、胸の奥から愛しいという感情が湧いてくる。主に対してこんな情を持ってはいけないと思っていたはずなのに。
離れて暮らすことに五条は嘆いていたが、それはも同じ思いだった。明日から会えなくなるのは寂しくて仕方がない。
だから普段はなるべく明るい自分を演じて、何でもないことのように接した。永遠の別れでもないのに、泣いたらおかしい。
でも彼女は知らない。そうなるように、五条がの心も体も支配していったことを。
そして五条は知らない。その支配すら喜びに感じている、彼女の本心を。
「さ…さと…る…」
「…ん?ここ?」
「…んぁ…」
五条が子宮口を軽く突き、そこから一気に甘美な刺激が広がっていく。華奢な肩が震え、足袋を履いた足がガクガクと揺れるのを感じた。
「イけた?」
「ん…そ、そこや…ぁ…」
五条は奥の奥を突いてた陰茎を一度、引き戻し、の膝裏を押し上げると、自身の体重をかけながら再び奥まで押し込む。最奥まで届くほどに腰を押し付けたせいか、五条の下腹に陰核が押し潰され、はまた軽く達したようだった。締め付けられる圧迫感を無視してかまわず抽送を繰り返すと、イったばかりの収縮を繰り返す場所から、ぐちゅぐちゅという卑猥な音が漏れる。
「…んぁやぁ…いま…ダ、ダメ…」
「イってるときにされるの…も好きだろ…?」
荒い呼吸を繰り返し、更に硬くなったものでのナカを犯していく。だが不意に射精欲がこみ上げた。まだ終わりたくない、と激しく打ち付けていた腰を次第にゆったりとした速度に落とした五条は、ゆるゆるとした動きで何度も同じ場所を擦り上げる。きつく締めあげてくる場所を無理やり開いていく感覚が、たまらなく興奮するのだ。
は強い快感にいやいやと首を振りながら涙をこぼす。快楽に阻まれ、思考が溶かされていく歯がゆさで、溢れた涙が頬を伝っていった。
「やだじゃねーだろ。連続でイってるくせに」
「…んん…ぁ…さ、悟…」
「ん?もっと?」
再び最奥をトントンと強く突かれ、甘い痺れが再び広がると、それが一気にはじけ飛んだらしい。の両脚がまたしても宙を蹴る。
「ぁあっ…あっ」
「…やべ…俺もイク…」
ナカが収縮し、ぎゅうっと陰茎を締め付けられた途端、五条もぶるりと身を振震わせ、快楽を貪るように最後の抽送を繰り返す。の白く細い腿を大きく広げ、奥深くまで腰を押し付ければ、また一気に射精欲がこみ上げ、慌てて引き戻す。浅い場所で何度か出し入れを繰り返した後で、やっと薄い腹の上に自身の欲を吐き出した。昨夜も散々抱いたはずなのに、と呆れるくらいにたっぷりと吐精した自分に苦笑しか出ない。
「すげー出るもんなんだな、これ」
「…んっ」
抜いたときの刺激ですら感じるらしい。びくんと腰を跳ねさせる姿すら、五条の眼には可愛く映る。その感情のまま汗ばんだ頬を撫でて、薄っすら開いたままのくちびるにちゅと口付けた。
「身体…平気か?」
乱れた呼吸の合間、体を起こした五条が訊ねると、が小さく頷いた。この瞬間はいつも小さな後悔が襲ってくる。だがは気にするなと言うように五条の頬へ手を伸ばし、その火照った頬を軽く撫でてくれた。
「悟…そんな顔しないで…わたしは平気だから…」
涙を浮かべながら微笑むを見て、五条もかすかに笑みを浮かべた。その一言で心が救われる。
好きだと呟いて、もう一度に口付けたあと、五条は彼女の身体を強く抱きしめた。そのまま細い首筋へと吸い付く。
「ん…悟…なに?」
「んー?男避けー」
赤い跡を白い肌に残すことに意味はない。こんなものはすぐに消えてしまう。けど残さずにはいられなかった。
この愛しい温もりに、しばらくは触れられないから。
