バカ男と
お笑い芸人、時々王子様C
何度か鳴った携帯は、いつの間にか鳴らなくなっていた。
「これで、よし、と」
やっと出来上がったお粥を前に、私は軽く息を吐いた。
一応、母から言われ、料理を習ってはいたものの、最近では道明寺家で全て作ってもらえるので何もしてなかったのもあり、ちょっとだけ不安だったのだ。
まあ、でもお粥なんて簡単だし味は大丈夫だろう…と思う。
「いけない…もう、こんな時間っ」
ふと時計を見れば、すでに8時を回っている。
私は急いで寝室を覗くと、「大和?」と声をかけた。
「あれ…寝ちゃった…?」
何も返事がなく、そっとベッドに近づくと、大和は眠っているようだった。
起こすのもなんだし、と一旦、リビングに戻って鞄からメモ帳を出した。
"寝ていたので起こさず帰ります。お粥はキッチンにあるので温めて食べてね。お大事に。"
それだけ書くと、メモをちぎり、寝室へと戻る。
ベッドのサイドボードにそれを置くと、大和の肩まで布団をかけ直しておいた。
その時、床に写真が落ちてるのが見えて、それを拾ってみれば、先ほど見せてくれたものだった。
「暗くて気づかなかった…」
写真たてを探し、それに入れると、置いてあった場所へと戻す。
「ホント…そっくり」
写真の中の二人は楽しそうで、ホントに仲が良さそうだ。
私は一人っ子だから、兄弟のいる感覚というものが分からない。
「…私も…お兄ちゃんかお姉ちゃんが欲しかったなあ…」
そしたら、色々と相談したり出来たかもしれない。
「なんて、感傷に浸ってる場合じゃないか」
家族の事を思い出し、苦笑いを零す。
「バイバイ…大和」
眠っている大和にそう呟くと、静かに寝室を出た。
鞄を持ち、腕時計を見れば、8時半になるところ。
携帯を開いてみれば、"バカ男"という名で着信が並んでいてガックリ項垂れる。
「はあ…またグチグチ言われそう…」
司の怒っている顔を思い出し、溜息をつくと、私は大和の家を後にした。
「おい…少しは落ち着けよ…。そんな熊みたいに歩かれたら、せっかくの酒が不味くなる」
「うるせえ!つか、何テメ〜は人んちで当たり前のように飲んでんだっ」
「まあまあまあ…」
総二郎→司→あきら、という順で、いつものような、やり取りをしてるのを、類は寝ぼけ眼で見ていた。
「何言ってんだよ。今夜は遊びに行くって言ってたのに、司がサッサと帰るから、こうしてお前んちで飲んでんだろが」
「呼んでねーよ!とっとと帰れ。明日からカナダだぞ?」
「だから荷物持って来てんだろ?明日はこのまま、こっから行くよ。なあ?あきら」
「まあ、どっちみち行くトコ同じなんだから、司んちのリモ一台で行きゃ、楽だしね」
「ああ?勝手に決めてんなよっ?」
司はそう言いながら足を止めると、腕時計を見て軽く舌打ちをした。
「あのバカ女…早く帰って荷造りしろって言ったのに、どこほっつき歩いてんだ?」
イライラしたようにソファにドカッと腰を下ろすのを、総二郎とあきらは苦笑気味に見ていた。
「何だかんだ言って、ちゃんのこと気にしてんだよな、司は」
「あ?」
「そうそう。気に入ってんなら、もっと優しくしてあげればいいのにさ」
「なっ何でオレがあんな女に優しくしなきゃなんねーんだよっ」
「ったく…ホント素直じゃないね、司は」
あきらが肩を竦めながら、そう言うと、司は顔を真っ赤にして立ち上がった。
「う、うるせえ!だいたい信じられるか?!オレが電話してやってんのに、あの女、無視決め込んでんだぞっ?」
「出られなかっただけかもしれないじゃん」
「3回も4回も無視してんだから、わざとだろがっ。失礼な女め…帰ってきたらタダじゃ―――――――」
「「「「お嬢様、お帰りなさいませ!」」」
「―――――――ッ?」
ちょうど、その時エントランスの方から声が聞こえて、司はそのままリビングを飛び出して行った。
それを見て、その場に取り残されたF3の面々は、それぞれ大きな溜息を零し、グッタリ項垂れている。
「またケンカになりそうだな…」
「ホント。司も彼氏じゃないんだから、ちゃんの好きにさせてやればいいのにさ」
「…ふあぁぁ…」
「「…………」」
その欠伸に、二人は"こんな時にも呑気だな"と言いたげに、横目で類を睨んだのだった。
自分の部屋のドアを開けた時、後ろから、「おいっ」という声が聞こえて、ドキッとした。
「あ…た、ただいま…」
一目で怒ってると分かる司に、引きつった笑顔のまま振り返る。
案の定、「ただいまじゃねえ」なんて低い声で返事が返って来て、ヒクっと口元が引きつってしまった。
「あ、あの…ごめんね!電車の中だったから携帯出れなくて…!」
言い訳しながら部屋へ入ると、司はそのまま後ろからついてきた。
「へえ…テメ〜は何時間、電車に乗ってんだ?30分置きにかけただろうが」
「そ、そうだったの?あれからマナーモードにしちゃってたから気づかなかった…って言うか、司も暇なのね、そんなに何度もかけて…」
「ああっ?」
「う、ううん…何でもないっ」
更にすごむ司に慌ててそう言うと、「今すぐ用意するから、それでいいでしょ?」と言ってクローゼットを開けた。
すると司は無言のままソファに座り、ジっと私を見ている。
「…何?」
何となく背中に殺気を感じ、振り返ると、司は目を細めて私を睨んでいた。
「お前…さっきオレに買い物に行くっつってたよな」
「…え?」
「なのに…何で何も荷物ないんだ?」
「…ぅ…っ」
(そ、そうだった…忘れてた!)
司の思わぬツッコミにサーっと血の気が引いていく。(大げさ)
(まずい…どうして、こんな時だけ勘がいいの?野性的勘か、コイツはっ)
「お前…ホントはどこ行ってたんだ?」
「え、だ、だから…買い物よ…ただよく考えたら、おば様が用意してくれた服がこんなにあること思い出して…買うのもったいないかなって…」
ちょうど開けたクローゼットの中を見て、咄嗟に、そう言ってみると、司は疑いの眼差しながらも、「…ホントか?」と聞いてくる。
それには内心ホっとして、精一杯の笑顔を見せた。
「ホ、ホントだってばっ。どうして嘘つかなきゃいけないの?だいたい、どこ行くってのよ」
そもそも、こんな風に責められる覚えもないんだけど…なんて思いながら司を見れば、何となく、さっきよりは怒りも収まってるようだった。
「ならいいけどよ…。ああ…じゃあ早く用意しとけ。明日は早いんだからな」
「う、うん…分かった…」
「ああ、腹減ったならダイニング行けば夕食あるし食って来い」
「…うん。ありがと」
いきなり優しくなった司に、ちょっと驚いたけど、ここは素直に頷いておく。(そろそろ司の扱いも分かってきたかも)(酷)
「明日は昼までに空港に行くからな。早めに寝とけよ」
司はそれだけ言うと、部屋を出て行った。
ドアが閉まった瞬間、大きく息を吐き出してソファに腰をかける。
何だか、親に言い訳してる子供みたいな気分だ。
「はあ〜疲れた…」
何となく朝から慌しくて、落ち着く暇もなかった。
「いけない…着替えて用意して、ご飯食べて…」
やる事がいっぱいあるのに、何となく体が重たくて動く気になれない。
その時、携帯の着メロが鳴り出し、急いでポケットから出すと、メールが届いていた。
そのまま受信箱を開くと、"大和"の文字が飛び込んできて、すぐにメールを開いみてみる。
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200×/12/× 21:33
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From:大和
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Subject:無題
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お粥サンキュー!
美味かったで(^・^)/CHU-☆
冬休みハメ外しすぎて、また
風邪ひかんようにな!
って看病してもーたオレが言う
んも何やけど(笑)
道明寺クンにヨロシク!
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そのメッセージに、ちょっと苦笑すると、そのまま携帯を閉じた。
「司にヨロシク、なんて…言えるわけないじゃない」
大和はさすが結城という名を背負ってるだけあって、あまり物怖じしないタイプらしい。
司にあれだけ睨まれてもケロっとしてるし、自分が煙たがられてるっていう自覚があるのか、ないのか…
「まあ…ご飯食べられるようになったみたいだし…少しは良くなってるのかな」
そこにホっとして携帯を置こうとした瞬間、再び着メロが鳴り出し、ドキっとした。
が、ディスプレイを見て、更に驚いた。
「お、お父さん…?」
慌てて通話ボタンを押すと、明るい声が受話器から聞こえてきた。
『か?』
「う、うん…元気?」
『ああ。こっちは、まあ何とかやってるよ。お母さんも元気だ』
「そう…ならいいけど…どうしたの?後で私もかけようと思ってたの」
『そうか。ああ、いや、学校は今日、終業式だったんだろう?』
「うん。明日から冬休み。って言うか、その事で電話しようと思ってたのよ」
司の言葉を思い出し、そう言うと、お父さんは受話器の向こうで楽しげな声を出した。
『何だ?道明寺の坊ちゃんに旅行に誘われた事か?』
「そうよ!何でOKなんて出すの?私、休み入ったら大阪遊びに行こうと思ってたのに」
『いいじゃないか。冬休みにカナダでスノボーなんて。それにまだ半年も発ってないのに、こっちに来る事ないだろう?』
「…それが親の言う言葉?せっかくクリスマスを一緒に過ごそうと思ってたのに」
『まあ、いいじゃないか。遊びに来たいなら正月にでも来れば。クリスマスは坊ちゃん達と楽しんで来なさい』
「……やけに進めるわね。どうしたの?」
『えっ?な、何がだ?』
私の問いに、お父さんは明らかに動揺した声を出した。
お父さんは昔からバカみたいに素直で、嘘をついたりするのは苦手な人だ。
まあ、その人の良すぎる性格のせいで会社を倒産に追い込まれたんだけど…
「普通、娘が男の子と旅行に行く、なんて言えば、父親は止めるでしょ?何でそんな物分りがいいのよ」
『そ、そうか?いや…二人きりじゃないと言うし、もうも高校二年になるんだ。それくらいは―――――――』
「前、付き合ってた彼には無愛想だったクセに」
『う…そ、そうだったか?』
「そうよ。それとも…司…って言うか、道明寺家に恩があるから、なんて言わないでしょうね」
『…そ!それは…もちろんあるけどだな…』
だんだん、しどろもどろになっていく父に、思い切り溜息をついた。
「そうなのね…だから司に言われて断れなかったんだ」
『ち、違うぞ!それだけじゃない』
「じゃあ他に何があるの?」
『だ、だからその…あれだよ…。と司くんなら…ほら、お似合いというか…お、お前の初恋の相手だろ?父さん、知ってるんだぞ?』
「ちょ、何のこと?」
いきなりお父さんの口から、そんな言葉を聞いて驚いた。
そりゃ前はそう思い込んでたから、引っ越す時にチラっと、そんな話もしたかもしれないけど…あれはお母さんに話したはずだ。
「まさか…お母さんに何か聞いたの…?」
『えっ?いや、その…』
「…聞いたのね」
言葉に詰まったのが、いい証拠だ。
全く…どうしてお母さんも話しちゃうかな。
うちの家族って隠し事とか出来ないから困ってしまう。
『い、いや、でもいいじゃないか♪初恋の男の子とカナダへ旅行♪なんてのも!』
「ち、違うわよ。それにそれは私の思い違いで―――――――」
『ま、まあ、とにかく!司坊ちゃんと仲良くしろよ?坊ちゃんはお前の事を頼んだ私に、任せて下さいとハッキリおっしゃって下さったんだからな?』
「はあ?た、頼むって…そんなこと言ったの?お父さん!しかもアイツに丁寧語とか使わないでよっ」
『何言ってる!こんなに良くしてもらってるんだぞ?もし楓さんに助けてもらえなかったら、一家で路頭に迷う所だ』
「そ、それは分かってるわ?おば様には感謝してる。でもアイツは別に―――――――」
『まあ、とにかく坊ちゃんに言われて、お前を任せると決めたんだ。彼なら父さん、大歓迎だからな?』
「は?何それ…何を歓迎するっていうの?!」
『おっと、時間だ。私はこれから夜勤があるから、もう切るぞ?高級ホテルの支配人も、社長以上に忙しいんだ。それじゃカナダ土産、ヨロシクな!』
「え?ちょ、ちょっと――――――!」
ブツ!…ツーツーツー
「嘘…切れてるし…っ」
文句を言う暇もなく、空しい音が聞こえてきて、私はそのまま携帯をソファに投げ捨てた。
「もう!信じられない!何が司なら大歓迎なのよっ!私はごめんだわっ!」
怒りついでにクッションも放り投げると、壁に当たってボフッという音と共に床へと落ちた。
久しぶりに電話をかけてきたと思えば、まさか、あんな事を言われるなんて思いもしなかった。
「はあ…最悪…。何で司にまで恩を感じてるのよ…っ」
その場をウロウロ歩きながら、イライラを沈めようと軽く深呼吸をする。
「それに何が、オレに任せろなわけ?どうして私の意思を無視して、二人でそんな約束とかしてるの?信じられないっ」
あんなバカボンに任せられても困るって言うのよ。
そりゃ…確かに悪い奴じゃないっていうのは分かってきたけど…
あの、"オレの言う事は絶対だ"、みたいな態度が嫌だし、そもそもアイツは会った早々、お父さんの事を侮辱したのよ?
そんな奴にどうして、お父さんも恩なんて感じるわけ?
「もう〜〜〜っありえないってばーっっ!!」
あれこれ思い出してくると、無償に腹が立って思い切り怒鳴ってみる。
だいたい、こんな広い屋敷内で叫んだって、下まで聞こえるはずがないし。
「明日なんて中止よ、中止!誰が行くもんで――――――」
「何がありえないの?」
「―――――――――ッ?!!」
突然、後ろから声が聞こえてきて、私はその場で飛び上がってしまった。
「あれ?類は?」
「さあな。また勝手にゲストルーム行って寝てんだろ?」
あきらの問いに、総二郎はそう答えると、ビールを一気に煽った。
そしてすぐに部屋に設置してある冷蔵庫から、更にビールを取り出す。
「司は?」
「ん?ああ、一本くれよ」
「はいよ」
大きなトランクに荷物をつめていた司は、飛んできた缶ビールを上手にキャッチした。
「で、ホントのとこ、どうなんだよ、司」
「あ?何がだよ」
ビールを飲みながら、ニヤニヤと顔を近づけてくる総二郎に、司は顔を顰めた。
「だから…ちゃんの事だよ。やっぱお前も気に入ってんのか?」
「バ、バカか、テメ〜!何でオレがあんな女なんか―――――――」
「の割には、何だかんだで構ってんじゃん。最初はあんなにウザがってたクセに、今じゃ旅行まで誘ってんだし」
「だ、だからそれは…アイツ一人を家に置いてったら、ババァに文句言われそうだろっ?」
「おばさんに文句なんて、しょっちゅうじゃん。別に気にしないだろ?お前なら」
「う、うるせえなあ!だいたい男ばっかで行くのも飽きただろ?静は類が独り占めするしよ」
「へえ。じゃあちゃんがオレを好きになっても、お前は別にいいって感じ?」
「あ?べ、別にあの女が誰を好きになろうとオレには関係ねーだろが」
バツの悪そうな顔で立ち上がると、「あちぃーな」と言ってテラスへと歩いていく。
それを見ながら、総二郎もあきらも苦笑いを零しながら、肩を竦めた。
「何でアイツ、あんなに分かりやすいんだろうな」
「ああ。しかも本人は隠せてると思ってるところが不思議だし」
「言えてる。でもまあ…これで少しは焦って司も嫌でも素直になるんじゃん?」
総二郎はそう言うと、ニヤリと笑った。
「あーやっぱ総二郎、そんなこと考えてたんだ♪」
「まーなー。あの司を変えられるかもしれない子が現れたんだ。そりゃ無理やりにでもくっつけるっしょ」
ニッと笑ってピースをする総二郎に、あきらは呆れたように苦笑した。
「おかしいと思った。総二郎がちゃんを落とそうとするなんて」
「そうか?まあ…かなーり可愛いんだけど、やっぱ司の親戚って思うとブレーキかかるよな。それより…」
「ちゃんをネタに司からかった方が面白いって?」
「Yes, of course!」
パチンと指を鳴らし笑う総二郎に、あきらは小さく噴出した。
「確かに言えてるな…。あの司があれほど慌てるのって滅多に見れねーし」
「だろ?だから、あきらも合わせろよな」
「はいはい。分かってるよ。オレも司のお守りはそろそろ卒業したいし」
言いながら、あきらはテラスでビールを煽っている司を見て、小さく笑みを零した。
「何がありえないの?」
「…は、花沢類…な、何で?」
振り返ると、クスクス笑いながら、花沢類がドアに寄りかかって立っていた。
「いやゲストルーム行こうと思って歩いてたら、大きな声が聞こえたから」
「えっ?あ、あの…」
「何か怒ってたけど…また司に文句でも言われた?」
言いながら花沢類が部屋に入って来た。
そのままソファに座る彼を見ながら、慌てて投げ捨てたクッションを拾う。
「そんなんじゃないけど…。あ、何か飲む?」
「ああ、気にしないで。すぐ出てくし」
「あ、う、うん…」
「はこれから用意するの?」
「え?あ…」
そう言えば、と振り返ると、花沢類がニッコリ微笑んだ。
「座ったら?」
「あ…うん…」
そう言われ、隣に腰掛けると、彼は小さく欠伸を漏らした。
「眠いの?」
「んー。ちょっと…」
「そっか…。あ、ここで寝ちゃダメですからね」
わざとそう言うと、彼は笑いながら、「うん、気をつける」と微笑む。
その柔らかい微笑みに小さく胸が鳴った。
「明日…楽しみだね」
「え…?」
「カナダ。毎年どこか行くけど…今回はもいるし何だか新鮮」
「そ、そう…かな…」
「だって毎年、同じメンバーだったからさ」
「そ、そっか…」
さっきまでは行くもんか、と思ったけど、こんな風に話してると、やっぱり行こうかって気になってしまう。
花沢類の周りだけ、穏やかな時間が流れてて、私はいつも、その空気に引き込まれてしまうんだ。
「そう言えば静も会いたがってたよ」
「…え?」
「のこと話したら」
「え、話したって…私の事を…?」
「うん。あ、ダメだった?」
「う、ううん、そんな事は…」
「いつも女一人で寂しい思いしてたみたいだし、今回は凄く楽しみだって。良ければ話し相手になってあげて」
「あ…うん…私で良かったら…」
―――――――って、私のバカ!こんなこと言ったら、カナダに行くハメになるじゃない!
「…?どうかした?」
「え?あ、ううん。何でも…あ、明日…楽しみだなーって思って…」
また心にもない事を口走ってしまい、内心ガックリするも、花沢類は優しく微笑んでくれた。
「はスキーとかスノボーは出来るの?」
「え?あ、全然…花沢類は…?」
「オレ?オレは見ての通り……苦手」
そう言ってぺロっと舌を出す彼に、思わず笑ってしまう。
どうして花沢類と話してると、さっきまで感じてたイライラとか、腹立たしいという嫌な感情が綺麗に消えていくんだろう。
彼といると私まで、心の中が真っ白に染まっていく気さえする。
「…そう言えば…荷造りするんだよね」
「あ…うん…」
「じゃあ…オレは先に寝るかな」
言って立ち上がると、思い切り両腕を伸ばしている。
もう行ってしまうのか、という思いが胸を過ぎったけど、欠伸を連発してるし引き止めるのは申し訳ない気がした。
「あ、じゃあ…お休みなさい」
「うん。お休み。また明日…」
小さく欠伸を噛み殺すと、花沢類は私の頭を軽く撫でて、静かに部屋を出て行った。
彼がいなくなると、妙に部屋の中が、いつも以上に広く見えて何となく寂しさを覚える。
いつも一人でいる部屋なのに、と自分に苦笑しながら、軽く息を吐き出した。
「はあ…私のバカ…行くって言っちゃって…」
さっきまで何としてでも断ろうと思ってたりしたのに、花沢類にああ言われると、どうしても行かないとは言えなかった。
「これが司なら…平気で言えるのになぁ…」
そうボヤキつつ、私はクローゼットから旅行用のトランクを引っ張り出したのだった。

繋ぎ的な話なので短いです(;^_^A
最近ますます時間がないわー(涙)
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●大和くん好きです。笑
(ひゃー;;オリキャラを好きと言って頂けて嬉しい限りです(*ノωノ)
●不器用でも一途に想っている道明寺が大好きです!!!!!
(ありがとう御座います!やはり司は一途でおバカが一番ですよね!(オイ)
●花男、道明寺のあの不器用な感じが凄くうまく表現されてると思います。大好きです^^
(ヲヲ…!上手く表現できてますか?!そう言って頂けると原作ファンの私としては嬉しくて小躍りしちゃいますよー゜*。:゜+(人*´∀`)
●デスノも大好きですが、花男も大好きです!オリジナルの大和が好きです(*^_^*)更新楽しみにしてます!
(どっちも大好きだなんてありがとう御座います!きゃー;大和、最近人気あって何か照れます(●ノ∀`)照照(何故お前が)
●花男夢大好きです!!!!これからも応援しています☆
(ありがとう御座いますー!今後も頑張りますねっ(>д<)/