雪の魔法―
秘密の時間










"オレ、といると、何か楽しくてさ"





それは私が今まで生きてきた中で、最高級の、魔法の言葉のように思えた。











シャっという音と共に止まると、総二郎はゴーグルを外して、後ろを振り返った。
その後を追うように上から次々と皆が滑り降りてくる。


「ひゃー!気持ちいー!」
「やっぱ、ここのコース最高だなっ」


あきらと総二郎は、そんな事を言いながらハイタッチを決める。
が、司だけは何となく時計を見たりしながら、心ここにあらずといった顔だ。


「どうしたんだ?アイツ…」
「どーせ下が気になってんだろ?」


と、総二郎が初心者コースのある方を指差すと、あきらも納得した顔で頷いた。


「ああ、なるほど。でもお前、ちゃんとこ行かなくていいのか?司とくっつける作戦なんだろ?」
「いいんだよ。今は類が一緒だろ」
「ああ…そう言えば」
「この場合、オレじゃなくても、誰かがちゃんの傍にいれば作戦は成功ってわけだ」


ニヤリと笑いながら、総二郎はソワソワしている司を見た。


「なるほどねー。案外、お前も策士だな、総二郎」
「伊達に遊んでねーしよ。それより…静は?」


そう言ったのと同時に、綺麗なフォームで静が滑ってきた。


「お、来た来た」
「静ー!」


あきらが手を振ると、静は皆に気づいて、そのまま目の前まで滑ってきた。


「はあ…天気良くて気持ちいいわね」
「ああ。ちょっと眩しいけどなぁ」


今日もかなり日差しが強く、白い雪に反射するたび、キラキラと視界が光る。
その中に立っていると、静の長い髪が、艶やかに光って、とても綺麗だ。


「やっぱ静が一番だったなー」
「え?」
「ここに来てる女の子の中で、外国人も含めてダントツだよ。まあどこに行っても静に敵う女はいねーけど」
「何言ってるのよ、総二郎ったら」
「いや、マジだって。なあ?司」


総二郎が言いながら振り返ると、司は、「あ?」と気のない返事。


「はあ、ダメだ、アイツ」
「あんな気にするなら自分が残れば良かったのによー」


あきらと総二郎は言いながら苦笑している。
そんな二人の会話を聞きながら、静が首を傾げた。


「どういう意味?あ、もしかして司ってば、ちゃんのこと…」
「お、さすが勘がいいな、静は」
「まあ見ての通り、気になって仕方ないみたいだよ?」
「まあ、そう」


静はにこやかに笑いながら、しきりに腕時計を見ている司に視線を向けた。


「司もやっと女の子に興味を持ったのね。前はまだまだ男同士の方が楽しいなんて言ってたのに」
「だろ?最近のアイツ見たらビックリするぜ?かなり大人しくなったし、まあ穏やかになったって感じか」
「そーそー、無意味なケンカもしなくなったしな」
「そうなの?じゃあ…司も変わりつつあるのかしら」


微笑ましいといった顔で、静は微笑んだ。


「まあ…本人が自覚してるのか分からねーけど…司がちゃんを意識してるのはあるな」
「ああ。でも…最初から、ちょっとおかしかったし…案外、一目惚れとかだったりしてなー。その割りにケンカばっかしてっけど」
「素直じゃねーからな、司も。あーでも変わったと言えば、類もじゃん?」
「え?」


総二郎の言葉に静がピクリと反応した。


「アイツも何だかんだ言って、ちゃんをかまってるしなー」
「あー言えてる。さっきも静がいるのに残っちゃうしな」
「…類は優しいから放っておけなかったんじゃないかしら」
「んー、でも静以外の女に、類って結構、冷たかったんだぜ?静は知らないだろうけど」
「そうなの…?」
「ああ。まあ元々が人見知りする奴だったしね」
「でもちゃんには最初から普通に接してたし、彼女といると、よく笑うんだよな、類の奴」
「そう…」


二人の話を聞いて、静は僅かに目を伏せた。
その様子に気づかず、あきらは苦笑すると、「ま、でも類は静にベタ惚れだし、そこは変わらねーだろ」と肩を竦めた。


「そう…かしら」
「ああ、間違いないって。ま、でも静は類のこと、弟としてしか見られねーんじゃねーの?前そう言ってただろ」


総二郎の言葉に、静はちょっとだけ笑みを浮かべた。


「そんな事も…あったわね。でも今は…」


そう言いかけた、その時…「おい!オレ、ちょっと休むわ」と司が歩いて来た。


「はあー?さっき休んだばっかじゃん」
「もう疲れたの?司。珍しいんじゃない?」


二人の言葉を無視して、サッサとボードを外すと、司はそれを軽々と担いだ。


「うるせえなー。ちょっと喉渇いたんだよ。お前らは滑ってろよ」
「とか何とか言っちゃってー!実はちゃんと類の事が気になってんじゃねーの?」
「―――――――ッ!」


ニヤリと笑う総二郎に、司の顔が真っ赤になった。


「バババッカじゃねーのっ。んな訳あるかっ」


「「………(ホント素直な奴…)」」



明らかに動揺している司に、総二郎とあきら、そして静までが笑いを噛み殺している。
その時…ドシンッという派手な音と、「痛ぁーいっ」という、聞いたことのある声が響き渡り、皆は一斉にそっちへと視線を向けた。



「ぁはははは…っ!すっげー派手な転び方…!」


「ちょ、ちょっと笑ってないで起こしてよーっ」



そこには、楽しそうに笑いあっている、と類の姿があった。










「ほら、大丈夫?」


目の前に出された手に、ドキっとしながらも、何とか掴まった。


「ぃたた…」


思い切り打ち付けた腰が痛くて、顔を顰めると、花沢類はまたしても笑いを噛み殺している。


「もう…やっぱり無理だったじゃない…」
「でも途中までは綺麗に滑ってたよ?」
「だからって…」


そう言いながら私はお尻をさすった。


あの後、花沢類に、もう一度滑ろうか、と誘われた。
でも、事もあろうに場所は上級者コース。
下の辺りでなら初心者でも練習くらいは出来る、というから付き合ってもらったけど、いくら下の方でも初心者コースよりは急な斜面が多い。
案の定、私は思い切り転んでしまったのだ。


「はあ…痣になっちゃうなあ…」
「何、今日そんな転んだの?」
「…………」


不思議そうな顔で私を見てくる花沢類に、つい目を細めると、彼はぷっと吹き出し、「ごめん」と誤ってきた。


「ああ、司にしごかれた?」
「え?あ…別に…そういうんじゃなかったけど…」


さっきの事を思い出してみれば、思ったよりも厳しいというわけじゃなかった気がする。
司は滑れるんだから、私みたいなヘタな子を見てるとイライラするはずなのに、何度も根気良くコツを教えてくれたっけ…
案外アイツもいいとこあるのよね。


「どうかした?」
「あ…ううん。何でもない…っていうか、花沢類も上手いのね。好きじゃないって言う割には」
「…まあ…スポーツ全般は一応出来るけどね」


(ふーん…出来るけど、敢えてしないって事か…さすが花沢類って感じだなあ)


両腕を伸ばしている花沢類を見上げながら、感心していると、彼がふと私を見た。


「ん?」
「あ…何でもない…えっと…そろそろ帰る?」
「え、帰るの?」


こっちが聞いたのに逆に聞き返されてしまった。
こういうところも花沢類ならではという感じだ。


「だ、だってさっき眠いって言ってたし…」
「今は眠くないよ。何か楽しいし…もう少し滑らない?」
「…え、あ…私は…いいけど…」
「じゃあ滑ろう」


にこっと微笑む花沢類にドキっとしながらも笑顔を返す。
だって彼とこんな時間が持てるなんて、やっぱり嬉しいから。
でも…


そこで、ふと静さんの顔が浮かび、チラっと花沢類を見た。
花沢類は周りの雪を手で掬いながら、鼻歌交じりで、どことなく楽しそうだ。


ホントに…いいのかな…
静さんと一緒にいなくて。
そりゃ私は嬉しいけど…この休みが終われば静さんだって、またフランスへ帰ってしまうのに。
せっかく想いが通じた時に、私といるなんて…


?行かないの?」
「あ…うん…」


その声に慌ててボードを外すと、急いで彼の後を追いかける。


やめた…
花沢類がいいって言ってるんだし、今はこの時間を楽しもう。
それに彼の口から、まだ静さんとの事を聞いたわけでもない。


そう思いながら花沢類の隣に並んだ、その時。


「おい!」


突然、大きな声が響いて、遠くから誰かが歩いてくるのが見えた。


「あれ…?司じゃない?」
「あ…ホントだ」


二人で声のした方を見れば、こっちに向かって歩いてくるのは司と、そして西門さん達だった。


「何してんだ、お前ら」
「何って…」
「初心者のお前がこんなトコで滑ってたら危ねーだろーが」


司は私の前まで来ると、呆れたように額を小突いてきた。
そんな彼に、花沢類は、「オレが誘ったんだよ」とフォローしてくれる。


「類…てめーは滑れっからいいけどよ。コイツはマジでヘタなんだよ」
「うん。ホント、よく転んだよ」
「ちょ、ちょっと…っ」


それはフォローじゃないんじゃない?と思いつつ、口を挟むと、花沢類思い出したようにクスクス笑い出した。
司も大きく溜息をつくと、


「さっきも転んでたろ。遠くからでも分かるような声、出しやがって」
「えっ。み、見てたの?」
「見てなくたって見ちまうだろ?あんな派手な叫び声あげたら」
「う…」


そこで何も言い返せなくなり、首を窄める。
すると静さんがクスクス笑いながら歩いて来た。


「大丈夫?怪我しなかった?」
「あ、は、はい!あの…大丈夫です…」
「ホント?類が無茶させたんじゃない?」
「い、いえ!ホントに…大丈夫ですから…」


そう言って首を振ると、静さんは優しい笑顔を浮かべ、花沢類の方へと歩いていく。
さりげなく彼の腕に手を添えるのを見て、小さな溜息が洩れた。


(あーあ…ここで夢のような時間も終わりか…)


静さんに柔らかく微笑んでいる花沢類を見て、胸がかすかに痛む。
あんな優しそうに微笑まれる静さんが羨ましい、と心の底から思った。


「おい…」
「え…?」


振り返ると、司がスネたような顔で立っていた。


「もう帰るけど…お前も帰るか?」
「あ…うん…そうだね。そろそろ疲れたし…」
「んじゃー帰るぞ」
「え、ちょ、ちょっと!西門さん達は?」


スタスタと歩いてく司を追いかけて隣に並ぶ。
西門&美作コンビは、こっちに手を振りながらも、また上がっていくのが見えたのだ。


「ああ、あいつらはまだ滑るんだろ。疲れたら勝手に帰ってくるよ」
「そう…」
「おら、帰るぞ」
「あ、待ってよ…!」


サッサと歩いていく司を必死に追いかける。


「あーどんくせえなあ…。それ貸せ」
「あ、いいよっ」


いきなり持っていたボードを奪われ、慌てると、司はジロっと私を睨みつけた。


「お前がトロトロしてっと帰るの遅れんだよ!いいから行くぞっ」
「ちょ、ちょっと…!」


何だか不機嫌な司に首を傾げつつ、その後を追いかけていく。
すると二人も帰るのか、後ろから花沢類と、静さんが歩いて来た。
花沢類も静さんのボードを持ってあげている。
優しい笑みを浮かべて、彼女を守るように寄り添っている花沢類は、やっぱり素敵だった。


はあ…いいなあ、静さんは。あんなカッコ良くて素敵な人から想われて…
花沢類は、ちょっと天然ではあるけど、優しいし、一緒にいて癒されるし…
ホント、あんな空気持ってる人、他にいないっていうか…初めて会った。
もしかしたら私は最初に会った時から…彼の雰囲気に惹かれてたのかもしれない。


「おい!早く来いっ」
「……………」


ボーっと後ろの二人を見ていると、前から野獣のような声が飛んできて、私は深々と溜息をついた。










「ふぅ…」


お風呂に入ってスッキリすると、私はソファの上に倒れこんだ。
今日は一日、慣れないスノボーを滑って、体のあちこちが痛い。


「あぁ…絶対、明日は筋肉痛だわ…」


その兆しがすでに現れつつある足腰に、思わず溜息が洩れる。
それでも、何となく嫌な気持ちにはならず、逆に楽しかった、と思えるような日だった。
司も相変わらずだったけど、何気に優しくてスノボーを根気良く教えてくれたし、花沢類との時間も少しだけど持てたし…
まあ…元彼に再会、という嫌なイベントはあったけれど。


「光輝の奴…平然とした顔しちゃって…最悪…」


つい愚痴が零れて、私は体を起こした。
普通、自分が振った女に、あんな爽やかな顔で話し掛けられる?
しかも今度は隣にクラスの子と付き合ってるだなんて…
唯も唯だ。
私と光輝が別れた時も、「仕方ないんじゃない?」なんて冷たい事を言って私を突き放した。
それで次はあの子を紹介したってわけ?(あの子と唯は確か、部活が一緒だったっけ)
唯も、私が何者でもなくなったら離れて行った、うわべだけの友達に過ぎなかったという事になる。
今となれば、あんな友達はこっちから願い下げだ。
もちろん光輝の事だって、振られた時点であんな男だと分かってたし、今はもう胸なんか痛まない。
むしろ、別れて良かったんだ、と素直に思う。
光輝の強引なところに惹かれはしたけど、それはうわべだけの恋でしかなかった。
そんな見せかけのものは、些細な事で脆く崩れるという事を、私は今回の事で学んだ。


そう言えば…光輝に振られたと話した時、お母さんが言ってたっけ…
そんな中身のない男と別れられて良かったじゃないの、って。
男を見る目を養って、次はきちんと相手の中身を見て好きになりなさい、と明るく笑い飛ばしてくれた。


"何にも囚われず、本当のお前を想ってくれる人を選びなさい"


そんな母の言葉を、ふと思い出した。


本当の私を…いつか見てくれる人が現れるんだろうか。
そんな事を思うと、妙に母が恋しくなった。


その時…部屋の電話が鳴り響いた。
仕方なく重たい体を起こし、受話器を耳に当てる。


『メシだ。サッサと下りてこい』

「…………」


有無も言わせぬ司の声に、思わず目が半目になった。


『おい、聞いてんのか?てめー』
「…せっかく浸ってたのに…」
『あ?』
「今、行くわよっ」
『何――――――――』




ガチャンッ




司が何かを言う前に電話を切ると、深々と息を吐き出した。
ホント、気分をぶち壊してくれる奴だ。
アイツと関わってからというもの、何だか深刻に悩んでるのがバカらしく思える事がよくある。
まあ、それもいい事だと思えばそうなんだけど。


「はあ…急がないと、また文句言われちゃう」


バスローブを投げ捨て、簡単に着替えると、濡れた髪を軽くドライヤーで乾かした。
そして部屋を出ようとした、ちょうどその時、ノックする音が聞こえて、それには私も思い切り溜息をつく。


「もうー行くって言ったのにっ」


てっきり司が文句を言いに来たのか思って、思い切りドアを開け放った―――――――




「しつこいなあ!今、行く――――――!」


「――――――――ッ」


「……………っ?!」




怒鳴ってから目が点になった。
というか、今の私はハニワのような顔かもしれない。
だって……そこに驚いたような顔で立っていたのは、花沢類だったから―――――――


「…ご…ごめんなさいっ!てっきり司かと思って―――――――」
「…ぷ…くくく…っ」
「え?あ、あの」


いきなり噴出す花沢類に、顔が赤くなった。
彼はお腹を抱えながら、笑っていて、どうしたものかとオロオロしてしまう。


「あ、あの…」
「あー面白れーっ」
「…へ?」
ってば、すーごい目が釣りあがっちゃって」
「…う…っ」


そう言いながら自分の目を指で吊り上げる仕草を見せる花沢類に、耳まで赤くなる。
彼にそんな顔を見せてしまったという事実に、穴があったら入りたいという、ベタな考えが頭を掠めた。


「あ、あの…ごめんね?」
「別にいーよ。そんな事で謝らなくても。…司から下りてこいって電話あったし、も呼びに来ただけ」
「そ、そう…。私にも来たから急いで用意してたの…」


言いながら廊下に出ると、二人で階段を下りていく。
花沢類は、まだ名残があるのか、時折、チラっとこっちを見ては、笑いを噛み殺している。
そんなに私、凄い顔してたのかな、と不安になっていると、花沢類がクシャリと私の頭を撫でた。
ドキっとして顔を上げると、思いがけず優しい瞳が私を見下ろしていた。


ってさ。司の前だと、ホント自然体だよね」
「…自然体…?そ、そうかな…」


不意にそんな事を言われて首を傾げる。


「そうだよ。でもオレの前だと…ちょっと他人行儀だから寂しいかな」
「…えっ。な、何で…?」


そんな事を言われてドキっとする私に、花沢類は困ったように首を捻った。


「うーん…何でだろ。何となく、そう思っただけ」
「………」


そう言いながら苦笑している花沢類に、胸が痛くなる。
きっと、そう見えるのは、私が強烈に意識してるからで、でも、その事を花沢類が寂しい、と思ってくれてる事は素直に嬉しい。


「もっと普通にしてよ。オレたち、友達なんだろ?」
「…え?」
「さっき、そう言ってたじゃん?元彼くんに」
「…あ…」


そうだった。
花沢類のこと、彼氏?なんて聞かれたから…慌てて友達だって言ったんだった。


「あれは…咄嗟に出ちゃっただけで…」


ずーずーしいと思われたかな…と、顔を上げれば、隣にいたはずの花沢類がいない。
慌てて後ろを振り返ると、そこにはスネたように目を細めた彼が、「ふーん」と腕をくみつつ立っていた。


「…じゃあ、は友達って思ってないんだ」
「…えっ?」
「へえーなーんだ。あっそう」
「は、花沢類…?」


何やらスネた様子の彼に、私は驚いてしまった。
こんな花沢類は見た事がない。


「あ、あの…」
「そっかぁ、オレはに、友達とも思われてないんだ…。あーあ、すっげぇーショック」
「えっ?ちょ、花沢類…?あの、そういう意味じゃなくて…」
「咄嗟に出ただけか…ふーん…」


わざと私に背を向ける花沢類に、本気で焦ってきた。
まさか、こんなにスネられるとは思わなかったし、彼が友達だと思ってくれてたなんて、かなり驚いた。
そのせいで思考回路が上手く働かない。




「ち、違うってばっ!だ、だから、花沢類に友達って言うのは失礼かなーとか、ずーずーしいかなーとか、色々考えちゃってっ」


「………」


「で、でもホントは私だってその…花沢類の事、友達と言うか…優しいお兄さんみたいに思ってるって言うか…だからその―――――――」


「ぷ…」


「…っ……ぷ?」


「…うくくく…っ」




ハッと顔を上げれば、花沢類の肩が揺れていて。
次第に背中が丸まっていくのを見ながら、私は思わず口が開いてしまった。


「くっくっく…す、すげぇー慌ててるし!おもしれーっ」
「あ…は、花沢類っ!まさか、わざと――――――」


そこで、さっきのスネスネ攻撃は、わざとだったんだと気づき、顔が一気に赤くなる。
あんなに必死に言い訳してた自分が、かなり滑稽だ。


「も、もう!信じられないっ!」


そう言って背中を向けると、花沢類は苦笑しながら私の頭にポンと手を乗せた。


「怒った?」
「あ、当たり前でしょっ?人をからかって―――――――」
「でも、ちょっとショックだったのはホントだし」
「……え?」


その言葉に振り返ると、花沢類はニヤリと笑った。


はオレのこと、友達と思ってないんだーって思ったら、ちょっと悲しかった」
「あ、あれは、だから…」
「でも、言い訳するがだんだん可愛くなって…ちょっと悪乗りしすぎたかもね、ごめん」


そう言いながら優しく頭を撫でてくれる花沢類に、胸の奥がキュンと鳴った。
そんな風に微笑まれたら、やっぱり許しちゃうじゃない。


「…べ、別に本気で怒ったわけじゃないから…」


そう言って顔を上げると、花沢類は得意げな顔で唇の端を上げた。


「でも…やっと普段のが見れた」
「…え?」
「こーんな目で怒ってたろ?」
「……そ、そんな事ないもん!」


またしても指で目を吊り上げる仕草をする花沢類を軽く叩く。
それでも楽しそうに笑いながら歩いていく彼を、慌てて追いかけた。
するとダイニングのドアが開いていて、その前には静さんが驚いたような顔で立っている。


「類…?」
「ああ、静。ごめん、待った?」
「う、ううん…。あの…今、類の声が聞こえたから…」
「ああ、も呼んできたんだ。総二郎たちも帰ってきてる?」
「え、ええ。さっき帰ってきたわ?」


そう言いながら静さんは、花沢類とダイニングへと入っていく。
その後に続きながら、ふと先ほど見せた、静さんの戸惑うような顔が少しだけ気になった。


何だろう…ちょっと驚いたような顔で私達を見てたけど…
私と一緒に来たから?
でも…それだけで、あんな顔するかなあ…


あれこれ考えながらダイニングに入ると、司がムスっとした顔でふんぞり返って座っていた。


「遅い!」
「…む。そ、そうでもないじゃない」
「あぁ?つか、てめー勝手に電話切るんじゃねーよ」
「あれ以上、話がないから切ったのっ!」
「何ぃ〜?!」
「ちょっと司…!いちいち怒らないの。まだ皆、揃ってないんだしいいでしょ?」
「…う…」


静さんがそう言ってくれたおかげで、司はやっと怒るのを止めた。
良く見れば、西門&美作コンビはまだ来てないようだ。


「二人は?」
「ああ…帰ってきたばかりだしシャワー入ってから来るってよ」
「そ、そう…」


不機嫌そうに司が答える。
何もそんな怒らなくても…と思いながら、目の前に出されたフルーツカクテルを口に運んだ。
昨日も思ったけど、料理を作りに来てくれてるシェフの腕は相当なもので、出される物全てが美味しい。


「お待たせーん」


そこへ西門さんと美作さんがバスローブ姿のまま現れて、ギョっとした。


「てめーら…着替えて来いよ…」
「風呂上りは熱いんだよ!」
「そーそー。ま、この格好でも支障はないでしょ」


二人は普通に席について、そんな事を言っている。


(…って!支障あるわよっ!)


と、私は心の中で思い切り叫んだ。
だいたいバスローブなんて裸にまとうものであって、その下には何もつけてないって事で…
西門さんなんか、さっきから「あちぃー」なんて言って、開いてる胸元をさらに指で広げてパタパタ仰いでいるもんだから、彼の胸元がチラチラ見えて、凄く困る。
静さんは慣れているのか、特に気にした様子もなく、皆と談笑してるけど、私はハッキリ言って、そんな免疫…ないに等しい。


「どうしたの?
「…え?」


不意に名を呼ばれて顔を上げると、花沢類が訝しげな顔で私を見ていた。


「何か困ったような顔してるし」
「え、あ、あの…別に…」
「腹でも減ったんじゃねーの?」
「ち、違うわよっ」


司の言葉に反発すると、何故か西門さんがこっちに歩いて来た。


「どうしたの?ちゃん。風邪でも引いた?」
「へ?ち、違いますっ!」 


(って言うか、こっちに来ないでっっ)


「でもホント、顔赤いし…」
「な、何でもないですから…っ」


(もーあなたのせいでしょーがっ!ボディシャンプーの匂いと、その肌蹴た胸元がエッチすぎるってばっ)


「ホントに?もし具合悪いなら―――――――」
「だ、だから大丈夫なんで、そんなに近づかないで下さいっ」


綺麗な顔が目の前に近づいてきて、ググっと体を反らし、ついでに視線も反らす。
何だか男の色気むんむんで、免疫が全くない私にすれば、この場から逃げ出したい気分だ。


「マジで顔赤いよ?熱でも―――――――」
「おい、総二郎!」
「あ?」


その時、司が勢いよく椅子から立ち上がった。


「あんま、そいつに近づくな」
「…何で?」
「んな格好だから困ってんだろ?見て分かれ、バカ」
「バカァ?司に言われたくねーよっ」
「んだとぅ?!」
「ちょ、ちょっと!ケンカしないでっ」


私がキッカケでケンカになったら困ると、慌てて椅子から立ち上がる。
すると司は渋々ながらも再び席に着いた。
西門さんも軽く咳払いをすると、私に、「ごめんね」と微笑み、自分の席へと戻る。
静さんはクスクス笑いながら、「相変わらずね、あなた達は」と言ってカクテルグラスを口に運んだ。


「んな、すぐ変わるかよ」


静さんの言葉に、司が笑う。
すると静さんはクスっと笑って、「でも…類はちょっと変わったみたいよ?」と、花沢類の方に視線を向けた。


「…?」


その言葉に言われた本人はキョトンとしている。


「静、何のこと?」
「…自分じゃ自覚してない?」
「…だから…何の事だよ」


花沢類は訝しげな顔で静さんを見つめた。
その様子に、司や西門、美作コンビも、首を傾げている。
私も何の事か分からず、この気まずい空気に何となく居心地の悪さを感じていた。


「…静?」
「類が…」
「え?」
「あんなに楽しそうに笑ってるとこなんて、初めて見たな…」
「……え…?」


静さんはそう言ってカクテルを飲むと、そのグラスを小さく揺らしている。


その顔は、どことなく寂しげに見えた。











「はあ…」


溜息をついて寝返りを打つ。
何となく寝付けなくて時計を見れば、午前12時半になろうとしていた。


あれから花沢類と静さんは、どことなく、ぎこちない雰囲気で、他の皆もそれを感じていたのか、会話も弾まなかった。
静さんは何を言いたかったんだろう…
花沢類も、良く分からなかったみたいだったし…


"あんなに楽しそうに笑ってるとこなんて、初めて見たな…"


あの静さんの言葉が気になったけど、どういった意味なのかまでは、私も分からない。


「はあ…ダメだ…」


あれこれ考えすぎたのか、すっかり頭が冴えてしまった。
ベッドから体を起こし、カーテンを開けると、暗い部屋の中に綺麗な月明かりが差し込んだ。
気温も低いのか、雲ひとつない夜空に、今夜はぽっかりと白い月だけ浮かんでいる。


「この前の星も綺麗だったけど…月も綺麗だなあ…」


もう少し近くで見たくなり、ガウンを羽織って外へと出る。


「わ、これ大きすぎ…手が出ないじゃない…」


かなり大人サイズのガウンに苦笑しながらも月を見上げる。
昼間よりも更に冷たい風が吹きつけ、思わず首を窄めた。


「寒…明日は雪かなぁ…」


冷たい風が頬に当たり、ピリピリする。
息を吐けば、真っ白な煙のように空へと上がっていった。


「……?」


その時、かすかに音がした気がして視線を下へと向けた。
この下は確かリビングになっていて、外に出れば広いテラスになっているはずだ。


(まだ誰か起きてるのかな…?)


そう思いながら覗いてみる。
そこでハッと息を飲んだ。


「花沢…類…?」


彼も――眠れなかったんだろうか。
下で私と同じように空を見上げながら、時折白い息を吐く花沢類に、気づけば私は部屋を飛び出していた。





「…風邪、引くよ?」


そう声をかけると、花沢類は弾かれたように振り向いた。


「……?」
「眠れないの?」


そう言いながら私もテラスへと出る。
そんな私に花沢類は困ったように微笑んだ。


「眠れないから紅茶を飲もうと思ったんだけど…誰もいないし、どうしていいのか分からなくて」
「…そっか」


その理由にクスクス笑いながら隣に座る。
見れば花沢類はパジャマ姿のままで、かなり寒そうだ。


「でも…そんな格好で外にいたら風邪引いちゃうよ」
「…こそ…どうしたの?そんな大きなガウン着ちゃって」


花沢類に吹き出され、思わず赤面してしまう。


「こ、これしかなくて…。それに私も…ちょっと寝れなくて…テラスに出たら花沢類が見えたから」
「そう」


花沢類はそれだけ言うと、また夜空を見上げた。
その横顔がどことなく寂しそうで、胸の奥が小さな音を立てる。
昼間はよく笑ってたのに、と心配になった。


(静さんと…あの後、何かあったのかな…)


食事の時の事を思い出して、ふとそう思った。


「あ、あの…静さんは…」
「さっきワイン飲んだから酔ったみたいで、グッスリ寝てる」
「そっか…」


そう言えば静さん、食事の前からカクテルも飲んでたし、その後はワインもかなり飲んでいた。
花沢類が心配して二人は早めに部屋に戻っていったっけ。
その後は西門さん達が、いつものドンチャン騒ぎを始めたんだけど…私は飲む気になれなくて、すぐ部屋へ戻った。
司にブ〜ブ〜言われたけど…
だいたい何でアイツはあんなに怒りっぽいんだろう。
すーぐ怒るし怒鳴るし睨むんだから。
最近は優しい一面もあるんだ、なんて思ったりもしたけど、偉そうなとこは、ちっとも変わらない。
西門さんは優しいけど、どことなくセクハラ気味だし(!)
美作さんは一番普通のようでいて、何気に不倫なんかしてるし…(さっき日本にいる人妻彼女に電話してたっけ)
そう考えるとF4の中で一番まともなのは、やっぱり花沢類だろうなあ…

なんて思いながら隣にいる花沢類へと視線を向けた。


「女って…わけ分からないよな…」
「…へ?」


あれこれ考えていると、不意に花沢類が、そんな事を言って溜息をついた。
思ってもみない、その言葉に呆気に取られていると、花沢類は椅子に凭れかかり、私に視線を向ける。


「何、その顔」


ポカンとしてた私を見て、花沢類は訝しげに眉を寄せている。


「え?あ、だって…急にそんなこと言うから…」


私に言わせて見れば、花沢類の方が謎だったりする。
だからかな…こんなに惹きつけられるのは。
もっと…この人を知りたいって…思ってしまうのは。


「静さんと…何かあった?」


恐る恐る気になってた事を尋ねてみる。
花沢類は僅かに片方の眉を上げると、プイっと顔を反らした。
それは話したくない、という意思の表れなのかと思って、心臓がキュっと音を立てる。


「あ…ごめんなさい…余計な事だよね…」
「別に…謝ることじゃないよ」
「で、でも――――――」


もう一度謝ろうと思って顔を上げた瞬間、唇に冷たい指先が触れてドキっとした。


「謝らなくていいよ」
「……っ」


花沢類が優しい笑みを浮かべる。
彼の綺麗な指が、そっと唇から離れていくのを、ドキドキしながら見つめていた。
花沢類に触れられただけで、こんなにも胸が苦しい。
だけど―――――――


「静が…何考えてんのか分からなくなっただけ」


ポツリと呟く、その言葉に、さっきの苦しさとは違う痛みが走る。
そんな私には気づかずに、花沢類は綺麗な瞳を夜空へと向けた。
白い月の明かりが、私達を照らしている。


「オレさ…静に…好きだって言ったんだ…」
「……」
「静も…受け入れてくれた」
「…そっか…」


一言、一言がチクチクと胸を刺していく。
花沢類は、小さく溜息をついた。


「なのに…今日は様子がおかしくて…さ」
「…おかしいって…?」


聞きたくないはずなのに…つい聞いてしまうのは、花沢類のそんな顔は見たくなかったから。
好きな人が違う女性の事で悩んでるのは辛いけど、でも好きだから放っておけない。


「…何となく…オレに冷たい気がして」
「ま、まさか!そんなの気のせいよ。だって…両思いだったんでしょ?」
「うん…」


なるべく明るく、そう言えば、花沢類は少し照れ臭そうに頷いた。
ホントはそんな顔を見るのさえ、こんなに胸が痛いのに。
私は無理やり笑顔を作った。


「あ、ほら。静さん疲れたんじゃない?朝からスノボやってたんだし、それにお酒飲んじゃったから…きっと疲れてたのよ」
「…そうかな」
「きっとそうよ。今夜グッスリ寝たら明日には元気になってると思うな」


だから花沢類も元気だして。
そう言って顔を覗き込むと、ほんの少しだけ笑顔を見せてくれた。
それだけでも嬉しくて、私も笑顔になる。


「何か…にはいつも元気をもらってる気がする…」
「…え?」


彼の口から紡がれた言葉に、ドキっとした。
顔を上げると、優しい笑顔があって、不意にクシャリと頭を撫でられる。


「何でだろ。不思議だよね、ってさ」
「そ、そんな事…花沢類の方が不思議くんでしょ…?」
「不思議くん…?」


意味が分からないといったように眉をへにょっと下げて変な顔をする花沢類に、思わず噴出した。
こういうところが、不思議さをかもしだしてるって事、きっと彼には分かってないんだろうな。


「…ックシュっ」
「だ、大丈夫?」
「さむ…」


いきなりクシャミをした花沢類は、ずずっと鼻をすすって目を細める。
その仕草が何となく子供みたいで、思わず笑ってしまう。


「そんな格好で、ずっと外にいるからだよ…」


急いでガウンを脱ぐと、花沢類の肩にかける。
すると彼は驚いたように顔を上げた。


「いいよ。が風邪引く」
「大丈夫。って言うか、もう部屋に戻って寝ないと…明日はパーティーでしょ?司が張り切ってたもの」
「うん…でも、もう少し…」
「そう?じゃあ…私は寝ようかな」


いつまでも彼の傍にいたら離れがたくなってしまう。
そう思って立ち上がろうとした瞬間、グイっと腕をつかまれて驚いた。


「まだいてよ」
「…い、いてって…」
「もうあと少しだけ」


そんな寂しそうな顔で言われると、帰れなくなってしまう。
ガウンを貸してしまったから、正直ちょっと寒いんだけど…
そう思っていると、花沢類はガウンを半分、私の肩にかけてくれた。


「ちょっあ、あの」
「こうしたらあったかい」


そ、そうだけど…と口篭る私。
大き目のガウンだけど、やっぱり二人となると互いに体を寄せることになるから、花沢類の腕が私の肩に当たる。
彼の体温を感じていると、ドキドキしてきて、言葉が上手く見つからない。


「さ、寒くない?」
「うん。オレ、寒いの結構好きなんだ」
「え…そうなの?私は苦手だけど…」


寒いのが好きだなんて、やっぱり不思議な人…と思いながら笑うと、花沢類は空を見たまま白い息を吐いた。


「空気が綺麗で…透き通ってて…気持ちいいんだ。頭もスッキリするし」
「何それ…変なの」


クスクス笑いながら見上げると、花沢類は「変かな…」と首を傾げた。
でも、そう言ってる花沢類の横顔の方が綺麗で透き通ってると思う。
…なんて、口が裂けても言えない。


「花沢類…」
「…ん?」
「良かったね…静さんへの…想いが叶って」


私の言葉に、ふわりと微笑む花沢類に胸が痛むのは変わらない。
自分で言って胸が痛くなってちゃ世話ないけど、でも花沢類の、その笑顔が見れるだけで、私はいいよ。
こんな夜に、二人で寄り添いながら月を見れただけで、それだけで十分。


も…早く新しい恋が出来るといいね」


花沢類の言葉に、私は微笑む事が出来なかったけど、それを寒さのせいにして、少しだけ体を寄せた。


新しい恋なんて、とっくに始まってる。


いつもとは違う、穏やかな、それでいて今までの恋よりも、ちょっとだけ切ない恋。
告白すら出来ない相手を、好きになんてなっちゃいけなかったのに。
でも――想うだけならいいよね。


静さんを想う花沢類が、やっぱり凄く好きだから。


雲が陰って、月が隠れた頃、空から白い雪がふわふわと舞い降りてきた。











一気に書いております>花男
最近この作品に投票処やWEB拍手にて、素敵なコメントをたくさん頂けて、ホントに励みになっております!
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●花男夢だいすきです!あのもどかしさがたまりません!笑(高校生)
(大好きなんて、嬉しいお言葉ありがとう御座います!まだまだ、もどかしいのが続きそうです;;)


●花男連載毎回とても楽しく拝見しています!ヒロインの切ない心情にすごく感情移入します。(高校生)
(いつも読んで下さってるようで、ありがとう御座いますー!今後も切なさと笑いを求めて頑張りたいと思います(>д<)/


●花男最高です!!私的にはもっと類と絡んで司がヤキモチやけばいいと思います(笑)
オリキャラの大和君も気になりますし、もっと絡んで下さると鼻血出します!!(え)
今後ものんびりと更新頑張って下さいね!!管理人様の花男最高ですvv(高校生)
(ひゃー;;嬉しいお言葉ありがとう御座います!これからは色々と絡みますので待っててやって下さいませ★
ヲヲ…鼻血ですか!大和とも今後…色々あるかしら(笑)ぎゃー;最高だなんてありがとう御座います!マイペースで頑張りますね!)

●花男ハマりました!F4の面々は勿論のこと、主人公や大和といったオリキャラも魅力たっぷり読んでいて凄く楽しいです。(高校生)
(花男ハマって頂けた様で嬉しい限りです!大勢のキャラを書くのは大変ですが、やはり花男の醍醐味は逆ハーなので頑張りますね♪)