"そこ、どいてくれる?急いでるんだ"


彼は冷めた言葉を残し、私たちの前から消えた――――。







――04.Second kiss







「ここだよ、ツナんち」


山本武はそう言うと、勝手にドアを開けて中へと入っていった。


「もう・・・・知らないからね、どうなっても・・・・」


沢田くんはまだブツブツ言いながらも彼の後から中へ入る。
あれから私は山本くんに半ば無理やり、ここへ連れてこられたのだ。


「入らねぇーの?」


玄関前で躊躇っていると、後ろにいた獄寺くんが不思議そうな顔で訊いて来た。
彼もよく来てるのか、玄関に入ると靴を脱いで、私に手招きしている。


「ほら、早く来いよ」
「あ、あのやっぱり私、帰るね」


胸の奥がモヤモヤしていて、一人になりたかった。
そもそも、こんな風に良く知らない人達と一緒にいるのも、大勢で行動するのも苦手なのだ。
が、踵を翻したのと同時に、いきなり腕をつかまれた。


「待てよ」
「な、何?」
「勝手に帰られちゃ困る。十代目に断ってくれないとさ」
「・・・・・十代目?(・・・・って何だ?)」


さっきも聞いたその言葉に首をかしげる。
でも、そのまま家の中まで引き込まれ、結果、沢田くんの部屋まで連れて行かれた。


「おう、、ここ座れよ」


皆はすでに部屋にいて、山本くんなんかは、まるで我が家のように寛いでいる。


「あ、あのでも・・・・」
「ほらほら、どうーぞ!帰る前にちょっとヒバリの話、聞かせてくれよ」


獄寺くんもそんな事を言いながら、私を山本くんの隣に座らせた。


「き、聞かせてって何を――――」
「どーもーツナの母ですー♪」
「・・・・・っ?」


そこへいきなり沢田くんのお母さんがお茶を持って入って来た。
そして私の横に来ると、「あらー!可愛い子!誰の彼女?」なんて言っている。


「母さん!余計なこと言わなくていいから早くあっち行ってよっ」
「まあまあ、こんなむさくるしい家ですけど、ごゆっくりね♪」
「はあ・・・・お邪魔してます・・・・」


ニコニコしながらそう言われ、つい頷いてしまった。
沢田くんのお母さんはそのまま部屋を出て行き、そこで軽く一息つくと、すすめられるまま目の前に出された紅茶を口に運ぶ。
すると今度は隣に座っている獄寺くんに、「で、ヒバリとケンカでもしたのか?」と聞かれ、溜息をついた。


「ケンカも何も――――」
「バカだなぁ、獄寺!さっきは照れてただけだって!」


反対側にいる山本くんはニカっと笑いながら私の背中をパンと叩いた。


「うるせぇ!誰がバカだ、この野郎!だいたいヒバリが照れるようなたま、、かっ!」


獄寺くんは一人エキサイトして煙草に火をつけた。


「じゃあ何でに声かけなかったんだ?」
「・・・・し、知らない」


(こっちが聞きたいよ・・・・)


首をかしげる山本くんにそう言うと私はさっきの彼の顔を思い出した。
昨日とは違う冷めた視線。
私だって何故、急に彼があんな態度に出るのか分からないんだから。


何だろう・・・・胸が痛い。それに何だか息苦しい気がする。
こんな事、初めてだ。


「でもさー。やっぱ照れてるとしか思えないだろー。恋すると人は変わるんだよ、うん」
「はぁ・・・・。お前やっぱ単純だな・・・・」
「ご、獄寺くん!いいじゃん、ヒバリさんに殴られなかったんだし・・・・」


3人はそんな事を言い合いながら、何だか楽しそうにしている。
でも私はやっぱり彼らのノリについて行けなくて帰ろうかな、と思ったその時。
いきなり窓が開き、小さな子供が乱入してきた。



「ランボさん登場ー!!!」


「・・・・ッ?」


「げ、ウザいのが来た!」



と獄寺くんが舌打ちする。


「な、何、この子――――」


頭がモジャモジャで何だか牛柄の服を着てる子供にギョっとして腰を浮かせた。
そして、ふと先日の事を思い出す。


「あ・・・・沢田くんの親戚の子・・・・だった?この前、学校にいた・・・・」
「うぇ?!あ、そ、そぅ・・・・かな?あはは・・・・っ」


私の問いに沢田くんは顔を引きつらせている。


(何だろう、違うのかな?)


そう思っていると、その子が私の前に走ってきた。


「おれっちランボさんだよ!お前は誰だ?」
「え、あ、あの・・・・よ・・・・?よろしくね」
かー!ランボさんの好みだぞ!」
「は?」


「うるせぇ!バカ牛!!」




――ガン!!




「ぐぴゃ!」


「――――ッ?!」


獄寺くんがいきなり子供をグーで殴るのを見て目が点になった。


「ちょっと獄寺くん、何してるの?!」
「チッ。いいんだよ、そいつは。殴られ慣れてるんだから」
「な、慣れてるって――――」
「・・・・ぅわーーん!!ーー!ランボさんタンコブ出来たー!!」
「え、ちょ、ちょっと・・・・」


ランボくんがムクっと起き上がったかと思えば私に抱きついてきた。
そこでタンコブを見てあげようと思ったが、髪の多さでどこにタンコブがあるのか分からない(!)


「バカ牛!どーせ腫れてても、そんなモジャモジャじゃわかんねーよ!!」
「ラ、ランボさんはモジャモジャじゃないもんねーっ!!」
「うるせぇ!吹っ飛ばすぞ!」
「あ、あの獄寺くん、あまり怒鳴ったらダメだよ。ますます泣くじゃない・・・・」


そう言ってランボくんを抱っこする。
が、その途端ピタリと泣き止み、ギョっとした。


「エヘへ♪ランボさん抱っこしてもらった♪」
「・・・・・(こ、この子・・・・)」
「ほら見ろ!コイツはこーゆー奴なんだよ。そんな奴、窓から放り投げろっ」


私の膝でヌクヌクしているランボくんを見て獄寺くんは軽く舌打ちをした。
山本くんは相変わらず楽しそうに笑っていて、「コイツもゲンキンな奴だなぁ」なんて言ってるし、
沢田くんは申し訳なさそうに、「ご、ごめんね、さんっ」なんて言いながらアタフタしてる。
ホント賑やかで、アットホームな人たちだ。
でもこんな雰囲気に慣れてない私はどんな顔をしていいのか分からなくなった。


昨日はこんな事なかったのに・・・・
彼、雲雀恭弥といた時はもっと自然に笑えてたと思う。
きっと彼が言うように、私と雲雀さんは同じ空気を持っているんだ、と、この時改めて確信した。


「あ、あの・・・・私もう帰るね・・・・?」
「え、何でだよ?まだまだ色々と面白い奴が来るのにさー」
「ごめんね、山本くん・・・・」
、帰っちゃやだ!ランボさんまだ抱っこー!」
「ごめんね、ランボくん・・・・。もう帰らなくちゃ」


そう言って騒いでいるランボくんを下ろすと自分の鞄を持って立ち上がった。


「一人じゃ危ねーぞ」
「え・・・・?」


部屋を出て行こうとした時、いきなりドアが開き、また子供が入って来た。
が、今度の子供はビシっと黒のスーツを着込んだ、かなりハイセンスな子供で、またしても目が点になる。


「あ、あの・・・・」
「何だよ、リボーン、いたの?」
「さっきから、いたぞ、ツナ」
「リ、リボーン・・・・?」


ランボだとかリボーンだとか、変わった名前の子が多いな、と思いつつ目の前に立つ子供を見下ろした。


「俺はツナの家庭教師のリボーンだ。宜しくな、
「え、あ・・・・よ、宜しく・・・・」


子供にいきなり名前を呼び捨てされるのにも驚いたけど、この子が家庭教師というのにも驚いた。
何かの冗談なんだろうか?と思いながら一応挨拶をすると、その子はニッコリ微笑んで私を見上げた。


はヒバリの恋人なんだってな。昨日、ツナから聞いたぞ」
「え?!あ、いや、それは・・・・」
「なかなかお似合いじゃねーか。仲良くやれよ」
「・・・・だ、だから私と彼はそういうんじゃなくて・・・・」


ダメだ。何だか、この家おかしいかも。

このままいたら混乱する、と思い、「それじゃ・・・・お邪魔しました」と早々に部屋を出る。
するとリボーンという子供がガシっと私のスカートを掴み、またしても「一人じゃ危ないぞ」と言ってきた。


「あ、あの・・・平気だよ?家なら近いし――――」
「ダメだ。女の子を一人で帰せないからな」
「そ、そんな・・・・」


何だか大人びた子供だな、と思いながら困っていると、山本くんが立ち上がった。


「じゃあ俺が送ってくよ」
「おぅ、そうだな。じゃあ、山本に送ってもらえ」
「え?い、いいよ、そんな・・・・。まだ明るいし」
「ダメだぞ。最近物騒だからな」


リボーンはそう言うとやっと私のスカートを離し、「じゃあ山本、気をつけろよ」なんて言って私たちを見送った。
そのまま沢田くんちを出ると、「の家はどっちだ?」なんて言いながら、山本くんが先を歩いていく。
本気で送る気なんだと驚いて、慌てて彼の腕を掴んだ。


「あ、あの・・・・いいよ、送らなくて。私なら一人で平気だし・・・・」
「いいって。どーせ用事もないんだしさ。で、どっちだ?」
「・・・・4丁目、だけど・・・・」


戻ってくれそうにない雰囲気に仕方なく住所を告げると、山本くんは「了解」と言いながら歩き出す。
その後ろからついて行きながら、なにを話せばいいんだろうと困ってしまった。


「賑やかだったろ」
「え?」


黙って歩いていると、不意に山本くんが笑顔で振り向いた。


「あ、そ、そうね・・・・。何だか・・・・変わった子が多いから驚いた」
「あはは。そうだなー!アイツら面白いよなー♪」
「・・・・・(面白い?)」


何気に会話がかみ合ってない気がして言葉に詰まる。
だいたい、よく考えれば、さっきの皆はそれぞれ個性がバラバラで何で一緒にいるのかすらも理解できない。
その中に子供がいるのも理解できない。それに――――


「ね、ねぇ・・・・獄寺くんが言ってたんだけど・・・・"十代目"って、何?」
「ん?ああ、ありゃツナのあだ名」
「沢田くんの?」
「そう。獄寺がマフィアごっこしてんだよ」
「・・・・は?」


(マフィア・・・・ごっこ?中学生にもなって?)


そこもよく分からなくて首を傾げていると、山本くんは楽しげに笑い出した。


「俺達、最近危ない遊びばっかしてんだよなぁー。まあ悪い事はしてねーし楽しいからいいんだけどさ。今度も来いよ」
「・・・・・(絶対に行きたくないし)」


能天気な山本くんに内心そう思いながらも、やっと自宅の近くまで来てホっと息をついた。


「あ、あの・・・・もう家、近いしここでいいよ?」


前を歩く山本くんに声をかけると、彼はやっと足を止めて辺りを見渡した。


「へぇ、ほんとにツナんちから近いんだな。で、家はどこ?」
「え、あ、だから・・・・あの角を曲がって路地を少しいったとこ――――」
「んじゃ家の前まで送るよ」
「え!い、いいってばっ」


彼の言葉にギョっとして追いかける。
山本くんはスタスタ歩いて行ってしまい、ほんとに私の家に向かっているようだ。
そして暫く行くと、私の家の表札を見つけて、「お、ここか?」と笑顔で振り向いた。


「あ、うん・・・・」
「へーここか?お前んち!」
「あ、あの・・・・ありがと!もう大丈夫だから」


そう言って彼に手を振ると、山本くんは「おう、んじゃまた明日な♪」と言って、やっと元来た道を戻っていく。
その後姿を見送りながら、ホっと安堵の息を漏らした。


(はぁ・・・・悪い人じゃないんだけど・・・・疲れる)(!)


小さく息をついて家に入ろうと門に手をかけた。
その時、後ろからグイと肩を掴まれ、ビクっとなる。


(帰ったんじゃないの・・・・?)


山本くんが戻ってきたのかと思い、溜息交じりで振り向いた。



「何――――」


「声を出すな」


「――――ッ」



そこにいたのは山本くんじゃなく、見た事もない男達だった。


「だ、誰・・・・」
「質問はこっちがする。お前はか?」


ドスのきいた低い声。一目で中学生じゃないと分かる。
どこの学校なのか分からないが、私よりはるか上のように見えた。
茶髪に何個ものピアス。もしかしたら大学生くらいかもしれない。


「おい答えろ。お前はか?」
「・・・・・」


男の問いに無言のまま頷けば、そいつは後ろにいる二人の男に頷いた。


「俺達と一緒に来い。いいか?声は出すなよ?」
「や・・・・っ」


その男は強い力で腕を掴むと私を引きずるようにして歩き出す。
通りの向こうに小さなワゴン車が見えて心臓がドクンと嫌な音を立てた。
このまま連れて行かれたら何をされるか分からない。


「や、やめて・・・・」っ」
「うるせぇ!声を出すな!」
「やだ・・・・!放してよっ」


怒鳴られても大きな声を出し、体を捩った。
最近多い、車での拉致事件のニュースが、ふと頭を過ぎる。


「嫌・・・・・!」
「おい、暴れるな!」
「放して!誰か――――」


「何してんだ、お前ら!!」


「――――ッ!」


その声に目を開けると帰ったはずの山本くんが息を切らして走ってくるのが見えた。


を放せ!!」
「チッ!うぜぇっ」


私を掴んでた男は舌打ちすると他の二人に合図をした。
すると男二人はナイフを取り出し、山本くんに向かっていく。
それを見て息を呑んだ。
どう見たって、あの爽やかだけがとりえの(!)山本くんが彼らに敵うはずがない――――


「邪魔すんな!てめぇ!」
「大事なクラスメート浚われそうになってんのに黙って見てられるかって!」
「うるせぇ!」
「や、山本くん!危ない――――」


男がナイフを振り上げたのを見て思わず目を瞑った。


「わぁぁっ」

「・・・・っ?」


再び目を開けてみれば、後ろに吹っ飛んだのはナイフを持った男だった。


(え、何がどうなったの・・・・?)


一瞬、呆気に取られていると、もう一人の男が「このやろう!」といって山本くんにかかっていく。
その時、「山本!」という声と共に山本くんの方に何かが飛んできた。
それを手で受け取った瞬間、山本くんが凄い速さで、かかってきた男の手に握られていたナイフを弾き飛ばす。


「――――ッ?!」


カラーンという音がしてナイフが足元に飛んできたのを見て息を呑んだ。
顔を上げれば山本くんは何故かバットを手にして私の方に歩いてくる。


「おい!を放せ!」
「な、何だ、コイツ・・・・!く、来るな!」
「きゃっ」


私を掴んでいた男は山本くんの方に私を突き飛ばし、仲間を置いて逃げて行った。
よろけた私を受け止めた山本くんは「おい、大丈夫か?」といって顔を覗き込んでくる。


「あ、ご、ごめん・・・・」


山本くんに支えられ、慌てて体を離す。
でも今の恐怖で足がガクガク震えだした。


「あ、おい・・・・っ」
「力が抜けたんだな」
「き、君・・・・」


山本くんの後ろから声がして何とか顔を上げれば、さっきのリボーンとかいう子供が立っていて驚いた。
それと同時に、さっき山本くんにバットを投げたのはこの子だったんだと気付く。


「な、何でここに・・・・」
「ちょっと気になったからだぞ。やっぱり一人で帰らなくて正解だったな」
「・・・・え?」


何だか何もかも分かってたような口ぶりのリボーンくんを見て首をかしげた。
すると山本くんが腕を支えて立たせてくれる。


「今の奴ら、誰だ?」
「し、知らない・・・・。いきなり連れて行かれそうになって・・・・」
「そうか・・・・。とにかく残りの男達に聞いて――――?!」


そう言って山本くんが振り返ると、さっきまで伸びていた男二人がいなくなっている。


「逃げられたな・・・・」
「クソ!もっと思い切り殴っとくんだったぜっ」


山本くんは軽く舌打ちすると、心配そうに私を見た。


「おい・・・・大丈夫か?」
「う、うん・・・・」
「お前、親は?今日いるのか?」
「・・・・」


その質問にドキっとして顔を伏せると、リボーンくんが私の前に歩いてきた。


「おい。もし家に誰もいないなら危険だ。今は一人にならない方がいいぞ?」
「え、でも・・・・もう大丈夫よ・・・・?ちゃんと鍵閉めておくし・・・・」
。さっきの奴らは誰でも良くて拉致しようとしたんじゃないぞ。お前を拉致しようとしたんだ」
「え、何で――――」


そう言いかけて言葉を切った。
そう言われてみれば確かにさっき名前を聞かれた。でも、何故――――?


「おい。今日はツナんちに泊まれ。一人じゃ危ないしな」
「おう。そうしろよ、
「で、でもよく知らないのに――――」
「何言ってんだ!もう俺達は友達だろ?」


山本くんはそう言うと思い切り背中を叩いてきた。
その痛さに思わず顔を顰めるも、さっきの恐怖は未だに残っている。
家に一人でいる勇気はなかった。


「よし、じゃあ行くぞ」


リボーンくんはとても子供とは思えない顔つきでサッサと歩き出し、私は山本くんに支えられて歩き出した。


(でも・・・・なんで私が狙われてるの?あんな男達に狙われるようなこと何もしてないのに・・・・)


来た道を戻りながら、その事だけがずっと心の奥に引っかかっていた。










「あの、お世話になりました」
「いいのよー♪そんないつでも遊びに来てね!」


次の日、沢田くんのお母さんに挨拶をして家を出る。
いきなり泊まりに来た私を快く迎えてくれて、優しいお母さんなんだな、と沢田くんが羨ましくなった。
当の本人は、「泊まらせたりしてヒバリさんに殺されない・・・・?」なんて、まだビビってたんだけど、
そこはあのリボーンという子供と山本くんが事情を話して説得してくれたのだ。
そして一階の客間に泊めてもらった際に、何故かランボくんが乱入してきて、


「ランボさん、と寝るー」


なんて言われ、と一緒に寝るハメになり、私にしたら珍しく賑やかな一夜を過ごした。


「じゃあ行って来まーす」
「行ってらっしゃい。ああ、ツっくん、ちゃんを学校まで守るのよ?分かった?」
「わ、分かってるよ・・・・」


何とも頼りなげな顔をしながら、沢田くんは引きつった笑顔を見せた。
そのまま二人で学校に向かいながら歩いていく。
だけど沢田くんはチラチラと辺りを見渡して、どこかビクビクしているようだ。


「ねぇ、沢田くん」
「な、何?」
「ビビってるとこ悪いけど・・・・彼なら大丈夫だと思うよ?」
「か、彼って・・・・?」
「雲雀恭弥」
「・・・・・っ」


名前を出しただけで固まる沢田くんに、つい苦笑が零れた。


「そんなに怖い?」
「え?あ、い、いや・・・・まあ・・・・。でも・・・・大丈夫ってどういうこと?昨日も様子がおかしかったけど・・・・」
「・・・・知らない」


それだけ言って再び歩きだすと、沢田くんも慌ててついて来た。


(きっと・・・・気まぐれだったんだ、あの日のことは)


かすかに胸の痛みを感じ、雲雀さんの笑顔を思い出す。
あのキスだって・・・・私には初めてでも、彼にとったら何でもない事だったんだ。
じゃなければあんな風に冷めた目で見たりしない・・・・無視なんかするはずないもの。


ぎゅっと拳を握りしめ、あの日の事を振り切るように頭を振る。
何だかこの街に来てから色々ありすぎて混乱してるのかもしれない。
会って二日目の人にファーストキスを奪われ、次の日には無視。
その帰りに拉致されそうになって、クラスメートに助けられ、家にまで泊めてもらった。
慣れる前にこれだけあれば、もう十分すぎる。
何となく疲れを感じ溜息が洩れた。


(沢田くんや山本くんたちはいい人だけど・・・・私にはやっぱり一人が似合ってるのかもしれない)


そんな事を思いながら、再び学校に向けて歩き出した。










「やっぱりここにいたのか、ヒバリ」


応接室と書かれたドアを開けると、リボーンは中に入りドアを閉めた。
雲雀恭弥はソファの上で読書をしている。


「やあ、赤ん坊。暇つぶしの相手でもしてくれるのかな?」
「それは今度だな。それより・・・・が昨日、拉致されそうになったのは知ってるのか?」
「・・・・・っ」


静かな部屋が一瞬で張り詰めた空気に変わる。
雲雀は静かに本を閉じると、無表情のままリボーンを見た。


「お前との事はツナからだいたい聞いてる。お前と同じで不器用そうだが、いい子だな」
「君には関係ないよ」
「そうでもないぞ?夕べは泊めてやったし朝飯も一緒に食った仲だからな」
「・・・・・」
「おっと、そう睨むな、ヒバリ」


ゆっくりと立ち上がった雲雀に、リボーンは苦笑いをこぼした。


「その様子を見てると・・・・彼女を無視したのには理由があるみたいだな」
「・・・・うるさいな。出てってくれない?」
「そういうわけにはいかないぞ。どんな事情があるか知らないが、を巻き込む事だけは許せないしな」
「・・・・巻き込もうなんて思ってない」
「お前はそうでも相手、、は違うんじゃないのか?」


リボーンの言葉に雲雀は無言のまま、ドアを開けた。


「出て行かないなら僕が出て行くよ」
「好きにしろ。だがは暫く俺が預かるからな」
「・・・・・」


雲雀の背中にそう声をかけると、彼はふと足を止め、「勝手にしたら・・・・?」とだけ言って静かにドアを閉めた。










午後の授業を終えて、私は真っ直ぐ応接室へと向かった。
どうしても落ち着かなくて、もう一度だけ彼と会ってみようと思ったのだ。
応接室は普段、学生が通らない校長室の奥にある。
静かな廊下を足早に進むと、前から誰かが歩いてくるのが見えて足を止めた。


「あ・・・・」
「・・・・・」


前から歩いてきたのは今会いに行こうと思っていた人だった。


「雲雀さん・・・・」
「・・・・・」


彼は僅かに眉を上げたが、やっぱり表情は変えず、そのまま私の横を通り過ぎようとする。
私は慌てて彼の腕を掴んだ。


「待って」
「・・・・何?もうすぐ授業が始まるよ」
「・・・・出る気なんてないクセに」


そう言って彼を見上げると、雲雀さんは冷たい目で私を見下ろした。


「・・・・君には関係ない。放してよ」
「・・・・どうして?」
「何が?」
「何で急にそんな態度するの?私、何かした?」


泣きそうになった。
あまりに冷たい目で見るから。
でも必死に堪えて彼を見上げる。
すると雲雀さんはかすかに笑みをこぼし、私の腕を振り払った。


「別に僕が傍にいなくても君には仲間がいるだろ?」
「何のこと・・・・?」
「同じクラスの奴らとつるんでればいい」
「あ、か、彼らは別に――――」
「僕の目に触れない程度に、好きに群れたらいいさ」
「・・・・っ」


雲雀さんはそれだけ言うと、そのまま歩いて行ってしまった。
私はただ何も言えずに、その場に立っている事しか出来ない。
どうして彼の態度が急変したのか分からなくて、涙が零れた。


「何よ、バカ・・・・大嫌い・・・・」


散々人を振り回しておいて。
あげくに"好きに群れてろ"ですって?冗談じゃないわよ!
会ったばかりだけど・・・・彼は私を分かってくれてるって思ったのに――――


「・・・・・勝手にするわよ。アンタなんか・・・・ずっと一人でいたらいいじゃない・・・・」


口から強気の言葉は出るのに、涙だけは止まらなくて。
息が苦しくて、この場から逃げ出したくなった。
気付けば廊下を走り抜けて、そのまま外に出る。
今は誰とも会いたくなかった。学校にいたくなかった。


アイツがいる、この学校に――――







「やあ、待ってたよ。一人になるのをね」

「――――ッ」


裏門から出た瞬間、目の前に黒い車が走りこんできて足を止めた。
その車から2〜3人の男達が出てきて私の両腕を押さえる。


「や・・・・っ」
「大人しくしてれば何もしないさ」


サングラスをした男がそう言うとニヤリと笑い、私を車の中へと押し込んだ。
口を塞がれ、男3人にかかれば、私に何も出来るはずがない。


「おい、早く出せ」


助手席にいた男が命令すると、静かに車が走り出した。
男達はどう見ても昨日の大学生とは違う雰囲気で、私のような学生には縁のないヤクザのように見える。


「な、何なんですか、あなた達――――」


口から手が外され、怖いながらに口を開く。
すると隣の男がニヤリと笑った。


「アンタは人質だ。昨日、バイトを雇ったが女一人浚えない奴らなんで俺達が直々に来てやったんだ」
「な、じゃ、じゃあ昨日のも――――」
「アンタのお友達は強いらしいな?まあ、あのヒバリとかいうガキも相当、強いらしいし今時のガキは怖いぜ」
「雲雀・・・・?」


いきなり彼の名が出てドキっとした。


「お前の彼氏なんだろう?あの男は」
「・・・・え?」


助手席にいる男がそう言って振り向いた。


(何でコイツらがそんな事・・・・)


おかしいとは思ったが、そこは思わず否定してしまった。


「か、彼氏なんかじゃないわ、あんな奴・・・・!」
「へぇ、ケンカでもしたのか?」


男達はニヤニヤしながら、そう言うと、「まあそれでも助けには来てくれるんじゃないか?」と言って私の顎を持ち上げた。


「さ、触らないでっ」
「おう・・・・気が強いな、姉ちゃん。まああの男の彼女なら当たり前か」
「だ、だから彼女じゃないってば!それにアイツは私なんかさらったって助けになんか来ないわよっ」
「トボケんな!」
「――――ッ」


いきなり反対側にいて腕を押さえている男が怒鳴り、ビクっとした。

「こっちは事前に調べて聞いてんだよ。アイツの弱みをな」
「弱み・・・・?」
「ああ。お前んとこの生徒を脅して聞き出すくらい簡単だ。皆、言ってたぜ?アンタの名前を」
「・・・・そんなっ」


その話に驚いて抵抗をやめた。
コイツらは学校の皆に、雲雀さんの事を聞いてまわったんだ。


そこで気付いた。
雲雀さんと私があんな噂になった後に、ヤクザから弱みとか色々と聞かれたら、私の名前を出すだろうという事に。
でも皆は事実を知らない。実際に私と彼の間には何の繋がりもなかったんだって・・・・ だから私を助けに来るはずもないんだ。


(でも・・・・ヤクザと彼の間に何があったの?)


そこが気になり、「彼と・・・・何があったの・・・・?」と聞いてみる。
すると助手席にいたサングラスの男が振り向いた。


「アイツはな、俺の弟分を半殺しの目に合わせて病院送りにしたんだよ!ガキのクセにナメやがって!」
「・・・・え?」
「お前んとこの教師に金を貸しててね。それで仲間5人と取り立てに行かせた」
「と、取り立て・・・・?」


テレビでよく見るアレだろうか?と首をかしげる。


(うちの先生たちってヤクザが運営してる金融屋でお金借りてるわけ?最悪・・・・)


ちょっとだけ驚いたが、その取り立てに来た人がどうしたんだろうと思っていると、サングラスの男は忌々しげに舌打ちをした。


「ところが・・・・裏門から中へ入った瞬間、学ランを来たガキに襲われた」
「が、学ラン・・・・?」
「ああ、そうだ。ソイツに5人全員、半殺しにされたんだよっ。4日前の事だ」
「4日前・・・・」


そこで思い出した。


「あ・・・・あの時・・・・」


そうだ、あの日だ。
私が初めて彼、雲雀恭弥に会ったあの日――彼は手を真っ赤に染めて私の前に現れた。



"平気だよ。僕の血じゃないから"



確か彼はそう言ってた。じゃあ・・・あの血はもしかして――――


恐る恐る顔を上げると、サングラスの男は怖い顔をして私を睨んでいた。


「雲雀恭弥・・・・。お前の男がやったんだ。群れてるっていう訳の分からない理由でな!」
「・・・・・」


言葉が出なかった。いや出せなかった。
この時の私の頭の中は、彼って本当に群れてる奴らが嫌いなんだって事だった。(呑気にもほどがある)


「だからアイツの弱みでもある女をさらって、アイツをおびき出し・・・・」
「彼をどうする気・・・・?」
「そりゃもちろん俺達のやり方で落とし前つけさせてもらうぜ」
「・・・・ッ」


サングラスの男はそう言うと、ジャケットを捲り、黒く光る拳銃を私に見せた。
テレビでは何度となく見てるけど、本物を見るのは初めてで、思わず息を呑む。
まさか中学生相手に、こんなものを使うなんて思わなかったのだ。


「や、やめて・・・・」
「ふん、やっと心配になってきたか?でもその頼みは聞けないな。お前の男には死んでもらう」
「そ、そんな事したら人殺しよ?!捕まっちゃうわっ」
「・・・・ぷ・・・・あはははは!!」
「ひゃはははっ」
「――――っ」


私の言葉に男達は楽しげに笑い出した。
そう、彼らはヤクザなんだ。
こんな裏家業の人たちにそんな事を言っても仕方ないかもしれない。
思わず唇を噛み締め、逃げられないか左右を確認する。
でもそれも空しく、車は静かに停車し、私は外に引きずり出されてしまった。


「痛・・・・っ」


地面に転ばされながらも辺りを見れば、今は使われていない倉庫前のようで錆びた門が遠くに見えた。
逃げるならあそこまで走らないといけない。
でも、この距離なら何とか振り切って逃げ出せたとしても、またすぐに捕まってしまうだろう。


「彼氏がいたぶられて殺されるのを大人しく見てろよ。全てが終わったら家に帰してやる」
「兄貴ーもったいないっすよ〜!この子なら風呂に沈めれますって」
「ふん・・・・まあ、それもいい考えだな。そうなれば最初に俺が頂くさ」
「えー兄貴、ずりぃ〜」


「・・・・っ」


男達の言葉にゾっとして、後ろに後ずさる。
でも腕を両方から押さえられて身動きが取れない。


「放して・・・・っ」
「お、やっと現実を飲み込めたか?でももう遅いぜ?仲間が彼氏にお前の事を伝えに――――」



ピ〜!



「・・・・っ?」

その時、空の上から鳥の鳴き声が聞こえてハっとした。
顔を上げると、あの小鳥が皆の頭上を旋回している。


「何だぁ?あの鳥・・・・」


兄貴と呼ばれた男は何度も飛んでくる小鳥を見上げ、軽く舌打ちをした。
でも私は気づいた。彼、雲雀恭弥がここに来ていることを――――


その時、見張りに行った男が門の方からフラフラと歩いてくるのが見えた。
遠くてよく見えないが、何だか千鳥足で酔っ払ってるようにしか見えない。
サングラスの男もそれに気付いたのか、「おい、どうした矢崎・・・・」と声をかけながら歩いていく。
その瞬間、その矢崎と呼ばれた男が宙に浮き、凄い勢いでサングラスの男の方へ飛んできた。


「うわぁぁっ」


目の前に弟分が吹っ飛んできて、サングラスの男が間一髪で避けた。(ヒドイ男)
が、唖然として顔を上げ、また叫び声を上げる。


「て、てめぇ、ヒバリかぁ!」

「・・・・っ?」


その声に私も顔を上げれば、返り血を浴びた雲雀恭弥が、舌なめずりをしながら歩いて来た。


「クソ、お前ら、やれ!!」


兄貴と呼ばれた男の掛け声で、周りにいたチンピラが一斉に雲雀恭弥に向かって走っていく。
でも彼の手には沢田くんから聞いたトンファーという武器が握られていて、雲雀恭弥は次々にかかっていくチンピラをそれで殴りつけていった。


「…嘘…」


その戦いぶりを見て唖然とした。

強い――――なんてものじゃない。
いつものように表情を変えず、まるで遊んでいるかのように、相手を身軽に交わしては殴りつけていく。
その度に雲雀恭弥のシャツには返り血が飛んで、赤く染まっていった。


「う、うわぁぁ、く、来るな!おい、お前らも行け!」
「で、でも兄貴――――」
「うるせぇ、いいから行け!」


とうとう私を掴んでいたチンピラ二人にも命令が下り、その瞬間、私の体はサングラスの男が拘束した。


「ちょっと!放して・・・・っ」
「うるせぇ!お前さえいれば奴は抵抗できねーんだ!大人しくしろっ」
「・・・・痛っ」


手首をねじり上げられ、あまりの痛さに顔を顰める。
後ろから羽交い絞めにされてるから、体を捩っても男の腕から逃れる事は出来なかった。


「・・・・あんたが今回の首謀者?」


「――――ッ」


雲雀恭弥は、いとも簡単に最後の二人を倒して、私とサングラスの男の方に歩いてきた。
彼の後ろにはサングラスの男の弟分たちが大勢、倒れている。
皆、血まみれで、うんうん唸りながら今にも死んでしまいそうだ。


「彼女を放せ」
「く、来るな!」
「早くその汚い手を放さないと、噛み殺すよ?」


雲雀恭弥はそう言って無表情のまま、こっちに歩いて来た。
その瞬間、サングラスの男は私の首を絞めて頭に冷たいものを突きつける。


「きゃ・・・・っ」
「き、来たらこの女、撃つぞ?!それでもいいのか?クソガキ!」
「・・・・どうやら本気で死にたいらしいね」
「雲雀さん――――」


頭に銃を突きつけられてる状況で、気を失いそうなくらい怖かった。
でも意識を失う前に、雲雀恭弥が動いたと思った瞬間、私を掴んでいた男は後ろに吹っ飛び、いきなり体が自由になった。


「・・・・っ」


男の腕が離れた瞬間、力の抜けた私の体はその場に崩れ落ちたかと思った。
でも気付けば私は雲雀恭弥の腕の中にいて、強く抱きしめられていた。


「ひ、雲雀さ・・・・ん?」


彼の匂いがかすかにして、柔らかい髪が私の頬に触れる。
頭の奥が痺れてるようで何も感じないのに、彼の腕の強さと、かすかに伝わる彼の体の震えだけは何となく分かった。


「・・・・恭弥だよ」
「・・・・・」


こんな時にも訂正してくる彼がおかしくて、力なく微笑む。
今頃になって怖さを感じ、私も震えが止まらなくなった。


「大丈夫?怪我は――――」
「だ、大丈夫・・・・。ごめんね・・・・」
「何でが謝るの」


不意に体が離れたと思えば、不満げな顔をした彼と目が合った。


「だ、だって・・・・助けに来てくれるなんて思ってなかった・・・・」
「何で?」
「な、何でって・・・・」


彼のその言葉にムっとした。

(昨日も無視して、さっきだって、あんなに冷たかったくせに・・・・何で、そんなシレっとしてられるわけ?!)


内心で怒りながらも、目の前の彼の瞳はこの前と同じ優しさを持っている事に気付いた。
それを見てしまえば何も言えなくなる。


「あ、あの――――」


「だからアイツらと群れてれば良かったのに・・・・」


「え・・・・?」


「昨日も危ない目にあってるのに一人で抜け出すなんてバカじゃない?」


「なっ何よ、それ――――」


彼の言葉にムカっとして腕を振り払い立ち上がろうとした。
でもやっぱり力が入らなくて、あげくフラついて、再び雲雀さんの腕に包まれる。


「・・・・ちょっと放して――――」


「良かった・・・・・。無事で・・・・」


「――――ッ」


小さく呟かれた言葉と同時に、さっきよりも強く抱きしめられ、言葉を失う。
気のせいかと思ってたけど、やっぱり彼の体はかすかに震えていた。


(もしかして・・・・心配してくれたの・・・・?)


そんな事を思いながら、顔を上げれば遠くにあの子供や山本君たちの姿が見えた気がした。


(ああ・・・・そっか。彼らも来てくれてたんだ・・・・)


そう思いながら手を振ろうとすると、彼らは笑顔のまま行ってしまったようだ。


「誰に手を振ってるの・・・・?」
「え?あ・・・・えっと・・・・」
「赤ん坊たちが来てた?」


僅かに体を離すと、雲雀さんは面白くなさそうな顔をした。
何だかそんな顔は見たことなくて、つい噴出してしまう。


「何がおかしい」
「だ、だって・・・・」
「はぁ・・・・」


私が笑うのを堪えてると、雲雀さんは呆れたように溜息をついた。


「呑気だな・・・・。人がせっかく守ろうとしてたのにノコノコ人質になってるし」
「な、何が?だいたい、なりたくてなったわけじゃ・・・・」


そこまで言ってハっとした。


(もしかして彼が私に冷たくしたのは・・・・こんな目に合わせないように守ってくれようとしてたから・・・・?)


そこまで考えて彼を見上げると、
何だかスネたような顔をプイっと反らした。


「雲雀さ――――」
「恭弥」
「・・・・恭弥・・・・さん」
「さんはいらないけど…何?」
「・・・・・(この人はホントにっ)」


チラっと視線を戻した彼を見て、少しだけ目を細めるも、そこはグっと堪える。
そして、そのまま雲雀恭弥にぎゅっと抱きついた。


「・・・・何、甘えてるの」
「あ、甘えてもいいじゃない・・・・。怖い思いしたんだから・・・・」


こんな時でも可愛くない言葉が出てきてしまう。
だけど、彼も素っ気ない言葉とは裏腹にぎゅっと抱きしめ返してくれた。


「でも・・・・ぁりがと・・・・」


彼の耳元で呟くと、ピクリと体が動いた。そして僅かに体を離すと――――


「お礼なら・・・・これでいい」


「え――――」


顔を上げた瞬間、唇に熱を持つ。
この前と同じく、優しい彼の唇が何度も降ってきて。
不覚にもセカンドキスさえ、彼、雲雀恭弥に奪われてしまった――








それから私は血まみれの彼に家まで送ってもらった。(よく職質されなかったな、と思う)
帰り際、「二度と赤ん坊のところに泊まらないでね」と素っ気ない顔で言われたけど、そんな事まで知っていて、しかも、ちょっぴり怒っている彼に少しだけ驚いた。
そして次の日、彼の言う"赤ん坊"から、


「ヒバリの奴、を守ろうとしてただけらしいぞ?」


なんて言われ、皆にからかわれたんだけど。
そして最後に、やっぱり私を泊めた事を怒ってたようで、その怒りの犠牲になった沢田くんは、包帯だらけの顔で登校してきていた。
獄寺くんは酷く心配してたようだけど、山本くんは呑気に笑いながら、


「これじゃと遊ぶたびに命がけだな」


なんて言って、沢田くんから、「まだ遊ぶ気なのーーーっ?!」と文句を言われてたっけ。


今でも彼の気持ちは分からない。


好きだと言われたわけでもない。


だけどあの時、真っ先に助けに来てくれた事だけで、もう十分だと感じた――――










な、何だか変な方向へ話が向かっちゃったよー(゜ε ゜;)
ただ雲雀に助けてもらう話を描きたかっただけともいう。エヘエヘ。


それと「投票処」に、この作品について嬉しいコメントを頂いてます!
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『此方の夢小説を読んでREBORNと雲雀が好きになりました!』

『雲雀連載・・・とても面白いです。続きが気になります』

『リボーン夢開始、すごく嬉しいです。雲雀夢、楽しみにしてますw』




もうもう、こんな風に言って頂けて大感激ですー(´;ω;`)ホロホロ
これからもリボーン描いていきますので宜しくお願いいたします(●´人`●)


ちなみに投票処で頂いたコメントへの返信は、それをキッカケに更新した際にのみ、
コメントを頂いた夢のあとがきにてボチボチ返事していければ、と思っておりますv
でも全部に目を通してますし、ホント励みになってパワーがみなぎりますのよ!
この場を借りて…本当にいつも感想を下さる皆様!ありがとう御座います!<(_ _)>