一度、素直になってしまえば、あとは簡単。何度だって口に出来る。
君が好き、だって――――。
あれから恭弥と一緒に寝て、起きたらお昼過ぎだった。
「・・・おはよ」
「おはよう」
目を覚ました時、恭弥はすでに起きていて、目を覚ました私を見てニッコリ微笑んでくれた。
着替えたのか、学ランではなく通常の制服を着ている。
恭弥はベッドに腰をかけると、私の頭を軽く抱き寄せ髪に軽くキスをした。
唇にされたわけでもないのに、それだけで鼓動が速くなって体が熱くなるなんて、私、夕べから少しおかしいかも。
「よく眠れた?」
「う・・・うん。グッスリ・・・。恭弥は?」
「僕も久しぶりに・・・よく眠れたよ」
「なら良かった」
そう言って窓の方に目を向けると、カーテンの隙間から太陽の日差しが見える。
どうやら夕べの雨が止んだみたいだ。
「、これに着替えて」
「え?」
不意に差し出されたTシャツとブラックジーンズに首をかしげると、「そんな格好で帰れないだろ」と恭弥が笑った。
「え?あっ」
言われて気付いた。私はまだバスローブのままで、慌てて服を受け取り抱きしめる。
夕べはこんな格好で一緒に寝てしまったんだと気付き、一気に顔が赤くなった。
何度もキスしてるし、今更と言われるかもしれないけど、でもやっぱりこんな格好では抵抗がある。
夕べも一瞬、恭弥とそうなる事も考えて覚悟もしたけど、恭弥はキス以上の事をしてはこなかった。
と言って、私と恭弥も凄く疲れてたから、知らないうちに寝てしまった、というのが正しい。
「何で隠すの?裸を見たわけでもないのに」
「だ、だって・・・・」
夕べは見たくせに、と内心思いつつ、意地悪な笑みを浮かべる恭弥を睨むと、彼は楽しげに笑っている。
「それ僕が昔着てた服だし、サイズはそんなに大きくないと思うから」
「あ・・・ありがと・・・」
「着せてあげようか?」
「――――ッ」
いきなりの言葉に耳まで赤くなった私を見て、恭弥はニヤリと笑った。
「そんな顔されると逆効果」
恭弥はいつもの意地悪を言いながら、そっと唇を重ねてきた。
不意打ちのキスに、一瞬ビクっとなる。
首の後ろに腕を回されると更に深く唇が重なり、思わず恭弥の胸元をぎゅっと掴んでしまった。
恭弥の舌先が唇に触れるたび、体に電流のようなものが流れて、少しづつ力が抜けていく。
(何だろ・・・。恭弥にキスされると、前よりも体全体に電気が流れるみたいになって凄く気持ちいい・・・って、なな何考えてんの?私ってば!)
一瞬、そんなことを考えて自分で恥ずかしくなった。
そんな思いが伝わったのか、恭弥の胸元掴んでいた手に力が入ると、ゆっくりと唇が離れていく。
「・・・嫌だった?」
私の反応に恭弥は勘違いをしたのか、スネた顔で訊いてくる。
私が慌てて首を振ると、恭弥は苦笑しながらも、またゆっくりと唇を塞いできた。
今度は最初から舌が入って来る。その瞬間、また体が痺れるような感覚になった。
「・・・ん、」
恭弥の舌が私の舌にゆるゆるとした動きで絡みつくたび、自然に声が洩れる。
彼の舌先が動くたびにくちゅっという厭らしい音がして、それが耳を刺激するように、体の奥が熱くなっていった。
でも少しづつ体の力が抜けてくるような感覚になった頃、重なっていた唇がゆっくりと離れていく。
かすかに吐息が洩れ、恭弥の舌が口内から出て行くのが分かった。
こんな風に、前よりもずっと恭弥のことを感じてる自分に恥ずかしくなる。
「・・・眠くなっちゃった?」
とろんとした顔をしていたのか、恭弥は私を見て僅かに笑ったようだった。
「そんな顔されると・・・今すぐ押し倒したくなるんだけど」
「・・・・ぇっ」
今、私はどんな顔をしてたんだろう、と一気に顔が赤くなる。
そんな私を見て恭弥は苦笑すると、今度は触れるだけのキスを落とした。
「冗談じゃなくて・・・ホントにこのまま抱きたい・・・」
僅かに唇を離すと、恭弥が掠れる声で呟く。
一瞬、鼓動が跳ねたけど、今なら怖くない、とそう思った。でも――――。
「・・・でも帰らないとね」
恭弥も同じ事を思っていたのか、そう言って私の額に口付けた。
「アイツが待ってるし」
「うん・・・・」
ゆっくり離れていく恭弥の体温。それがこんなに寂しいなんて。
「・・・着替えるね」
私がそう言うと、恭弥は優しく微笑んで静かに部屋を出て行った。
「はあ・・・・」
一人になると急に緊張感が解けて、私は息を吐き出した。
夕べから色々ありすぎて、まだ夢を見ているみたいだ。
でも、確かに今、私は恭弥と一緒にいる。
"好きだよ"
夕べの言葉を思い出し、胸の奥が熱くなる。
私の為に婚約を解消してきてくれた事も、必死に私を探して助け出してくれた事も、何もかも夢みたいで。
もう何も心配しなくていい、もう諦めなくていいんだ、と思うと、この間までの重苦しい気分が綺麗に消えていく。
恭弥の貸してくれた服を抱きしめると、かすかに彼の香りがする。
それだけで胸の鼓動が勝手に早くなって、心の底から愛しい、という想いが溢れてくる。
さっき"抱きたい"と言われた時も、恭弥がそう望むならきっと私は拒まなかった。
夕べから、恭弥に触れられてあんなにも体が反応するのは、きっと恭弥が好きだから。
恭弥にキスされるだけで全身が疼くのも、きっとそんな私の心から生まれるものだ。
もっと触れてほしい、とさえ思ってしまうほど・・・・。
私はこんなにも恭弥の事を好きになってたんだ、と改めて実感していた。
「――――遅かったな・・・・」
あれから恭弥のバイクに乗って、ランボくんが入院している病院まで送ってもらうと、そこにはディーノさんがイライラしたように待ち構えていた。
「道が混んでてね」
バイクを降りると、恭弥が澄ました顔で答える。
ディーノさんは目を細めながらも、恭弥にバイクを下ろしてもらっている私を見て、ふと微笑んでくれた。
「・・・大丈夫か?」
「・・・うん。あの・・・心配かけて本当にごめんなさい・・・・」
「いや・・・無事で良かった」
心の底からホっとしたように息を吐くと、ディーノさんは優しく頭を撫でてくれる。
この優しい手を、私は裏切ってしまったんだ、と思うと、やっぱり胸が痛くなったけど、ディーノさんは「そんな顔するなよ」と笑ってくれた。
「オレはが笑顔でいてくれるなら、もうそれでいいよ」
「ディーノさん・・・・」
「まあ、でも恭弥に泣かされたら、いつでもオレの元に戻って来ていいからさ」
おどけたように笑うディーノさんは、以前と変わらない笑顔に見えて少しだけホっとする。
でもそれと相反するように不機嫌になってるのは恭弥だった。
「泣かさないよ」
「・・・恭弥?」
グイっと腕を引っ張られ、気づけば私は彼の腕の中にいた。
それを見てディーノさんは苦笑いを零すと、「そんな睨むなよ。もう盗らねーって」と肩を竦めている。
「盗られないけど。それよりあまりに話しかけないでくれる?」
「きょ、恭弥っ」
一気に顔が赤くなって困っていると、ディーノさんは「相変わらずだな、ホント」と笑った。
「話すくらいいいだろ?一応、オレもの"元彼"って立場なんだし・・・。まあ・・・短い命だったけど・・・・(ボソ)」
「ディ、ディーノさんっ」
恭弥を挑発するように、そんな事を言い出したディーノさんにギョッとした。
恭弥は恭弥でムっとすると、私を睨んで、「そうなの?」と訊いて来る。
それには本気で変な汗が出てきた。
「そ、それより・・・ランボくんの容態は?大丈夫なんですか?」
いきなり話を変えた私に恭弥は更に目を細めたけど、ディーノさんは察してくれたのか、軽く頷いた。
「ああ、何とかね。後は意識が戻れば大丈夫だ。中にいるから行っておいで」
「はい。――――あ、恭弥、私ちょっと様子見てくるね」
後ろで仏頂面している恭弥にそう言うと、返事も待たずに病院へと入る。
一瞬、ディーノさんと恭弥を二人きりにする事に心配にはなったけど、どうせ二人はこれから修行をしに出かけるんだろうし、今はとにかくランボくんが心配だ。
「えっと・・・どこだろ」
廊下を歩いて行くといくつかのドアがあり、どの部屋か迷っていると、その一つが開いた。
「あ、沢田くん!」
「え・・・あっさん?!」
「かっ?」
沢田くんの後ろから山本くんも顔を出した。
「ごめんね、心配かけて・・・・」
「ホントだよ〜!ディーノさんから無事だって聞くまでは気が気じゃなかったんだよ?!」
「怪我は?大丈夫か?」
駆け寄ってきた二人は青い顔をしている。そんな様子を見て、私は改めて自分の無謀な行動を反省した。
「・・・私は平気。ホントにごめんなさい」
「いや、無事ならいいよ。でももう無茶すんなよ?」
山本くんはそう言いながら私の頭を軽く撫でた。その明るい笑顔に少しだけホッとする。
「あ、それで・・・ランボくんは・・・?」
「ああ、こっち。まだ意識が戻らないんだ・・・」
沢田くんは私を病室へと案内してくれた。
中へ入ると、ランボくんは傷だらけの体でベッドに横たわっていて、口には呼吸器がつけられている。
その痛々しい姿を見て、私は涙が溢れて来た。
「こんな怪我して・・・まだ子供なのに・・・・」
そっと小さい手を握ると、私の手の中にスッポリと納まってしまう。
この小さな体であんな恐ろしい奴らと戦ったんだと思うと、やりきれない思いが胸に広がった。
「とりあえず峠は越えたって・・・・」
「そう・・・良かった」
溢れた涙を急いで拭うと、私は二人の方に振り返った。
「獄寺くんは・・・?」
「アイツなら時間がないからって朝のうちに先に帰った。またシャマルと修行に行ったんだろう」
山本くんはそう言うと、「今夜は嵐の守護者対決だ」と呟いた。
嵐の守護者。獄寺くんの相手は・・・あのベルフェゴールとか言う、危ない男だ。
「さん・・・。向こうの嵐の守護者に浚われたんだろ?」
「・・・うん。危ない奴だった。ナイフを使うの。無数のナイフを自由自在に操ってた」
「そっか・・・。大丈夫かな、獄寺くん・・・」
沢田くんは心配そうに溜息をつく。私も少し心配だった。
あの男は私の目から見たって、かなり強い。恭弥と対峙した時も軽々と攻撃をかわしていた。
しかも笑顔で人を傷つけられるくらい残酷だ。獄寺くんも強いけど、やっぱり不安は残る。
今夜の戦いを考えると病室に重苦しい空気が流れる。
でも山本くんが、その空気を変えるように明るく笑った。
「ま、とにかく考えても仕方ないじゃん?大丈夫だよ、獄寺なら」
そう言って私の頭にポンっと手を乗せる。
「絶対勝つよ、アイツは」
「うん・・・。そうだね」
山本くんの言葉に、少しだけ元気が出てきた。そう、今考えても仕方がない。
獄寺くんだって、この日の為に必死で修行してきたんだ。きっと大丈夫。
あんな男に負けるはずなんかない。
「ところで・・・仲直りしたんだって?」
「・・・え?」
突然、ニヤリとする山本くんに首をかしげると、何故か沢田くんが頬を赤くし、「山本っ」と彼の袖を引っ張っている。
そんな二人の様子を見て何を言われているのかが分かり、今度は私の顔が赤く染まった。
「え、えっと・・・仲直りって言うか・・・・」
「良かったじゃん!これで元鞘に落ち着いたって感じだな」
「そ、それはだから・・・・」
ニヤニヤしている山本くんに、私は更に顔が赤くなる。
でも彼らにも色々と心配をかけてたんだし、そこは素直に頷いた。
「良かったな?」
「あ、ありがと・・・」
「まあ、ディーノさんは思い切りへコんでたけど」
「・・・え、あ・・・・」
ディーノさんの事を言われドキっとすると、また沢田くんが慌てたように山本くんの制服を引っ張っている。
きっと余計な事は言うなという事だろう。
それを知ってか知らずか、山本くんは相変わらず呑気に笑っている。
「まあ、でもディーノさんは分かっててを選んだんだろうし、こればっかりは仕方ないって」
「山本くん・・・・」
「人間ってさ。時々叶わないって分かってても好きになっちゃったりする事、あると思うぜ?」
山本くんはそう言うと、病室のソファに腰をかけ軽く肩を竦めてみせた。
沢田くんはもう諦めたのか、溜息交じりで彼の話を聞いている。
「誰かに一途になってる奴って、すっげぇー輝いて見えんだよ。それが自分に向いてるものじゃないって分かってるのに凄く惹かれちまうって気持ち、オレも分かるんだ」
静かな病室に山本くんの声が優しく響く。すると、彼の目はゆっくりと私を捉えた。
「オレも・・・好きなんだ。一途にヒバリを想ってるのこと」
「――――ッ?」
思いも寄らない告白に、私は本気で驚いた。沢田くんも知らなかったのか、口をあんぐり開けて金縛りにあっているようだ。
でも山本くんは、「そんな顔すんなよ」と言って明るく笑う。
「だからどうだって言ってるわけじゃないんだ。がヒバリを好きだってのはよーく分かってるし最初から傍で見てきたからな」
「山本くん・・・・」
「だから別に自分の気持ちを押し付けるなんて気もねーし。ま、これからもいい友達でいてくれよ。な?」
そう言っていつもの笑顔を見せてくれる山本くんに、私もつられて笑顔になる。
「うん・・・。ありがとう、山本くん」
「礼なんていいよ。オレはがそんな風に元気に笑ってるのが見たいだけ」
そう言ってくれる彼に胸が熱くなる。私にはもったいないくらいの言葉だ、と思った。
一部始終を聞いていた沢田くんに至っては、やっぱり顔を赤くしながら視線をキョロキョロさせて、聞かないフリをしている。
そんな彼を見て、私と山本くんは顔を見合わせ笑ってしまった。
本当に彼らと知り合えて良かった、と、この時、また改めて感じていた。
「」
その時、突然ガラっと扉が開き、ディーノさん、そして恭弥が病室に入って来た。
「あ、恭弥・・・」
「わわっ。ヒ、ヒバリさん・・・!」
沢田くんは恭弥の姿を見てビクっとすると、慌てて山本くんの後ろに非難している。
恭弥はそんな沢田くんをジロっと睨み、
「誰の許可を得てと話してるの?」
「えっ!!(オレーー?!)」
「ちょ、ちょっと恭弥・・・」
前のようにトンファーは構えなかったものの、怖い顔で沢田くんを威嚇している(!)恭弥に、私は「やめて」と声をかけた。
なのに山本くんはそんな空気など気づかず、笑顔で立ち上がると、
「久しぶりじゃん!と仲直りしたんだって?」
「・・・・・っ!!」
「――――っ!(や、山本チャレンジャー!)」
私と沢田くんの気持ちも知らず、山本くんはニコニコしながら恭弥の方に歩いて行く。
恭弥は無表情のまま、「また君?」と言ってウンザリとしたように溜息をついた。
「別にケンカをしてたわけじゃない」
「そっかー?オレから言わせると互いに意地張ってる、ただの痴話ゲンカみたいなもんだったけどな」
「や、山本!」
山本くんのドッキリ発言に、沢田くんは青くなっている。
恭弥も僅かに眉を寄せると、「君、咬み殺されたいの?」と、今度こそトンファーを構えた。
それにはギョっとしたけど、山本くんはヘラヘラと呑気に笑っている。
「いや悪い悪い。そんなつもりじゃねーんだ。ただの事・・・もう傷つけたりしないで欲しいだけ」
「山本くん・・・」
ドキっとして顔を上げると、山本くんはもう笑ってはいなかった。
そんな彼を見て恭弥は「ふぅん」と言いいながらトンファーを下ろし、山本くんを真っ直ぐに見詰め返す。
「確か君・・・。前、僕の家にと二人で来たよね」
「ん?あーあったな、そんな事も」
「その時・・・君、言ってたよね。"を大事にしないなら、俺がもらう"って」
「えっ?」
その言葉に驚いて山本くんを見ると、彼は苦笑しながら頭をかいている。
いつの間にそんな事を言ったんだ、と思いながらも、きっと彼なりに私の事を考えてくれた上での事なんだろうという事は理解出来た。
「まあ・・・。あれは・・・・ジョークだよ、ジョーク!気にすんな」
「別にしてないけど・・・。渡す気もないから」
「恭弥・・・」
いつになく真剣な顔でそんな事を言ってくれる恭弥に、胸の奥がジーンとしてくる。
山本くんも苦笑しながら肩を竦めると、
「そうしてくれ。はヒバリじゃないとダメみたいだからさ」
「・・・当然だよ」
「・・・・っ!!(言い切っちゃうーー?!)」(ツナ)
「はあ・・・。(恋愛でも天狗か、コイツは・・・。って言うか、山本の奴、いつの間に!)」(ディーノ)
恭弥の一言に皆は唖然とし、私は顔が真っ赤になってしまった。
ホント、恭弥は誰と話してても自分のペースを崩さないんだ。
「あははっ。これならもう大丈夫そうだな、」
「や、山本くん・・・」
「もう意地張らないで、仲良くやれよな」
「・・・うん。あの、ありがとう・・・」
クシャっと頭を撫でてくれる山本くんにお礼を言うと、彼はニッと笑ってピースをした。
けどその時、後ろの方でシャキンっという金属音と共に、
「恭弥、落ち着け!!トンファーをしまえっ!!」
という、ディーノさんの悲痛な叫び声が病室内に響いた・・・・。
「もう・・・すぐケンカしようとするんだから・・・」
ランボくんの病室を出て、私と恭弥は院内にある休憩室に移動した。
沢田くんも山本くんも修行に出かけ、そろそろ恭弥もディーノさんと行かなくちゃならない。
「ケンカじゃない。一方的に咬み殺すだけだよ」
「そ、それもダメ!」
「どうして?僕のに勝手に触れたのが悪いだろ」
「そ、それでもダメなのっ」
恭弥の言い草に思わず怒ると、彼は面白くなさそうな顔でソファに座り、私の腕を引き寄せた。
いきなりの事でバランスを崩した私は、恭弥の膝の上に座るような形で抱きしめられ、一気に顔が熱くなる。
「ちょ・・・ちょっと恭弥・・・っ」
「が僕以外の男と話してるのを見てるだけで嫌なんだ」
「な・・・・」
サラリとそんな事を言われドキっとすると、恭弥は私のお腹に腕を回して抱きしめてきた。
背中に恭弥の体温を感じて、思わず体に力が入ってしまう。
「あ、あの・・・」
「何?」
「べ、別に恭弥が心配するような事はないし・・・」
「実際、あいつらはのこと、狙ってただろ?」
「そ、そういうわけじゃ・・・」
「そうだよ。ホント・・・目が離せない」
そう言った瞬間、恭弥はお腹に回していた手を私の顎に添えると、グイっと後ろを向かせ、キスをしてきた。
その不意打ちに固まっていると、ゆっくりと唇が離れていって、目の前には恭弥の綺麗な瞳が見える。
「こうして・・・をずっとこの腕の中に捕まえておけたらいいんだけど」
「恭・・・」
言いかけた時、再び唇が重なった。
以前よりも素直に気持ちを伝えてくれる恭弥に、胸がドキドキしっぱなしだ。
諦めようと心の奥底に沈めてしまった想いが、どんどん溢れてくる。
恭弥が好き――――。
もう、どうしようもないくらいに、彼に溺れてる。
私だって出来る事なら、ずっと恭弥の腕の中にいたい。
恭弥と会えなくなって、再確認した。
この手を、離すべきじゃなかったって――――。
「・・・何で泣いてるの?」
ふと唇が離れた瞬間、そんな言葉が耳元で聞こえた。
ゆっくりと目を開ければ、恭弥が心配そうな顔で私を見つめている。
「何でだろ・・・。何か・・・胸がいっぱいみたい」
自分でもよく分からない想いが込み上げてきて、心を満たしていく。
この涙は悲しいんじゃなくて、恭弥への想いが溢れてる証拠。
そんな気持ちが恭弥にも伝わったのか、彼は優しく微笑むと目じりに口付け、零れそうな涙を掬ってくれた。
「・・・そろそろ行かないと」
私の前髪を避け、額にも口付けながら恭弥が呟いた。
このまま一緒にいたいけど、今はそんな事も言ってられない。
「うん・・・。分かってる」
恭弥は戦いに備えて、またディーノさんと修行に出かける。
それは分かってた事だったけど、実際にその時間が近づいてくると無性に怖くなった。
傷つき、ベッドに寝かされていたランボくんを思い出すと、どうしても恭弥の姿と重ねて見てしまう。
「・・・恭弥、私――――」
「心配しなくていいよ。は・・・彼らと一緒にいて」
「・・・え?」
その言葉に驚いて顔を上げると、恭弥は頬にも軽くキスをしながら、「ホントは嫌だけど」と付け足した。
恭弥は時々矛盾している。
その言葉に一瞬、目が丸くなったけど、すぐに吹き出してしまった。
「何それ・・・。変なの」
「・・・そうだね。でもを一人にしておけないし、仕方ないだろ」
私の言葉にスネたように目を細める恭弥に、やっぱり笑ってしまった。
そこへノックの音がして、「恭弥。そろそろ行くぞ」というディーノさんの声がドアの向こうから聞こえてきた。
慌てて恭弥の膝から下りると、「何で離れるわけ?」と不満げな声が追いかけてくる。
「だ、だって――――」
「ディーノに見られたくないってわけ」
「そ、それは・・・」
「ま、いいけど」
恭弥はそう言うと、ゆっくりと私の方に歩いてきて少しだけ屈んだ。
「は取り戻したから」
私の顔を覗き込みながら、ニヤリと笑う恭弥に頬が赤くなる。
恭弥はそんな私に苦笑いを零すと、すぐに唇を塞いできた。
「・・・ん、恭・・・んっ・・・」
最初から舌を入れられ、鼓動が跳ねる。ドアの向こうにディーノさんがいるのに、と顔が熱くなった。
なのに恭弥は更に私を抱き寄せ、強引に舌を絡めてくる。
「・・・・ゃ・・・・んっ」
口内を愛撫され、舌を軽く吸われるとちゅっという音が洩れる。
すぐそばにディーノさんがいると思うと、恥ずかしさで涙が溢れて来た。
その瞬間――――「おい、恭弥、まだか?」という声と共にいきなり扉が開き、ディーノさんが顔を出した。
「うおっ」
「・・・きゃっ」
その不意打ちに驚いてすぐに恭弥の腕から逃げ出すと、ディーノさんが顔を赤くして後ろを向いた。
「わ、悪いっ!」
「何?邪魔しに来たの」
「・・・あ、あのなぁ!んな趣味悪くねーよ、オレも!」
ニヤニヤしながら嫌味を言う恭弥に、ディーノさんは真っ赤な顔で怒鳴った。
そんな恭弥の態度を見て、さっき仕掛けてきたキスがわざとだと気づき、私も顔が赤くなる。
なのに仕掛けた当人は意地悪な笑みを浮かべて、
「虫よけだよ」
と、私の耳元で囁いた。
その言葉に耳まで赤くなったけど、ディーノさんに気づかれないよう、こっそり恭弥を睨む。
それでも恭弥は楽しげに笑いながら、私の頬へ軽くキスを落とした。
「つか、もういいだろ?オレの前でイチャイチャすんな!ったく・・・。そろそろ出るぞ!そんな時間ねーんだから」
「分かってるよ」
ディーノさんがぶすっとした顔でそういうと、恭弥はウンザリしたように息を吐く。
「じゃあ・・・行って来る」
恭弥は最後に私の方にへ振り向いて、優しく微笑んだ。
すでにその表情は何かを決心したかのように、スッキリしている。
「うん・・・。気をつけて」
「それはディーノに言ってあげた方がいいかもね」
「え、」
「・・・言うじゃねーか」
恭弥の言葉にディーノさんの口元がピクリと引きつった。
何だかこうして見ていると、二人は兄と弟のように見えなくもない。(仲は悪いけど)
色々あったけど、でも一つ一つの出会いが、今の私には大事に思えた。
「んじゃ、ちゃん。恭弥を借りるぜ?」
「あ・・・はい。宜しくお願いします」
外に出ると、二人を迎えに来たのか、そこには、あの大きなリムジンが止まっていて、運転席にはロマーリオさんの姿があった。
先にディーノさんが乗り込むと、恭弥も車の方に歩いていく。
そして乗り込む前に私の方へ振り向くと、小さく手招きをした。
「・・・?何?」
首を傾げながら歩いて行くと、恭弥が素早く屈んでちゅっとキスをしてきた。
「きょ、恭弥・・・」
「なるべく早く戻るから。待ってて」
「う、うん・・・」
不意打ちのキスに赤くなりつつも、何とか頷く。
そっと髪を撫でる手がとても優しくて、思わず引き止めたくなった。
すると恭弥が思い出したように、
「そうだ・・・。アイツらと一緒にいろとは言ったけど・・・僕が戻るまでなるべく近寄らないようにしてね」
「・・・え?そ、そんな、また無茶なこと――――」
「・・・それと、何か危ない事があったら構わずだけは逃げるようにして」
「え・・・」
「約束してくれないと安心して出かけられない」
そう言って私を見つめる恭弥の目は真剣で、私は言葉につまりながらも頷く事しか出来なかった。
恭弥は安心したように微笑むと、もう一度唇にキスを落とし、ぎゅっと抱きしめてくれる。
「僕にとって、以上に大切な人はいないから」
そんな最上級の言葉を、こんな時に言うなんてズルい、と思った。
それは私の方だよ、と呟くと、恭弥は優しく微笑んで、そして――――
「この戦いが終わったら・・・の全てを僕のものにするから」
・・・覚悟してて、という言葉を残し、恭弥は車に乗り込んだ。
ドアが閉まった瞬間、涙が溢れて来て、それでも必死に笑顔で手を振ってみせる。
彼を守って下さい、と、信じてもいなかった神に祈りながら――――。
リボーン新刊(15)読みました♪雲雀とベルが〜と萌えてしまった(笑)
だんだん雲雀がボケキャラっぽくなってきたのが好きです(笑)
フラフラ、ヨロヨロしてるのに普通のテンションで「何のこと?」発言には山本じゃなくても、
Σ(゜人゜;!!
となりますよね(笑)
しかも毒でやられてるのにリングの乗っかったポールを倒すなんて(爆笑)
あぁー雲雀、可愛い♡
そして本の最後にあった「ルッスーリア三丁目」はヴァリアーの皆さんが登場☆
あれはきっと世のリボーンファン腐女子が萌える事でしょう(笑)あ、オレか。
ヅラをかぶるベル最高!それと何気にルッスーリアさん好きな私です゜*。:゜+(人*´∀`)
あんなコーナー出来たって事は相当人気高いんでしょうねー。ヴァリアー♪
アニメでも早くヴァリアー出てきて欲しい。つか動くヴァリアー見たい。
この作品にいつも投票頂いてありがとう御座います<(_ _)>
残り1話ですが頑張ります。
●他にはない設定でヒロインの気持ちがまるで自分のように感じられます。( 大学生)
(ヲヲ…他にはない設定ですか?そうなんですか?Σ(・ω・ノ)ノそう言って頂けると凄く嬉しいです!
ヒロインにも共感して頂けて感激しちゃいます☆)
●雲雀さん大好きです!!(高校生)
(ありがとう御座います!(>д<)/
●雲雀さんがとても素敵です。連載大好きです(*´∀`*)(高校生)
(そう言って頂けると励みになります!)
●雲雀さんに惚れました!かっこよくて、強くて。続きが気になります。(その他)
(ほ、惚れちゃいました?そう言って頂けて凄く嬉しいですよー(´¬`*)〜*
●1話から見てました。ヒバリさんの今後か気になります。(大学生)
(ありがとう御座います!そろそろ連載も終わりに近づいてますが最後まで頑張ります!)
●ずっと求めていたものに出会えたような衝撃でした。(社会人)
(そ、そんな風に言って頂けると、小躍りしちゃいますよー(*TェT*)
●好きです!愛してます!(大学生 )
(ありがとう御座います!(●ノ∀`)照照
●L目当てでサイトを回っていたのに今ではここの雲雀にくびったけですv(大学生)
(Lから雲雀まで、幅広く読んで下さってるようで感激です!そんな貴女に首ったけ゜*。:゜+(人*´∀`)
●大好きです(((=´ω`=)))(高校生)
(ありがとう御座いますー♪)
●雲雀さんがすっごくかっこいいです。 (高校生)
(自分では似非雲雀だーと嘆いてるのですが、カッコいいなんて言って頂けると凄く嬉しいです!)
●雲雀さんが、カッコイイです!!もう、雲雀さんしか目に入りません(笑)(高校生)
(ヲヲ…雲雀しか目に入らず!そんな風に言ってもらえて幸せです(´¬`*)〜*
●原作越えしちゃうくらい雲雀さんが格好いいです!(高校生)
(ひゃー;;げ、原作超えだなんて、滅相も御座いませんが、カッコいいと言って頂けてホント嬉しいです♪)
●え?もう、かなり好きですw(高校生)
(え?!もうかなり嬉しいです♪(*ノωノ)
●リング戦がどのように進むのかとても楽しみです!(大学生)
(そろそろ終盤なのでリング戦は最後まで書く予定とかないんですけど、自分でもどの辺で終わらせたらいいのか迷ってます…(オイオイ)
●雲雀夢は感動してめっちゃ泣きそうになしました!!ドラマにしても大丈夫なくらいストーリーがしっかりしてて読み応えがあります。(中学生)
(な、泣きそうになっただなんて嬉しいです!ド、ドラマですかっ?!
あんな駄文でそんな風に言ってもらえて恐縮です(;^_^A
かなりいい加減に始まった連載なので、無理やり繋げてるんですよ…?(オーイ)(゜ε ゜;)