告白――08









「・・・決まってるだろ?君が――――欲しいから」


手足に蜘蛛の糸が絡みつき、がんじがらめになる――――そんな、恐ろしい夢を見た。








大きな衝撃音と共に、綱吉は壁まで吹き飛ばされ、そのまま床に倒れた。


「・・・がはっ!」


激痛と共に一瞬、息が吸えなくなる。
腹部を押さえながら倒れている綱吉を見て、雲雀は軽く息をついてから部屋の中を見渡した。
トレーニングルームの壁のあちこちに大きな穴が開いていて、それらが修行の激しさを物語っている。


「・・・少しは動きもマシになってきたけど、まだ全然なってないよ」
「・・・っく・・・」
「・・・今日はここまでだね」


動けずにいる綱吉を見て雲雀は静かに部屋を出て行った。
それまで黙って二人の修行を見ていたラル・ミルチは壁から背を離し、思い切り溜息をつく。
そしてやっと起き上がった綱吉に冷ややかな視線を送った。


「集中が足りない。本気でやってるのか?」


死ぬ気の炎が消えた綱吉は急に弱気な表情になり、ふと顔を上げる。
そして自分を睨んでいるラル・ミルチから視線を反らすと、痛む体を何とか壁に凭れかけ溜息をついた。


「・・・やってるよ」
「そうは見えない。それに・・・お前が気に病んでも仕方ないだろう」
「・・・・・ッ」
「雲雀の方がお前の数倍も心配してるんだ。今すぐ探しに行きたいくらいな。だがお前の修行に付き合ってくれている」
「・・・っ分かってるよ!」


綱吉は顔を上げるとラル・ミルチを睨んだ。その瞳は不安げに揺れている。
今後の為にも修行をして強くならなければならない。それとは裏腹に、今すぐいなくなったを探しに行きたい。
そんな気持ちの狭間で、綱吉は苦悩していた。


「でも・・・やっぱり心配なんだ・・・。さんが敵のボスに浚われたかと思うと――――」
「まだ浚われたと決まったわけじゃない。それに彼女は自らここを出て行っている」
「そうだけど・・・。でもそれだっておかしいよ!ヒバリさんに何も言わないで出てくなんて・・・」
「お前は自分を強くする事だけ考えていればいい。彼女の事は雲雀に任せておけ」
「うん・・・」
「今日はもう体を休めろ」


項垂れている綱吉にそれだけ言うと、ラル・ミルチは部屋を出て行った。
一人になった瞬間、深い溜息が零れて綱吉は痛みを堪え立ち上がった。
がいなくなった後も、皆の修行は続いている。
綱吉も午前中にはラル・ミルチと。午後からは雲雀との戦闘に明け暮れていた。
その中で、の捜索も行っていたが、衛星で並盛中を探しても足取りはつかめていない。
情報すら何も入ってこなかった。


さん・・・。どこ行ったんだよ・・・」


は友達だ。ラル・ミルチの言ったように綱吉は修行に身が入らなかった。
それと言うのも、が行方不明になった日に雲雀から聞いた話のせいだ。


「十代目!ここにいたんですか」
「獄寺くん!」


不意に扉が開き、獄寺が顔を出した。獄寺も体のあちこちが傷だらけだ。


「修行終わったんスか?」
「うん。獄寺くんも?」
「はい!」


獄寺は義姉のビアンキと共に修行をしていた。


「なので十代目を探しに・・・大丈夫ですか?」


あちこち傷ついている綱吉を見て獄寺は慌てて駆け寄る。


「こんなの何でもないよ」


そう言って苦笑すると、綱吉はふと獄寺を見た。


「それより・・・さんの情報とか入った?」
「いえ・・・。まだジャンニーニが探してました。多分、草壁も今頃は必死で探してるでしょう」
「そっか・・・。ホント、どこ行ったんだろ・・・」


その話になると獄寺も途端に表情が暗くなる。
獄寺にとってもは友人であり、唯一気構えることなく話せる女の子だった。


「やはりヒバリが言っていた白蘭という男に・・・」
「あのヒバリさんがかなり動揺してたしね・・・」


綱吉の言葉に獄寺も溜息をつく。


「まさか敵のボスに惚れられるなんて・・・やっかいっスね」
「うん・・・」


綱吉は小さく頷くと、詳しく教えてくれた草壁の話を思い出していた。








「ヒバリとさんは去年の夏に二人でイタリアに行きました。まだボンゴレ本部がミルフィオーレファミリーの襲撃を受ける前の話です」
「二人は何しにイタリアへ行ったの?」


綱吉の問いに草壁はゆっくりコーヒーを飲むと、小さく息を吐いた。


「ボックスの事を調べる為、ヒバリは一年中、海外を飛び回っています。さんも時々それに同行を。
その時は半分、旅行もかねていて最初はフランスに行ってたのですが、モナコに着いたところでさんがボンゴレの本部に挨拶に行きたいと言い出したので、雲雀は仕方なしにモナコからイタリアへ入ったようです」
「それで・・・?」
「ヒバリは当然、本部へなど行く気はない。なのでさんが一人で本部へ赴き、ヒバリは調べものをするため、その日は二人で別行動してたようです。ですが本部からの帰りにさんは・・・ミルフィオーレのボスと接触したようです」
「え・・・どこでっ?」
「イタリアの街を歩いて帰りたい、と彼女は送りの車を断ったそうなんですが・・・そのせいでホテルに帰る途中、さんはイタリアのマフィアの下っ端にナンパされたようで・・・」
「ナ、ナンパ?!」


目を丸くする綱吉に、草壁は苦笑いを零した。


「ええ。過去の彼女も可愛らしい方ですが・・・この時代の彼女はそれ以上にとても目立つ方なんですよ」
「え、目立つって・・・」


キョトンとしている綱吉の前に、草壁は一枚の写真を取り出しテーブルへと置いた。
それを手に取った綱吉はギョっとしたように目を丸くしている。


「こ、これ・・・10年後の・・・」
「はい。さんです」
「げっ!マジかよっ」


写真を覗き込んだ獄寺も驚いたような顔をしている。山本もその写真を見て言葉を失った。


「綺麗な方でしょう?」


三人の反応に、草壁はまるで自分の恋人を誉めるかのように微笑んだ。
写真に写っている一人の女性は、カメラに向かって優しく微笑みかけていた。
長い黒髪が腰まで伸びて、透き通るような白い肌を更に引き立てている。
そして今の純粋無垢な少女っぽさを残したままの笑顔を向けるは、三人が見惚れるくらいに綺麗になっていた。


「何つーか・・・こりゃ目立つな・・・」
「あはは!、綺麗になったなぁ」


獄寺と山本もそんな事を言いながら驚いた顔で頭をかいている。
綱吉もその写真をマジマジと眺めながら溜息をついた。


「その容姿なもので・・・さんはよく街を歩いていると男性に声をかけられる事も多いんです」
「じゃあヒバリさんも心配だろうね・・・」
「まあ日本では男の方がさんの美しさにビビって、そんな事は滅多にないんですが、ことイタリアとなれば――――」
「イタリアじゃ綺麗な女を見れば声をかけなきゃ失礼だっつーノリだからな」
「その通りです」


獄寺の説明に草壁は苦笑して頷いた。


「それでその時、下っ端のマフィアにナンパされたんですが・・・さんは見かけと違って、かなり気の強い方ですので・・・」
「ああ、そこは変わってねぇな」


獄寺がそう言って笑うと、草壁は苦笑しながら「過去よりも更に、ですよ」と肩を竦めた。


「え、更にって・・・」
「強引な男達にキレて掴まれた腕を振り払ったんです。そのついでに男の足を思い切り踏んだようでして――――」
「えっ!マジ?」
「彼女も多少の護身術は習っていますので。しかし・・・当然、男達は怒って彼女を無理やり自分達の車に乗せようとした・・・」


草壁はそこで言葉を切ると、深々と息を吐き出した。


「そこで助けに入ったのが、たまたま車で通りかかった――――白蘭だったようです」
「えっっ」


それを聞いて三人は目を丸くした。


「な、何で敵のボスがさんを助けたの?」
「白蘭もその時はさんがボンゴレ、雲の守護者であるヒバリの恋人だとは知らなかったようです」
「じゃあ知らないで助けたんだ・・・」
「はい。何でもさんを見かけて、一目で気に入ったとかで・・・・」
「な・・・じゃあ・・・白蘭はさんに―――――」
「はい。一目惚れしたようですね。これは後でさんが白蘭にもらった手紙を見て知ったんですが・・・」


草壁の話を聞いて、皆は唖然とした。


「もちろんさんも自分を助けてくれた恩人がマフィアのボスである事を知らなかった。なので何の警戒もせず宿泊先を教えてしまったようです。すると翌日から毎日さんあてに花束が届いたようで・・・中にはデートの誘いを書いたカードまであったようです」
「げっ!マジかよ…じゃあ当然ヒバリも・・・・」
「ええ。もちろんそれを知って激怒した。ですが、彼女も事情をきちんと説明して納得したようです」
「「「・・・・・・・」」」


三人は激怒した雲雀を想像し一瞬、寒気を覚えた。


「ヒバリはそんな男と会うな、と言ったようですが、さんは優しい方なので、助けてもらったお礼もしたい、と一度だけ食事をする事にしたようです」
「えぇぇっ!で、でもそんなのヒバリさんがよく許したねっ!」
「いえ許したわけでは・・・。ヒバリがボックスの件を調べに行っている間に内緒で行ったようですよ」
「マジかよ・・・。勇気あんな、の奴・・・」


獄寺は呆れ気味に呟いた。草壁もそれには苦笑しながら「本当に」と頷いた。


「ですがそこでさんは自分を助けてくれた男が何者であるかを知ったんです」
「白蘭が名乗ったの?自分はミルフィオーレファミリーのボスだって」
「はい。自分と付き合えば何でも好きな物を与えてあげる、と」
「何だそれ!その辺のセレブのジジィじゃあるまいし!」
「何でも白蘭が所有している島を10個ほどプレゼントする、とまで言ったようで・・・」


怒って煙草に火をつけようとしていた獄寺も、その話を聞いて咥えた煙草がポトリと足元に落ちた。


「し、島だぁ?」
「はい。ですがさんもボンゴレリングの守護者であるヒバリの恋人です。新進気鋭のジェッソファミリーと、ボンゴレ同等の歴史を持つジッリョネロファミリーが合併して出来たミルフィオーレファミリーの名前は知っていた・・・。そこでこれ以上、関わって問題が起きる前に、と、丁寧に白蘭からの申し出を断ったんです」
「で?白蘭の奴は――――」


山本の問いに、草壁は溜息混じりで首を振った。


「もちろん簡単には諦めなかった。その後もしつこくデートに誘って来たようで、困ったさんは自分には恋人がいると話したそうです。ですが白蘭はそれでも諦めずに恋人がどこの誰であるかを調べた・・・。そこで初めてボンゴレの関係者だと知ったようです」
「そこで諦めなかったの?他のファミリーの守護者の恋人なのに・・・」
「そうみたいですね。むしろ、ますます欲しくなったんでしょう。その後・・・ミルフィオーレファミリーはボンゴレ本部に奇襲攻撃を仕掛けてきた・・・」
「えっじゃ、じゃあ・・・。まさかさんの事がキッカケで今回の争いが――――」
「いえ。きっとボンゴレを潰すのは以前から計画してたはずです。それだけの準備をしてないと、あのボンゴレを叩けるはずがないですから」
「でも少なからずの事も関係してるって事だろ?」
「それは何とも・・・。ただ、今言えるのは、白蘭のさんに対する執着はかなりのものです。なので今回の彼女の失踪も、もしかしたら・・・」


草壁の話に三人は互いに顔を見合わせ、無言のまま俯いた。
が、先に口を開いたのは綱吉だった。


「で、でも今この世界にいるさんは過去から来たんだ!白蘭が好きな彼女とは違うよっ!」
「そうですね・・・。白蘭がさんを誘拐したと仮定して・・・彼女が入れ替わった事を知らなかったのか。それとも知っていて、それでも誘拐したのか。それは分かりませんが」
「でも白蘭って奴が関係してないなら、さんが一人でここを出て行く理由なんかないだろ?それもヒバリさんに内緒にしてまで・・・」
「その通りです。ですのでヒバリは十中八九、白蘭の仕業だと思って探してる。彼女をどうやって誘い出したのかまでは分かりませんが、ずる賢い白蘭の事です。何か汚い手で彼女をおびき寄せたのかもしれません」



――彼女の事は我々が調べます。沢田さん達は修行をして下さい。



草壁はそれだけ言って、自分のアジトへと戻って行った。
そして言われたとおり、こうして修行をしているが、綱吉にしてみれば、どうしても気になってしまう。


「もし敵に誘拐されたなら・・・さんは入江って奴のところへ行ったんだよね」
「かもしれませんね。ショッピングモールの辺りは奴のアジトがあるってフウ太や姉貴が話してましたし・・・はその近くで姿を消している」
「でもさんがどうして誰にも何も言わずに、そこへ出向いたのかな・・・」
「いつ奴らが接触してきたのかすら謎っスよね」


答えの見つからないまま、二人は黙り込んだ。
どっちにしろ入江正一のアジトへ向かうには、どうしても修行が必要になってくる。今のままでは勝てない。


「十代目・・・?」


不意に歩いていく綱吉の後を、獄寺は急いで追いかけた。


「こうしちゃいられない・・・」
「え?」
「・・・ラル・ミルチの言ったとおりだ。オレが心配しててもさんを助けにすら行けない・・・。もっと強くならなくちゃ」
「十代目・・・・」
「少し休んだら・・・修行再開しよう。そして必ずさんを見つけてみせる」
「はい!」


綱吉の言葉に、獄寺は笑顔になると力強く頷いた。












「・・・ん・・・」

かすかに意識が戻り、は薄っすらと目を開けた。未だ頭がボーっとする中、少しだけ動けるようになってきた。
あれからどのくらい経ったのか良く分からないが、ここへ連れてこられた間もずっと意識が朦朧としていて、時間の流れが分からない。
きっと与えられる水にさえ、何かの薬が入っていたのだろう。
は自分の意思で動く事すら出来ず、何度も深い眠りに落ちては、目を覚ますといった事を繰り返していた。


「・・・・?」


かすかに手が動き、はゆっくりと目を開けた。いつもとは違い、傍に白蘭の気配はない。
部屋の電気も消えていて、今は真っ暗だった。一瞬、また夢の続きかと思ったが、この喉の乾きは夢ではない。
気だるい体を何とか起こし、は目が慣れるまでジっとしていた。

(ここ・・・ベッドルーム・・・?)

よくは覚えていないが、自分はずっとここで眠っていたのだろう。
天井に下がっているシャンデリアや、大きなベッドは何となく見覚えがある。
ゆっくりと床へ足を下ろし、は軽く首を振った。少し頭が重たい気もするが、痛みはもうない。
意識も定まってきて、手足も動かせるようだ。


「夢・・・じゃなかったんだ・・・」


見知らぬ部屋、見知らぬ男。それらのもの全てが現実のものとして傍にあった事を思い出し、は溜息をついた。
入江正一に騙された事、敵のボスである白蘭に会った事・・・全て思い出した。


「水・・・」


喉の渇きが限界に達し、はベッドの脇にある小さなテーブルへ目を向けた。
そこには綺麗な形のガラスのポットに水が入っている。
横にはきちんとグラスが伏せておいてあり、はすぐにそのコップへと水を注いだ。


「あ・・・薬・・・」


水を飲もうとして一瞬、手が止まる。
目が覚め意識が朦朧とする中、白蘭という男が水を飲ませてくれたが、その後には再び眠くなった事を思い出したのだ。

(まさか・・・これにも薬が・・・)

一瞬、躊躇してそのグラスをテーブルの上に戻した。また眠ってしまうのだけは避けたい。
――――どうにかして敵のアジトから逃げ出さないと・・・。
そう思いながら薄暗い室内を見渡した。するとソファの上に、綺麗に畳んである服が置いてある。
床の上には可愛いパンプスが何足も置いてあり、いかにも履いてくれ、と言わんばかりだ。


「これ・・・」


「――――気に入った?」


「――――ッ」


その声にビクっとして顔を上げるといつの間に来たのか、ドアのところに誰かが立っている。
隣の部屋の明かりのせいで、こっちからは顔が良く見えないが、雰囲気からして白蘭だという事が分かった。


「白蘭・・・」
「それ君の為に用意したんだ。好きなもの身につけていいんだよ?」
「・・・来ないでっ」


歩いてこようとした白蘭に思わず叫ぶと、彼の足がピタリと止まる。
だが白蘭はクスクス笑いながら「何もしないよ」との方へ歩いて来た。
白いコスチュームに身を包み、鋭い目でを見据える白蘭に、思わず後ずさる。
が・・・急に後ろへ下がった事で足がベッドにぶつかり、その上に腰を下ろしてしまった。
その様子を見ながら白蘭は楽しそうに笑っている。


「大丈夫?まだ少し体がだるいでしょ。急に動いちゃダメだよ」
「さ、触らないで・・・っ」


頬に触れようとした白蘭の手を振り払う。だがそれにも白蘭は怒る素振りさえない。
それどころか嬉しそうな笑顔を浮かべているだけだ。


「ホント気が強いね、ちゃんは」
「馴れ馴れしく呼ばないで・・・っ!私を皆のトコに帰してよっ」


目の前にしゃがみ、ニコニコと自分を見上げてくる白蘭には叫んだ。
そこで初めて白蘭の顔から笑みが消えた。僅かに目を細め、溜息交じりで立ち上がると、


「皆のトコ、ね。って言うか、雲雀恭弥のトコに帰りたいんでしょ」
「・・・・・っ?」
「でもダメ」


そう言ってニッコリ微笑むと、の隣に腰をかけ足を組んだ。


「やーっと手に入れたっていうのに簡単に帰すわけないじゃん」
「な、何言って・・・」
「言ったでしょ?君が欲しいって。――――もう帰さないよ」
「――――ッ」


不意にを見つめた瞳は真剣で、白蘭の言葉が本気なのだという事が分かった。


「な・・・んで・・・?何で私を――――」
「決まってるじゃん。愛だよ、愛」
「・・・・・ッ?」


サラリと言って微笑む白蘭に、は目を見張った。
会ったばかりの男に愛だとか言われてもサッパリ意味が分からない。


「あ、その顔・・・。疑ってる?」
「何なの・・・?ふざけないでっ」
「ふざけてないって。僕は本気だよ、いつでも。最初に会った時も言ったよね・・・って、アレは君じゃないか」
「・・・え?」


その言葉に顔を上げると、白蘭は優しい笑みを浮かべながらを見つめた。


「僕、10年後の君に会ってるんだよね」
「・・・・・ッ」
「で、君に一目惚れして口説いたんだけど・・・アッサリ恋人がいるから、なんて言われて凄く傷ついたなぁ」
「な、何それ・・・。意味が――――」
「分からない?10年後の自分に惚れた男が、何故、過去から来た私を浚うの?って顔してるね」


白蘭は楽しげに笑いながら天井を見上げた。


「僕さぁ気づいちゃったんだ」
「・・・・気づいた?」
「そ。この世界の君は雲雀恭弥と10年っていう長い月日、一緒にいたわけじゃん?だからそれ壊すのは結構難しいかなってさ」
「・・・え?」
「だから・・・過去から君が来たって知った時、僕はラッキーだと思った。まだ何色にも染まってない君なら、もしかしたら僕の色に染められるかもってね」


その言葉には愕然とした。自分が騙されここへ連れてこられた理由を、今ハッキリと理解したのだ。


「・・・最初からそのつもりだったの?入江正一に私を浚うように命令したのは――――」
「もちろん。正チャンって優秀なんだよね。僕の我がままにブツブツ言いながらも、こうして君を僕に送ってくれた」
「じゃあ・・・私を過去へ帰してくれるっていう話はもちろん・・・皆が過去へ戻ればこの争いはなくなるって言う話も――――」
「うん。全部、嘘♪」
「――――ッ」


パンっという乾いた音が部屋に響いた。頬を叩かれた白蘭は少し驚いたように、自分の頬に手を添えている。
は瞳に涙を浮かべながら白蘭を睨んでいて、そんな彼女を見た白蘭はふっと笑みを零した。


「怒った顔も可愛い」
「・・・っふざけないで!最低よ・・・。あんたなんか!大嫌いっ」


泣くのを堪えて叫ぶ。その時初めて白蘭の顔に動揺の色が浮かんだ。


「・・・その言葉はさすがにキツイかな。僕、ちゃんに嫌われたくないし」
「・・・・・ッ?」


深々と溜息をつき、項垂れている白蘭を見ては言葉を失った。
落ち込んでる様子の白蘭に言い過ぎたかな、と一瞬、後悔したが、それでも目の前にいる男が敵のボスである事にかわりはない。


「だったら・・・私を帰して・・・」
「・・・どこへ?」
「・・・・・ッ」
「仲間のトコ?それとも過去?」


不意に顔を上げた白蘭は真剣な顔でを見つめた。その問いに応えられず、一瞬言葉に詰まる。
自分はどこに帰りたいのか・・・。浚われたと分かった時、すぐに浮かんだのは、"恭弥のところへ帰りたい"という思いだった。
だが最初は過去へ戻る為にここへ来たはず。

(そうよ・・・。私は未来ここにいちゃいけない人間なんだ。どうしても過去に戻らないと・・・)


「・・・過去に・・・帰りたい」


そう呟くと、白蘭は僅かに眉を上げて軽く息をついた。


「君を帰す気はない。さっきも言ったよね」
「私は過去の人間なの!未来にいちゃダメなのよっ」
「関係ないよ。僕は君に傍にいて欲しい」
「あなたが傍にいて欲しいのは私じゃない!未来の私でしょっ?」


白蘭は少し悲しげな顔をすると、思い切りを抱きしめた。
突然の事で油断していたは驚いて身を捩ったが、抱きしめる腕が更に強くなる。


「ちょっと・・・離してっ」
「君は君だろ?過去も未来も関係ない。僕は君って言う女の子が好きなんだ」
「な・・・っ」
「未来の君と同じように、今の君を好きなんだよ」


そう言うと白蘭は僅かに体を離し、を見つめた。整った顔が目の前に来て、の頬が赤くなる。
白蘭の目は真剣で、嘘をついているようには見えない。


「すぐにとは言わない。何年でも待つ覚悟で君を浚った」
「・・・・・っ?」
「確かに僕は君の恋人の敵だけど・・・でもそれだけの理由で僕っていう人間を計らないで欲しいんだ」


白蘭はそう言って微笑むと、の額にそっと口付けた。突然の事にドキっとして体を離すと、白蘭も素直に腕を解く。


「もうすぐディナーだから、そこの服に着替えておいて」
「い、いい。いらない・・・」


真っ赤な顔で首を振るに白蘭は苦笑いを浮かべ、ゆっくりと立ち上がった。
そして畳んであるワンピース、その服に合う靴を選び、それをへと渡す。


「君は寝てて気づいてないかもしれないけど、何日も食事をしてない。そろそろ限界だろ?」
「え・・・っ?」
「それとバスルームは隣の部屋にある。シャワーにでも入ってスッキリするといい。――――じゃ、また後で迎えに来るよ」


白蘭はそう言うと素早くの頬へキスを落とし、ドアの方へと歩いて行った。
が、すぐに振り向くと、


「ああ、それと。そこの水には何も入ってないから安心して飲んでいいよ。喉、渇いてるだろ?」
「・・・・・」
「じゃ、また後でね」


ニッコリ微笑み手を振ると、白蘭は静かに部屋を出て行った。
その瞬間、はベッドの上に倒れこみ、一気に緊張を解く。そしてキスをされた頬を手の甲で拭った。


「何なの、あいつ・・・。最低・・・っ」


ベッドに顔を埋め、泣き出しそうなのを必死で堪える。このままじゃ本当に帰してもらえなさそうだ。


「どうしよう・・・・」


体を起こして溜息をつく。自分が浚われた理由が分かっただけで、事態は少しも変わってないのだ。
どうにか隙をついて皆のところへ戻らないと大変な事になる。

(恭弥・・・心配してるかな・・・)

ふと雲雀の顔が浮かび、胸が痛くなった。また勝手な事をしたあげく、敵に捕まるなんて、今度こそ呆れられそうだ。

皆は私がここに来た事を知らない・・・。誰にも言ってないのだから当然だ。
入江があんなにしつこく「誰にも言うな」と言っていたのはこの為だったのだろう。
・・・助けは期待できない。何とか自分で脱出しないと――――。

ふと先ほど渡された服を見て、それを手に取った。本当ならあんな男と食事なんかしたくない。
でもこのアジトがどういう構造になってるのかも分からないまま、逃げ出すのは無理だ。

(仕方ない・・・)

は立ち上がると恐る恐るドアノブに手をかけた。鍵はかかっておらず、すんなりと開く。
が、隣の部屋を覗いては思わず目を見張った。


「な、何これ・・・。広い・・・」


そこはホテルのビップルームのような豪華さと広さがある。
壁一面、窓になっていて、今は夕日が部屋の中をオレンジ色に染めていた。


「もう夕方なんだ・・・。でも・・・何日なんだろ」


ふと思い出し部屋の中を見渡してみた。が、カレンダーもなければ時計もない。
の荷物も見当たらず、携帯で確認する事も出来ない。

(ずっと寝てたせいだろうけど、恭弥のとこを抜け出してここへ来てからの日にちの感覚がない・・・)

念のため、廊下へ続く扉のドアノブをまわしてみたが、やはりそこは鍵がかかっている。
仕方ない、とは溜息をついてバスルームへと足を向けた。
寝汗をたっぷりかいたのか、体がベタベタして気持ち悪い。


「やだ・・・私、何日お風呂入ってないんだろ・・・」


変な薬をもられたせいで散々だと思いながら、熱いシャワーを浴びる。――バスルームもかなりの広さだった――
髪も念入りに洗い、体の汗を流すと、少し頭がスッキリして、ホっと息をつく。


「・・・喉渇いた」


突然の白蘭の来訪でスッカリその事を忘れていた。
バスルームを出るとリビングに設置されているミニ冷蔵庫を見つけ、は中からミネラルウォーターを取り出し、一気に飲み干した。


「はあ・・・生き返った」


汗を流し、水分を摂った事で一先ずホっとしながら、目の前の大きな窓に目を向けた。
そこからは沈んでいく綺麗な夕日がハッキリと見える。


「かなり高いビルなのかな・・・」


一瞬窓から逃げられないか、と思っていたが、高層ビル用の開かない窓らしい。
ここからでは無理だと気づき溜息をつきながら、ゆっくりと窓の方へ歩いて行った。


「でも並盛のショッピングモールに、こんな高層ビルなんかあったっけ…」


あれば、すぐ目に付きそうなものだけど。
そう思いながら、そこでハッと息を呑んだ。


「ちょっと・・・待ってよ。あいつのアジトは確か地下にあるって・・・」


そう、確かにあの夜、電話で入江正一はそう言った。


"ショッピングモールの地下。そこに僕はいます"


なのに何で夕日が見えるの?それもあんな高い場所に――地下なら見えるはずがない!


の手からミネラルウォーターのボトルが落ちて、ゴトンと鈍い音を立てた。
一気に窓へと駆け寄り、外の街並みを見て、は思わず息を呑む。


「な・・・に・・・?これ・・・・」


想像通り、のいる建物はかなりの高層ビルだった。
大きな窓の遥か下には広い街並みがあり、ここからなら良く見渡せる。
だが――――そこはの知る、並盛ではなかった。



「嘘・・・・・」



見知らぬ街並みに呆然としながら、はその場に崩れ落ち、床へ腰を落とした。


「何で・・・。ここは・・・どこなの?」


窓の外を見下ろし、震える声で呟く。その時、夕日が静かにビルの向こうへと沈んでいくのが見えた。









「・・・!」

叫ぶのと同時に勢い良く起き上がる。そして今のは夢なのだと気づき、雲雀は深い息を吐いた。
辺りを見渡せばそこは自分のアジトの寝室で、雲雀は着物姿のまま、布団の中にいる。
綱吉の修行に付き合った後、疲れた体を休める為、戻ってきた事を思い出した。


「・・・夢、か」


額の汗を拭い、ホっと息をつく。嫌な夢だと思った。
が自分の傍から離れ、遠く手の届かないところへ行ってしまう――――。そんな想像すら、したくない夢。

ゆっくりと立ち上がり寝室を出ると、その隣にある和室の襖を開けた。
そこはの為に用意した部屋だ。だが今は彼女の荷物も何もない、殺風景な部屋に戻っている。
確かにこの間まではの気配があったのに、と、らしくもない感傷に浸った。


「・・・恭さん」


そこに草壁が歩いて来た。どこか真剣な顔つきだ。その様子に一瞬だけ期待をしてしまう。


「何か分かった?」
「い、いえ・・・。マークしていた例の男が動き出したとの連絡がイタリアから」
「・・・そう」


もしかして、と思ったが、それは待っていた報告とは違い、雲雀は小さく溜息をついた。
しかしこっちも重要な事は確かだ。


「ここへ来るのかい?」
「まだ分かりませんが油断は禁物。この情報は沢田側にも提供すべきかと」
「任せるよ。確かあれの写真があったはずだ」
「へい。ヒバードとの撮影に成功したものが一枚」
「じゃあ、それを沢田綱吉に持っていって」
「分かりました」


草壁が一礼して歩いていく。その時、入れ違いでどこからともなく小さな鳥が飛んできた。
そして当然のように雲雀の頭の上にとまる。


「あいつが・・・動いたか」


鳥をそっと指の上に乗せて、雲雀は小さな頭を優しく撫でた。











「どうしたの?食べないの?」
「・・・・・・」

手を止めているを見て、白蘭は心配そうに首を傾げた。
広いダイニングルーム。そこに大きなテーブルがあり、と白蘭はそこで向かい合って食事をしていた。


「急に重たい食事は体に良くないからリゾットにしてみたんだけど・・・口に合わなかった?」


白蘭の問いには静かに首を振った。その様子を見て白蘭はスプーンを置くと、テーブルの上に肘を突いて手を組む。


「・・・まだ怒ってるの?」
「・・・・・・・」
「そりゃそうだよね。君を騙して・・・薬で眠らせて連れて来たんだから・・・」


溜息混じりで呟く白蘭に、がふと顔を上げた。その表情は硬く、少し強張っている。
怒っている、という感じには見えず、白蘭は訝しげに眉を寄せた。


ちゃん・・・?」
「私を・・・・どこに連れて来たの」
「え?」
「ずっと眠らされてたから気づかなかった・・・。ずっと入江正一のいたアジトだと思ってた・・・」
「・・・・・」
「でもさっき窓の外を見て・・・・」
「気づいた?」
「・・・・・ッ」


頬杖をついてニッコリ微笑む白蘭に、は唇を噛み締めた。かすかに肩が震えている。


「日本じゃ・・・・ないのね・・・」


その問いに、白蘭はアッサリと頷いた。


「うん。ここはイタリア。あの窓から見える景色は最高だったろ?」
「・・・冗談じゃないわっ!!」


はそう叫んで椅子から立ち上がった。そんなを、白蘭は黙って見ている。


「ひどい・・・。こんなトコに連れて来るなんて・・・っ」
「日本には邪魔な奴がいっぱい、いるからね」
「・・・・・ッ」
「特に・・・雲雀恭弥。君から彼を遠ざけたかった」


その一言にはカッとしたように白蘭の前に立った。
それでも白蘭は笑みを絶やさず、を見つめている。


「また引っぱたくの?」
「私を日本へ帰して!」
「・・・・・」
「お願い・・・!私を日本に帰して!」


白蘭の胸元を掴んで必死に哀願する。の瞳に浮かんだ涙が頬を伝い、白蘭の手に落ちた。
それを見た白蘭はの頬へ触れると、優しく涙を拭う。


「言ったじゃん。帰さないって」
「・・・・・ッ」
「それに並盛はこれから戦場になる。そんなところに君を置いておけない」
「戦場・・・?」
「僕の部下達はみんな優秀だからね。いくら君の恋人が強いっていっても、どうにもならない」
「あなたがこの戦いを止めさえすれば戦場になんか――――」
「この計画は止められない。もう動き出してるんだ」
「そんな・・・」


白蘭の言葉にはその場に座り込んだ。涙が次々に溢れ出し、頬を伝っていく。
その様子を見て白蘭は小さく息をつくと、そっとしゃがみこんだ。


「ごめんね。君の頼みは何でも聞いてあげたいけど、それだけは無理なんだ」
「・・・んで・・・」
「え?」
「なん・・・で・・・私に拘るの・・・・」
「・・・・君だからさ」
「・・・・・・」


その答えに顔を上げると白蘭は優しく微笑み、の肩を抱いて立たせた。


「その様子じゃ食事はまだ無理のようだね。部屋に戻ろう」
「い、いや・・・」


慌てて白蘭の腕を振り解こうと身を捩る。その拍子に足がフラつき、同時に意識が遠のいていった。


「危な・・・っ」


崩れ落ちるの体を抱きとめると、白蘭はホっと息をついた。
どうやら、精神的な疲れと薬の副作用で、衰弱しているようだ。
白蘭が意識を失ったを抱きかかえると、すぐに部下が一人ダイニングルームへ入って来た。


「白蘭さま」
「ああ・・・レオくん」


入って来たのは最近、情報伝達係りとして配属されたばかりのレオナルド・リッピだった。


「メローネ基地より、入江正一氏から連絡が入りました」
「・・・そう。すぐ行くよ」
「あ、あの・・・その女性は大丈夫でしょうか」
「うん。ちょっと参ってるだけだから休ませる」
「では医務室に連絡を――――」
「いい。用意した部屋に連れて行くから」


歩きかけたレオナルドにそう声をかけると、白蘭はそのままの為に用意させた部屋へと戻っていく。
その後からレオナルドも続いた。


「ドクターをお呼びしましょうか」
「うん。ああ、出来れば女医さんがいいな」
「分かりました」


レオナルドはすぐに医務室へ電話をすると、白蘭の意向どおりに説明し、すぐに女のドクターを呼ぶよう伝えた。


「ありがとう、レオくん」


をベッドルームに寝かせて戻ってきた白蘭は疲れたようにソファへ腰を下ろすと、深く息を吐き出した。
いつも明るい白蘭にしては珍しいくらいに元気がない。
その様子を見て、レオナルドは「大丈夫ですか?」と声をかけた。


「うん・・・。いや・・・大丈夫じゃないか」
「え?」
「こんな落ち込んだのは・・・彼女に振られて以来かなぁ」
「彼女・・・?」
「ああ、と言っても、この世界のちゃんね」
「はあ・・・」


白蘭の言っている意味がよく分からないのか、レオナルドは軽く首を傾げた。
それを見て白蘭は苦笑いを零すと、ソファに凭れかかる。


「ああ、そっか。レオくんは最近配属になったばかりだから知らないんだっけ」
「・・・はあ。何を、ですか?」
「僕が夢中で追いかけてた子のこと」
「先ほどの・・・女性ですか?二週間ほど前にここへ来たんでしたよね」
「うん。でも・・・あの子は僕が好きになった子と少し違うんだけどね」
「は?」


その意味が分からず、更に首を傾げるレオナルドに、白蘭はクスクスと笑った。


「彼女は僕が好きだった子の過去の姿」
「過去・・・」
「そう。彼女は過去から来た。だからこそ僕には価値があるんだ」
「と、言いますと?」
「この世界の彼女よりも・・・まだ幼く、何も知らない彼女なら手に入るかもしれないだろ?」
「はあ」


白蘭の言葉に、レオナルドは小さく頷いた。


「今は無理でも・・・ずっと傍にいればいつかは・・・」


そこで言葉を切ると、白蘭はゆっくりと立ち上がった。


「正チャンが呼んでるんだっけ」
「あ、は、はい。お部屋に戻りますか?」
「いいよ。隣で出る」


白蘭はそのまま隣の部屋に行くと、パソコンのモニター前に座った。
いくつかのキーを叩くとすぐに画面が切り替わり、そこには仏頂面した入江正一が映しだされる。


「お待たせ。正チャン♪」
『・・・遅いですよ』
「ごめんごめん。ちょっとちゃんの体調が悪くてさ」


入江正一は僅かに眉を上げると『僕の薬のせいですか?』と言った。


「う〜ん、ちょっと使いすぎちゃったみたい」
『言ったでしょう?あまり何度も使うと、副作用が出るって』
「うん・・・。でも目を覚ましたらきっと怒るんだろうなぁと思ったら、ちょっと怖くてさ。寝顔見てるのも楽しかったし」
『・・・らしくない事を』
「そう?まあ・・・薬は昨日で止めたんだけどね。でも案の定、目を覚ました彼女に嫌われたみたいだ」


そう言いながら椅子に凭れると、白蘭は肩を竦めた。
普段のノリとは違う顔を見せる白蘭に、入江正一も苦笑いを浮かべている。


『そんなの分かってた事でしょう?本人の意思を無視して浚ってきたんですから』
「分かってるけどさぁ・・・。やっぱ好きな子に大嫌いとか言われて、ビンタされたら普通へコむでしょ」
『え、叩かれた・・・んですか?』
「・・・笑いたいなら笑えば」


笑いを堪えている部下を見て、白蘭はスネたように目を細める。それには入江正一も思い切り噴出した。


『ぁはは・・・っ。やるなぁ、彼女・・・。さすが白蘭サンが惚れただけある』
「・・・ホントに笑うなよ。傷つくなぁ僕」
『すみません。白蘭サンのへコんだ姿見るのって滅多にないですから』
「あっそ。で・・・何?僕をからかう為に連絡してきたわけじゃないでしょ」


レオナルドが出してくれたマシュマロを口に放り込みながら、そっぽを向くと、入江正一は苦笑いを浮かべた。


『いえ・・・その後、連絡なかったものでどうしたかと』
「それだけ?」
『あと一つ・・・。ボンゴレの連中、特に雲雀恭弥が必死に彼女を探してるようです』
「・・・姿を見たの?」
『一度、衛星カメラで』
「へぇ・・・。あれほど姿を見せたがらなかったのに」
『それだけ必死って事ですよ。雲雀恭弥にとって彼女はそのくらい特別な存在と言う事でしょう』


入江正一の言葉に白蘭は僅かに眉を上げ、摘んだマシュマロを机の上に放り投げた。


「僕だって同じだよ」
『・・・そうなんですか?いつもの気まぐれかと思った』
「減俸されたいんだ、正チャン♪」
『・・・・勘弁して下さい』


入江正一も困ったように眉を下げる。


「まあいいや。とにかく正チャンはボンゴレのアジトを早く見つけてね」
『・・・分かってます』


僅かに目を細めると、入江正一はモニターから姿を消した。それを確認して白蘭も立ち上がると、すぐに隣の部屋へと戻る。
は静かに眠っているようで、白蘭は軽く微笑むと、すぐにベッドの端へと座った。


「嬉しいな。若い頃の君に会えるなんて・・・」


長い髪に手を通し、そのまま頬を撫でる。こうして触れる事をずっと望んでた。


「絶対に帰さないよ・・・。唯一、ここだけなんだ・・・」


優しい笑みを浮かべ、そう呟くと、白蘭はの額にそっと口付けた――――。










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リボーンの新刊、読みましたぁ〜☆
だんだん緊迫してきましたねっ!骸VS白蘭もどうなったのか気になる…
でもってスクアーロとベルが登場して思わずテンション上がりました(笑)
10年後の二人もいい!スクもですがベルの髪も伸びてピョコピョコ跳ねてるのが可愛かったです。
笑ったのが「剣帝への道」(笑)ホント、スクってバカで可愛いです(オイ)
あれを必死で撮っていたルッス姐さんに同情します…
小さなコマでルッス姐さんに「撮ったかぁぁぁあ」と叫んでるスクの小さな影に大爆笑(笑)
最後の「ヴァリアーの共同生活」も最高でした☆やっぱスクが一番の被害者なのね(* ̄m ̄)




■雲雀さんがかっこよすぎです!!あまりのかっこよさに読みながら叫んじゃってます!!(高校生)
(ありがとう御座います!叫んでもらえて嬉しい限りです〜(´¬`*)〜*

■雲雀さんカッコいいvヒロインが可愛くてしょうがないです!(中学生)
(ヲヲ、雲雀ばかりか、ヒロインまで誉めてもらえて嬉しいです!

■HANAZOさんの書かれる雲雀の色気と甘さに何時もドキドキです。(高校生)
(雲雀は男の色気ムンムンですよね(笑)ドキドキしてもらえて嬉しいです!)

■恭弥がカッコイイのはもちろんですがヒロインもとても可愛いです。白蘭にまで愛されているなんて!(社会人)
(ひゃー;雲雀ばかりかヒロインまで誉めてもらえて感激です(*ノωノ)いい男にばかり愛されて羨ましいですね(笑)



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