Anche ora, lui e Lei―05

※R18(性的表現あり)










「――――テキトーに座ってよ」

部屋に入り、オレは閉まったままのカーテンを開け、部屋に陽の光を入れた。
その後からが気まずそうについてくる。
ミルフィオーレの暗殺部隊が動いている今、外で立ち話も何だから、と宿泊しているホテルへとを連れて来たのだ。


「チッ・・・・フランの奴、やっぱ帰ってねーし」


奥の寝室を確認し、オレは溜息をついた。
フランの策略(?)でと2人きりになれたとはいえ、やはり心臓に悪い嘘をついた件では一発殴らなければ気が済まない。


(いや・・・・殴るだけじゃ収まらねえし戻って来たら、あのデカ頭を穴だらけにしてやる)


フラン曰く"生き物として最低"な事を考えながら、オレは所在なげな様子でソファに座っているへ視線を向けた。
夕べも会い、今もまたこうして顔を合わせている事が、オレからしてみれば不思議な感覚だった。
ここ何年かは遠くで見ているだけだった存在―――――。


(ホントに連れて来て良かったんかな・・・・。何か悩んでる風だったから、つい誘っちまったけど・・・・)


先日、再会した時からの様子が気になっていたオレは、小さく息をつきながら歩いて行った。


「コーヒー飲む?ルームサービスだけど」
「あ・・・・じゃあ・・・・お願いします」
「了解。カプチーノでいいよね」


未だ気まずそうなに優しく微笑みかけながら、ルームサービスへ電話をかける。
その数分後、運ばれてきたカップをの前に置き、オレは少し離れつつも隣へと腰を下ろした。


「いい匂い・・・・」
の店のよりは美味くないけどねー」
「そんな事・・・・」


軽く笑いコーヒーを口にすると、はホッとしたように息を吐きだした。
その横顔はやはり少し元気がないように見える。


(夕べの2人の様子じゃスクアーロとケンカをしたとも考えにくいし・・・・。それとも他に何か悩みでもあンのか?)


そこでふと目つきの悪い隊長を思い出した。
こんな風に2人きりで会ってるなんてバレたらマジで三枚にオロされそうだ。


「あ〜スクアーロに連絡した方がいいんじゃね?仕事終わったってさ」
「え?あ・・・・」


オレは何気なく言ったつもりだが、は軽く俯いたまま小さく首を振った。


「・・・・後でメールしておきます。スクアーロさんも今日は明日の任務前に部下の方たちと作戦会議をするって言ってたし・・・・」
「あ〜そういや、そんな事を言ってたような・・・・。どーせボスの雑用とかもやること山積みだろうしなあ・・・・。んじゃま、あと一時間くらいは大丈夫か」
「・・・・え?」
の話、聞かせてよ」
「話・・・・って・・・・」


戸惑い顔で首を傾げるに、オレは苦笑いを浮かべつつソファに寄りかかった。
本人は隠してるつもりだろうけど、これでもオレは結構勘のいい方だ。嘘は通用しない。


「何か悩んでるんだろ?ずっとそんな顔してるし。まあオレが思うに・・・・スクアーロの事で」
「・・・・っ」
「やっぱ図星だ」


小さく息を呑んだに気付き、「うしし」と笑って見せた。


、分っかりやす。そーゆートコ、ちぃーっとも変ってないね。しし♪」
「・・・・べ、ベルが鋭いだけです」


僅かに頬を赤らめ睨んでくるに、オレもつい顔がほころぶ。こういう純なところも相変わらずだ。


「で・・・・何悩んでんの?まさかスクアーロが浮気したとかー?それとも家庭内暴力にあってるとかー?」


顔を覗きこみながら笑えば、は慌てたように首を振った。


「ま、まさか!スクアーロさんはそんな事しません・・・・っ」


まあ、オレも本気で言ったわけじゃない。
スクアーロがどれほど彼女を大切にしているかは昨日の態度を見れば明らかだ。
ただがスクアーロをかばう姿に多少、胸が痛む。その気持ちを押し殺してオレは軽く肩を竦めた。


「まあまあ、冗談だからそんな怒んなって」
「お、怒ったわけじゃ・・・・。私こそムキになっちゃってごめんなさい・・・・」
「謝るのもなし!気にしてねえから」


そう言いながら昔と同じようにの頭を軽く撫でた。
こんな風に2人でいると過去に戻ったような錯覚さえする。でも今は感傷に浸っている場合じゃない。
時間がくれば彼女はスクアーロの元へと帰ってしまう。あいつにも言えない、悩みを抱えて―――――


(幸せだと思ってたのに・・・・はいったい何を悩んでんだ・・・・?)


そう思って尋ねようとした時、不意に携帯の着信音が鳴り響き、オレは小さく舌打ちをした。
ディスプレイには"Una ranaカエル"の文字が表示されている。


「あんのカエル!やっと電源入れやがったかっ」
「え?」
「ああ、いや・・・・ちょっとごめん」


には笑顔を見せつつ、オレは寝室まで行くと通話ボタンを押した。その瞬間、


『あ、センパイですかー?』


相変わらず呑気としか言いようがない間延びした返答が聞こえて、口元が僅かに引きつる。


「てんめ・・・・っ!下らねぇ嘘つきやがって!今どこにいんだよっ?」


に会えたのはいいが、こいつの思惑通りというのが気に入らない。
舐めた真似をしやがってと言わんばかりに、なるべく小声で怒鳴りつけた。
しかし受話器の向こうからは溜息と共に楽しげな笑い声が聞こえて来た。


『やだなー。ミーは気を遣ってあげたんじゃないですかー。少しの時間でもセンパイとさんを2人きりにしてあげようっていうコーハイの優しさですー』
「うるせ!それが余計なお世話だっつってんだよっ!あいつ守んのはてめーの役目だろがっ!何、勝手に姿消して――――」
『もちろん守りましたよー。ミルフィオーレじゃなく変な女からですけどー』
「・・・・変な女?何だよそれ」


フランの一言に眉間を寄せると、隣の部屋をコッソリと覗いた。
はコーヒーを飲みながら、どこか寂しげな目で窓の外を眺めている。


『実はさっき変な女がさんに絡んできましてー。多分あの辺の娼婦だと思うんですー』
「・・・・娼婦?」


そこで嫌な予感がして何があったと問いただせば、フランはさっきあった事を詳しく説明しはじめた。


『――――というわけでー。ミーがグロい幻覚見せて追い払ったんですけどー』
「なるほど、ね・・・・」


事情を聞いたオレは軽く拳を握りしめると、怒りを鎮めようと深く息を吐きだした。


「お前にしちゃ良くやった、と褒めてえトコだけど・・・・甘ぇよ、カエル。オレならその女、バラバラの刑にしてたね・・・・」
『やだなあーセンパイ。白昼堂々、街中で殺れるはずないじゃないですかー。ミー達は暗殺専門、、、、なんですしー』
「うるせぇっ!で・・・・何の用だよっ?その事、伝える為だけにかけてきたのか?」
『違いますよー。もちろんさんの事ですー。今一緒にいるんですよねー当然』
「・・・・いるけど・・・・何だよ?」
『ミーがいないからってホテルに連れ込んでるとこみると、弱ってる彼女に付け込んでイヤラシイ事しようと思ってんでしょー』
「てんめ、殺されてーのかよっっ!サッサと用件を言えっ」


携帯のGPSで当然の事ながら居場所はバレているようだ。
フランのとぼけた態度にイライラしながら、オレはナイフを握りしめた。
この場にいればカエル(フラン)の頭部をナイフだらけにしてやるのに。


『分かりましたよー。ホント生き物としては最低ランクですよね、センパイってー』
「・・・・っっ(ピキっ)」


毎度の事ながら一言余計なフランに、オレの堪忍袋の緒がキレる。(元々ねーけど)
同時に携帯を持つ手に力が入り、ミシッという嫌な音が鳴った。
それに気付いたフランは『壊さないで下さいねー』と苦情を言いつつ、呆れたように息を吐いた。


さんちょっと元気ないと思いませんでしたかー?』
「あ?」
『そのバカ女に会った事で気付いたんですけどー。さんが元気ないのってー多分自分の過去を気にしているからだと思うんですー』
「過去・・・・?」
『はいー。ミーが思うにさんてー』


フランの話を聞きながらオレは隣の部屋にいるを覗き見た。
彼女は今もどこか寂しげに溜息をついている。その様子を見てるとフランの言っている事も一理ある、とオレは思った。
家を見ても、スクアーロの態度を見ても、は幸せな生活を手に入れたように見えてた。
でも時々見せるあいつのあの表情はオレも気になってたんだ。
スクアーロに問題がないのだとしたら、彼女が悩む理由は――――。


『・・・・って、センパイ聞いてますー?』
「・・・・聞いてんよ」
『って言うかーさん送るのセンパイに頼もうと思ってたんですけどーロン毛隊長にバレるとヤバいんで、やっぱりミーが送りますー』
「分かってる・・・・。でもまだ時間あんだろ?てめーはもう少しブラブラしてろ」
『えー!でもミーだって暗くなる前には彼女を送り届けろ、と言われてますしー。あまり遅くなられても――――』
「うるせえ。30分くらい大丈夫だろ?30分経ったらを迎えに来りゃいーじゃん。それくらいならスクアーロにもバレねえよ」
『・・・・チッ』(!)
「てんめ、今、舌打ちしたろ」
『やだなあ、そんなわけないじゃないですかー。じゃあ今からキッチリ30分後、ホテルに戻りますんで宜しくー』


最後は無駄に愛想のいい声が聞こえ、そこでブツっと電話は切れた。
何となく電話を先に切られた事で不愉快になり、オレも舌打ちしながら携帯をしまうと、盛大な溜息が漏れる。
フランの話を聞く限り、の悩みの原因は過去にある、という事は分かったが、どう言葉をかけていいのか良く分からない。
っつーか暗殺は得意でも、誰かの悩みを聞く、なんて人間らしいマネ、したことねーし。


(ったく・・・・。を不安にさせんなよ・・・・)


スクアーロが悪いと思っているわけじゃねーけど、のあんな寂しそうな顔を見てると内心そう毒づきたくなるってもんだ。


(ま・・・・確かに周りは面白おかしく噂しやがるしな・・・・)


本人同士が良くても、周りの人間が全て受け入れてくれると言うわけじゃない。
マフィア連中の中でも、元娼婦を恋人にしたという噂を聞いてスクアーロを陰で笑っている奴がいた事もあった。
それはオレも良く知っているし、一度オレの前での話を持ち出した奴もいたが、そいつはオレがバラバラに体を切り裂いてやった。
スクアーロの恋人の事でオレが激高するなんて思っていなかっただろーけど。
その後も似たような状況が何度かあったが、スクアーロとの事を笑う人間を、オレは全て殺してしまった。

別にスクアーロがバカにされて腹が立ったわけじゃない。
事情も知らない人間が、彼女の過去や2人の事を笑う事が許せなかっただけ。
当然スクアーロも自分が陰で色々言われている事は知ってんだろーけど。
でもスクアーロ本人はそんな事を物ともせず、何も恥じる事なくを未だに自分の傍へ置いている。
そこだけはオレにとっても救われた気分だった。なのにの方が過去を気にしている・・・・。


は優しいから・・・・自分のせいでスクアーロがあれこれ言われてると知れば当然・・・・)


何となく彼女の気持ちが想像できてオレは小さく息を吐くと、隣の部屋へと歩いて行った。


「電話、フランくんですか?」


オレが戻った事に気付き、がハッとしたように顔を上げて微笑む。
その笑顔さえオレには無理しているように見えた。


「うん。あいつ、もう少ししたら戻ってくっから・・・・そしたら送ってもらいな」


そう言いながら隣に座ると、は小さく頷いただけだった。


「でも・・・・フランくんのこと、怒らないで下さいね」
「え・・・・?」
「さっき嘘ついたのも・・・・。きっと彼なりに心配してベルを呼んでくれただけだと思うから・・・・」


その言葉に一瞬ドキリとしたけど、オレは優しく微笑みの顔を覗きこんだ。


「バカなコーハイが教えてくれた。さっき・・・・嫌な目にあったって?」
「・・・・・・」


思い切って尋ねると、は俯きながら静かに首を振った。


「ホントの事を・・・・言われただけだから・・・・」
「バカ言うなよ。過去の事なのに何で嫌味とか言われなくちゃなんねえの?」
「え・・・・?」
「お前が卑下する事なんか何一つないね。お前は家族守ろうとしただけじゃん。それの何がいけねえの?楽に稼ぐために体売ってる奴より、よっぽど立派だっつーの」
「ベル・・・・」
「つーかスクアーロの立場とか気にして悩む事もねーよ。そもそもスクアーロだって雑魚に何言われたって気にするような奴じゃ――――」
「でも・・・・っ!私のせいでスクアーロさんが色々と言われてるなんて・・・・そんなの嫌なんです・・・・」
・・・・」


今まで我慢していたのが爆発したかのように、涙をためて訴えるに胸が痛んだ。
どうやら思っていた以上に気に病んでいたらしい。
口に出した事で気が緩んだのか、の頬に涙が伝って行った。


「泣くなよ・・・・。オレ、お前に泣かれたらどうしていーのか分かんねーし・・・・」
「ご、ごめんなさい・・・・。こんなこと言うつもりじゃ・・・・」


頭を撫でてやるとは慌てて涙をぬぐった。
その姿すらいじらしくなり、このまま抱きしめてしまいたくなる。


(もしあの時・・・・がオレを選んでくれてたら。オレが今のスクアーロの立場だったかもしれねえんだよな・・・・)


娼婦に本気で惚れたバカな男、と周りから笑われていたかもしれない。
ふとそんな事を想像した。いや――――例えそうでも、きっと後悔なんかしない。
スクアーロと同じように、誰に何を言われようと気にするはずもない。
そう思いながら、オレは少しだけスクアーロの事が妬ましくなった。


(チッ。やっぱムカつくよなぁ・・・・。アホ隊長の奴)


が心を痛めているのは、スクアーロの事を大切に思っているからだ。
あのがなり声を思い出し、苦々しく溜息をつく。
きっとスクアーロもが悩んでる事には気付いているだろうけど、その内容までは分からないはずだ。
明日からの任務を考え、オレはどうしようか、と考えた。こんな状態のを一人置いて行くのも心配だ。
最悪、別れた方がスクアーロの為だと先走り、どこかへ行ってしまうかもしれない。


(いや、もしかしてすでに・・・・)


オレはふとの顔を覗き込んだ。


・・・・。まさか・・・・別れた方がスクアーロの為だとか・・・・考えちゃってる?」
「・・・・っ」
「・・・・って、図星かよ・・・・」


小さく息を呑んだに、オレは深い息を吐いて項垂れた。
の性格を考えれば安易に想像はつく。
スクアーロの為ならは自分の気持ちを殺してでもそうするだろう。


「一人で勝手に悩んで結論出すなって。それってスクアーロが一番傷つくんじゃね?」
「・・・・で、でも私――――」
「ま、オレとしては別れてくれた方が嬉しいんだけどさ」
「・・・・え?」
「ってーのはダメ?」


言いながら「ししっ」と笑うオレに対し、はかすかに瞳を揺らしている。
それを見て同時にオレは笑うのをやめた。


「・・・・ってジョークにもなんねえか」
「ベル・・・・?」


溜息交じりでそう言えば、は軽く唇を噛みしめた。


「優しく・・・・しないで下さい。私は・・・・ベルを裏切ったのに・・・・」
「あ?何だよそれ――――」
「ごめんなさい・・・・。やっぱりベルに甘えるべきじゃなかった・・・・」


不意に立ち上がり部屋を出て行こうとする彼女の手をオレは慌てて掴んだ。



「オレはお前に裏切られたなんて思ってねえよっ」
「・・・・・・・っ」
「あの時も言ったじゃん。お前の気持ち気付かないフリして無理やり自分のもんにしようとしたのはオレだし」



相手の気持ちを無視して傍に置いたところで、結末は見えてたんだ。
だからオレは自分の心を殺した。でもそれはこんな未来を見る為じゃない。に幸せになって欲しかったから――――。


「・・・・っ?」


そのままの手を引きよせ、腕の中に収める。さっきは我慢したけどの泣き顔なんか見ちまったらもう限界だ。
細い体がビクリと跳ねたけどオレは更に強く抱きしめた。


「オレ・・・・やっぱが悲しんでる姿は見たくねーよ」
「ベル・・・・?」
「女々しいって思われるかもしんねーけど・・・・。オレはこうしてまたお前と話す事が出来て嬉しいんだよね。だから・・・・甘えるべきじゃないなんて言うな」


お前はもう、ヴァりアーの一員なんだし?というオレの言葉に、がハッとしたように顔を上げた。


「ヴァりアーの・・・・?」
「ああ」


優しく頷けばはうるんだ瞳を僅かに揺らし、困ったように目を伏せた。


「で、でも私・・・・殺しなんて出来ませんけど・・・・」
「・・・・っぶはっ」


思いもよらない返答に、オレは思わず噴き出した。
変わっていないとは思ったが、こういう天然なところもあの頃のままだ。


(・・・・ホント、まいるよなぁ・・・・。にだけは敵わねえっつーか・・・・。可愛すぎるっつーの)


出逢った頃も、そして10年経った今も、はまるで純真無垢な子供みたいだ。
汚れた世界を、人間を、それなりに見て来たはずなのに、何者にも染まらず、未だに綺麗なまま。
欲深く、傲慢な人間しか知らないオレにとって、やっぱり眩しい存在なんだ――――。


(ただ少し自分に自信がなさすぎなんだけどな・・・・)


オレは苦笑しながらも、キョトンとしているの頭を撫でた。


「そういう意味じゃねーし。は作戦隊長さまの恋人だろ?メンバーだって、あのボスだって今じゃ認めてる。なら、もうファミリーじゃん?」
「ファミリー、ですか・・・・?」
「そ。だからー。ファミリーには甘えていいんじゃねーの?ま、それに裏の世界を生きてるっつーのは娼婦もオレらも同じだし」
「同じって・・・・」


驚くにオレは軽く息をついた。


「オレ達は正義のヒーローでも何でもない。やってる事っつったら暗殺だし世間一般から見れば、ただの人殺しってわけだ」
「で、でもヴァりアーの皆さんはエリートで―――――」
「だからー。いくらヴァりアークォリティーとか言われても結局は殺し専門集団じゃん。表舞台には絶対出れねーし認められるはずもない存在なんだよ」


―――――ま、だからオレ達は同じ穴の狢ってわけ。分かる?


分かりやすく説明してみれば、は無言のままオレを見つめて僅かに俯いた。


「つー事でがスクアーロに劣等感を持つ必要もねーし、まして無関係の奴らが言う事なんか気にしなくていいんだ。どーせ、ただの僻みだからさ」


マフィアの世界でどれほど地位を上げたとしても、それは決して世間では認められないものだ。
裏の世界を歩んでいるのはマフィアだろうが娼婦だろうが同じ事で、が自分を蔑む必要など全くない。
オレは彼女にそう伝えたくて、自分なりの言葉で話し続けた。


「過去がどうであれ、だろ」
「私は私・・・・?」
「そう。スクアーロも全て知っててを好きになった。その過去を否定するのは、を好きになったスクアーロの事さえ否定する事になるんじゃん?」


オレのその言葉に、は小さく息を呑んで瞳を揺らした。
純粋だからこそ傷ついて、悩んでたんだろうけど、どうやっても過去は消せない。
それならその過去を嘆くんじゃなく、受け入れながらも前向きに生きて欲しかった。
それには彼女の全てを受け入れて愛してくれる存在が必要だけど、その相手はすでにの傍にいるんだからさ。


「ありがとう・・・・ベル」


小さく紡がれた言葉に、オレは笑顔を見せながらも内心舌打ちをした。
スクアーロに援護射撃する形になってやがるし。何やってんだか、と自分で呆れる。


「別に礼言われる事じゃねーし?オレだって・・・・もし過去を気にしてに去られたら立ち直れねーと思ったから、さ・・・・」


そう・・・・別にスクアーロの為じゃない。
が過去を否定する事で、彼女に溺れた過去の自分すら否定された気持ちになったのはオレの方だった。


「でも・・・・ありがとう・・・・」
「だから、いいって・・・・」


嬉しそうに微笑むに、胸の奥がチリチリと痛むのを感じながらオレも笑顔を見せる。
本当なら2人の間を取り持つような事は二度とごめんだったのに、と少しだけ後悔しながら、それでもが元気な笑顔を見せてくれた事は素直に嬉しい。


「私・・・・いつもベルに助けてもらってばかりですね・・・・」


が恥ずかしそうに俯く。でもオレは自分のおせっかいさに内心嫌気がさしていた。


「そんな事ねーよ。オレが勝手にやってるだけじゃん。それに――――」
「それに?」
「いや・・・・が元気ないとスクアーロもイライラしてオレ達に当たり散らすから迷惑だしねー。うししっ」
「ご、ごめんなさい」


笑いながら思ってもいない事を口にすると、はまたしても恥ずかしそうに俯いた。
本当はの存在があるだけでオレもまた助けられていたんだ、とは、今更言えるはずもない。
今でも目の前の笑顔を見るだけで、胸の奥が苦しくなるのに――――。


「ま、明日から任務で暫く帰れないとは思うけど、心配しないで待っててよ」
「はい・・・・」
「んな暗い顔すんなって。大丈夫だからさ。オレらヴァりアーだぜ?」


ふと心配顔をするに、なるべく明るい声で言った。
本音を言えば口で言うほど簡単な戦争じゃない、とオレも感じている。
今回の敵は色々な意味で謎が多いし、ボスの白蘭に至っては正体が良く分かってないからだ。


(・・・・つってもオレらは目の前の敵を始末するだけだけど。スクアーロは作戦隊長って立場だしな)


前線に立つというだけで危険度は増す。その事を考えればも心配になるんだろうけど、こればかりは回避出来ない。


(それだけでも色々と忙しいのに、スクアーロはボスの面倒もみなくちゃいけねーしな・・・・。主に雑用だけど)(!)


「それに作戦隊長が出る前にオレが敵を全滅させちまうかもしんねーしさ」
「ベル・・・・」


の心配を察したうえで明るく笑う。彼女がこれ以上、悲しい顔をしないように。今のオレに出来ることはこれくらいのもんだ。
その時――――が不意にオレの頬へ軽くキスをしてきてギョっとした。あまりに不意打ち過ぎて思わず顔が熱くなる。


「・・・・なっ何っ?」
「あ、あの・・・・ありがとうって言いたくて・・・・その・・・・」

慌てて身を引いたオレを見て、は恥ずかしそうに俯いた。
そんな彼女にオレも溜息交じりで項垂れる。(やべえ・・・・心臓がバクバクいってるし!たかがホッペにチューされただけじゃん!)


「て、照れるならすんなよ・・・・。ビックリすんじゃん」
「ご、ごめんなさい・・・・」
「ってか、どーせなら唇にちゅっが良かったんだけどね〜」
「・・・・っ」


真っ赤になるに、オレはわざと顔を近づけ彼女の瞳を覗き込んだ。
動揺していることを気づかれたくなくてしたことだった。でも至近距離で見たの頬は赤く染まっていて。
オレの行動に驚いて揺れている瞳を見ていると本気でキスをしたくなった。


「ベ、ベル・・・・?」


鼻先が触れ合うくらいに唇を寄せれば、は更に大きな目を見開いてオレを見つめてくる。
その瞳に吸い込まれるように唇を重ねようとした時、オレの脳裏に目つきの悪いロン毛の顔がかすかに過ぎった。

(・・・・ここでキスしたらマジでオロされるかも)

なんて事を考えつつ、冷静になったオレは、すでに真っ赤な顔で固まっているの唇、じゃなく。
鼻にちゅっと口づけた。(かなり耐えたじゃん、えらいぞオレ!)


「鼻だし許してねー」
「・・・・・っ」


一瞬で耳まで赤くなったに噴き出して軽口を叩くと、彼女は困ったように俯いた。


「ま、また意地悪して・・・・」
「だって、逃げねーんだもん。マジで唇奪っちゃおうかと思ったっつーの」
「・・・・・っ」
「って、ジョークだし。いちいち本気にすんなって」
「は、はい・・・・」


昔なら強引に奪っていたかもしれないけど、今はこんな関係もどこか心地いい。
軽く額をつつけば、もやっと笑顔を見せる。
その時、けたたましいチャイムの音が部屋に鳴り響いた。


「センパーーイ!さんを迎えに来ましたー」
「・・・・チッ。バカガエル」


時計を見れば先ほど電話を切ってからキッチリ30分。
一秒たりとも違わぬ正確さで現れたフランに、オレは先ほどの殺意が再び蘇って来た。


「フランくん?」
「ん?あ〜はちょっと待ってて」


声に気付き立ちあがるに、オレは笑顔を見せながら静かにドアの方へ歩いて行く。
その手には当然というように数本のナイフが握られている。もちろんドアが開いた瞬間、カエル刺しにするつもりだった。
なのに・・・・バカガエルがなかなか入ってこねーのがマジ、ムカつく。


「開いてるし入って来ればー?」
「嫌ですー」
「ああっ?何でだよッ」


間髪いれず拒否され額に怒りマークが浮かんだが、フランはまたしても呑気に返事をした。


「ドア越しでも分かるくらいにセンパイの殺気をビンビン感じるんでー」
「・・・・チッ。バレバレかよ。じゃあ仕方ねえ・・・・」


小さく舌打ちをしてオレは溜息混じりで踵を翻した―――――


「・・・・って、誰がやめるかよ!」


と、振り向きざまにドアを蹴やぶり、無数のナイフを投げた。
だが廊下にフランの姿が見当たらず、オレのナイフが壁に突き刺さっている。


「あーあー。ダメですよー。ホテルの壁に穴開けちゃー」
「てんめっ」


声がした方へ素早くナイフを投げれば、今度こそ確実に手ごたえがあった。


「てめーがそんなトコに張りついてなけりゃ壁に穴開く事もなかったんじゃね?」


そう言いながら廊下の天井を見上げる。フランは盛大に溜息をつきながらポンと飛び降り、額に突き刺さっているナイフをポイポイっと捨てた。


「てめ、捨てんなっ」
「はー。こーなるから嫌だったんですよねー。っていうかー時間ないのでさん呼んでくれませんかー」
「・・・・」(何となくムカつく)
「それとも帰したくないとかー?」
「そんなわけねーだろ!っつか今度こそちゃんと家までキッチリ送れよ?」
「分かってますってー。そんなセンパイじゃあるまいしホテルの部屋になんか連れ込みませんよー」
「ざけんな、カエル!!」


あまりのムカつきにフランのケツを思い切り蹴飛ばす。
ボコッという小気味いい音がしたのと同時に、フランは顔をしかめて振り向いた。


「いったいですよー!投ナイフの次は肉弾戦ですかー?とことんイジメっ子体質ですねーセンパイって」
「うっせえ!いちいちムカつくんだよ、てめえはっ」
「・・・・ベル?」
「・・・・・っ」


オレ達が廊下で騒いでいたからか、が帰る用意をして部屋から出て来た。


「どうしたの?」
「い、いや別に・・・・。ちょっとバカなコーハイに教育的指導?」
「教育的指導ってより暴力的イジメですけどねー」
「黙れ、バカガエル!――――あ、ってことで、こいつが家まで送るから」


にだけは笑顔を見せて言うと、背後で小さな舌打ちが聞こえた。(あとでナイフ的指導の刑)


「あ、はい。ありがとう、フランくん」
「いえいえ。ミーもセンパイといるよりさんといた方が楽しいですしー」
「・・・・・(ぜってー殺す)」


フランの言葉にはちょっと笑うと、オレにも可愛い笑顔を向けてくれた。


「それじゃ・・・・色々聞いてくれてありがとう」
「いや・・・・。気を付けてな。スクアーロがいない間はヴァリアーの奴ら護衛につけとくけどもなるべく一人になんなよ?」
「はい。仕事以外は家にこもってます」
「うん、そーして」


そう言いながら可愛く微笑むの頭を撫でる。

(まあ出来れば仕事も行かないで欲しいくらいなんだけど・・・・それはオレが言うことじゃねーしな)

ミルフィオーレの奴らがどこまで情報を掴んでるか分からない上にスクアーロのいない間が一番危険なんだから心配にもなる。


「何かセンパイってさんの恋人みたいな口調ですよねー。スクアーロ隊長にチクっちゃおうかなー」
「・・・・・っ(ピキッ)」(本日数本目の緒がキレた)


せっかく人がとの別れを惜しんでるってー時に、背後からバカガエルのバカ発言に邪魔されナイフを握りしめた。
でも目の前にはがいるから乱暴なことは出来ないと死ぬ思いで我慢をする(!)


「んじゃー気を付けてな」
「センパーイ、口元引きつってますけどー」
「誰のせいだよっ!!」


オレの我慢はあっさり砕け散り振り向きざまにカエルの頭部にゲンコツをかます。まあナイフで刺すよりはマシだろう。
は多少驚いてたようだけどフランの奴がケロっと(カエルだけに)してるもんだから最後は苦笑いを浮かべていた。


「ベルも任務頑張って下さいね」
「おっけ」
「じゃあ・・・・また」
「・・・・あ、ああ。また、な」


その言葉が妙に嬉しくて、オレは笑顔で手を振った。
フランの奴は陰で笑ってたけど今だけはそんな事も気にならないんだから不思議だ。
今回のことがキッカケで、また時々会えることがあるなら、オレはそれだけで。


「はーあ。明日っからまーたバカ相手にお仕事かあー」


2人の後ろ姿を見送りながら、オレは盛大に溜息をつく。

まさか、あの戦場の地で思いもよらない相手と対峙するはめになるとは、この時のオレは想像すらしていなかった――――。
















「チッ、おせえ」


何度も時計を確認しながらエントランスの方を覗く。とっくに仕事は終わって買い物だって終わってるはずだ。
さっき一度『買い物してから帰るので少し遅くなります』なんてメールが入ったが、それにしたって――――


「遅すぎる・・・・・」


イライラしながら時計を睨んだところで変わりはないが、つい目がいってしまう。
フランがついているから大丈夫だとは思うが、今はミルフィオーレの奴らもボンゴレ狩りなんてもんをしてやがるから心配は尽きない。
やっぱりオレが迎えに行くべきだったか、と後悔していると、後ろから野太い声が飛んできた。


「ちょぉっとスクちゃん!熊みたいにウロウロ歩き回らないでくれる?落ち着いて献立も考えられないじゃない」
「う゛お゛ぉい!何でてめえが献立考えてんだぁ?!作戦会議は終わったんだ!とっとと帰れぇ!」


まるで我が家のようにソファで寛ぎコーヒーを飲んでいるルッスーリアに、オレのイライラが頂点に達した。
そもそもコイツは毎日のように来やがるからとゆっくりする時間もない。
ずーずーしく毎晩のように飯を食ってくわ、が何も言わないのをいいことに酔っぱらって泊まってくわ、
ミルフィオーレとの戦争中じゃなければ本気で切り刻んでやるところだ。(今は戦力が一人でもかけると困るから我慢してるが)

(明日から任務でしばらく戻れねえってのに・・・・)

いくらが優しいからって今夜も泊まるつもりなら今度こそオカマを三枚にオロしてやる!
そう真剣に考えながら剣を突きつけると、ルッスーリアは楽し気に笑い出した。


「いやーね!献立は献立でもボスのよ!」
「ああっ?!クソボスの献立だぁ?」
「ほらー遠征になるんだし向こうでどうせアレが食いたいコレが食いたいって言い出すでしょ?だから持っていく食糧とか書いておいたの」
「チッ!面倒くせえ・・・・。クソボスのせいで毎回荷物が増えるんだからなぁ」
「まーねー。コンテナ10はいるものねー。ホーント困ったボスよねえ♪」
「・・・・う゛お゛ぉい!嬉しそうに言ってんじゃねえぞぉ!」


腰をクネクネさせて両手を握りしめるオカマ(気色悪りぃ)に呆れつつ、オレはソファに腰を下ろしすっかり冷めたコーヒーを口に運んだ。
全世界のミルフィオーレに総攻撃、という決定が下されてから数日。
しばしの休暇とはいえ作戦隊長を任されているオレは休める時間もほとんどない。
準備をするのに走りまわり、今日までかかってしまった。(その中にクソボスの食糧を運ぶコンテナの手配も含まれるから胸クソわりぃ)
明日には急襲攻撃の為、ミルフィオーレの指揮官がいる古城に攻め入ることになっている。オレがのんびり出来るのも今夜くらいだ。


「それにしてもホントに遅いわね、ちゃん。まあフランちゃんがいるから大丈夫だとは思うけど・・・・」
「・・・・けっ。あんな下っ端に任せるんじゃなかったぜ・・・・」
「あらーでもそうすると他に手が空いてる幹部はレヴィかベルちゃんってことになるわよー?スクちゃんはどっちに任せるのも嫌でしょ?」
「・・・・・・チッ。何でうちにはまともな幹部が一人もいねえんだぁ?」


レヴィみたいなロリコン変態野郎にを任せるなんて考えただけでゾっっとする。
といってベルにの護衛を任せるのもおかしな話だ。
まあアイツは喜んですっ飛んでくるかもしれねえが今度はオレが気になって仕事どころじゃなくなる。
そう考えると新人のフランしかいねえってことになり、あいつに任せたのはいいが、もともと何を考えてるのか分からねえヤツだ。

(まあ、腕は確かだが・・・・)

フランを浚って来た時(!)相当手こずらされたことを思い出し苦笑いが洩れる。
その腕を見込んで無理やりヴァリアーに入れたが、アイツの本音はどうだか分からない。

(ま、文句を言いつつベルのいい遊び相手になってるがな)(※ベルにとっては心外)

普段の2人のやり取りを思い出しながら、再び時計を見る。午後5時――――。普段ならとっくに帰ってる時間だ。


「チッ。どこ寄り道してやがる――――」


そうボヤいた時。エントランスの方でドアの開く音がしてオレはすぐにリビングを飛び出した。


「う゛お゛ぉい!フラン!てめえ、どこフラフラしてやが――――!」


と、そこで固まった。いや、固まってたのはオレだけじゃなく、たった今エントランスに入って来たも同じだった。


「ス、スクアーロ、さん・・・・?」
「お、おう・・・・。っつかフランの奴はどうしたぁ?」


標的にしようと思っていた奴の姿が見えず訊ねると、は苦笑気味に外を指さした。


「上がってけばって言ったんだけど、スクアーロ隊長が恐ろしいので帰りますーって、たった今・・・・」
「帰ったのかぁ?」
「何か家の前に来た時に殺気がするって言って・・・・」


そう言いながらはクスクス笑っていたが、オレは内心舌打ちをした。ホントに逃げ足だけは早い奴だ。
それでもが無事に帰って来たことはホッとして、すぐに腕を引き寄せ抱きしめる。


「スクアーロさん・・・・?」
「・・・・遅いから心配した」
「あ・・・・ご、ごめんなさい。ちょっと買い物してたら色々買いすぎちゃって・・・・」
「ああ。無事ならいいんだ・・・・」


そう言って少しだけ体を離し身を屈める。触れるだけのキスを落とせばの頬が僅かに赤くなった。


「あ、あの・・・・お腹空きましたよね・・・・!すぐ作ります――――」
「後でいい」


照れ臭いのか、はすぐにオレの腕から逃げようとする。
オレは苦笑しつつも逃がさないようを抱き寄せると、今度は少し強引に口づけた。


「・・・・んっぁ」


驚いたせいで僅かに開いた隙間から舌を入れると、の体がかすかに震えたのが分かる。
何度も舌を絡ませていると次第に体も熱くなっていく。
出来ればこのままベッドへ連れ込みたいと思ったが、ふと背中に悪寒が走り、慌ててを解放した。
そのまま後ろを振り返ると―――――


「う゛お゛ぉい!てめえ、何、ちゃっかり覗いてやがる・・・・っっ!!!」

「いやん、見つかっちゃったー!でも相変わらずアツアツのラブラブでいいわねーん――――おごばっっ


ドアの隙間からニヤニヤ顔で覗いていた変態の顎に拳をヒットさせれば、オッサンのような悲鳴がエントランスに響いた。(寸分違わずオッサンだが)


「ちょ、ちょっとスクアーロさん!殴らないで――――」
「ああっ?こんな変態かばう事ねえぞぉ!」
「も、もう・・・・スクちゃんのパンチってば相変わらず交じりっ気のない本気パンチよねえ。鼻血出ちゃったわー。うふ♪」
「気色わりぃこと言ってんじゃねえ!いいから帰れぇ!」


これまでの我慢も限界に達し怒鳴ると、ルッスーリアは「分かってるわよ♪」とほざいて投げキッスをしてくる(吐き気)


「今夜くらいは2人きりにしてあ・げ・る!明日から暫く戻れないんだし今夜はたっぷりちゃんを堪能したらいいわ♪―――うごっ!
「おらぁ、出てけぇ!」
「きゃーん、スクちゃんの鬼〜〜!」

「・・・・ルッスーリアさん!」


セクハラまがいな発言をしたオカマの顔面を殴り、家から叩きだすとが慌てて追いかけていく。
あんな変態なんか放っておけばいいと思っても、あいつはルッスーリアに懐いているから仕方がない。


「ったく・・・・。騒々しいったらねえ・・・・」


何だかドっと疲れが出た気がしてリビングに戻るとソファに寝転んだ。
どうしてヴァリアーは変態しかいねえんだ?と呆れつつ、まあボスがボスだけにまともなヤツはついて来れないだろうとも思う。
そこに自分も入っているのかと思うと溜息が出た。


「スクアーロさん!」


そこへが戻ってきたが、少しだけ頬が膨れている。そんな顔されても可愛いだけだが、どうやら彼女は怒っているようだ。


「もうっ。何で殴って追い出すんですか?」
「ああっ?んなもん邪魔だからに決まってんだろぉ」
「邪魔って・・・・」
「オレがお前とゆっくり出来るのは今夜くらいだ。あいつに居座られたらこういうことも出来ねえだろうがぁ」


そう言っての腕を引っ張ると、その細い体を腕の中に収めた。
は驚いたように体を捩ったが、オレも離す気はない。少々強引に体を反転させるとソファへ押し倒す。


「ス、スクアーロ・・・・さん・・・・?」
「オレはお前と2人でいたい。こうして一緒にいられるのもたまにしかねえしな」
「・・・・そ、それは私も同じ・・・・ですけど・・・・」
「ならいいじゃねえかぁ。ルッスーリアだって分かってる。まあ、アイツの場合オレを怒らせるのはわざとだけどなぁ」


オレが軽く舌打ちすると、はやっと笑顔を見せてくれた。


「・・・・明日から一人で大丈夫か?」
「はい・・・・。でも・・・・寂しい・・・・」
「・・・・オレも同じだぁ」


可愛いことを言うにふと笑みが零れ、そのまま口づける。
一瞬は体を固くしたが、何度も角度を変えて触れるだけのキスをすれば少しづつ息が上がって来た。
彼女の長い髪に指を入れて梳きながら唇を甘噛みする。そこで彼女の体が軽く跳ね、僅かに開いた唇の隙間から舌を入れた。
優しく口内を愛撫して舌をゆるゆると絡ませれば、のくぐもった声が喉の奥から漏れてくる。
その声はオレの耳を程よく刺激して体の中心を更に熱くさせた。


「ん・・・・ぁ・・・・スク、アーロ・・・・さん・・・・?」


僅かに唇を離し、ゆっくりと首筋に舌を這わせながらの細い腰から胸の膨らみまで撫で上げる。
そのままシャツのボタンを外そうとすれば、抗議するかのような小さな声が聞こえた。


「あ、あの・・・・ここ・・・・で・・・・?」
「・・・・ベッドまで運ぶ余裕がねえ」
「・・・・で、でも・・・・んっ」


に応えながらも首筋に口づけ、軽く吸い上げる。赤い痕を残しながら彼女の小さな耳たぶを舌先で軽く舐めれば可愛い声が跳ねた。
は僅かに体を捩って抵抗したが、浮いた背中に手を差し入れてシャツの上からホックを外した。


「ちょ・・・・スクアーロ・・・さん・・・・ひゃ・・・・」
「余裕ねえって言っただろぉが・・・・」


空いた方の手で柔らかな胸を揉みしだき、シャツの上から僅かに硬くなった尖りを指でこする。
瞬間、の体がビクンと跳ねて甘い喘ぎが部屋に響いた。
少し強引にシャツをスカートから引き抜き、そこから中へ手を入れれば、の肌はかすかに汗ばんで熱く火照っているのが分かる。
任務前で気分が高揚しているからなのか。一度触れてしまえばが欲しくてたまらなくなった。
首筋から頬へキスを落とし、彼女の顔を覗き込めば、恥ずかしそうに顔を反らす。
それを無理やり引き戻し、最初から深く口づけ舌を絡ませた。


「・・・・ぁ・・・・んっ・・・・」


胸の尖りを指で何度も擦りながら、もう片方の手での太腿を撫で上げ持ち上げる。
そのまま露わになった内腿から彼女の中心へと指を滑らせ下着の上から軽く擦った。
性急に事を進めているオレは、本当に余裕のないガキみたいだ。


「・・・・ぁっ」


オレが触れただけでは甘い声を漏らす。その声が聞きたくて中へと指を侵入させれば、彼女のそこはすでに濡れていた。
蜜を指に絡めて何度も優しく撫でると更に中心から溢れてくるのが分かる。
にも言ったように今のオレに余裕なんてものはない。たまらずその場所へゆっくりと指を埋めていけば彼女の体が僅かに震えた。



「・・・・ゃ・・・・あ・・・・んっ・・・」
「・・・・・・・・」


目じりに涙を溜めて小さな体を震わせているは、何度抱いてみてもオレの欲を疼かせる。
愛しくて、時々壊してしまうかと思うくらいにオレを欲情させることを、きっと彼女は知らない。


「・・・・んっ・・・・ぁあっ」


指の数を増やし中をゆっくり掻き混ぜただけでの体はのけ反り、喘ぐ声も吐息も乱れてくる。
肌蹴た胸元から覗く胸の尖りを舐めあげ、少しづつ移動して白い腹や持ち上げた太腿へも舌を這わせると、が慌てて足を閉じようとした。
それを強引に広げた瞬間、恥ずかしさからかが小さな声を上げる。


「・・・・や・・・・見ない・・・・で・・・・」
「・・・・いいから・・・・力を抜けぇ」


外はすでに暗く、明かりもつけていなかったリビングはそれほど明るいわけじゃない。
それなのに羞恥心に震えるが愛しくて、オレの体も火照っていくのが分かる。
滑らかな内腿にも舌を這わせ、中を掻き混ぜていた指をゆっくり引き抜くと、下着を脱がせるのももどかしく、僅かに片寄せ今度はそこを舐めあげた。


「・・・・んっゃあ・・・・ぁっ!」


僅かに主張している硬くなった部分へ吸い付けば、の体が激しくのけ反り、ソファの上で小さく跳ねた。
すでに潤っているそこはオレの舌が動くたびにくちゅくちゅと厭らしい音を立てていて。
彼女の声と一緒にオレの耳を刺激するせいか、限界なほど中心が昂ぶってくるのを感じる。
は絶頂が近いのか体を何度か震わせているのが分かった。


「・・・・ぁ・・・・ぁあ・・・っ」


彼女にイって欲しくて、ふっくらとした芽を吸いながら再び中へ指を挿入すると、悲鳴に近い声を上げての体が大きく跳ねた。


「・・・・イったか?」


蜜が溢れてくる場所から唇を離し、ぐったりとした彼女の腰を一気に引き寄せる。
絶頂を迎えたばかりのは呼吸も乱れ、頬も赤く火照っている。
息を乱し、薄っすらと開いた唇がやけに厭らしく、その姿を見ていると今すぐ彼女の中へ入りたくなった。


「・・・・ス・・・・クアーロ・・・・さ・・・・ん」


そんな気持ちが伝わったのか、は小さく息を呑むと潤んだ瞳でオレを見上げた。


「・・・・挿れるぞ・・・・」


どくどくと脈を打っている自分のモノを取り出し彼女の中心部へあてると、一気に奥へと腰を押し進めた。


「・・・・・く・・・っ」


イったばかりの彼女の中も同じくらいに熱くて、オレのモノを急激に締め付けてくる。
その刺激に思考が飛びそうになりながらも、何とか奥まで挿入した。
敏感になっているところへ挿れたせいで、もまた絶頂へ向かっているようだ。
更にオレのモノを締め上げてきて、蕩けそうなくらいの甘い刺激と快楽をくれる。
その本能のまま、オレはへの欲情を全て吐き出すように乱暴なほど腰を打ち付けた。
オレの髪がの胸元へと落ちて、動くたびサラサラと月明かりに揺れる。


「・・・・ん、ぁあっ・・・・ス・・・・クアーロ・・・・」


体を突かれながらも、掠れた声で何度もオレの名を呼ぶがたまらなく愛しくて。
出会った時から今日までの間、その気持ちは何一つ変わらない。どうして、こんなにも惹かれるのか。

そしてその愛情の分だけ、オレは不安になるんだ―――――。

が何に悩んでいるのか、オレは全てを知っていた。
だからこそ、こうして腕の中に抱いていないと不安でたまらなくなる。


「・・・・・どこにも・・・・行くな・・・・・・・・」


激しく抱きながらそう呟けば、の瞳がかすかに揺れて。

何かを言おうとしたその唇を、オレは無理やり塞いだ―――――。

















めっさ久しぶりの更新だす(汗)
次に何を更新しようかと思いながらリボ夢を読み返していたら、再びリボ熱再燃(笑)(自分の作品で思い出すとか)
途中まで書いていた続きを一気に書き上げることが出来ましたー。
そこで前の連載中には描けなかったスクとヒロインのラブスィーン、やっとこ書くことが出来やした(笑)
(前はベルしか書いてなかったもので;)

あと、以前のデザインがちょっと文字が消えてしまう箇所があったので全てリニュってみました。
多分Win8での崩れだとは思うんですが、今後の為に今のうちに読みやすいように変更です。
内容も最初から全話ちょこっとづつ手直し入ってます。前に書いたのを今読むとちょいとおかしな部分があるもので(えへ)

あと他に雲雀夢の方もリニュしてる最中です。
続きの話もちょいちょい書いてるので出来上がればUPしたいと思いますので読んで下さってる方は待っててやって下さいね(^^)