04.優しさと冷たさの境界線は曖昧 とくに君のは




忍専用に作られた食堂は、任務が忙しくて、普通の時間に食事を取れない人たちが来る場所として作られた。
だから混むのは里の食事処が閉まっている夜中が殆どだ。
任務に時間は関係なく、これから行く人も、戻ってくる人も、いつでも食事が出来るようにしてなくてはならない。
来る人たちはたいてい独身で、家に戻っても自分で食事が作れない男ばかり。

そういうところにまで気を配り、こんな食堂を作ってあげる火影さまはやっぱり優しい人だと思った―――





は夕方5時までお茶屋で働き、その後一度家に戻り、午後8時にはここへ来る。
そして明け方の6時まで働き、その後再び家に帰って寝ると、お茶屋に行く午前11時前には起きる毎日。
それは思ってたよりも大変だったが、源がさすがにキツイだろうと、午前10時だったの時間を11時に変えてくれたおかげで少しは楽になった。
とは言っても、寝る時間が以前よりだいぶ減ったのはやはりツラい。
そんな生活を始めて一週間が過ぎたが未だ眠気と戦う日々だった。
だが、ここにいる間は、"眠い"と言ってる暇すらない。

ちゃーん、こっちに煮付け定食二つね~!」
「こっちはしょうが焼き定食一つ!あとポテトサラダも?!」
「はーい!」

返事をしながらお茶を淹れ、食べ終わった客のテーブルへ運ぶ。
空いた皿を下げて今の注文を厨房に伝えると、は次に入って来た客の対応に向かった。

「いらっしゃいませ!あ、ゲンマさんにライドウさん!こんばんは!」
「よぉ、ちゃん」
「相変わらず頑張ってるみたいだね」

そう言いながらテーブルについた二人は、お茶屋にも時々来るので、も以前から顔見知りだ。
はすぐにお茶を淹れると、二人のテーブルへと足を向けた。

「ご注文は?」
「んー俺、かぼちゃの煮物と、から揚げと…焼きそば!」
「ぶはっお前、どーゆー組み合わせだよ、それ」
「好きなもん全部だよ。組み合わせなんかどーでもいい」

ライドウの突っ込みにゲンマは苦笑すると、咥えていた楊枝をカリッと噛んだ。

「んじゃ俺は…オムライス」
「…ガキか」
「うるせーな、ほっとけ!俺の好物なんだよっ」

今度はライドウが突っ込まれ、照れ臭そうに反撃している。
そんな二人のやり取りを見て、は思わず笑ってしまった。

「ところで…だいぶ慣れた?」
「あ、はい」
「そっか。まあ今夜も繁盛してんなー。先週までとは大違いだぜ」

店内を見渡してゲンマが笑う。

「ホントだな。前はしわくちゃのオバちゃんしかいねーし、こんなに入ってなかったもんなー」
ちゃんのおかげだろ」
「そんな事はないですよ」
「あるって。見ろよ。中忍、上忍問わず、独身のヤローばっか」

ライドウは周りを見ると苦笑いを浮かべた。

「そういや…カカシがいねーな。最近、良くここで見かけてたのに」
「ああ、そう言えば」

ゲンマの言葉にライドウも頷き、意味ありげな顔でを見る。
それには少し動揺したが当たり障りない笑顔で「任務なんじゃないですか?」と応えた。

「まーそうだけど、アイツ、団子も食わないのに昼間の店にも顔出してんだろ?」
「クールな顔して、実はちゃんの追っかけしてんじゃないの?」
「…ま、まさか!カカシさんは静かに読書できる場所ならどこでもいーだけです」
「そーかぁ?どう見てもちゃんに気があるようにしか見えないけど」
「そうそう!ここんとこ彼女とも一緒にいないし」
「バカ。あれはもう、とっくに別れてるって話だぜ?」
「あ、そーなの?つかホント、アイツ長続きしねーなー」
「………」

二人はそんな事を話しながら笑っている。
は何となく聞いてるのが気まずくて戻ろうとしたその時、ゲンマがニヤリと笑い、顔を上げた。

「お、噂をすれば」
「………ッ」

振り返ると、ちょうどカカシが食堂に入ってくるところだった。

「あれ~お二人とも、お揃いで」

目ざとく見つけると、カカシは笑顔でたちの方へ歩いて来た。
そして彼の後ろには何故か二人の子供がいる。

「よ、任務終わったのか」
「ま~ね~。あ、コイツら、俺の部下のナルトとサスケ」
「…え、部下…?」

カカシに紹介されが驚いていると、彼の後ろから歩いて来た二人は、サッサとテーブルについている。
それを見たカカシは呆れたように溜息をついた。

「お前らね~。挨拶くらいしろ。彼女は―――」
「"可愛くて優しい"だろ?さっきから聞いてるってばよ~!それより俺、腹減った!」
「……うるさいぞ。このウスラトンカチ」
「…………」

金髪の子が騒ぐと、サスケと呼ばれた男の子が顔を顰めて溜息をついている。
は対照的な二人だなと思いながらも、彼らに自分の話をしていたらしいカカシに「子供に何言ってるんですか」と苦情を言った。
カカシは「あはは」と笑って誤魔化しながら、

「ごめんね~。うるさいガキ連れて来ちゃって」
「…いえ。彼らも忍でしょ?」
「まあね。ま、アイツら家に帰っても親がいないし、食事も作れないって言うから連れて来たんだ。好きなもの食わせてやってよ」
「そう…親がいないの……」

二人を見れば、また小さな事で何やら言い合いをしている。
その様子を見ている限り、親がいないとは思えないほどの明るさだ。
でもきっとツラい事がたくさんあったはずだ。がそうだったように―――。

「分かった。あ、じゃあちょっと待っててね」

は一度厨房に戻ると、出来上がったばかりの定食を、待っている客に運んだ。
その後で3人の注文を取ると、中にいるおばさん達へと伝える。
少しするとゲンマ達の料理が出来上がり、それを彼らに運んで行くと、その際に後ろのテーブルにいるカカシ達の会話がにも聞こえてきた。

「なぁ~明日の任務はもっとちゃんとしたもんにしてくれってばよ~!」
「お前なぁ。下忍になったばかりのクセに我がまま言わないの。任務を選ぶなんて10年早いよ」
「だーってだってー!行方不明の猫だとか、盗まれた下着の捜査だとか、そんな下らねー任務、もう嫌だってばよ…」
「文句言うな。ウスラトンカチ!その下らない任務だってまともにこなせてないだろ」
「何だとー?やんのか、コラッ」
「や~めなさいって……」

二人の部下のやり取りにウンザリしたように項垂れるカカシを見て、は軽く吹き出しそうになった。
部下を持ったと聞いた時は、あのカカシが上司らしく指導出来るのかと思っていたが、見てると意外に似合っているし何とか楽しくやってるようだ。
そう思いながら厨房に戻ると、ちょうど彼らの分が出来上がっていた。

「はいよ!これはカカシ達の分」
「はい」

サンマ定食二つに、ミソラーメン。
それらをお盆に乗せると、は急いでカカシ達のところへと運んだ。

「お待たせしました」
「お!やっと来たってばよ~!俺のラーメン♡」

ナルトはよほどラーメンが好きなのか、嬉しそうな笑みを浮かべて箸を持った。
その無邪気な顔に苦笑しながら、サンマ定食をカカシとサスケの前に置く。

「サンキュ~。

カカシは笑顔でそう言うと「ん~美味しそ♪」と微笑んだ。
その顔がナルトとだぶり、何だかカカシまで子供に見えてしまう。

「あのさ、あのさ!姉ちゃん」
「…え?」

三人にお茶を淹れなおそうとが歩き出した時、ラーメンに夢中だったナルトが、ふと顔を上げた。

「姉ちゃんってカカシ先生とは子供の頃から知り合いってホントか?」
「え…ええ…まあ…」

何とか笑顔で頷きながらも、この子達にそんな事まで話したのか、とカカシを見る。
カカシ は澄ました顔で食事をしながら「言ったとおり綺麗でしょ」なんてバカな事を言った。
内心呆れてると、ナルトくんはニカッと笑って、

「うん綺麗だってばよ!カカシ先生にはもったいないな!」
「…………」

その一言にカカシが思い切り半目になり、サスケは「ふん」と鼻で笑っている。
それにはもつられて吹き出してしまった。

「なあ姉ちゃん」
「何?ナルトくん」

この子、可愛いなぁと思いながらが返事をすると、ナルトはニヤっとしながら、

「ここに来る途中、カカシ先生ってば、ずっと姉ちゃんの話ばっかしてたぜ」
「……え?」
「可愛い上に頑張り屋で、いい子だって」
「…………」
「お、おいナルトッ」

が目を細めてカカシを見ると、彼は慌てたようにナルトの額にデコピンをかました。

「いてっ何だってばよ~!ホントのことだろ~??」
「余計な事は言わなくてい~の。黙って食べなさい」
「分かったってば…あ、姉ちゃん!ここのラーメン凄く美味いってばよ!一楽といい勝負かも!」
「ホント?ありがとう。って言っても私が作ったわけじゃないけど…また食べに来てね」

そう言ってが戻ろうと歩きかけたその時、カカシに腕を掴まれ、振り返る。

「…何ですか?」
「そんなあからさまに怖い顔しなくてい~じゃな~い」
「別に。これが普通ですけど」
「またまた~。俺、泣いちゃうよ?」
「………」

そう言って本当にシュンと眉尻を下げるカカシに、は小さく溜息をついた。

「あまり彼らに変なこと言わないで下さいね」
「ちょっと紹介がてら話しただ~け。変な事じゃないよ」
「…………」

ニッコリ笑うカカシに何も言えず、はそのまま厨房に戻った。
一応お客の方も落ち着いてきて、全ての席にお茶のお代わりを運び終えると、次の仕事をする為に腕まくりをした。
のここでの仕事はウエイトレスだけに終わらない、
目の前に積まれた洗い物の山を見て軽く息をつくと、それを洗い始めた。

「悪いね~ちゃん!そっちに手が回らなくて。私も手伝うよ」
「あ、ありがと。タマおばさん」

横に並んで一緒にお皿を洗い出したのは、ここで最初に働いていたタマだ。
ここの料理は殆どがタマさんの手によって作られていて、先ほどナルトも言っていたが美味しいと評判だ。
ふっくらとした体型と明るい笑顔がトレードマークのような人で、お客からは「タマちゃん」の愛称で呼ばれている。

「今日も混んだね~。この皿だけ見ても凄い数だ。ちゃんのおかげだよ」
「そんな事ないですよ。私なんか運んでるだけだし…皆、タマさんの作るご飯が食べたいから来るんです」
「いやいや…確かに料理も大事だけどね。それを運んでくれる可愛い子がいるからこそ、美味しく食べれるんだよ」

タマはそう言いながら残りの皿を全て洗うと「腰に来るね~」と苦笑しながら横にある椅子に座った。
も手を拭きながら隣に座ると、二人仲良くお茶を飲む。
他の店員達(タマの手伝い)も、それぞれ片づけを終えると、各自好きなように休みだし、このちょっとの休憩がホっとする時間だ。

「最初にここへ来た時はどうしたもんかと思ってたけど…これだけ入るようになって良かったよ」
「そうですね。火影さまも喜んでますよ、きっと」
「だといいね。火影さまのおかげで私も仕事する事が出来たんだし。感謝してるよ」

タマはそう言って少し寂しそうな顔をした。
タマの夫は酒びたりの毎日で仕事もろくにせず、家でゴロゴロしてるそうだ。
それは娘を事故で亡くしたからだと、誰かが噂していたのをも耳にした事がある。
そのせいでタマは、こうして外に働きに出なくちゃならなかったらしい。
こんなに明るい人でも、心に傷を持っている。

「さて、と一段落したし、ちゃんも今日はもうおあがり」
「え…でも―――」
「昨日も遅かったろ?今日くらいは早く帰りな。じゃないと体壊しちまう」
「…はあ」
「あんた目当ての男どもは適当にあしらっておくから」

タマは豪快に笑いながらの背中をバシバシと叩く。でもその力の強さに、痛いというよりも嬉しさの方が勝った。
こんな母親がいれば毎日笑顔で過ごせるんだろうな、とふと思う。
娘さんを亡くしたタマもの事を娘のように思ってくれる瞬間があるんだろうか。あればいいな、と思った。

「じゃあ…お言葉に甘えます」
「甘えな、甘えな!お家帰って、あったかいお風呂に入ってグッスリ眠りなよ」

本当の母親みたいな事を言う。はガラにもなく目頭が熱くなった。

「ありがとう、御座います」

その一言でこの気持ちが上手く伝わってるといい。そう思いながら、は帰り支度を始めた。











暗い、人っ子一人歩いていない道のりを、こんな夜更けに歩くのは、いくらでも、怖いと思う。
いつもなら朝方まで食堂にいるんので帰る時間も薄っすらと明るく、それほど恐いとは感じない。
でも今は朝方からは程遠い午前2時。帰りが早くなって嬉しいけれど、その道のりを忘れていたのは誤算だった。
コツ、コツ、コツ、と自分の靴音だけがあたりに響く。それが余計に不気味に聞こえるから困ったものだ。

(…カカシさんに送ってもらえば良かったかな)

ふと脳裏に過ぎった顔。
でもカカシはナルトやサスケと来ていたし、だからこそ帰る時も声をかけなかった。
それに上忍のカカシにいつもいつも送ってもらうわけには行かない。そんな関係でもない。
そう言い聞かせながら、頭に過ぎった思いをすぐに打ち消す。

(―――これ以上、踏み込んじゃいけない)

そう思うだけで胸の奥が痛むのを、は気づかないフリをした。
とうに捨てた想いだ。子供の頃の、淡い初恋――ただそれだけ。

「―――っ」

その音に気づいた時、は思わず足を止めた。
辺りは相変わらず、人の気配はない。薄暗い木々が覆い茂っているだけだ。
でも確かに今、林の奥の方で、草を踏むような音がした。

「…………」

は息を殺して警戒しながらも、再び歩き出した。
視線だけで周りを見渡しながら、ゆっくり、ゆっくりと歩いていく。
出来れば駆け出したいくらいの気持ちだけど、足が思うように動かない。
ほんの小さな音がしただけでこれなのだから、自分がどれほどビクビクしていたのか、気づかされた気がした。

(大丈夫…ここはどこよりも平和な木の葉の里…何もあるはずがない)

そう自分に言い聞かせながら、それでも嫌な汗が背中を伝っていく。

(もうすぐ…もうすぐ家だ)

落ち着こうとしている気持ちとは裏腹に、早くなっていく鼓動を静めようと、は小さく深呼吸をした。
その瞬間―――ポン、と肩を叩かれ、の恐怖が最大限にまで達した。

「きゃぁぁぁぁっっ!!やぁぁぁっっ」

それまでの恐怖を全て吐き出すようには悲鳴をあげた。
それはもう、自分でも耳を塞ぎたいくらいの大声。同時に持っていたものを放り投げて両手を振り回す。
でもその声に混じって、「ちょ、タンマ!」とか「オレだってば」という、どこかで聞いたような声が聞こえた気がして。
は振り回した両手を止めると、その声の主をゆっくりゆっくりと見上げてみた。
少しづつ視界に入って来るのは、よりもかなり背の高い男の人。その口元を覆う口布。
そして――顔には斜めにかけられた額あて。不意に視線がぶつかる、右目。

「……カ、カカシ……さん…?」
「ふー。気づいてくれて良かったよ」

(―――何でここに?)

そう問う間もなく、カカシは怖い顔で私を見下ろした。

「こんな時間に女の子が一人で帰っちゃダ~メ」
「……へ?」
「早めに帰るなら、どうして声、かけてくれなかったの」

カカシは少し強い口調で言った。でもは素直に謝れない。

「…なんでカカシさんに声かけなくちゃいけないの」

言った後で後悔した。カカシが呆れたように、溜息などつくから。

「別に俺じゃなくたっていいけどさ…。君の家は少し離れてるし、遅くなった時は誰かに送ってもらいなさい」
「……平気だよ。今までだって何も―――」
「何か起きてからじゃ困るデショ」

そう言うのと同時にコツンと額を叩かれた。
どうやらカカシは怒ってるようだ。あまり感情を出さない彼にしたら珍しい。
でも何故自分が彼に怒られなければならないのか。
心配してくれている?それはありがたいけれど。
これでずっと一人でやってきたのだから、あまり優しくしないで。
―――鎧を投げ捨てて、甘えてしまいたくなる。

「さ、送るよ」

言いたいこと全て飲み込んで。カカシの言うがままについていく。
普段なら断っていたかもしれないが、今のカカシは怒っている。これ以上、逆らって更に怒らせたくない。
そう思ってしまう自分がいた。

(意志薄弱だな…)

甘えたくない気持ちがあるのに、カカシに強く言われると何も言えなくなる。ただ―――。

(気づいて追いかけてくれた…)

そのカカシの優しさに、何故か胸が苦しくなった。

「…じゃ…今夜はゆっくり寝るよーに」

家の前まで来るとカカシはいつもの笑顔に戻っていた。そういうとこはやはり大人だな、と思う。
が恐る恐る見上げると、カカシはニッコリ微笑んで「お休み」とだけ言った。

「……あ、あの」

歩いていこうとする背中に、は「ありがとう」と小さい声ながらお礼を言った。
追いかけてきてくれたことは、どんなに強がっていても、素直に嬉しかったから。
カカシは僅かに立ち止まって軽く手を上げると、そのまま闇へと紛れて見えなくなった。

「…怒らせちゃった」

胸に残る後悔。
でも言ってしまったものは取り消せない。面倒だ。ただの知り合いなのに。そう、思っていたいのに。

(さっきの足音はカカシさんだったんだ…)

家の鍵を開けながら、ふと思い出した。それなら、すぐに声をかけてくれれば良かったのに。
そしたらあれほど怖い思いをする必要もなかったのに。
そう思いながら、は扉を開けた。―――本当の恐怖は、そこにあった。

「…声を出すな」

薄暗い部屋の中から、知らない男の声がする。
そのありえない状況に頭がついていかない。はそこから一歩も動けなかった。











―――貴方って何を考えてるのか分からない。

よくそう言われてきた。でも自分が相手に対して、そんなセリフを吐きたくなったのは初めてだった。
の家からの帰り道。カカシは深い溜息をつきながら立ち止まった。

"…なんでカカシさんに声かけなくちゃいけないの"

その突き放すような言葉が、カカシにとってはショックだった。
私と貴方は何の係わり合いもない。そう、言われた気がして。

「ま、彼女にとっちゃ、俺は客の一人でしかないって事だろーけど…」

独り言を吐き出し頭をかく。
それでも無邪気に声をかけてくれてた頃もある。
素っ気ない態度をとってたのは自分だけれど、カカシの中では嬉しい思い出だった。
幼き頃の出逢い。初恋の、女の子―――。

(…天罰、かな)

今頃になって彼女の気持ちが欲しい、と強く願ってしまったから。あんなにもつかず離れずを保ってきたというのに。
近くなったと思えば遠のき、笑顔を見れたと思えば一瞬で冷めた横顔。
冷たいセリフを口にするかと思えば「ありがとう」という、嬉しい一言。
このところの言葉や態度に一喜一憂しすぎだな、とカカシは苦笑いを浮かべる。

「…らしく、ないねぇ」

女に振り回される"はたけカカシ"など、滅多にお目にかかれない。
彼女の気持ちが分からない。どこまで近づいていいのか、どこまでがダメなのか。
カカシですら、まったく読み取れない。
この場に猿飛アスマがいたら、確実に腹を抱えて笑うだろう。

「参ったね、こりゃ…。長引きそうだよ」

優しさと冷たさの境界線は曖昧 とくに君のは―――。








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ちょっと傷ついたカカシ先生。ヒロインも複雑な心境なのですヨ。っていうかヒロイン、ピーンチ。

■このサイトのカカシが大好きです!!(大学生) 
(ありがとう御座います!ゆったり更新ですが今後も頑張ります!)


■カカシさんは行動とは真逆な内面が彼の不器用さ?によって人的に誤解を招いたりするのですが実は繊細で思いやりのある人だと思います。時にあえて踏み込ませないところが切ないです〜(社会人) 
(彼は頭も切れますがホント大人ですよね〜♪とぼけたところもあって、それでいて頼りになるからカカシの隠れファンになってきてます(笑)