02-嵐の予感 
最初に会ったのは2年前。は18歳。白ひげ海賊団の船長でもある彼女の父に、エースが挑んできた時だった。
聞けば、白ひげと対峙する数日前から、白ひげ海賊団と親交のある魚人、海峡のジンベエと壮絶な戦いを繰り広げていたという。船内から下を覗くと、ボロボロの体で父親に向かっていくエースを見て、ただのバカだと思った。殴られても、吹き飛ばされても諦めない。
そこまでして何が欲しいのか――。
幼少期はさておき。今では海賊、それも船長などといって大艦隊を率いている父親を尊敬したことはなく。海賊なんて、世間に疎まれるだけの存在。そう思うようになっていた。
「俺の息子になれ」
またいつもの気まぐれか。身を挺して仲間を守り、何度も諦めずに挑んできたエースを、白ひげはいたく気に入り、自らの船に乗せた。
しかし、エースはそれでも心を開かず。開くどころか、船に乗った後も白ひげの命を毎夜となく狙い続けてはこっぴどく反撃にあう。そんな騒がしい毎日が始まった。
「いつまでやらせておく気?毎晩、うるさくて眠れない」
エースが100回は返り討ちにあった頃。は呆れて父親にそう尋ねた。娘の仏頂面を見た白ひげは、いつものように楽しげな笑い声を上げる。
「エースのことか?あいつはすでに、おれの息子と同じだ。気が済むまでやらせりゃいい」
「いつか寝首をかかれても知らないから」
そうした娘の忠告も聞かず、白ひげはエースに命を狙われながらも、自分達の仲間として扱い続けた。
他の隊長達も根性の入った奴だとエースを気に入り、いつの間にか自然と受け入れていて。エースもまた、白ひげの本質を知り、見方を変えたようだ。自分を「息子」と呼び、受け入れてくれた白ひげや隊長達を慕うようになっていた。
「――どういうつもり?本気で白ひげの仲間になる気なの?」
あれだけ挑んでいた相手を認め、あっさり自分の海賊団を解団するなどには信じられない。エースが自らの背中に"白ひげ海賊団"の証である海賊旗のタトゥーを入れた時、そう聞かずにはいられなかった。
「…あんた…確かオヤジの…娘さん…だよな」
その瞬間までエースとは口などきいたこともなく。突然話しかけたを見て、エースはひどく驚いているようだった。

