01-どっちのキスが好き?



※⚠3P風味な注意描写あり。苦手な方は観覧をお控え下さい。



、20歳。彼氏なし。就職した会社が半年後に倒産。
一人暮らしをしていたマンションの家賃が払えなくなって途方に暮れていた時、わたしを助けてくれたのは幼馴染の兄弟だった。

「今日からお世話になります」

本日、幼馴染の灰谷家に無事、引っ越しをすることが出来て、荷物を片付けたところで改めて二人に挨拶をした。

「おー、よろしくなぁ、

昔からお兄ちゃん気質でしっかり者の蘭ちゃんは誰もが振り返るほどの美人さんで、可愛い三つ編みスタイルなのに実はケンカがものすごーく強い。
世間で言うところの不良ではあるけど、子供の頃から蘭ちゃんはわたしに凄く優しいから大好きな幼馴染だ。

「でもさーあんな狭い部屋でいいのかよ。やっぱ遠慮しねえでオレの部屋で寝れば?」

竜ちゃんは蘭ちゃんの弟でわたしと同じ歳。ちょっと冷めたとこはあるけど、蘭ちゃんとはまた違う意味でしっかりしてて、ベビーフェイスなのにクールというギャップで女の子を夢中にさせてるらしい。そして竜ちゃんもまた恐ろしくケンカに強い。
子供の頃はわたしが男子にいじめられていると、いつも蘭ちゃんと竜ちゃんが助けに来てくれて、相手の男の子をぶっ飛ばしてくれた。
そのくせ竜ちゃんはわたしのことをよくからかい半分でイジメてきたけど。
小中とずっと一緒で、二人が事件を起こして少年院に送られた時以外は、いつも3人で一緒にいたくらい仲が良い。
二人が初恋の人だったのは、わたしだけの秘密だ。

「バーカ。竜胆の部屋に寝かせるワケねえだろ」
「あ?だって、あの五畳しかない物置で寝かせんのはやっぱかわいそーだろ」
「だからそれならオレの部屋に寝かせるわ」
「は?何それ。ダメだろ。兄貴すぐ手ぇ出すだろ、絶対」
「あ?そりゃ自分のことじゃねえの、竜胆」
「え、ちょ、あの…ケンカしないでよ。二人とも!」

初っ端からケンカを始めた二人を見て慌てて間に入る。昔から本当の妹みたいに可愛がってくれるのは嬉しいけど、時々わたしのことが原因で兄弟ゲンカを始めちゃうのは困るとこだ。けど、今はもはやお約束になりつつあった。

「それより…夕飯にしない?わたし、何か作るよ」
「いいって。朝から荷物運んでオマエも疲れてんだろ?何かデリバリー頼もうぜ」
「やっぱ引っ越し祝いで寿司とか?」
「え、いいの?やったーお寿司!」

最近は次の就職先を探しながらの貧乏生活だった。だからまともなご飯を食べてなかったせいもあって、お寿司と聞いてテンションが上がってしまう。

が寿司食いてえならいいよ。んじゃあ今夜は寿司な」

結果、二人のおかげで今夜はお寿司パーティになった。


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「でね!何の前触れもなくて、普通に出勤したら会社潰れてたの!ありえないよね!ほんと悪夢かと思ったもん…」
「そりゃ驚くわ。つーか、何ですぐオレ達に連絡してこねーんだよ」
「そーだよ、。もっと早く連絡くれたら、一ヶ月もカップラーメンなんて生活させなかったのに」
「蘭ちゃん…竜ちゃん…ありがとー!」

二人の優しさが身に沁みて思わず涙目になる。でも、だからこそ頼れなかったのだ。泣きついたら二人は絶対助けてくれると思ったけど、そもそも前の会社に就職する時、わたしもそろそろ「独り立ちする」と決めて、この甘ったれな自分を律する為にも、蘭ちゃんと竜ちゃんには甘えないと決めた。
二人はわたしが初めて一人暮らしをすることを凄く心配してくれたけど「一人で大丈夫」と言い切って、しばらくは連絡も絶っていたのだ。だから会社が倒産して途方に暮れた時は、すぐ二人の顔が浮かんだけど、あんなに偉そうに大見えを切ってしまった分、どうしても頼ることが出来なかった。
なのに二人はわたしの就職した会社が倒産したことを、どこかから聞いて心配して家まで来てくれた。そこで超ビンボー生活をしてたわたしを見て、すんごく驚いたようだ。

――、オレ達のとこに来い。
――そーだよ。一緒に暮らそう。仕事なんて後からゆっくり見つけりゃいいし。

そう言ってくれた時はまさに天のお助けかと思った。二人に甘えることになるし、最初はちょっと悩んだけど、結局家賃も滞納してたからマンションを追い出される寸前のわたしに他に選択肢はなかった。蘭ちゃんが滞納してた分の家賃もしっかり払ってくれたことで、裁判沙汰にもならずに済んだし、ほんと二人には感謝しかない。
お金は仕事が見つかったらしっかり返していくと心に誓って、今日やっと灰谷家に引っ越して来たのだ。

「ああ、、ワインでいいのかよ。シャンパンもあんぞ」
「え、シャンパン。飲みたい!」

この家には売るほどお酒があるらしい。しかも高級なお酒ばかり。蘭ちゃんはかの有名なドンペリのロゼを普通に抜いてくれて、わたしはすっかり舞い上がってしまった。

「ん~美味しい!ずっとビンボーでお酒断ちしてたから久しぶりに、しかもドンペリ飲めるなんて幸せ!」
「そ?ならもっと飲めよ (可愛い…)」
「兄貴、飲ませすぎだって」
「いいだろ、別に。今日までビンボーしてたんだし、好きなだけ飲ませてやりてーじゃん」
「まあ、そう言われりゃそーだけど…」

頭を撫でてくれる蘭ちゃんに「ありがとー蘭ちゃん」と抱き着くと、「おま、酒零れるからグラス置けって」と苦笑された。こういうとこも昔からちっとも変わっていない。ダメなわたしを、しっかり者の蘭ちゃんと竜ちゃんが叱ってくれる。何で半年も会わないでいられたんだろうと今では凄く不思議だ。
こうして三人でいると昔に戻った気分になるから、つい甘えん坊まで復活しちゃうのは良くないかもしれない。

「ごめんね…あんなに一人で頑張るなんて言っておいて結局こうして二人に甘えて迷惑かけてるし…」
「んなもん気にすんな。オレらもがそこまで頑張るっつーんなら陰ながら見守ろうと思ってたけど、やっぱ心配だったし」
「そーそー。兄貴なんかの会社までこっそり様子とか見に行ってたから」
「えっ」
「あ?それ言うなら竜胆もだろ。が会社の奴らと一緒に歩いてんの見かけて追いかけたら、男入れての飲み会やってたからムカついたつってたじゃん」
「ええっ?」

そんなの全然気づかなくてビックリしてしまった。こっそり見られてたのかと思うと、ちょっと恥ずかしい。

「兄貴だってに男出来たんじゃねえのかつって、その飲み会に乗り込んで行こうとしただろ」
「当たり前だろ。オレ達の大事なに変な男ついたらどーすんだよ」
「まあ…それは一理あるな」

何故か二人は途中から意見が一致したのか、急にわたしの方を見た。綺麗な顔立ちの兄弟に同時に見られて心臓が鳴ってしまうのは仕方のないことだ。幼い頃から二人はカッコ良くて、わたしの自慢の幼馴染だから。今だっていつもより真面目な顔でわたしを見つめてくるし、アルコールも相まって顏がやけに火照ってしまう。
蘭ちゃんはじりじりと近寄ってから、わたしの顔を覗き込んできた。

、一つ聞きてーんだけど」
「え…なに?」
「オマエ、オレ達と会ってない半年の間に男とか出来た?」
「へ?男…って…」
「だから彼氏だよ。出来た?」

仏頂面で訊いて来る蘭ちゃんに慌てて首を振った。会社の同僚に「付き合って」と言われたこともあったけど、特に好きにもなれなくて断ってしまったし、そもそもこんなイケメンの幼馴染をずっとそばで見てきたせいか、その辺の男に興味を持てなくなったのがいけないのかもしれない。イケメン過ぎるのも罪だと思う。

「彼氏なんて出来ないよ…昔からモテないの二人がよく知ってるじゃない」

小学校はともかく、中学高校とわたしは彼氏が出来たことがなかった。好きな人も出来なかった。それも全部、このイケメン兄弟のせいだ。目が肥えすぎちゃってるのが原因だとしか思えない。二人に比べたら周りにいた男の子なんて、みんな茄か南瓜に見えてたし。

「二人こそ…彼女また変わったんじゃないのー?半年前は確か二人して年上のモデルだったり、アパレル関係のお姉さんと付き合ってたよね」
「あ~あれね…のことで文句言ってきたから速攻で会うのやめたわ」
「オレもー。やっぱみたいに可愛いとか思えんかったし」
「…え、またそんな理由…?」

わたしのことで文句を言われたのはきっとシスコン並みに二人がわたしにかまうからだと思う。二人に彼女らしき人が出来るたび、最後はわたしを理由に別れるってことが前にもあった。そもそも自分の彼女の前で「オレの幼馴染がめっちゃ可愛くてさぁ。甘えん坊だから放っておけねえんだよなあ」なんてデレデレしながら言うのが悪いと思う。その話を蘭ちゃんや竜ちゃんに聞くたび、何か居たたまれない気持ちになるのは、わたしが平々凡々な女だからだ。二人の歴代彼女みたいにモデル体型でもないし、美人でもない。童顔だから大人っぽいメイクも洋服も似合わないから、二人と外で会う時はいつも困ってしまうんだ。
だいたい、あんな美人のお姉さん達にわたしの話をしないで欲しい。前に蘭ちゃんが女の人連れてるとこにバッタリ出くわした時は凄い目で睨まれたんだから。

「もー彼女の前でわたしの話とかやめなよ。そんなんだから振られるんだよ、絶対」
「あ?何で。え、つーか彼女って何だよ。オレ、今まで誰ともお付き合いなんてもんしたことねえけど」
「えっ?」
「あー…そういやオレ達、これまで彼女って存在は作ったことねえな、確かに」

蘭ちゃんだけじゃなく、竜ちゃんまでがそんなことを言いだした。でもわたしが知る限り、二人は時々それらしい人とデートしてた気がする。あの女の人達はじゃあ何だったんだろう、と思っていると、蘭ちゃんにまたシャンパンを注がれた。

「そんな話どうでもいいから飲め飲め」
「う、うん…」

何か上手くはぐらかされた気がするけど、本人が彼女じゃないって言うならそうなんだろう。もしかして遊びってやつなのかなと、ふと思った。二人は昔から女の子に凄くモテてたから、一回限りの付き合いの子も結構いて、学生の頃はフラれた子がわたしに文句を言いに来たことも、実は何度かある。

――ほんとに幼馴染なの?

何度も聞かれたけど、幼馴染ですって言う以外に答えはなくて。でも二人に可愛がられてるってだけで、ただの幼馴染のわたしは二人の彼女にはなれないと思っていたし、最近じゃ二人のことをお兄さん――竜ちゃんは同じ歳だけど――として見るようになった。でもそれは、二人のことがどっちも好きで選べないわたしの逃げのようなものなのかもしれない。
わたしの初恋は実らなかったけど、今も同じくらい二人が大好きだから、どっちかを選べなんて言われたら、ものすごーく…困る。まあ、誰にも言われないだろうけど。

「おい、、大丈夫か?」
「何か目がとろんとしてきたけど」

飲み始めて二時間後、すっかり酔っ払ったわたしの視界はボヤっとしてきた。顔を覗き込んで来た二人の顏がかすかに霞んで見える。

「大丈夫だよ~。何かふわふわして気持ちいい」
「やっぱ久しぶりに酒飲むのにシャンパンはキツかったか」
「だから飲ませすぎだつったのに」
「でも酔っ払った、すげー可愛いじゃん」
「まあ…可愛いけどさ」

蘭ちゃんも竜ちゃんもわたしの目の前でまた言い合いをしてる。二人は昔から可愛い可愛いって誉めてくれるけど、でもきっとそれは妹的な意味合いでしかない。それがちょっと寂しいなんて思うのは我がままなんだろうな。わたしだって一応、女の子なのに。

「も~二人ともケンカしないでよー。わたしのこと誉めてばっかりじゃ彼女出来ないよ」
「…だからそんなのいらねって」
「さっきの話、聞いてたのかよ、オマエ」
「あっ」
「「あ?」」

そこで気づいてしまった。つい甘えて二人の家に居候させてもらうことになったけど、もし二人に彼女が出来た場合、わたしが住んでたらまずいんじゃ、と今更ながらに思った。マズい。そういうことを考えていなかった。これだから恋愛素人の女はダメなんだ。わたしには縁遠い色恋沙汰も、二人にはごく身近な物だと思うし。

「あの…二人の言葉に甘えてつい引っ越してきちゃって今更なんだけど…ほんとにわたし、ここに住んでいいの…?彼女出来たら怒るよね、きっと…」

おずおずと尋ねると、蘭ちゃんも竜ちゃんもぽかん、とした顔でわたしを見たあと、二人で顔を見合わせて何故か苦笑いを浮かべた。何だろう。おかしなことでも言ったかな。ちょっと酔ってきちゃったし、しっかり話せてるかも自信がない。

「はあ…聞いてねえな、コイツ」
「ほーんと。何度言えば分かるんだか」
「え…?何が?何の話…?」

ふわふわした頭でなかなか整理が出来ずにいると、不意に蘭ちゃんの手がわたしの頬に伸びてきた。

「そういや、もうハタチになったんだっけ」
「…?うん…なったけど…」
「あれ?じゃあ、もう待つ必要ねえのか」
「あー…だな」
「だから……何の話?」

蘭ちゃんと竜ちゃんは二人で顔を見合わせつつ、何かを納得し合ってる。でもわたしだけ意味が分からなくて、「ねえ、蘭ちゃん――」ともう一度訪ねようとした。その時、目の前にいた竜ちゃんにぐいっと顎を持ち上げられ、くちびるに柔らかいものを押し付けられた。

「ん――っ」

くちびるを塞がれたと思った瞬間、ぬるりとしたものが口内に侵入してきて体が固まった。

(何――何が起きてるの?)

口内を動き回る竜ちゃんの舌が、わたしの舌を器用に絡み取ってじゅうっと音を立てて吸われた。ビクリと肩が跳ねて思わず体を引こうとしたら、今度は後ろから蘭ちゃんに抱きしめられて身動きが取れなくなる。その時、竜ちゃんのくちびるがゆっくりと離れていった。

「な…なに…」
「言ったろ。オレも竜胆も女作る気ねえの。だってオレ達――」
「昔から一筋だし?」

二人は意味深な笑みを浮かべてわたしを見つめてくる。一筋って何?どういう意味なんだろう。二人はわたしのこと、妹みたいに可愛がってくれてるんじゃないの?

「り、竜ちゃん…?…ふ、二人とも酔ってる…?」
「酔ってんのはだろ」
「飲ませたのは兄貴だけどな」
「な…蘭ちゃんも竜ちゃんも…からかってるなら――」

と言いかけた時、後ろにいる蘭ちゃんの手に横を向かされ、くちびるを塞がれた。舌でくちびるをこじ開けられて柔らかくて熱い舌がわたしのと軽く触れあう。でもちゅっと音を立ててそれはすぐに離れていった。頬がかあっと熱くなって、あまり開かないとろんとした目で蘭ちゃんを仰ぎ見ると、艶っぽいバイオレットと目が合った。

「からかってねえよ。マジだっつーの」
「ら…蘭ちゃ…ん?」
「なあ…オレと竜胆のキス、どっちが好き?」
「そーいうこと聞くなよ!ほんっと性格わりーな、兄貴は」
「ちゃっかり脱がしてる竜胆もどうかと思うけどー?」
「…?あ…っ」

気づけば竜ちゃんがわたしのキャミソールブラウスの肩紐を下げていて、下着が見えてしまっている。驚いて身を捩っても後ろから蘭ちゃんに抱きしめられているせいで身動きが取れないままだ。

「…ぁ…っ」

竜ちゃんにいとも簡単にブラジャーを外され、ぎゃああって思ってるうちに胸の先端に吸い付かれた。その初めての刺激で肩がびくん、と跳ねる。それと同時に今度は蘭ちゃんに耳を舐められた。初めて異性に裸を晒した恥ずかしさと、二人からエッチなことをされてる恥ずかしさで頭がくらくらしてきた。アルコールも回って腕や足に殆ど力が入らない。
その時、竜ちゃんにツンと立ち上がってきた乳首をちゅうっと吸われてしまった。強い刺激にびくびくと体が跳ねてしまう。

「や…ぁあ…っ」
気持ちいい?」
「そんな顔してるなぁ。ここも少しだけ湿ってきたし…」
「…ぁっ」

蘭ちゃんの手が後ろから伸びてスカートをまくると股の間へ滑り込んでいく。そのまま下着越しでわたしのあそこへ触れてきた。そんなとこ人に触られたことがないからビックリして、でも触れられた場所がジンジンする。全身の体温も上がってきて、凄く熱い。何でそうなってるのかは何となく知識として分かるくらいで、経験のないわたしにはどうしていいのかも分からない。

「や…やだ…そこ触らないで…怖い…」
「痛いことしないから。オレはを可愛がりたいだけだし」
「そうそう。大人しく可愛がられとけ」
「んぁ…んっ」

下着を下ろされ、今度は竜ちゃんの指が直にその場所へ触れた。他人に初めて触られた刺激は想像以上に強くて、変なむず痒さがある。くすぐったいという感覚が一番強いのに、それとは別のものが体全体に広がっていく気がした。

「やっぱ処女だから濡れにくいかも」
「偉いな―。ちゃんとハタチまで処女でいてくれて」
「な…何…の話…?」

思わず蘭ちゃんを仰ぎ見ると、こめかみにちゅっとキスをされた。

「前、約束したじゃん。ハタチになったらをもらうって」
「忘れたのかよ」
「え…」

そんな約束したかな?と凄く驚いた。でも不意にわたしの15歳の誕生日のことを思い出す。あの日は少年院を退院した蘭ちゃんと竜ちゃんがお祝いをしてくれてた。その時、ファーストキスの話になって、わたしが「したことない」って言ったら、ふざけた蘭ちゃんに軽くちゅってキスをされたことがあった。ビックリしたけど、子供の時もしたことがあったから、その延長みたいなノリだと思ってた。ただ、それを見ていた竜ちゃんが怒りだして「兄貴がすんならオレもするわ」なんて言い出して、結局竜ちゃんにもキスをされて、確かその時に蘭ちゃんが言ったのだ。

――の初めては全部オレ達がもらうから。
――あ、それ賛成。他の男なんかにやらねーし。

その時は独占欲の強い二人が一時の感情で言ってるだけだと思って、あまり本気にしていなかった。もしかして、あの時のことを言ってるのかな。でもこんな急に――。

「…んあ…やぁ…っ」

竜ちゃんの指が恥ずかしい場所を擦ってきて、くすぐったさに身を捩った。足を広げられている恥ずかしさで顔に熱が集中する。

「おい、竜胆。刺激強いんじゃねえの?怖がらせんなよ。かわいそーだろ」

蘭ちゃんはわたしの頭を撫でながら、涙の浮かんだ目尻にちゅっと口付けた。やってることは強引なのに、そういう優しいところは普段のままで、ますます頭が混乱してしまう。

「でもそんな濡れてねえし。の感じるとこ探して攻めたい」

竜ちゃんはそう言ってわたしの脚の間に顔を下げると、太腿をペロリと舐めた。その刺激でまた腰が浮いて、逃げたいのに竜ちゃんの腕に引き戻される。

「怖がんなって。気持ち良くしてやっから」
「…え、や…ぁっ」

竜ちゃんが顔を埋めた瞬間、誰にも見せたことのない場所に熱くてぬるりとしたものが押しつけられた。

「や…そ、そんなとこ…ダメ…」
…こっち向けよ」
「…んんっ」

頭を振ったわたしの顎を持ち上げて、今度は蘭ちゃんにくちびるを塞がれる。その間も竜ちゃんの舌が恥ずかしい場所をぬるぬるとした動きで舐めてきて、そこからじわじわと感じたことのないような甘い刺激が広がっていく。くすぐったいような、でも疼くような変な感覚だ。だんだんお腹の奥も熱くなって、気づけば舐められてる場所からぴちゃぴちゃとエッチな水音が聞こえくる。竜ちゃんに舐められてるからとかじゃなく、その場所からとろりとした何かが溢れてくる感覚。それはわたしのナカから生まれたものだ。

「ん…ん…っ」
「ん…やば…濡れてきた…可愛い」

竜ちゃんは舐めながらも指でどこかを刺激してくる。それが、どこかの入口だと気づいた時には、体の中にちゅぷっと何かが入ってくる感覚があった。声をあげたいのに、蘭ちゃんのキスで呼吸することもままならない。その上、後ろから伸びた蘭ちゃんの手が、露わになっている胸をやんわりと揉んでいて、長い指先で先端を刺激してくる。色んなところを同時に刺激されて、体が何度も跳ねてしまう。その時、舐められている場所から何かが上り詰めてくるような感覚になった。くすぐったい感覚がより大きくなっていく感じで、自分の体なのに止めることが出来ないそれは、竜ちゃんの舌の動きに合わせて襲ってくる。じんじん、むずむず、そんなものが交互にくる感じだった。

「んあ…あっ…り、竜ちゃん…やめ…」
「…ん、イキそう?」

じゅるっとどこかを吸われた時に広げられてる太腿が震えて、自分でも止められないものが全身を駆け抜けるような気がした。でもその時、不意に蘭ちゃんが動いた。

「竜胆、ストップ」

腕を伸ばし、竜ちゃんの額をぐいっと押して、わたしのアソコから竜ちゃんを引きはがした。途端にこみ上げてきてた何かが萎んでいく。

「は?」
「オレのが竜胆に初めてイカされるとか許せねえ」
「はあ?!そこは兄貴なんだから譲れよ!」
以外の女なら譲ってやるよ」
「いや、他の女なんていらねーし!を初めてイカせんのはオレだから」
「あ?だからダメだつってんだろ?」
「もー邪魔すんなって…」
「あ、あの…二人とも…」

変なところでまたしても兄弟ゲンカが始まった。一瞬唖然としたけど体を解放されてることに気づいて、今のうちに…と乱れた服を直すと脱がされた下着を急いで身につけた。酔ってるからフラつくけど、どうにか服を元通りに着こむ。でも、そうしてる間に兄弟ゲンカはヒートアップしていた。

「はあ…つーか、オマエはいっつもオレがオレがって…の初めてのお使いの時もオレが行くつって兄ちゃんを置いてったろ」
「それ言うなら兄貴だってそーだろ!中学復学した時、オレに他の女押し付けて、と映画見に行ったろ!兄貴がヌケガケしたせいでオレはどうでもいい女どもに囲まれたんだからなっ」
 「ちょ、ちょっと」
「ヌケガケしたとか人聞きわりいな。あん時はオレが先にと映画デートの約束してたんだよ」
 「ねえ…」
「はあ?だからって二人で行くなよ!言っとくけど、オレの方が先にと手を繋いだんだからな」
 「ケンカしないでってば」
「ファーストキスはオレだし」
 「ちょ、ちょっと…!」
「ぐ…あん時だってヌケガケみてーなもんじゃんっ」
「もう!二人とも!いい加減にして…!」

だんだん腹が立ってきたわたしは、スクっと立ってドンと足を踏み鳴らした。途端に二人の言い合いがピタリと止まる。

「下らないことでケンカしないで!そ、そもそも酔わせて女を襲うとか最低なんだから!」
「「………」」

い、言った。言ってやった。二人にここまで怒ったのは初めてかもしれない。なのに二人は互いに顔を見合わせたあと、ジト目状態でわたしを見上げてくる。

「すげー感じてたくせに…」
「な?甘えた声で啼いてくれて、すっげー可愛かったのに…」
「きゃー!そ、そんなの無理やりエッチなことするから…!っていうか、ま、まさか…いつも女の子にこんな強引なことしてないよね?!いくら幼馴染でもさすがにダメだよ、それはっ」
「はは、ぷりぷりしちゃって。怒ってるもクソ可愛い」
「マジそれな。怒るとほっぺがぷっくりするとことか、オレ昔から好きなんだよ」
「分かるわー、それ」

人がすんごく怒ってるというのに、今の今までケンカしてた蘭ちゃんと竜ちゃんは、何故かわたしを見てにこにこし始めた。しかも懲りもせずに可愛いなんて、この状況で言われてもバカにされてる気がする。

「またそんなこと言って…!可愛いって言えばわたしが何でも許すと思ったら大間違い――」
「つーか、酔わせて襲うとか、にしかしねーし」
「確かに。オレら他の女なんか興味ねえから」

シレっと言い切った蘭ちゃんと竜ちゃんは変に共感しあってるし、わたしはわたしで混乱して涙目になってしまった。

「そーいう問題じゃないっ」
「「えー…」」

ぷいっと顔を反らして怒っても、二人は口を尖らせてスネている。こういうとこは昔のままなのに、大人になった分、エッチなことをしてくるんだからタチが悪い。

「と、とにかく…二人と一緒には住めないから、やっぱり出てく――」
「行くアテあんの?」
「…う…」
「貯金崩しちまって金もねえんだろ?」
「……っ!」

痛いところを突かれて言葉に詰まると、二人はニヤリと意地悪な笑みを浮かべた。その顔を見てたら小学校時代を思い出す。二人はあの頃もわざと意地悪して、わたしが怒るのを楽しんでたっけ。そういうとこは成長してないみたいだ。それはまあ…わたしもなんだけど。

「そもそもさあ。これオマエの夢だったろ」
「……え?」
「そうだよ。大人になったらオレ達と一緒に住むって、の夢だったよなあ?」

そう言われてドキっとした。確かにそんな夢を昔二人に話した気がする。大好きな二人と一緒に住んで三人で仲良く暮らしたい。本当にそう思ってた頃があった。わたしが兄弟がいないから、一緒に住めば凄く楽しい気がしたのだ。

「……そ、それ…覚えてたの…?」
「当たり前だろ」
との約束忘れるワケねーじゃん」

あんな昔の、それも子供の頃に言ったことを二人が覚えててくれた事実に驚いて、でも嬉しくて、ついウルっとしてしまった。

「で、でも…じゃあ…何であんなことするの…」

思わずそう訊いた時、蘭ちゃんと竜ちゃんは顔を見合わせた後、再びこっちを見て、わたしの腕をぐいっと自分達の方へ引き寄せた。

「そんなの…」
「オマエを手に入れる為に決まってんだろ」
「な…」
「気づいてないようだから言うけど、オレと竜胆、昔からが可愛くて仕方ねえの。オマエにメロメロだから」
「そーいうこと」
「えっ?」

それは幼馴染としてじゃなく…女の子としてってこと…?
まさか、と思いつつも二人の言葉に本気で驚いた。これまで生きて来て一番の衝撃だったかもしれない。
だってわたしはてっきり――。

「え…い、妹みたいに思ってくれてたんじゃ…」
「妹ぉ?ないない」
はオレと兄貴の中で、ずーっと可愛い女の子だから」
「気づいてると思ってたけどなあ。、マジで鈍感すぎな?」
「あーそれと、明日からは他の男なんか近づけさせねえから覚悟しとけよ」
「ま、今日から三人で仲良くやろーぜ」

蘭ちゃんと竜ちゃんはわたしの大好きな笑顔を浮かべながら、とんでもないことを言いだした。

(こ、こんなの……絶対むり…!二人のことは好きだけど…どっちも選べないから幼馴染してたのに!)

どうやら大きな大きな蜘蛛の巣に、わたしは捕まってしまったようだ。


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