03-おねだりして欲しい


※性的描写あり



結局、竜ちゃんのせいで、わたしはまたシャワーを浴びる羽目になった。それから食事の用意をしてる間も、蘭ちゃんが「手伝うよ」と言えば、竜ちゃんまで「オレも手伝う」とか言い出して、終始わたしにくっついてくる。むむ、これは地味に大変かもしれない。
夕飯を食べた後、三人でテレビを見てたけど、蘭ちゃんはわたしを足の間に抱えながらもずっと機嫌が悪かった。竜ちゃんが「独り占めしてズルい、兄貴」と言い出して、蘭ちゃんも「どの口でズルいとか言ってんだよ。ってかに近寄んな。シッシ」なんて言い返す始末。二人はこうやってすぐケンカを始めるから、間にいるわたしは居たたまれない気持ちになって、眠くもないのに「もう寝る」と言ってから早々に部屋に戻ってきてしまった。

「はあぁぁ…今日は疲れた…」

二人に宛がわれたお部屋に戻ってすぐ布団に潜りこんだ。ここはウォークインクローゼットらしく五畳しかないとか言う割に、かなり広い。奥には左右に分かれて蘭ちゃんと竜ちゃんの部屋に入りきらなかった普段あまり着ない服が飾られている。当然、収納スペースが沢山あるから服や小物類も置ける。元々多くないわたしの物は手前の棚を使っていいと言ってくれたから、そこのスペースだけで収まった。それにここで寝起きするのは二人が心配するほど不便じゃない。さすが高級マンションと驚いたのは、一応クローゼットなのにエアコン付きで大きな窓もあることだ。窓からは六本木の街を見下ろせるし、むしろ快適すぎる。お布団を敷いたら、あまり歩くスペースはないけど、普段は寝るだけだから十分だった。一つ問題なのは扉に鍵がないことだ。着替える時とか、ちょっと心配になったりする。でも今のとこ、蘭ちゃんや竜ちゃんがノックなしで入って来ることはなく、今はそこまで気にならなくなった。

「もー…何で二人はすぐケンカしちゃうんだろ…。あれじゃ昔と変わらない…」

寝がえりを打ちながら溜息を吐く。蘭ちゃんと竜ちゃんは男の兄弟にしては子供の頃から仲は良かった。何でも共有したがるクセはその頃から同じで、蘭ちゃんが何かを買うと、竜ちゃんもすぐ同じ物を買ったり、趣味の合う物は一緒に使ったりもしてた。大人になってそれぞれ嗜好も異なる物は増えて来たみたいだけど、一つだけ、全く変わらないのはわたしに関することだ。いつもは三人で行動することが多かったけど、時々蘭ちゃんと二人でご飯に行ったり、竜ちゃんと遊園地に行ったり、個別に会うこともあった。それがもう一人にバレた時、いつもの兄弟ゲンカに発展する。二人とも独占欲が強すぎてそうなるみたいだ。最初から三人一緒に行動する時は仲いいのに、不思議だなあと常々思ってた。

(でも…好きって…ほんとかなぁ…)

さっき竜ちゃんに言われたことを思い出しながら首を捻る。初日の時も言われたけど二人曰く、わたしがハタチになるまで、ああいうアプローチはしないと決めてたらしい。それも子供の頃の約束だと言ってた。子供の頃はハタチになったら大人になるってイメージがあったから、きっとそれが関係してるんだろうけど、まさか子供の頃の約束を二人が覚えててくれたなんて驚いてしまう。ただわたしからすれば二人の豹変ぶりは突然のことに感じても、二人には当たり前のことだったようで、「鈍すぎ」と言われたようにわたしが鈍感だったんだと思う。

(だからってわたしまで共有しないで欲しい…あんなエッチなことするなんて…)

ふとさっき竜ちゃんにされたことを思い出した。その瞬間、一気に顔へ熱が集中する。まともに恋愛したこともなく、彼氏いない歴20年。あんな行為は学校の友達とこっそり読んでたレディースコミックだけの世界だと思ってたくらい、わたしにとっては現実味がなかった。それほど恋愛初心者でエッチなことに関してはド素人のわたしが、いきなり二人から襲われたりするのは大人の階段を三段跳びくらいで上がってしまったようで、ひたすら恥ずかしくなる。

(さっきは竜ちゃんに上手くはぐらかされちゃったけど…もうエッチなことしないでって言わなくちゃ…。付き合ってもないのに道徳的におかしいもん…)

そんなことを考えていたら急激に睡魔が襲ってきた。久しぶりに仕事をしたせいで地味に疲れていたわたしはそのまま秒で眠ってしまったらしい。次に目が覚めたのは、まだ暗い時間だった。窓から薄っすらと月明りがさしているから朝になったわけじゃない。最初は何で目が覚めたのか分からなかった。でも不意にぞくりとしたものが足からこみ上げてきて、全身の肌が粟立った気がした。その瞬間、ある部分にぬるりとした感触があった。

「んぅ…な…なに…」

驚いて起き上がろうとした時、パジャマ代わりに着ているタオル地のワンピースがはだけて脚が剥き出しになっていることに気づいた。そして――。

「あー…起きちゃった?」
「ら…蘭ちゃん…?」
「寝顔可愛かったのに」

月明かりを頼りに足元を見ようとした時、蘭ちゃんがわたしに覆いかぶさるようにして顔を覗き込んできた。一瞬夢かと思って何度か瞬きを繰り返す。でも顔に落ちて来る三つ編みの柔らかさと、大きな手で頬を撫でられた時、リアルな感触で夢じゃないと気づいた。

「な…何で…いるの…?」
「何でってそりゃー夜這い仕掛けに来たから?」
「よ…夜這い…っ?んぐっ」
「しっ!竜胆に気づかれんだろ。アイツ、もう寝てっから」

手で口を塞がれ、驚いて視線を上げると、蘭ちゃんは自分のくちびるに人差し指を当てて艶っぽい笑みを浮かべた。その表情にドキっとして小さく頷くと、口元から手が外される。でもよく見ればパジャマが中途半端に脱がされていて、胸が僅かに見えてる状態だった。

「な…何で脱がしたの…っ」

慌てて前を隠すと、蘭ちゃんが困ったように眉尻を下げた。わたしは昔からこの顔に弱い。

「何でって…さっき竜胆にエッチなことされたんだろ?不公平じゃん。竜胆にだけさせるなんて」
「ふ…不公平って…あれは竜ちゃんが強引に――」
「分かってるけど、すげー腹立ったから眠れねーし、やっぱに癒してもらおうかと」
「え…んっ」

ニッコリ微笑んだ蘭ちゃんはいきなり押し倒してきて、わたしのくちびるを塞いだ。この前と同様、すぐに熱い舌が口内に侵入してきて、やんわりと絡み取られてじゅうっと吸われる。柔らかい蘭ちゃんの舌が口蓋を舐めていくだけで首の後ろがぞくぞくするから、またしても肌がぶわわっと粟立った。

「キスだけで感じてんのかーわいい」
「ら…蘭ちゃ…ぁっ」

首筋に口付けられ、そこへちゅうっと吸いつかれると、ピリっとした痛みが走る。それを何度か繰り返されて、くすぐったいむず痒さが全身に広がっていく。

「上書きしたから」
「…え?」
「ここに、竜胆の印がついてたし」

蘭ちゃんはそう言いながらわたしの首元や鎖骨の辺りを指で触れてきた。印って何のことだろう?

は竜胆だけのもんじゃねえだろ?オレのでもあんのー」

それってどういう意味?と聞く前に、蘭ちゃんのくちびるが更に下がっていく。押し戻そうとする手は簡単に絡み取られて頭の上で固定された。

「や…やだ…蘭ちゃん…」

いきなり拘束されたことで少し怖くなって身を捩ると、蘭ちゃんはまたくちびるにキスを落として、オデコをコツンとくっつけた。

「痛いことしねえから…を気持ちよくしてあげたいだけだし」
「ぇ……んぁ…っ」

くちびるにちゅっとキスをして耳殻を舌先で舐められる。また首の後ろがぞくぞくして、思わず頭を振った。

「ゃ…ぁ…蘭ちゃん…」
「部屋着も可愛い。オレからも何かプレゼントしたくなんな」

首筋から鎖骨へくちびるを滑らせ、少し乱れてたパジャマのジッパーを更に下げていくと、蘭ちゃんは胸の膨らみを優しく揉んで、先端へちゅうっと吸いついてきた。

「ンンっ…」

飴玉を転がすように舐られる甘い刺激に我慢できず、声が出てしまう。硬くなった部分を舌でくにくに捏ねられ、またちゅぱっと音を立てて吸われると、背中が何度も反るように跳ねた。

「なあ…竜胆にどんなことされた?」
「…ぁ…ゃ、やだ…」
「強引にされたっつってたけど…オレは優しくするから」

熱く火照った頬を撫でられるだけで、それさえも快楽を引きずり出す刺激になる。さっき竜ちゃんに押し上げられた熱が再燃するかのように、体が反応してしまうのが分かった。蘭ちゃんの香水の香りに包まれて、勝手に心臓がドキドキしてしまう。

「んっぁ…」

片方の胸を揉みしだきながら、もう片方を口内に含んで舐められると、あまりに気持ちが良くて全身が疼いてきた。そのうち、蘭ちゃんの手が太腿へ滑り落ち、すでに濡れている部分に直に触れられる。その時、下着を身につけていないことに気づいた。

「…ひゃ…」
「…もう濡れてる。感度よすぎ」
「な…何…で…んっ」
「ん?ああ…さっきが寝てる時に脱がしちゃったし」
「…え…っ」

指の動きを止めないまま、蘭ちゃんが悪びれもせず笑うのを見て、顏が赤くなった。寝てる時にエッチなことをされたのかと思うと羞恥心でいっぱいになる。そこでふと思い出した。さっき目が覚めた時、どこか舐められた感触があったことを。

「ま…まさか蘭ちゃん…」
「ん?」
「ん?じゃない…っわたしが寝てるのいいことに変なこと…」
「あー…だってがすやすや寝てるとこ見てたら可愛すぎてコーフンしちゃったし、ちょっとだけ味見した。オマエ、寝てても感じんのなー?」
「…っ?あ、あじ…みって…蘭ちゃんのエッチ…っ」
「仕方ねえじゃん…が好きだからエッチにもなんだよ。それに竜胆にだけさせんの癪だし」

スネたように言いながら、蘭ちゃんは撫でていた場所へ指を埋めていく。その刺激で僅かに肩が跳ねてしまった。

「すげ…もうとろとろなんだけど…この前より感度良くなってね?」
「…ゃぁ…あっ」

ナカの壁を擦られるたび、愛液が溢れてくるのが自分でも分かる。それが恥ずかしくて身を捩ろうとしたけど、それすら蘭ちゃんの腕に阻止されてしまった。

「だーめ。見せて」
「や…ゃあ…恥ずかし…いよ」
「あんま声出すと竜胆にバレるって」

蘭ちゃんは苦笑気味に言うと、体を下げてわたしの脚を持ち上げた。ドキっとして体を強張らせると、ぐいと強引に押し開かれた。

「や…ぁ…何…」
「竜胆にイカされたなら今度はオレの番。オレだってが好きなのにアイツばっかは不公平じゃん」
「……でも、こんなこと…するの…おかしい…よ…っ」
「おかしくねえよ。オレにはだけだから」
「え……んっ…ぁ…」

太腿の間に蘭ちゃんが顔を埋めた瞬間、恥ずかしい場所をぬるりと舐められ、びくん、と腰が跳ねた。一切の容赦もなく、濡れそぼった場所を柔らかい舌が往復していく刺激に、たまらず腰を引きそうになる。それを蘭ちゃんの腕が引き戻して、愛液のあふれる場所をじゅるっと吸われた。

「ん…ぁあっ」
「舐めとってもどんどん溢れてくんな…オレで感じてくれてんの可愛いかよ」
「ゃ…ら…蘭ちゃ…ん…ダ…ダメ…」
「ダメじゃねえだろ。すげー締め付けてるし」

気づけば指まで埋められて、ナカをゆっくりと掻きまわされていた。蘭ちゃんの指が動くたび、ちゅぷ、と恥ずかしい音がわたしの鼓膜を刺激してくる。全身が敏感になっているせいで、どこもかしこも快感に襲われていくから少しだけ怖くなった。その時、ふと子供の頃の光景が浮かんだ。

――蘭ちゃん。竜ちゃん置いて来ちゃったけどいいの…?
――いいんだよ。だってこの前は竜胆と遊んだろ?だから今日はオレがを独り占めする番だし。
――でも…
――兄弟は何でも平等なんだって。父さんもそう言ってたから。そっちの方が平和でいいんだよ。

あの頃から、わたしは変わらない。竜ちゃんには強引に流されて、蘭ちゃんには上手く言いくるめられて。でも、それが心地よかった。二人はわたしを大切にしてくれたから。

「…ぁ…ンんぁあ…っ」

指を出し挿れされながら敏感なところをちゅうっと吸われた瞬間、そこから快感の渦が生まれたように全身を飲み込んでいく。がくがくと脚が震えて、一度だけじゃなく何度もその感覚に襲われた。

「…ちゃんとイけたなぁ?いい子」

蘭ちゃんは子供をあやすように言いながら笑った。

「……ら…んちゃん…」
「ん?もっと欲しい?」

快楽の波が去っていった頃、全身に気怠さが襲ってグッタリしていると、いつの間にか体を起こしていた蘭ちゃんがわたしの頬にちゅっとキスをした。気づけば涙で頬が濡れていて、それも指でそっと拭ってくれる。わたしに触れる時の蘭ちゃんは、昔から凄く優しい。

「それとも、また三人でする?」
「…そ…んなの…」

こめかみにも口付けながら蘭ちゃんがとんでもないことを言ってくる。慌てて首を振れば、くちびるにもちゅっとキスが落ちてきた。

「じゃあ…オレに抱かれたい?」
「…え…」

その瞬間、硬いモノが足の間に押し付けられて鼓動が跳ねた。蘭ちゃんは首筋に唇を滑らせ、胸をやんわりと揉んでくる。でも今度は肝心な場所には触れず、焦らすように周りを撫で始めた。

「ん…っ」

もう片方の手が太腿へ触れて撫でていく。でもこっちもまた同じようにその場所へは触れてこない。さっきの余韻で体の疼きだけが高まっていく。

「…んぁ…ら…蘭…ちゃ…」
「ん?」

首筋に舌を這わせながら、ギリギリのところで手を止める。それが焦れったく感じて、つい蘭ちゃんにしがみついてしまった。

「どうした?」
「……」

蘭ちゃんは気持ちいいとこ分かってて全部避けて触ってる。焦らされてるんだと思うと逆に触って欲しいなんて、とんでもない思いが過ぎって恥ずかしくなった。

「真っ赤になっちゃって…可愛いな、オマエ」
「…ぁ…っ」
「でもそーいう顔されたら…マジで抱きたくなんだけど」
「…んっ…ら…蘭ちゃ…ん…」

さっきのようにして欲しくて目で訴えると、蘭ちゃんはふっと笑みを浮かべて頬にキスをした。それが物足りなく感じるなんて、わたし、どうしちゃったんだろう。二人にエッチなことをされて、体がおかしくなってる気がする。恥ずかしくて仕方ないのに勝手に体の奥の方が疼いて仕方ない。このどうしようもない感覚を蘭ちゃんに早く消して欲しかった。

「触ってっておねだり出来たら…もっと気持ちよくしてやるけど?」
「…は…恥ずかし…から…やだ…」
「………(可愛いすぎ…)」

思わずそっぽを向くと、蘭ちゃんは耳にもくちびるを押し付けて「可愛い」と呟いた。その低音が直に鼓膜を震わせて、ぞくぞくとしたものが首から背中に走る。声だけで感じるなんて、わたしは完全に蘭ちゃんの狙い通りにされてる気がした。



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