09-ある日の小話-男のロマン-
ある日のこと、が夕飯を作ってくれることになった。メニューはオレと竜胆が昔から好きだったのカレー。ピリっと辛いルーの中にホクホクのジャガイモと、蕩けるくらいに柔らかい玉ねぎと鶏肉、そしてやたらと小さい人参。まあコレはが人参嫌いなだけだけど。
そんな普通のカレーなのに、ブイヨンでしっかり煮込むから、やたらとコクがあって美味い。後は何か隠し味があるらしいけど、は「内緒」って言って未だに教えてくれねえんだけど。そんなカレーを今夜、は張り切って作り出した。
「ん~いい匂い」
待っている間、リビングでビールを飲みながら待っていると、カレー特有の香ばしい匂いが漂って来た。ついつい気になって、竜胆に「ビール持ってくる」と声をかけてからキッチンに顔を出すと、がカレーを煮込んでいる間に使った調理器具を洗っている。可愛いエプロンをつけてキッチンに立ってる姿は何とも言えず可愛らしい。
マジでエプロンの妖精かもしれない。
「ひゃ!ら…蘭ちゃん…?」
「美味しそうな匂いに釣られてきたー」
「も…もう少しで出来るから…」
後ろからぎゅっと抱きしめつつ、頬にキスを落とすと、は途端に恥ずかしそうな顔をする。キッチンに来たついでにビールを取って戻ろうかと思ってたのに、の真っ赤な耳を見てたら何故か――。
「ら…蘭ちゃ…あ、当たってる…」
「…ん-。にくっついてたら他の欲求が出たかも」
「ひゃ、ちょ…」
我慢出来ずに赤くなった耳をペロリと舐めれば、腕の中の身体がビクンと反応する。それを腕に感じるだけで、また身体が反応するとか、オレの下半身ってどんだけ元気なんだよと苦笑が洩れた。まあ、それはこの子限定なんだけど。
をこうして永遠に腕の中に閉じ込めておきたいと、ガキの頃から何度思ったかしれない。今やっとその願いが叶いつつあるっていうのに――。
「あ!戻って来ねえと思ってたら、兄貴なにヌケガケしてんだよっ」
そこへ邪魔者が現れて台なしだ。
「せっかくいい感じだったのに」
「は?何でキッチンで盛ってんの、兄貴」
「いや、だってのエプロン姿、ちょー可愛いじゃん」
「…そりゃ、まあ…すげー可愛いけど…さ」
「だろ?」
オレと竜胆の中でそこは見事に一致。互いに顔を見合わせてから、戸惑い顔で見上げて来るににっこり微笑んだ。
「オレとしてはカレー食べる前にを食べたいんだけど。裸にエプロンで」
「…えっ?」
「オレはカレーを食した後のデザートでもいいけどな?裸にエプロンで」
「…は?」
オレと竜胆の顔を交互に見ながら、がますます顔を赤く染めるもんだから、やたらと美味しそうで腰の辺りにずん、と込み合上げるものがある。
「で、はどっちがいい?」
「ど、どっちって…」
「食前と食後、どっちで抱かれたい?」
「……そ。そんなの…わかんない…」
オレの質問に茹蛸のようになったはめちゃくちゃ可愛すぎた。現に竜胆が「やっぱ食前がいいかも…」とぼそりと呟く。何だよ。竜胆も結局、盛ってんじゃん。
「え…え?」
お玉を持ったまま、驚いたように後ずさるを、この後オレと竜胆で美味しく頂いたのは言うまでもない。
裸にエプロンは―――まあ…男のロマンだろ。

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