オレの彼女はエロ可愛い
※匂わせ表現あり
は学生だしオレとは基本、時間の使い方が違う。だから付き合いだしても二人で会うのはもっぱら夜が多かった。それもだいたいオレのマンションという形になる。はオレと出かけたがったけど、夜の繁華街を連れ歩くのは心配で、なかなか出かける気にはならなかった。オレと歩いているところを、もしオレが潰したチームの奴らに見られたらと思うと、ガラにもないほど怖くなる。オレが常にそばにいてやれるわけでもないから、嫌でもそこは慎重になった。
「大将も案外心配性なんだなー」
天竺の仲間である灰谷蘭には少し驚いたような顔をされた。集会に連れて来たらいいのにと言われたことがキッカケだ。
「こんな人相の悪い奴らに囲まれたらアイツ泣くかもしんねえし、この中のどいつが敵になるかもわかんねえだろ」
「まあ確かに。ってか大将の彼女って鶴蝶の妹つってたよなァ。めちゃくちゃ強ぇーんじゃねえの」
「いや…は…史上まれに見るくらい甘ったれで泣き虫だな」
オレが真顔で言うと、蘭はまたしても「マジで?」と言いながら酷く驚いていた。確かに鶴蝶の妹だと聞けば、腕っぷしの強い女を思い浮かべるのも無理はない。でもは兄貴と対照的な存在だ。
「んで…今は大学行ってる時間だっけ?」
蘭の隣にいた竜胆がふと時計を見る。ちょうど12時を過ぎた頃だった。今日はアジトに顔を出したら何故か灰谷兄弟がいた。普段デカい抗争がないと顔を見せない二人だが、暇だからという理由で真昼間だってのに班目や望月と酒を飲んでいたらしい。他の兵隊はパシリで追加の酒を買いに行かされてる。何とも平和な光景だ。
「でも大将の彼女、会ってみてーわ」
「オレもー」
「鶴蝶の妹ってのも気になるしな」
「は?やだよ」
蘭と竜胆、望月がニヤニヤしながらオレを見る。これまで特定の女を作ったことがないオレが、一人の女に決めたことが珍しいようだ。顔を合わせるたび「彼女ちゃんは?」と聞かれるようになった。
「ヤダって即答かよ」
「ますます会いてえなー。何か大学にファンクラブあんだろ?鶴蝶が自慢してたし」
「アイツは何で妹のことになるとドヤ顔になんだろーな」
3人で好き勝手言いながら笑ってる姿を見てると、ますます会わせたくねえと思った。絶対からかってくんだろ、コイツラ。
「そーいや、その鶴蝶はどーした?」
「あーさっきまで一緒に飲んでたけど酔い潰れて上で寝てるよ」
望月が苦笑気味に天井を指さした。
「上って屋上かよ?」
「そー。このクソ暑い日に屋上で良く寝れるよなぁ」
蘭も笑いながら、まだ酒を煽っている。それを見てるとだんだん喉が渇いて来た。どうせは夕方まで帰って来ねーし、オレも少し飲むかと冷えた缶ビールに手を伸ばそうとした時、ケータイが鳴りだした。
「あ?…?」
「え、大将の彼女ちゃん?学校じゃねえの」
竜胆が不思議そうな顔でこっちを見ている。とりあえず話してるとこを聞かれるのが嫌で、その部屋を出て廊下で電話に出た。
「もしも――」
『あ、イザナ?!』
「おー。どうしたんだよ。今、学校じゃねえの」
の嬉しそうな声が聞こえて来て、思わずオレも頬が綻ぶ。これもアイツらの前で電話に出られない理由の一つだ。
『そーなんだけど午後からの講義が急遽なくなっちゃったの。だからイザナとデートしたいなぁと思って…イザナ、今おうち?』
「いや、チームのアジトに来てる」
『…そっかぁ…。じゃあダメだね』
と急に声のトーンが下がった。オレがチームの連中といるからムリだと思ったようだ。
「ダメじゃねえけど?」
『え?でも…お友達と一緒なんでしょ?』
アイツらを"友達"と言うかは謎だなと苦笑しつつ「別に会って何してるってわけでもねえし。どこに迎えに行けばいい?」と尋ねると、は嬉しそうに『いいの?』と弾んだ声を上げた。とりあえず、近くの駅まで来るというのでオレはすぐに向かうことにした。
「あれ、大将どこ行くんだよ」
バイクのキーを取りに行くと、未だ飲んだくれてる班目が気づいて立ち上がった。蘭や竜胆たちも不思議そうな顔で振り返る。いつもなら夕方までここで暇つぶしをしているのを知ってるから、早々に引き上げようとしてる時点で気づいてはいるようだ。特に蘭の顏はさっきと同様ニヤニヤしている。
「アイツ、時間出来たっつーから」
「へえ」
「何だよ…」
「別にー。ま、楽しんで来て」
からかうように言って来る蘭に軽く舌打ちをしてアジトを出る。一度マンションに戻ってバイクを置いてから、今度は徒歩で待ち合わせ場所へ行かなくちゃならない。アジトからとの待ち合わせ場所までバイクで飛ばせば数分だが、今朝のはスカートだったのを思い出した。あの恰好でバイクに乗せるのも気が引けて、仕方なく置いていくことにした。
「イザナ―!」
30分後、待ち合わせ場所に向かうと、はすでに待っていて、嬉しそうな笑顔で手を振って来る。オレが軽く手を挙げると、彼女は笑顔で駆け寄って来た。そしてすぐに腕を絡めて来る。
「えへへ。こんな早い時間からイザナとデート出来るの嬉しい」
は猫みたいにオレの腕に頬を摺り寄せて来る。その嬉しそうな顔を見てると、少し照れ臭くて軽く咳払いをした。
「…でも暑いだろ。この炎天下の中歩くの」
「そうだね。あまり汗かいちゃったらメイク落ちて悲惨なことになっちゃうし…」
「別にオマエ、メイクしなくても変わんねーだろ」
「えー変わるよー」
スネたように唇を尖らせるは自分の童顔がコンプレックスらしい。オレからすると何でも可愛く見えるから、別に気にしねえのにと内心苦笑する。
「あ、じゃあコンビニで色々買い込んでイザナのお部屋でイチャイチャしたい」
「……それいつもと同じじゃん」
「えーでも普段はちょっとしか時間ないもん。でも今日はたっぷり時間あるから、いっぱいイチャイチャしたい」
ニコニコしながら宣言されると、かなり照れ臭い。でもオレ的にはとノンビリ部屋で過ごす時間は嫌いじゃない。
「じゃあ酒でも買ってくか」
「うん!やったー!イザナとのんびりお酒飲めるの嬉しいな」
「………(クソ…ッ……可愛いな…)」
腕にぎゅっとしがみつきながら本当に嬉しそうに笑う姿にオレの心音がヤバいことになってる。本当ならアジトで蘭たちを酒を飲んでたであろう時間が、"と飲む"に変わっただけでテンショの上がり具合が違うのは自分でもゲンキンだなとは思う。
そのままとマンション近くのコンビニで酒やらツマミを買い込んで部屋に戻った。すぐにエアコンをつけて室内を冷やしつつ、グラスなどを用意してると、はいつものようにピッタリオレにくっついて回る。口では「うぜぇ」なんて言ってるけど、の甘えたなところも可愛くて仕方ねえなんて、ガラじゃなさすぎて死んでも口には出せない。
「んー美味しい!昼間から飲むお酒はまた格別だなー」
「カルピスサワーはジュースだろ」
オレが笑うとはすぐ「わたしにはお酒ですーっ」とムキになる。はそれほど酒には強くねえから、二本くらいですぐにほろ酔いになった。そこがまた可愛いとこでもある。
「んー」
「ってキスすんなよ」
は酔って来ると更にベッタリになってくる。オレの頬や首にすぐキスをしたがるから地味に理性を保つのが大変だ。
(ぜってー外で飲ませられねえ…)
大学の友達に時々飲み会なんてもんに誘われるらしいが、が外で酔っ払ったらどうなるのかオレも知らない。オレ限定でこうなるならいいが、もし他のヤツにもキス魔になってたらと思うと心配で行かせられるわけがない。
「ん~イザナもちゅーして」
とろんとした目で見上げて来るにドキっとさせられる。仕方ねえなーなんて言いつつ、顏が緩むんだからオレもたいがいだ。今じゃ首に腕を回してぎゅっと抱き着いてくるに、酒を飲むどころの話じゃなくなってきた。
「おい…こんなくっついてちゃ飲めねえじゃん」
苦笑交じりで言えば、は「んーイザナの匂い安心するんだもん」と言いつつ、オレの肩に顔を埋めて来る。あげく首の辺りをクンクン嗅いでくるから変に刺激が来てぞわっと肌が粟立つ。
「おい、嗅ぐなって…」
「ん~癒されるもん」
「………匂いフェチか、オマエ」
身体の匂いを嗅がれるのは何となくこっぱずかしいもんがある。ついでに言えば密着しすぎて、だんだん別の欲求が出て来た。それを満たすべくを引きはがすと、そのふっくらした唇を塞いだ。
「ん…」
最初から深く口付けて舌を滑り込ませると、の口内は甘ったるい味がした。それを味わうように舌を絡ませれば、細い手がオレの服をぎゅっと掴んで来る。それが可愛くて更に口内を攻め立てると、の着ているノースリーブの肩紐を指に引っ掛けて下げていった。
「ん…イ、イザナ…」
「…ん?」
唇から首筋、鎖骨へとキスをしていくと、切ない声で呼ばれた。少しずつ見えて来た下着の淵を咥えてゆっくり下げて行けば、淡い色の先端がオレの目を楽しませる。そこをペロリと舐めれば、可愛い声が跳ねた。
「ん、ダ、ダメ…」
「…ダメ?」
「ま…まだ明るいし……ぁっ」
「でもココ硬くなって来たけど?」
刺激を与えたことでツンと主張しはじめた場所をちゅうっと吸ってやると、は更に背中をのけ反らせて体を捻った。彼女と初めて体を繋げてから、まだ二回しかしてないだけに、オレの欲求は高まるばかりだ。なのに――。
「ダ、ダメ…」
脱がそうとしたオレを制して、は慌てたように乱れた服を直してしまった。見ればの顏は真っ赤で、初めてキスした時みたいになってる。でもあの時より最近はマシになってきてたのに。
「何だよ…何でダメ…?」
拒否されたことで少なからずショックを受けていると、は恥ずかしそうにオレを見上げてひとこと呟いた。
「だ、だって…汗かいたのにシャワー入ってないから…」
「……シャワー?別にそんなの気にしねえけど」
むしろからはいい匂いがする。だから言ったのに、は慌てて首を振ると、
「イザナに汗臭いって思われたら…は、恥ずかしいもん…」
「………(クソ可愛いんだけど?!)」
真っ赤になりながら上目遣いは反則じゃねえ?今すぐ押し倒したい欲求がこみ上げて、そのままを抱きしめようとした。でも寸でのところではオレから離れると「だ、だからシャワー借りるね」と言い残してバスルームへ走っていく。あっという間の早業で声をかける暇もない。すっかりその気になってたオレはそのままソファへ倒れ込んだ。
「お預けきち~んだけど…」
でもオレの不幸はこれだけじゃ済まなかった。悶々とした気分のまま、待つこと30分。やっと出て来たと思ったは、さっきとは別人のようにヘコんでた。
「イザナ…」
「何だよ…何で半べそ…?」
ソファから体を起こして抱き着いて来たの背中をポンポンと叩くと、シャンプーかトリートメントのいい香りがして、再び体が熱くなったその時。が泣きそうな顔で呟いた。
「アレ…なっちゃった…」
「……マジで?」
「ご、ごめんなさい…」
「いや別に謝らなくても…ってか、腹は?大丈夫かよ」
「うん…ちょっと痛い…」
「なら冷やさねえようにしねえと…」
「ん…」
ぐすっと鼻をすすりながら落ち込んでいるは「怒ってない…?」と心配そうに見上げて来た。その鼻をむぎゅっと摘んでやる。
「怒ってねえよ…。もいちいち落ち込むなって」
「…だって…イザナとエッチしたかった…」
「そーいうこと言うなって」
涙目で爆弾投下してくるは無自覚でオレを煽って来る。したかったのはオレだって同じだ。とりあえず薄着のにオレのシャツを着せて、少し腹痛が出て来たようだから寝室に連れていった。痛み止めを飲んだら少し眠くなるようだ。
「今日は大人しく寝てろ」
「…え。イザナは…?」
「オレはあっちで――」
「ヤダ…」
「……オレに一緒に寝ろと?」
捨て猫みたいな目で見上げて来るに、オレは盛大な溜息をついた。せっかく我慢してるってのに、これじゃ蛇の生殺しかもしれない。だけど、体調が悪いとは普段よりも甘えたがるのは分かっていた。
「イザナ…?」
「寝りゃーいーんだろ?」
隣に潜り込むと、はやっと笑顔を見せてくれた。でもすぐ心配そうに「ごめんね、我がまま言って」と謝って来る。
「オマエの我がままは今に始まったことじゃねえだろ。想定内だよ」
「…ひどい」
「はいはい…ほら、腹擦ってやっから――」
と言った時だった。寝ていたが急に起き上がり、着ていたシャツを脱ごうとするからギョっとした。
「待て、何してんだ、オマエ」
「…だ、だって…」
慌てて止めると、は真っ赤になって俯いた。
「エッチは出来ないけど…他のとこは触ってもいいよ…」
「…っ…バカかよ、それで済むか」
「え…」
「いーから黙って寝とけ。つーか寒気すんなら脱ぐなって。腹も痛いクセに…」
の腕を掴んでベッドへ寝かせると、後ろからぎゅっと抱きしめる。そのまま腹の辺りを擦ってやると、小さな声で「ありがと…」と聞こえた。
「で、でもやっぱり――」
とが振り向こうと手を動かした時、それがオレの下半身へ触れた。しっかり硬くなってるのがバレたのか、の顏が真っ赤になっていく。
「……イ…イザナ…?」
「いいから放っとけ。ってか触んな」
「で、でもそれ…」
「いいから大人しく寝てろって」
言いながら、さっきと同じように腹を擦ってやる。すっかりその気になってたせいで少しの刺激でも反応するのがキツい。
「イザナ…」
「ん?」
「……我慢させてごめんね」
「人を性欲の塊みたいに言うんじゃねえ。こんくらい我慢のうちにはいんねえよ」
「でも…」
「だいたい…セックスなんてもんは片方が良くてもダメだろ。も万全じゃねえと意味がないしな」
「…イザナ…」
は振り向くと、涙目でオレに抱き着いて来た。少しの刺激でもツラい今のオレには拷問に等しい。
「だから抱き着くなって――」
「イザナ、大好き」
「………はあ。マジで生殺し…」
「え…?生でしたい?」
「言うか、そんなこと!」
いちいち煽るようなこと言うなと文句を言えば、はキョトンとした顔でオレを見上げた。その顏はやっぱり可愛くて、軽めのキスを唇に落とす。とりあえずアレが終わったら、朝までベッドに縛り付けてやろうか。

時系列バラバラです。