君を可愛いと思う理由ワケ⑴【小話】



「あちぃ~」

鬱陶しい梅雨も明けて初夏も過ぎて来ると、夜でも暑くてダルい。特に用もないのに仲間と集まっては「暑い」を連呼して終わる。そんな時、竜胆が「コンビニでアイス買わねえ?」と言い出した。皆も「その手があったわ」と乗り気になって、いかつい男どもで近くのコンビニに向かう。いつもなら酒コーナーにまっしぐらのイザナも、さすがに今は酒より体を冷やすものがいいらしい。ウキウキしながら冷凍庫の中を覗いて回ってる。

「しっかし大の男どもが全員でアイスってウケる」
「確かに」
「でも夏ってアイスよりかき氷系だろ、やっぱ」
「あ、分かる!真冬はアイスなんだけど、夏は氷系のが食べたくなるわ」

竜胆と班目の会話を聞きながら、オレも冷凍庫の中を覗く。その時イザナがイチゴ味のかき氷を手にしていることに気づいた。これまで何度も夏を一緒に過ごして来たけど、イザナがそれを食ってんのは一度も見たことがない。となると考えられることは一つだけだ。

「何、大将。それ好きなん?」

敢えて訪ねながら小首を傾げれば、イザナの頬が薄っすら赤くなった気がした。随分と分かりやすい照れ方をするようになったもんだと内心苦笑が洩れる。

「…いや…オレじゃなくて…が」
「ふ~ん♡」
「何だよ、蘭。その顏は」

ついつい釣られてニヤケてしまっただけなのに、イザナはジロリと睨んで来る。ここで「可愛いから」って言ったら、この人ぜってー殴って来るし言わねえ。

「あれ…買わねえの?」

手にした商品を戻すのを見てからかいすぎたか?と思っていると、イザナは振り向かないまま「近くのコンビニで買うからいい」と呟いた。なるほどなー。ここで買って行っても溶けるからか、と納得しつつ笑いを噛み殺す。
イチゴのかき氷見ただけでを思い出すの可愛いかよ。