君を可愛いと思う理由⑵【小話】
暑い夜が終わる前にバイクをすっ飛ばして家に向かう。途中、忘れずにコンビニへ寄って、しっかりイチゴのかき氷を二つ買った。オレ的にはソーダ系の味が好きだけど、は必ずイチゴ味で、今夜は何となく同じ物を食べたい気分だった。別にが逃げるわけでもねえのに駐車場からマンションまで走ってしまうのは何なんだろうと毎回思う。きっとそれだけに早く会いたいってことかもしれない。自分でも笑ってしまうほどに。
「イザナー!お帰りなさ~い!」
ドアを開けた瞬間、毎回嬉しそうに走って来て抱き着いて来るの可愛いかよ。思わず顔が緩んでしまいそうになりながら、脳内に浮かぶのは飼い主が帰宅したと同時にまとわりつく小型犬だった。
「ん」
「え、あ!イチゴのかき氷買って来てくれたの?嬉しい!ありがとう、イザナ」
別にダイヤの指輪を買って来たわけでもないのに、は本当に嬉しそうな顔で抱き着いて来る。オレの頬に自分の頬をすりつけてマーキングまでがお約束だ。
「いや、分かったから離れろって、暑いし」
「えー…」
オレがちょっとでも突き放すと、すぐスネて唇を尖らせるその姿はとても女子大生には見えないし、まあ控え目に言って小学生ってところだ。でもそういうところも可愛くて仕方ない。言えねえけど。
「あ、イチゴのかき氷2つある!」
「まあ、オレも食うからな」
軽く手と顔を洗ってからソファに座ると、も「え、珍しい」と言いながらちょこんと隣に座る。
「イザナ、いっつもソーダ系なのに」
「たまには同じの食ってみようと思って」
「ほんと?嬉しい」
「いや、何で」
「え、だって同じ物を一緒に食べるのって何か幸せ感じるもん」
「………(クソ可愛いな、相変わらず)」
毎度毎度、オレの脳内を可愛いの大渋滞にしてくれるを、その気持ちのままぎゅっと抱きしめる。でも途端に恥ずかしそうな顔をするのは不思議だ。自分でするのは平気なのにオレがすると照れるって可愛すぎじゃね?
「ん~おいひい~」
は早速かき氷を食べては美味しいと悶えてる。そんなにイチゴ味は美味いのか?とオレも一口食ってみた。
「……(甘っ)」
「どぉ?美味しい?」
「お、おー…美味いっちゃ美味い」
ここで甘すぎるとか言えば落ち込みそうだから、美味しいと言っておく。まあ味は昔ながらのかき氷って感じだ。
「だよね、おいひいよね」
「って、オマエ、喋りながら食ってたら舌噛むぞ」
「だいひょ…ぐっ」
「は?」
言った傍から舌を咬んだらしい。見る見るうちに大きな瞳に涙が溜まって「イひゃなーいらい…」と何となくしか分かんねえ言葉を言って来る。あげく氷を食べてて口内が冷え切ってたせいか、倍の痛みが襲って来るらしい。
「いらいよ~」
「はいはい…ったく…言わんこっちゃねえ」
首に抱き着いて来たの背中をポンポンとあやしながら苦笑する。でもその時、いいことを思いついた。
「、痛いの治してやろうか」
「…ん?」
少し体を離して顔を上げさせると、その冷え切った柔らかい唇を塞ぐ。が驚いたように目を見開くのを薄めで確認しながら、すぐに舌を滑り込ませて彼女の舌を絡めとった。
「ん…んっ」
やんわりと吸ったり舐めたりしていると、一気に口内がイチゴ味に支配されていく。ついでに氷を食べて冷たいせいか、の舌の感触がダイレクトに脳へ伝わって来た。このままだと確実に襲ってしまうだろうから最後にちゅっと啄んで唇を解放すると、真っ赤になったが潤んだ瞳で見上げて来る。
「治ったかよ」
唇に移ったイチゴ味をペロリと舐めつつ尋ねると、がジっとオレを見つめながら「また舌噛もうかな…」と呟いた。
やっぱオレの彼女、可愛すぎだろ。
