オレの彼女はエロ可愛い
※軽めの性的表現あり
世間的にはめでたい日とされてる誕生日なんて、オレからすれば本当にどうでもいい一日だった。母親だと思っていた女が傍にいた時でさえ祝ってもらったことは一度もない。孤児になればなったで施設の大人達が気持ち程度にケーキやプレゼントを用意してくれた気もするけど、その頃のオレにはすでに誕生日は祝うもの、という考えは一切なかったように思う。
だけどと再会してからは、自分の誕生日がとても大切なものなんだと教えてもらった。
――生まれて来てくれてありがとう、イザナ。
そんな風に言ってくれたのは、後にも先にもだけだ――。
そして今年も…AM:0:00。8月30日になった瞬間、オレのケータイが鳴った。
『イザナー!お誕生日おめでとう!』
彼女と再会してからというもの、日をまたいですぐお祝いメッセージが届くのが恒例になってきた。連続でケータイにメッセージが届くのも毎年のことだ。
『今日はイザナのこと、うーんと甘やかしちゃうから♡』
そのメッセージに思わず吹いた。がオレを甘やかすのなんていつものことじゃねえか。
"楽しみにしてるわ"
そう返信してから、オレはベッドに潜り込んだ。数時間後にはに会える。そう思うだけでオレは十分幸せだ。
+++
「ハッピーバースデー!イザナ!!」
パンっと軽快な音を立ててクラッカーがオレの顔面に噴射される。夕方、が家に来た瞬間から始まり、今ので5回目のクラッカー攻撃に、オレも遂に根を上げた。
「イザナ、生まれて来てくれてありがとう!」
「…今日、何度目だ」
オレの首に腕を回してぎゅぅっと抱き着いて来るにぼそりと苦情を言えば、彼女は頬をぷくっと膨らませて「何回でも言いたいの!」と口まで尖らせた。でもすぐに腕は離され、目の前の料理を小皿に取り分けてくれる。今日は朝から張り切って料理を作って来てくれたようで、オレの家のテーブル上はいつになく華やかだ。
「はい、イザナ。いっぱい食べてね」
「さんきゅ。これ全部が作ったのかよ」
そこで意地悪な質問をすれば、途端に彼女の視線が左右へ動く。まるで悪戯を見つかった幼稚園児だ。
「そ、そのエビグラタンは…お義母さん…かな」
「グラタンだけ?」
「えっと……そ、そっちの…パエリアも…」
「じゃあは何を作ったんだよ」
「わたしは…だから…サラダとローストビーフ…」
「それ切っただけじゃね?」
笑いを噛み殺して突っ込んだ途端、の膨らんでた頬が真っ赤に染まっていく。ちょっと意地悪し過ぎたかもしれない。
「卵とニョッキとエビと鶏肉は茹でたもん…」
「まあ、かなり豪華なサラダであるな」
大きめの皿に盛りつけられたサラダにはニョッキとトマト、キュウリ、アボガド、ゆで卵、エビに鶏肉が一口大に切られていて、凄く華やかだ。食べきれないだろうと保存出来るよう半分はタッパーウェアに詰め込む予定らしい。
「あ、あとドレッシングはわたしが作ったの」
「、ドレッシング作るの上手いもんな。おじさんにならったんだっけ」
「うん。お義父さん、そういうの得意だから」
嬉しそうな笑みを乗せては笑う。その笑顔はどう見ても幸せ一色で、こっちまでが自然と笑顔になった。誕生日のケーキも手作りで、義理の母に教わりながら焼いてくれたらしい。きちんとオレの名前を入れてくれて、最後には[I love you]の文字までしっかり入っている。これを母親の前で入れたのかと思うと、少し照れ臭い。でもオレと同じく孤児だったが、今の家族に引き取られて幸せに暮らしてることは、オレにとっても嬉しいことだ。
「でもごめんね、イザナ…」
「あ?何が」
いいだけ料理を食べた後、シャンパンで喉を潤していた時、モジモジとしながらがオレの顔を覗いてきた。
「せっかくの誕生日なのにエッチできなくて――」
「ぶっっ」
「わっイザナ、大丈夫っ?」
突然、その話をぶッ込まれ、口からシャンパンを吹きかけたオレの口元を、は慌ててティッシュで拭いてくれた。時々こういうぶっ飛び発言をかましてくるのだから油断ならない女だ。
「ゲホッ…何だそれ…別に気にしてねえよ…」
「えーっ少しは気にしてよ…」
は不満そうに口を尖らせ、オレの服を引っ張ってくる。エッチできねえならそういう顔をするなと言いたい。まあ、アレが来てしまったものは仕方ねえけど。
「あ、でもマッサージしてあげる」
「…マッサージ?いいよ、そんなの」
「ダーメ。あ、ほら、そろそろお風呂入って来て!ちゃんと沸かしておいたから」
見れば午後10時と結構いい時間まで飲んでたらしい。まあ酒も少し入って面倒だけど先に済ませておくか、とに言われるまま風呂に入る。おかげで出てきた時は直前まで飲んでたシャンパンがいい感じに回ってふわふわしていた。
「イザナ―出た?」
「ああ…ってか、オマエ、風呂のお湯をピンクにすんな。泡だらけだし、どこのソープかと思ったわ」
「えっ可愛いでしょ?…っていうかイザナ…ソープ行ったことあるの?!最低!わたしがいるのに!」
「いててっ」
いきなり背中をポカポカ殴られ、オレは苦笑するしかない。「ただの例えだよ!」と返すと、秒で機嫌が良くなるの単純さが羨ましい。
「何だ、良かった…。お背中流せなくてごめんね…」
「…いらねーよ。ってか、そんなくっつくな」
そのまま後ろからぎゅっと抱きしめてくるの胸が背中に当たってるのを感じて、慌てて煩悩を振り払う。エッチが出来ないという割に密着してくるんだから嫌になる。わざと煽ってんのか、天然なのか。本当に昔からオレを翻弄する存在であることは間違いない。
「イザナ、こっち来て寝転がって」
「…お、本格的じゃん」
そのままの腕に引かれて寝室に向かうとアロマの香りがする。室内は蝋燭の炎でほんのりと照らされ、トロピカルな香りに包まれていて、何とも爽やかな空間になっていた。
「座って。まずはヘッドマッサージからね」
「…マジでやるのか」
「だって最近夏バテだって言ってたし、イザナも忙しくて疲れてたじゃない。だから…」
はいつもオレの身体のことを気にかけてくれる。確かに最近は鶴蝶たちと孤児の子を守る為の法人を立ち上げようと動いていて忙しかった。
(ここは素直に甘えるか…)
オレの為にが色々と考えてくれた結果、マッサージを選んだんだろうと思うと、可愛くて自然と顔がほころぶ。
「あーそれ気持ちいい…」
「頭のこの部分はツボがいっぱいあるんだって。だから適度に解すと頭皮も柔らかくなっていいらしいよ」
「へえ…勉強したのかよ」
「もちろん。結婚したら毎日寝る前にしてあげるね」
「そりゃ楽しみ」
「へへ」
の細い指だからなのか、力加減もちょうど良くてマジで気持ち良かった。頭をマッサージされるのがこんなにも気持ちいいなんて知らなかったが、これはクセになりそう。20分ほど頭を解してくれたは、休む間もなく「じゃあ次ベッドにうつ伏せで寝て」と言ってくる。言われるがままうつ伏せに寝たものの「疲れたんじゃねえの」と尋ねると、は平気!と言ってベッドへ上がって来た。
「どこか凝ってるとこある?」
「んあー…背骨に沿ってかな」
最近はパソコンでの作業も多く、座ってると背中が疲れることがある。時々立ち上がって背中を伸ばすと、少し楽になることを思い出した。
「ここ?」
「あ~うん。気持ちいい」
「強さはどうですか?」
「ちょうどいい…、マジで上手い」
「ほんと?嬉しい」
が背骨に沿って周りを指で軽く押しながら解していく。首の後ろから腰までを重点的にマッサージされると、本当に気持ち良くてついウトウトしてしまった。
「はい、終わりー!次はこっち座って」
「……ん…やべ…寝そうになった…」
酒も適度に入って風呂に浸かり、極めつけのマッサージは寝て下さいと言ってるようなものだったかもしれない。軽く欠伸をして上体を起こすと、は「まだ寝ちゃダメ」と慌てたようにオレの腕を引っ張った。オレをベッドの端に座らせたは、どことなく頬が赤く染まり、今ごろ酒でも回ってきたのかと手を伸ばそうとした時、は視線だけ上げてオレを見る。何だ、そのエッチな顔は。
「…??…?」
「………あ、あの…」
急に黙り込んだはオレと目が合うとパっと反らし、視線を下へ向けた。
「最後はここ…も」
「あ?」
ここ?と思いつつ、オレも視線を下へ下げれば、の手がオレの下半身へ伸びている。ここも、という言葉の意味を瞬時に理解したオレは「は?」と慌てて彼女の手を掴んだ。
「………」
「………」
の顏が茹蛸のように真っ赤になっているけど、きっとオレも同じように真っ赤だろう。燃えるように顔が熱い。前に一度、強引にされたことはあれど。それ以来、してもらったことはない。多分オレが慌てたことでも失敗したと思ったんだろう。でも嫌だったわけじゃなく、にしてもらうのが照れ臭かっただけだ。
「あのね…プレゼントを考えてる時に"彼を悦ばせるならこれ"って雑誌の記事を読んで、それで…前は邪魔が入って最後まで出来なかったし…」
「………」
確かに前は途中で鶴蝶が乱入。それどころじゃなくなった。ついでに言えば「続きは夜してあげるね」と言ってたが、それを聞いていた鶴蝶が絶対にさせるかとばかりにオレの家に泊まり込んで結局はお預け状態で終わったことを思い出す。もきっとその時のことを言ってるんだろうが、さすがに心の準備が出来ていない。
「いいって。こうして一緒に過ごせるだけで満足してっから」
真っ赤なままのの頬へ手を伸ばす。ああ、こんな恥ずかしい台詞、言う予定じゃなかったのに、とこっちまで恥ずかしさが加速していく。でもは何か勘違いしたのか、その大きな瞳を潤ませながら顔を上げた。
「や…やっぱり……はしたない?嫌いになった…?」
「ならねえよ…っ」
「………」
勘違いしている彼女に驚いて間髪入れずに否定すると、は真っ赤なままオレをジっと見つめてくるから困る。つい視線を反らしつつ、本音が口から零れ落ちた。
「…嬉しい…けど…」
「…え、嬉しい?」
「そりゃ…」
今まで考えなかったと言えば嘘になる。でもに、と考えると、オレの情緒が激しく揺さぶられて、本能と理性が脳内でぶつかりだした。
「ん…」
その時、が身を乗り出して唇に軽くキスをしてくるからドキっとさせられた。
「イザナ…大好き」
その後も顎、フェイスラインと何度もキスをしながらオレを誘惑してくる。
「オレも…」
もう一度唇を塞がれた時、の後頭部に手を添えて舌を絡ませ合う。それだけで本能が理性を上回っていくんだから、本当に男って生き物はしょーもない。
「…いつもイザナが気持ち良くしてくれるみたいに、わたしにもさせて欲しい」
「…ん…あー…」
ヤバい、と思ったのに掴んでいた手を離してしまった。これじゃ承諾したも同然だ。彼女はいとも簡単に身を屈めて、その場所へ顔を埋めていく。
「…ん、」
「え、もうおっきい…」
部屋着のスウェットパンツを脱いで下着だけの姿になったのを見た途端、が驚いてる。そりゃが大胆なことを言いだした時から、すでに反応はしてた。女と違って男の方がこういう反応は早い。
「…無理すんなよ、マジで」
「無理じゃない。わたしがイザナにしてあげたいんだもん」
可愛いことを言いながら、は再び顔を埋めると下着をずらし、解放されたそれを躊躇うことなく口にした。ぬるりとした感触に肩が跳ねて、彼女の口内にあるモノまでピクリと反応した。口内で扱かれると、あまりの気持ち良さに耐えきれず声が洩れそうになる。ちゅくっと時折、厭らしい音を立てながら、必死にオレを気持ち良くしてくれようとしているの頭へそっと手を伸ばす。サラサラの髪を撫でてやると、それに反応するようにぎこちなく舌を使い始めて、いっそうオレの欲が昂って硬くなったのが分かった。
オレがベッドに座り、が床に座って口で奉仕してくれてる姿は、やっぱり視覚的にエロ過ぎる。でもそれ以上に愛しくて、髪を撫でていた手を背中に回して包むように抱きしめた。
(ヤバい…もう出る…)
視覚的と体感的に興奮させられ、腰にぐっと射精欲が襲う。口の中で出したらマズいとそこだけ理性が働いて、の体を引きはがそうとした。
「ん…まららめ」
「…く…喋んなって…おい、…マジで出る――」
と言った矢先、はわざと強めに吸いついてオレのモノを強引に扱いてきた。すでに半分以上、昂ってそこまできていたものを刺激されれば我慢も限界で、屹立している場所がより膨張していく。ヒクヒクと痙攣するように我慢していたものを彼女の口内へ吐き出した。
「……んっ」
「はあ…マジで…オマエ、何してんだよ…って飲み込むなっ」
ゴクンというおぞましい音がしてギョっとした。は口の中の白濁を綺麗に全て飲み込んだようだ。「えへへ、飲んじゃった」と笑う彼女を見て、何故か頬が熱くなる。とてつもなく恥ずかしいのは何なんだろう。
「いいからコッチに来い」
「あ…イザナ…?」
服を整え、の腕をつかむと、すぐに洗面所へ連れて行った。そのままうがいをさせて歯を磨かせてから、ついでにオレも寝る準備のため歯を磨く。最後はの手を泡まみれにして洗ってやった。は平気だよと言い張ってたものの「オレが嫌なんだよ」と言えば大人しくなり、今はされるがままだ。にとんでもないことをさせてしまったという後悔が頭を過ぎるのは賢者タイムのせいなのか、それともオレの本心なのか。どっちにしろ、を汚してしまった後悔が胸をつく。だけど――それとは裏腹に、やっぱり嬉しいという矛盾した思いがこみ上げる。
「ご、ごめんね…上手く出来なくて…」
背後から抱きしめるようにの両手を洗っていると、がシュンとしたように俯きながら呟く。目の前の鏡には真っ赤な顔で今にも泣きそうな彼女の顔が映っていた。どうやらオレが怒っていると勘違いしたらしい。全ての泡を洗い流した後、キュっと水を止めてふわふわのタオルで彼女の濡れた手を拭く。そして後ろからギュっと抱きしめた。
「んなことねえよ…。何でもいいんだ、なら」
「…え?」
「それに…が考えてるより何倍も気持ち良かったし」
耳元で本音を漏らすと、は驚いた顔でオレを仰ぎ見た。そのまま身を屈めての唇を塞ぐ。
「サンキューな」
「…もっかいする?」
唇を離して頬にも口付けると、はとんでもないことを口する。ホント、コイツには敵わない。
「バーカ。んな何回もしてもらったらありがたみねーだろ」
言いながらを抱えると、再び寝室へ戻ってベッドへ寝かせた後はオレも隣に潜り込んだ。が寝返りを打ち、オレの方へ顔を向けると自然と唇が重なる。
「ふふ…ん…」
戯れるように何度もキスをしての体温を確かめた。
「ぷは…もう…わたしの方が誕生日みたい」
頬を赤らめ、満足そうに微笑むが可愛い。可愛いと好きが脳内で大渋滞を起こすのはいつものことで、また彼女の唇を塞ぐ。好きだという思いが次から次に溢れてきて、彼女とならずっとキスをしていられる。
(誕生日って…最高だな…)
の体を抱きしめながら、心からそう感じていた。
+++
「ね、今度はもっと上手くできるように勉強するから!」
「……ぶっ」
次の日の昼少し前、遅めの朝食を二人でとっていると、不意にが爽やかな笑顔で宣言してきて、何のことかと意味を理解した瞬間、今度はコーヒーを吹き出しかけた。太陽が燦燦と照り付ける中、なんつー話をしてんだと呆れつつ、自分で少し濡れた口元を拭う。なのに当のはシレっとした顔で、もう一度「練習しておくね」と可愛い笑顔を見せた。って、あんなもんどうやって練習すんだよ。
「しなくていい…何だ練習って。他の男としたらぶっ殺すぞ、その男」
「ほ、他の人なんて私だってやだよ!」
ボっと顔から火を噴く勢いで真っ赤になったを抱きよせて、そのまま膝に抱えると「ほんとかよ」と睨みつける。は「う」と言葉を詰まらせつつ、こくこくと何度も頷いた。
「ったく…マジでは目が放せねえな…。とにかく練習はしなくていい」
「え、でもイザナ、嬉しいって言ったじゃない。だからわたし――」
「…ホントに。たまにでいい。刺激が強すぎる」
「え…?でも…」
と言いかけたの唇を指でなぞり、軽く啄んだ。そのままぎゅっと抱きしめると、彼女の髪へ顔を埋める。仄かに香るのは嗅ぎ慣れた彼女のシャンプーと、オレの家の匂い。すっかりオレの傍が馴染んでいる。それが凄く幸せに感じた。
「それと…してくれるならアレじゃない時の方がいい」
「……えっ」
「抱きたくなるから」
耳元で囁くように言えば、の頬が瞬く間に赤く染まる。その頬にも口付けて「好きだ」と付け足せば、彼女の顔も幸せそうに綻んだ。
来年の誕生日には、黒川としてオレの隣にいることを願いながら、もう一度、にキスを落とす。
何だかんだ言ってはみたが、今日も変わらず。オレの彼女はエロ可愛いから困ってる。
...END

イザナのエロ可愛いシリーズ、これにて終わります!また次回、別のお話にて🥰