※性的表現あり





――お前も年頃だろ。誰かいい人いないのか。

25歳を過ぎた辺りから父親がそんなことを言って来るようになった。それまでは一人娘のを心から可愛がり、変な虫がつかないようにと男を近づけさせようともしなかったクセに。
ただ――父親は知らないだけで、には過去に一人だけ恋人がいた。大学の先輩であり、彼女の家が日本で最も力を振るっていた極道一家だということは知らずに口説いて来た男だ。その男からの告白を受けて、当時は厳しかった父にも内緒で付き合ったのは、も彼のことが好きだったからだ。

ただ半年もしないうちに別れる羽目になった。別に父親にバレたからではなく。体を許した途端、はあっさり男に捨てられたのだ。付き合いだして一ヶ月もすればの方が男にのめり込んだ。初めての恋人ということもあり、彼が世界のすべてになったほどに。だからこそ初めて唇も許したし、求められるまま身体も許した。なのにその直後、はこっぴどく男に振られてしまった。しかも思ってもみない理由で。それ以来、は男に対して、というよりはセックスに対してトラウマみたいなものを感じるようになり、恋愛に臆病になってしまった。厳しかった父親の影響もあり、それ以降、誰とも付き合うことなく今日にいたる。その過去のトラウマが原因であんなに厳しかった父が心配するほど、男っ気がなく、地味に生きて来た、はずだった。

(なのに何で…)

父が年頃の娘を心配して出向させた先の組織、梵天。そこの幹部での上司に当たる灰谷蘭に襲われている状況に、は少なからず混乱していた。先ほどまでは穏やかな空気の中で一緒にお茶をしていたというのに、突然蘭は豹変したようにには思えた。

帰宅するのにロッカーへ向かい、バッグを出し、今日買ったばかりの服や下着の入ったショップの袋を肩にかけた、まさにその時。ロッカー室のドアが開いて、何故か蘭が入って来た。このロッカー室は組織内で働く人間の為に用意された部屋で、それも下の者しか使わない。幹部の蘭には縁のない場所だ。

「蘭さん…どうしたんですか?」

そう声をかけたと同時に肩を掴まれ、壁に身体を押し付けられる。いきなりの行動にビクリと肩が跳ねて、は恐る恐る蘭を見上げた。

「あの…」
「オマエ、それわざと?」
「…え?」
「わざとサイズ大き目の服着て誘ってんの」
「…な、何の…ことですか」

蘭の言わんとしていることがサッパリ分からない。とにかく機嫌が悪いならここは謝るべきか?と考えたものの、蘭が何に対して苛立ってるのかが分からない。さっき一緒にケーキを食べていた時までは普通だったのに。
蘭は今も少し不機嫌そうに目を細めてを見下ろしている。アメジストのような煌きを持つ蘭の瞳に見られてるかと思うと、怖いはずなのに胸の奥がかすかに音を立てた。最初に会った時から、蘭の魅力は嫌というほど分かっている。女なら一度は抱かれたいと思わせるような危険な魅力がある男だと。

そもそも父親が懇意にしている梵天という組織に、自分を預けると言い出した時は正気かと驚いたものの、少しして父の狙いが分かって来た。

(そう…お父さんは跡取りになるような息子が欲しいんだ…)

その相手が、自分の目をかけている梵天の人間なら文句なしといったところだろう。しかしには過去のトラウマがあり、恋愛に対して臆病になっている。だからこそ男の目を引かないよう地味に生きて来たはずなのに――。

「…ぁ…ら、蘭さん…?」

の肩を壁に押し付けたまま、蘭は器用に彼女の着ているノースリーブシャツのボタンを一つ一つ外していく。その行為に驚いて身を捩ってみたものの、当然力では敵わない。

「な、何するんですか…っ」
「何って…誘って来たのオマエじゃん」

蘭が至極当然といった顔で言いのけた。

「な…誘ってなんか――」
「さっき、オレにおっぱい見せたろ?」
「え…?ん…っ」

蘭が顔を屈め、鎖骨の辺りをペロリと舐めてくる。その小さな刺激にさえゾクゾクとして逃げ出そうとしたが、すぐに引き戻された。

「さっき…オマエがしゃがんだ時、見えちゃったんだよなァ。ここから全部」
「…え…っ?」

鎖骨から胸の間ギリギリのところまでシャツを乱され、そこを指でなぞられる。ドキっとして自分の胸元へ視線を落とした時、蘭の言っている意味が分かった。かぁぁっと顔が熱くなり、あまりの羞恥に手足がかすかに震えるのが分かった。

「ってか、もしかして…この服と下着のサイズ、あってねーんじゃね?」
「…そ、それは……」

くすりと笑われ、声が上ずった。蘭はどこか楽しげにを見下ろしていて、何を考えているのか分からない。ただ服と下着のサイズが合ってないのは本当で、だから今日、仕事の合間にこっそり買って来たのだ。今つけている下着も着ている服でさえワンサイズは上だった。

「友達の…だから…」
「あ?」

思い切って口を開くと、蘭が怪訝そうに眉を寄せる。

「夕べ…友達と飲みに行ったんです…。そこで酔っ払いのケンカに巻き込まれて…」
「…ケンカ?」
「あ、いえ、別に参加したわけじゃ。ただ隣の席で揉めてた人が手にしていたワインを相手にかけようとして、間違ってわたしに…」
「……ワイン…」
「はい…しかも赤ワインで服は真っ赤になるし、下着まで赤く染まってしまって。仕方ないのでそこから近い場所にある友人の家に泊って、服や下着を借りたんです…」

少し大きいなとは思っていた。でもまさかそんな恥ずかしい場所を覗き見られるとは思っていなかったし、それが理由で蘭がこんな行動に出るとも思わなかった。

「へえ、そりゃ災難だったな」
「あ…だ、だから決してわざとじゃ…」

先ほど蘭に言われた言葉を初めて理解したは、思い出したように慌てて首を振った。それでも蘭の指が躊躇うことなく残りのボタンを外していくのを見て、慌ててその手を掴んだ。

「なにするんですか…!」
「なにって…そりゃぁ…」

と思わせぶりな口調で言うと、に掴まれている手を逆に掴み返して、もう片方の手で露わになった脇腹を撫でた。

「ちょ…」
「味見したくなんだろ。あんなん見せられたら」
「…っひゃ」

肌を撫でていた手を上に滑らせ、指先でブラジャーを引っかけると、一切の容赦なくそれを上へ押し上げた。そうすることで小ぶりの胸が蘭の目に曝け出される。

「…やぁっ」
「ぃって、暴れんな」

押さえつけられた手を振り払おうともがいた際、爪先が蘭の頬を掠める。そこでハッと息を飲み、抵抗する力が弱まったを壁に押し付けた。同時に自分の身体を密着させれば、女の力では振りほどけない。の脚の間に膝を割り込ませることで、更に逃げ場を奪う。あげく下半身に蘭の膝がぐりっと擦りつけられ、その卑猥な体勢に恥ずかしさを覚えて耳まで赤くなった。先ほどから鼻腔をくすぐっている香水の香りにさえ、酔わされそうだ。

(ど、どうしよう…蘭さん本気だ…。っていうか何でわたしなんかに…)

羞恥心と困惑。二つの思いが交差しながらはぎゅっと目を瞑った。が知る限り、蘭は女に困っていない。一緒に仕事をして一ヶ月。自分の上司となった男が色んな女と関係を持っているであろう光景を何度となく見て来た。なのに何故ここまで自分に対して強引なことをしてくるんだろうと、頭の片隅で考える。これまでも蘭が自分に対して特に女扱いしてこなかったからこそ、分からない。

「ら…蘭さん…?」

てっきり襲われると思って覚悟を決めただったが、蘭の動きが止まったことでそっと視線を上げてみた。するとさっき以上に不満げな瞳と目が合う。蘭さんはしかめっ面をしていても色っぽいなぁと、こんな時に呑気なことを考えていると、小さな舌打ちが聞こえた。

「ムカつく」
「……っ」
「何でオマエごときにここまで欲情してんのか分かんねえ」
「だ、だったらやめてくれても…」
「あ?ここまでしてやめるわけねえだろ」
「……ぁっ!」

蘭の大きな手にすっぽり収まるくらいの胸をやんわりと揉みしだかれ、指先が悪戯に先端を掠めていく。それだけでビリビリと強い刺激が走る。のその反応に気を良くしたのか、蘭の瞳が喜色を湛えながらうっそりと微笑む。

「へえ…オマエ、随分と感度良さそう」
「…や、やめて…んっぁ」

顔を寄せ、耳元で囁く蘭から顔を反らしたのもつかの間、髪の合間から覗く耳輪をぺろりと舐められ、またも声が跳ねあがる。たったそれだけでゾクリとして、全身が粟立つほどの快感が走った。

(ダメだ…このままじゃ……バレちゃう…)

ふと前の恋人に言われたことを思い出し、強く唇を噛みしめる。あんなことがバレたら恥ずかしくて死んでしまう、と、どうにか蘭の施す愛撫に意識が向かないよう必死に耐えていた。しかし蘭の顏が耳から首筋、鎖骨と少しずつ下がっていくのを感じて、身体に力が入った。

「マジでほっせぇーな、オマエ…強く抱きしめたら折れんじゃねーの…」

やわやわと胸を揉みながら、胸元で蘭が笑う。その時、吐息が肌にかかり、それだけでもビクリと肩が跳ねた。

「敏感すぎじゃね?」

胸の上部分にも口付けながら、そっと視線を上げて見れば、は顔を反らしながら強く目を瞑って歯を食いしばっている。頬は赤く染まり、密着している部分からかすかな震えが伝わって、やたらと男の欲をそそられる気がした。

(やべ…マジで我慢できねえ)

羞恥で震える姿を見ていると、このまま服を剥ぎ取り、メチャクチャにしてやりたいという蘭の中の狂暴なオスが顔をのぞかせる。だがさすがに初心そうな相手に無茶は出来ず、あくまで優しく白い滑らかな肌へ唇を落とし、ふくよかとは言えない胸の先の飾りへも軽く口付ける。そこは淡い色味で綺麗な色形をしていた。

「綺麗だよな、オマエのここ」
「…ん…ふぁ…っ」
「おっと…っぶねぇな」

ちょっと胸の先へ口付けただけで、今まで強張っていたの体から力が一瞬抜けたのが分かり、蘭は少しばかり驚いた。脚に力が入らないのか、膝がガクガクしている。一瞬怖がっているのかと思ったが、そうは見えない。

…オマエ、感度良すぎじゃねえ?」
「……っ?」

何気なく感じたことを口にすれば、がどこか慌てたように首を振る。その目は少し潤んでいた。

「…ふーん。まあ、それは…触れば分かる」
「あ…ッ待っ…んん…っ!」

言うや否や、少しずつ主張しはじめた乳首をべろぉっと舐め上げ、すぐに口へ含んで舌先で弄ぶ。その瞬間、は喉と背中をのけ反らせ、小さな口から悲鳴に近い喘ぎが零れ落ちた。

「…んんっぁ…あっ…んっ」
「そんな気持ちいい?ここ」

蘭の口内ですぐに芯を持つほど硬くなった乳首を、更に舌先でつつきながら苦笑する。ちょっと刺激を与えるだけで、の体が面白いように跳ねた。蘭の問いに応えることも出来ないほど苦しげな息を吐きながら、何度も必死に首を振っている。

「も…もうやめ…」
「でも、ここすげー硬くなってっけど」

ツンと上を向いている乳首を唇に挟み、ちゅうっと強めに吸い上げると、はまたしてもビクビクと身を震わせて嬌声を上げる。その様子を見ていた蘭は「なあ」と言いながらを見上げた。ちょっと胸を愛撫しただけで、ここまでよがる女も珍しい。

って…めちゃくちゃ感度いい?」
「……っ」
「嫌がってるわりに身体はすげー反応いいじゃん」
「…ち、違う…ん、」
「嘘つけよ」

上体を起こした蘭はの耳元で囁きながら、耳へも舌を伸ばした。耳たぶを口へ含み、そこにも舌を這わせると、が溜まらず声を上げる。

「なあ…」

淡い色をした小さな乳首はすでに芯まで硬くなり、男を誘うようにツンと上を向いている。蘭は躊躇うことなくそこを舌先で弄ぶようにクニクニとこねながら、最後にペロリと舐めた。

「んん……ぁっ!」
「やっぱ…感度いいな、オマエ」

身悶えながら涙を溜めているの瞳を見て、蘭のバイオレットに輝く双眸が僅かに細められる。の手を放して胸の膨らみを包み、やんわりと揉みしだきながら、指先で赤く色づいてる蕾を擦れば、更にの声が跳ねた。その動作を繰り返し、舌先で弄んでいた乳首を再び強めに吸えば、は喉をのけ反らせて苦しげな喘ぎを洩らす。ビクビクと身を震わせる姿は、普段の彼女とは比べ物にならないほど淫靡で、男の欲をこの上なく刺激してきた。

「や…やめて…下さい…っ」
「何で?気持ち良くねえ?」
「…んっ…」
「オマエのここ、すげー硬くなってめちゃくちゃエロいんだけど。そんなに気持ちいい?」
「…ひゃ…ぁん」

蘭が口内で転がしながら再び吸い上げると、の背中が弓のようにしなった。長い黒髪がそれに合わせてサラサラと揺れる姿さえ、男の欲を昂らせていく。

「…胸だけでイキそうじゃん、
「…や…やめて…蘭さん…」
「かわい…もっと感じてるとこ見せて」
「…ひ…ゃ…あっ」

再び敏感になっている先端を口内で強く貪られ、はたまらず大きな声を跳ねさせた。蘭は片方の胸を弄んでいた手を、今度はゆっくりと下げて太腿を撫でていく。そのままスカートをたくし上げ、下着の上から無遠慮に秘処を弄り始めた。

「…んん…ぅ」
「なあ……」

胸から顔を上げ、の首筋へも舌を這わせながら、蘭が耳元で囁く。

「抱かせて」
「……っ」

心地いい低音がの鼓膜を震わせて、背中にゾクリとしたものが走った。

「…ん…っ」

先ほどから下着の上を這いまわっていた指が中へ吸い込まれていった瞬間、思わず身体を捻った。しかし弱々しい抵抗は蘭にとって何の意味もなさない。

「……濡れてんじゃん」
「……ゃ…っあ」

胸元に顔を埋めていた蘭がふとを見上げる。ペロリと唇を舐める動作も、ちらりと見えた赤い舌も、全てが淫靡では軽い眩暈がしてきた。散々弄ばれた乳首が痛いくらいに張りつめていて、そこを柔らかい舌で舐め転がされるたび、下腹部の奥がジンジンと疼き始めた。

「…ん、ん……ぁっ」

ショーツに入り込んだ手が焦らすように動き、指先で蜜のあふれる場所を撫でつける。はたまらず身をくねらせた。蘭の指が割れ目の形を確かめるように撫でていき、襞に入り込むとゆっくりと上下に動き始める。強烈な快感が押し寄せて、はすでに理性を飛ばしかけていた。

「…んっ…ふ…ぁ…っ」

普段、地味で色気のないが乱れて喘ぐ姿は、予想以上に蘭の目を愉しませた。これまで感じたこともないほどの興奮を覚えて、自然と指の動きが激しくなる。この女をもっと啼かせたい。そんな男特有の支配欲と、それとは別の何か。あまりに感じてくれている姿に胸の奥がやけに疼く。

「…んっあ…や…やめ…て」
「んー?ここもう入っちゃうなぁ?」
「…ひぁ…っ」

ゆるゆると入口付近を撫でていた蘭の指先がのナカへ侵入し、ちゅぷっと粘膜の混じる厭らしい水音が立つ。

「あ…ダ…ダメ…も…」
「まだ半分も挿れてねえのにイキそうなのかよ…かわいすぎ」

頬を紅潮させ、脚をガクガクと震わせるに、蘭の中の庇護欲――そんなものがあったのかと驚くが――が刺激され、目の前の女を可愛いと思ってしまった。自分で啼かせているにも関わらず、そんな感情が芽生えることに苦笑しつつ、奥へ奥へと指を埋め込んでいく。

「…ナカ、きちーな…処女…じゃねえよな。こんなに濡れてるし」
「…う…ぁ…っら、蘭さ……そこダ、ダメ…」
「ダメ?でもオマエ、ここ弱いだろ…すげー締め付けてくるじゃん」

ナカを探るように指を抽送していれば、彼女のどこが一番いいところなのかすぐに分かった。蘭の指がの弱い部分を何度も突いて、そのたびのナカがきゅんと締り、身体が勝手に過ぎた快楽を追いそうになる。

「んん…ら…んさん…も…やめ…」
「もっと感じろよ…オマエのイクとこ見せて」
「…や…ぁ…ふ…ぁっ」

すでに足には力も入らず、蘭の腕に支えられている状態で、は何度か頭を振った。蘭はを見つめながら、きつめの場所を解すよう指を増やしていく。奥を優しく擦りながら出し入れすれば、はまつ毛を震わせて、絶頂を迎えた。

「かわい。すげー気持ち良さそうな顔しちゃってんなぁ?」
「………ら…んさん」
「ん?もっと?」

とろんとした顔で見上げて来るに、蘭の喉が小さく鳴った。腰の辺りがゾクリとして、すでに痛いほど勃起している場所に更に血が集まりだす。

「ち…違…んぁ」

ナカから引き抜き、蜜で濡れた指を膨らんだ陰核に塗りつけ、優しく捏ねるように撫でながら、蘭はの潤んだ瞳に釘付けになった。今にも泣いてしまいそうに見える表情は誘っているようにしか見えない。

「…なあ」
「…ぁっ」

ふっくらとした陰核をぬるぬると指で刺激し、誘われるように再びナカへ指を埋めれば、また甘い声が跳ねた。

「抱かせろって」
「…ふ…ぁ…」

蘭の声が届いてるのかいないのか。は涙の溜まった瞳をきゅっと瞑り、指の動きに合わせて嬌声を上げる。その様子を見ていたら蘭も遂に限界がきた。返事は貰っていないが、もういい。ここで抱く、と苦しげに納まっている自分の下半身を楽にするべく、ジッパーに指をかけた時、大きなケータイの着信音が鳴り響き、互いにハッと息を飲んだ。しばし言葉もなく二人は至近距離で見つめ合う。そこで先に動いたのはだった。

「ダ、ダメっ!!」
「うぉ…っ」」

今の今までとろんとしていたくせに、ケータイの音で我に返ったのか、物凄い力で蘭を突き飛ばした。その細腕のどこにそんな力があるんだと蘭も驚く。

「…お…おおおお先に失礼します!!」
「……は?」

ははだけた場所を慌ただしく直してから、自分の荷物をかき集めるようにひっつかむと、蘭が呆気にとられている間にロッカー室を飛び出していく。絶句していた蘭だったが、しつこく鳴っているケータイで再び我に返ると、すぐに表示を確認。相手は望月からだった。ただの飲みの誘いだったので、今から行くと言って電話を切った。

「…ハァ。マジか」

電話を切った後、急に冷静になった蘭は、先ほどの自分の行動に驚いて頭を抱えた。そもそも女の裸なんて見慣れているはずなのに、あんな貧乳を覗き見てしまっただけで発情期の猿みたいに盛ってしまった自分が信じられない。

「欲求不満の童貞かよ…」

自分で自分に呆れつつ、でも何故かを抱きたい気持ちは消えてくれない。むしろ中途半端に煽られたせいで、余計に悶々とさせられている。大人しそうで地味なが、あれほど感じて乱れた姿が頭から離れない。

「ってか、アイツ、感度良すぎじゃね?」

男の欲を十分に満たしてくれる女だというのは間違いなく。本気で手に入れたいと思わされてしまった。

「焦らすだけ焦らして逃げやがって」

別にが焦らしたわけではないのだが、いきなり逃げ出されたのが蘭の癪に障った。

のヤツ…覚えとけよ」

どうやって手に入れてやろうか、と物騒なことを考えながら、蘭はロッカー室を後にした。