-05-身も心も君に捧ぐ


※軽めの性描写あり



1.

「ん…ワ、ワカくん…」
「…怖い?」

ゆるゆると口内を愛撫していたキスをとめて、ゆっくりと唇を離す。静かな室内にちゅっというリップ音が響き、の頬が更に赤みを帯びた。それでもオレの問いには慌てたように首を振る。

「怖くない…」

潤んだ瞳を揺らしながら小さな声で応える姿がいじらしく、オレの胸を疼かせるに十分なほど可愛らしい。溢れる愛しさが暴走しそうで正直ヤバいくらいに欲情している。だけどいつものようには出来なくて、を怖がらせないよう一旦息を整えてから、もう一度ふっくらとした唇を塞いだ。互いの熱を移すように触れ合い、馴染ませる。キスだけで下半身が反応するなんていつ以来ぶりだっけ?と頭の隅で考えた。

今日、泊ってく?と言った直後、恥ずかしそうに頷くを部屋にさらった。どうにも気持ちが昂っていて、部屋に入った途端、を抱きしめた。そして彼女との二度目のキスを交わす。こういう行為をしたことがないと言ってただけに、唇を重ねるだけで彼女の細い肩が震えるから、ガラにもなく胸の奥が熱く疼いた。
どれくらいそうしていたのか、触れるだけのキスを長いこと続けてるとの呼吸が苦しそうに見えて、ほんの少し離せば途端にぷはっと息を吸いだす。その姿が可愛くて軽く吹き出した。

「ごめん、苦しかった?」
「…だ…だい…じょう…ぶ」

はそう言うけど全然大丈夫な感じじゃない。耳まで赤く染めながら、色素の薄い瞳には涙が滲んでいる。ちょっとやりすぎたか?と思いつつ、まだ玄関だということに気づいた。どんだけ飢えてたんだ、オレは。
一旦落ち着こうと、靴を脱いでの手を引っ張る。「上がって」と言えば、も慌てて靴を脱いでオレについて来た。とりあえずをソファに座らせ、冷蔵庫から彼女の好きな甘い系のサワーを出すと、それをテーブルへと置く。

「それ飲んで待ってて。オレ、シャワー浴びて来る」
「あ…う、うん」

は赤い顔のまま素直に頷いて「頂きます」と言って来る。そして驚いたように「これ、わたしの好きなヤツ」とオレを見た。

「買っておいてくれたの…?」
「ああ、この前酒を買いに行った時に色々の好きそうなサワーがあったから買っておいた。の好きなイカくんもあるよ」
「えっ!」
「そこの棚に色々入ってるから好きに出して食べてて」

そう伝えるとは恥ずかしそうにしながら小さく頷いた。照れてる姿が可愛くて、笑いを噛み殺しつつバスルームへ向かう。前に飲んでた時に「はツマミって何が好き?」と聞いたら、意外にも「裂きイカ」と応えたから驚いた記憶がある。いや、オレも好きだし全然いいんだけど、が言うとどこかミスマッチでそういうのが可愛かったりする。

(それにしたって…同じ"来ちゃった"でも、だと全然不快に聞こえないのは何でだ?自分が謎過ぎる…)

ただ一つ違うのは、これまでの女達はヤった後から重たい行動をとりはじめたけど、とはまだ体の関係はない。それにが待ってたのはただ純粋にオレに少し会いたかっただけというもので、ケーキを渡して帰ろうとすらしていた。その裏のない感じが更にオレの何かを疼かせて、帰したくないと思わせるんだから、もし狙ってやっていたんだとしたら相当なあざとさだ。でもはそれを狙ってできるほど性悪じゃない。本当に純粋にオレに会いたくて、でも一日社長に付き合って疲れてるだろうから、と早く帰ろうとしただけ。その矛盾とも言える行動が更に可愛いなんて思ってしまう。

いよいよオレもに本気なんだと自覚した。素直なといると、オレも自然体でいられる。それがどれだけ大事なことか今のオレには十分分かっていた。美人だったり可愛い子はこれまで沢山付き合って来たけど、どれだけ好きだなんだと言ったところで自然体で過ごせる相手はそうそういない。少なからずどこかでカッコつけたり、相手も猫を被っていたり、恋人同士であっても騙し合いは続いていく。若い時はそれでもいいけど、オレくらいの年齢になってくると、そういうのが面倒に感じることもある。男なんだから多少の見栄はあって当たり前だけど、相手の中の"今牛若狭"を演じ続けるのは限界で、でも相手はいつまで経ってもオレにそれを要求してくる。ちょっとでも"カッコいい"から外れるのは許されない。だからオレも彼女と過ごすのが億劫になってくるし癒されないから連絡をするという行動が減っていく。これまで長く続いた子と別れるのはそんなパターンが多かった。

なのにといるとオレはカッコつける余裕もないほど心が乱されるし、むしろオレから構ってしまいたくなるんだから笑ってしまう。真ちゃんやベンケイに笑われるのも納得がいく。経験のないに手を出すことすら躊躇して、その結果彼女に変な心配をされるほど、オレは彼女に溺れていたんだから。
シャワーを浴びた後、二人で少し飲んで、それから自然にベッドへ入った。触れないことでいらぬ心配をかけるなら、今日でそれを終わりにしてしまおう。

「…んん、くすぐった…」
「どこ?ここ?」

もう一度、首筋にちゅっと口付けると、は首を窄めて恥ずかしそうに身を捩りながら頷く。その姿にいっそうオレの中のオスの部分が煽られ、年上の余裕なんてもんが根こそぎ削がれていく気がした。
は一度家に帰って着替えて来たらしく、こんな格好で恥ずかしいと言ってたけど、スクエアネックのノースリーブとミニスカートのようなショートパンツ姿はオレからすればめちゃくちゃ可愛い。いつものふんわりした服装も可愛いけど、こういった油断したような普段着姿もまた、たまらない。

「脱がしていい…?」
「え…」

の唇、頬、最後に耳へキスを落としながら訪ねると視線だけを動かしてオレを見上げて来る。不安そうな恥ずかしそうな、何ともいえない表情にまたドキっとさせられた。一瞬ダメって言われるかと思ったものの、はぎゅっと目を瞑ってコクンと小さく頷いてくれた。少しホっとしてノースリーブをお腹の方からめくっていくと、そのまま一気に脱がせた。両手をバンザイにして脱がされている姿はどこか子供みたいで、自然と頬が緩んでしまう。

「は、恥ずかしい…」
「何で?凄く綺麗じゃん」

お世辞でも何でもなく。の素肌はどこまでも白く透明感があった。括れた細い腰に薄い腹。フリルのついたストラップで涼しげな水色が可愛いブラが形のいいふっくらとした乳房を包んでいる。胸の真ん中辺りへ口付けながら背中のホックを外すと、大事に隠されていた膨らみに押し上げられるようにブラが浮き上がり、それを取り払ったら形のいい双丘そうきゅうが露わになった。鎖骨から膨らみへかけて唇を滑らせると、真ん中でオレを誘うように色づく突起を迷わず口へ含む。その瞬間「ひゃ」という可愛い声が室内に響いた。

「…んんっ」

くすぐったいのか、上半身をかすかにくねらせるを盗み見ながら舌で優しく転がし、時折ちゅうっと吸ってやれば、ビクンと腰が跳ねて「ワ、ワカく…ん」と名前を呼ばれた。こういう時に名を呼ぶのは反則だ。痛いくらいに自身が勃ち上がってるのが分かるだけに、血が上った頭を落ち着かせようと、息を一つ吐き 今度はショートパンツへと手をかけた。ジッパーを下ろし、そこから手を滑り込ませると、そこは熱く火照ってる。は緊張もマックスなのか、全体的に力が入っている為、このままじゃ脱がしにくい。オレは上半身を起こして彼女の足を軽く持ち上げてから脱がすことにした。

、腰あげて。そう」

は胸元を腕で隠しながら、僅かに腰を上げてくれる。その姿が何とも艶めかしくて、出来れば今すぐ挿れたいくらいだ。でも初めての子はきちんと解して濡らしてあげないと多分最後までするのはムリだろう。

、少し力抜いて、オレに身を任せてて」
「…え、な、何するの」

下着一枚の姿で恥ずかしいのか、は真っ赤になりながらも不安そうにオレを見上げてきた。

「このままじゃがツラいから慣らさないと」

言いながら自分の体を下げて彼女の脚を押し広げると、途端に力が入る。その間へ強引に体を入れると、スベスベとした内腿へちゅっと口付けた。

「ひゃ…ワカ…くん…?な、何して…」
のここ、見せて」
「え…っ…ぁっ」

いきなり直接は刺激が強いだろうから、下着の上から彼女のそこへ口付ける。は驚いたように脚を閉じようとしたけど、それを手でやんわりと押さえて行為を続けた。

「…ゃ…は、恥ずかしぃ…」
「痛いことしないし大丈夫だから、脚の力抜いて」

内腿をそっと擦りながら言えば、は泣きそうな声で「うん…」と頷いたのが聞こえた。膝を閉じようとする力が消えて、脱力した太腿をさらに押し広げると、は恥ずかしそうに両手で顔を隠してしまった。

(…可愛すぎなんだけど)

オレの心臓にこれ以上負担をかけないで欲しいと願いつつ、軽く息を吐き出してからその場所へ口付ける。上部分に隠れてる陰核の辺りを指で擦りながら、入り口付近へ舌を這わせると、何度かの腰がビクリと跳ねるのが分かった。そのうちオレの唾液以外で湿ってきた下着を片寄せると、直接その場所へ舌を這わせる。その瞬間、の声も腰も大きく跳ねて、また脚に力が入ったようだった。それでも縦のラインに沿って舐め上げると、少しずつ甘さを含んだ嬌声がオレの耳を刺激してくる。そのうち舐めている場所からぬるりとしたものが溢れてくるのが分かった。彼女が感じてくれていると思うだけで興奮して、すでに膨らんでいる突起をそっと口内に含むと、の嬌声が一際高くなった。

「…ぁっゃあ…く、くすぐったぃ…っんんっ」

女の体の中で一番の性感帯だからこそ、初めての刺激は強すぎるらしい。口内で舐めたり転がしたりするだけで、は見悶えしながら腰を引こうとする。それでもだいぶ濡れてきた。溢れる蜜を指で掬って陰核へ塗りつけ、ぬるぬると弄ぶように擦っただけでの体が跳ねて初めての絶頂を迎えたようだった。その姿が可愛くて、オレもそろそろ限界が近づいて来る。

「大丈夫?」
「…ワ…ワカく…ん」

気怠いのか、は白い胸を上下させながら、荒い呼吸の中、オレのことを呼んだ。

「まだこれからなんだけど…大丈夫そう?」
「…だ…だい…じょうぶ…」

上体を起こしてに覆いかぶさると、目尻に溢れた涙を唇で掬ってあげた。そのまま唇にもキスを落とせば、がホッとしたように微笑む。

「最終確認だけど…マジでオレでいいの」
「え…」
の初めてを貰うのが、オレでいいのかよ」

このまま抱けば絶対、オレは彼女を手放せなくなる。でもはまだ女子大生で、本当にオレがこの子の初めてでいいのか、なんてガラにもない心配がこみ上げて来た。

「な…何でそんなこと聞くの…?やっぱり…子供っぽいわたしじゃ抱きたくない…?」
「は?何で。違うって」

何を勘違いしたのか、は涙を溜めながら声を震わせている。その可愛さといったら犯罪級だった。抱きたくないどころか今すぐ挿れて、メチャクチャにしたい。そんな獣並みの欲求をせっかく我慢してるというのに、彼女のせいで腰にかなりの負担がかかった気がする。

「初めての相手はずっと記憶に残るもんだろ…?だから…ホントにオレが奪ってもいいのかって…ちょっと心配になっただけ」

カッコ悪いことを口にしながら、情けねえなオレ、と苦笑が洩れる。でもこれが今のオレなんだから仕方ない。は少し驚いたようにオレを見つめていたけど、零れ落ちた涙を手で拭い「だからワカくんがいいの…」とオレの心臓にまで負担がかかるような台詞を口にした。

「最初も……その後も…ずーっとワカくんがいい」

オレの腕にしがみつきながら、彼女は涙を堪えて紡いだ言葉に、今度こそ心臓が撃ち抜かれる。

「…っ……それ、マジで反則すぎ」

完全に、身も心もに堕ちた瞬間だったかもしれない。

「それ、逆プロポーズみてえ」

の頬に口付けながら耳元で呟けば、の頬が更に色づいた。





2.

休日の夕方。昼頃までゴロゴロと寝て、起きたら昼飯を食って、午後からダラダラと茶の間のソファでテレビを見ていたら、オレの中で出禁にしたはずの女の子が普通に茶の間に顔を出した。どうやら万次郎が勝手に上げてしまったらしい。余計なことをしやがって。

「はい、真ちゃん。お土産~!31のアイスだよ。万次郎くんとエマちゃんと万作さんの分もあるから皆で食べてねー」

ちゃんはテーブルの上に置いたアイスの入った箱を開けて、中身を万次郎に見せている。今日は特に機嫌は悪くなさそうだ。

「ぉぉお!サンキュー、!オレ、ストロベリーチーズケーキ!」
「あっ!万次郎、オマエ、勝手に食うな!エマが戻って来るまで待てねえのかよっ」
「待てねえなあー」
「あっこら!」

素早く箱から目当てのフレーバーを奪うと、万次郎はサッサと逃げていく。でもちゃんは「二個ずつ買って来たから大丈夫だよ、真ちゃん」と何とも可愛らしい笑顔で言った。この子がオレの彼女で、こうして差し入れを持って遊びに来てくれたんだったら最高なのに、という思いが過ぎりつつ。どうせ彼女の後ろから派手な彼氏・・・・・が来るんだろ?とオレは深い溜息を吐きつつ、庭先へ視線を向ける。だけど一向に現れず、オレは首を傾げた。

ちゃん、ワカは?一緒じゃねえの?」
「え?あ…うん。ワカくん、ぐっすり眠ってるから暇でわたしだけ来ちゃったの。今日、真ちゃんお休みだったなあと思って」
「…あ、そう…。(オレんちは暇つぶしか…)」

そう思いながらも、目の前でニコニコと可愛い笑顔を浮かべているちゃんに、つい頬が緩んでしまう。邪魔者がくっついて来てないなら、この際ちゃんと仲良くアイスでも食べるとしようか。

「真ちゃん、どれがいい?」
「ん-じゃあチョコミント」
「はい。わたしもチョコミント好きなんだー。だからこれだけ三つ買って来ちゃった」

…可愛い。てへぺろ系はオレのドストライクな可愛さだ。くそ、オレが彼氏だったなら今ので間違いなくチューしてるとこだ。もちろんオレにも理性や道徳はあるから手を出したりはしないけど。それにしても、可愛いなぁ、ちゃんは。小柄で細身なのに、胸はあるしぷりっとしててスタイルもいい。その体に童顔とくればお人形さんもビックリの可愛さだ。性格は更にタイプだ。甘えん坊で一途、こんな風に手土産持参するくらい気が利くし、もうこんな子が他に現れないんじゃってくらい、オレの中での完璧度が高い。なのにワカがシレっと掻っ攫っていった時は温厚なオレもちょっと、いやかなり。ムカついた。もし間違ってワカが浮気したり、ちゃんと別れたその時は今度こそ口説こうかなとマジで思ってるのはベンケイにも内緒のことだ。

「真ちゃん、美味しい?」
「ん、美味いよ」
「良かったー」
「……(かぁいい)

ちゃんといると、オレの語彙力がどんどん失われていく。ワカもそんな感じになってたし、え、オレもワカと同じレベル?

「どうしたの?真ちゃん」
「い、いや。何でも――」

ない、と言いかけた時。少し身を乗り出したちゃんの胸元がチラリと見えた。だいぶ大きく開いたノースリーブを着ているせいで、それはいきなりオレの視界に飛び込んで来た。

「え、ちゃん、何かに刺されたのかよ」
「え?」
「ここ、赤くなってっけど――」

と言いかけて言葉を切った。オレの一言でちゃんの色白な頬が真っ赤に染まったというのもあるけど、その赤い痣が何も虫刺されとは限らないと気づいたからだ。だいたい虫刺されなら、どんなけエロい蚊だよって思う場所についている。谷間なんてオレが蚊になりたいわっと良からぬ妄想をしつつ、脳半分はかなりショックを受けていた。

「え、えっとこれ…虫刺されじゃないの」
「……だよな」
「あ、ほら。前に真ちゃんに相談したから言うけど実は…」

ちゃんは恥ずかしそうにモジモジしながらオレの隣に来ると、耳元でゴニョゴニョと話し出した。その内容に今度こそ後頭部をハンマーで殴られたような衝撃を受けた。

「…というわけなの。だからもう大丈夫だよ」
「…ははは。そ…そそれは…よよよ良かった…ははは」

頬を染めながら嬉しそうにワカとの、それもちゃんにとっては初エッチの報告をされ、オレの顔は下手くそな奴が遊んだ福笑いかと思うほどに歪んだ気がした。ワカがこの可愛らしいちゃんをベッドへ組み敷いて、あんなとこや、こんなとこを触ったりアレしたりしたのかと思うと、腹の底から怒りがこみあげて来る。
その時、玄関の方から「真ちゃん!!」という大きな声と共に、ドタドタと廊下を走ってくる音が聞こえて、茶の前に息を切らせたワカが飛び込んで来た。

、来てね――って、いるし!」
「あーワカくん!」

ちゃんはワカを見るなり満面の笑みを浮かべて抱き着いた。まるで飼い主のお迎えに大喜びしている子犬のように可愛い。ワカも一気に顔が緩んで締りのない笑みを彼女へ向けた。

「ったく…起こせよ、暇なら」
「ごめんね。迎えに来てくれたの?」

ワカに抱き着きながら見上げている彼女の可愛さといったら犯罪級…。オレもあんな風に抱きつかれたい。

「そりゃそうだろ。暇だから真ちゃんとこ行ってるね、なんてメール読んだら」
「ごめんね。わたし、凄く早く目が覚めちゃって。ワカくんグッスリ寝てたから起こすのもかわいそうだし…」
「目が覚めて隣にがいないと気づいた時のオレがかわいそーじゃん」
「そ、そうだね。ごめん」
「いや、こうして無事に会えたからいいよ」
「えへへ」

いや、別にオレがさらったわけでもねえし、迷子でもねえだろ。ってかホームですれ違いになって、やっと会えた遠距離恋愛中のカップルか!
オレの目の前で無遠慮にイチャイチャしはじめたバカップルに、沸々と怒りが湧いて来る。その殺気に気づいたのか、ワカがふとオレを見てニヤリと黒い笑みを浮かべた。

「あそこに鼻息の荒いお兄さんがいるから、そろそろ帰ろうか」
「え?あ、うん」

ワカは嫌味のようにオレを指さし、の頭をナデナデしている。とことんムカつく色男だ。

「じゃあ真ちゃん、またね」
「お、おー」
「またねー真ちゃん」
「とっとと帰れ!」

ちゃんの真似をして余裕の笑みを見せるワカにだけは、心が広くなれなかった。くわっと目を吊り上げて怒鳴ると、ワカは「こわ」と笑いつつ、ちゃんの手をを引きながら仲良く帰って行った。

「あはは!一瞬の春だったなー。シンイチロー」

いつの間に戻って来たのか、後ろで爆笑している万次郎の頭頂部にオレの拳がさく裂したのは至極当然のことだった。 ってかリア充爆発しろ。