※この先性的表現あり
処女喪失時は激痛が伴う。そんな噂はよく耳にしていた。女子同士では経験のある子の話が貴重な情報源になる。その子達が口々に言っていたのは表現は違えど全て同じ感想だった。
"マジ、あそこが裂けたかと思った"
"紙で指を切ったようなヒリヒリした痛みだったよ"
"濡れる前にサッサと挿れられたからめちゃくちゃ痛かった~"
その話を聞いてどっちにしろ痛いのか、とビビった記憶がある。でもそれは最初だけで、それ以降は痛みも引いたとは話してたけど、気持ち良さだけは人によって変わるからハッキリとは分からないらしい。
"要は相手次第"
だそうだ。相手の男の子がどれだけ優しく進めてくれるかで最初の痛みや、二回目以降からの気持ち良さが変わるんだとか。
(そういうことなら…蘭ちゃんは合格なんじゃないだろうか…)
大事な場面だという時に、ふとそんな話を思いだして、ひとり納得した。だって初めての経験なのに、私はすでに蕩けてしまうほど、蘭ちゃんに優しくされてる気がする。最初は分からなかった濡れるという感覚が、今は自分でも分かるほどに濡れてる気がする。蘭ちゃんが丁寧に解してくれたおかげかもしれない。中で指を動かされてもヒリつく感じがなくなった。逆に蘭ちゃんに厭らしいことをされてると思うだけで更に潤みが増していく気がして、私って意外にエッチなのか?と恥ずかしくなるほどだ。でもそれはやっぱり相手のことをどれくらい好きかでも変わって来る気がした。
蘭ちゃんは限界と言いながらも、避妊具―ちゃっかり持ってたらしい―を付けた後もちゃんと優しく愛撫を施してくれて、体の強張りもだいぶ解れて来た気がする。
「…挿れんぞ」
息が乱れて返事もままならない。小さく頷くと、散々弄られた場所に熱くて硬いものを押し付けられた。それだけで心臓がきゅっと縮んだ気がする。
「シッカリ濡れてるし、そんな痛くねえと思うけど…力は抜いとけ」
「…蘭ちゃ…ん」
「ん?」
「…好き」
いざという場面になると、急に言いたくなった。さっきから脳内で好きが大渋滞を起こしてたから、一度吐き出さないと爆発してしまいそうだった。蘭ちゃんは少し驚いたような顔をして私から視線を反らすと「…煽んなよ」と呟く。
「今すぐ挿れたいのすげー我慢してゆっくり進めてたのに…」
スネたようにボヤいた蘭ちゃんは小さく息を吐き出すと、私の唇にちゅっとキスを落とした。
「…行くぞ」
「…ん」
私も軽く深呼吸をして体の力を抜けるだけ抜いてみる。同時に潤みのある場所に硬くて大きなものが入って来る感覚に腰が引けそうになった。指とは全然、圧迫感が違う。
「…んんっ」
「うわ…キツ…これ入んの…?」
蘭ちゃんも苦しそうに息を吐いて苦笑いを浮かべたのが視界の端に映った。入るかどうかなんてそんなの私にも分かんない。でも痛みよりも凄い圧迫感で自然と力が入ってしまう。
「…力抜いて」
「う…うん…でも…勝手に力んじゃ…う」
「…マジ?まだ全然、入ってねぇんだけど…」
「…うそ…」
苦笑交じりで言われて、私は驚いた。この圧迫感でも全部入ってないなんてあるのかと思う。その時、蘭ちゃんの額から汗が一筋垂れて、私の胸元へ落ちた。何となく蘭ちゃんもツラそうな顔をしてて、男の人でも痛いのかなと思ってしまった。でも聞いたら「思い切り突っ込みたい衝動に耐えてる」んだそうだ。ギョっとした私を見下ろした蘭ちゃんは、切なげに眉間を寄せると、
「…」
「…え?」
「ごめん」
何が?と問う暇もなく。言うや否や、蘭ちゃんがぐいっと腰を押し付けてきて、同時に私のあそこが裂けるかと思うような圧迫感に襲われた。
「…んんぁっ」
実際、ピリっとしたくらいで思ってたような痛みがなかったのにも驚いたけど、奥の方に当たった感覚でじわりとそこから熱が生まれたことに一番驚く。
「…悪い。痛かった?」
どうにか首を振ると、蘭ちゃんはホっとしたように息を吐いた。あのままだとお互いツラいと思って一気に入れたらしい。痛いというより下腹部の辺りがジクジクとしてるけど、蘭ちゃんと繋がれた喜びの方が勝ってしまった。
「…やべえ…めちゃくちゃ締め付けられてっから、もうイきそう」
「ご…ごめ…ん」
中が圧迫されるからか、無意識に力が入っているみたいだ。蘭ちゃんがツラそうで、つい謝ると、「謝んな…気持ちよすぎなだけだし」と苦笑された。そのまま少しの間ジっとしていると、だいぶ違和感も減って来た気がする。
「もう慣れた…?」
初めて男の人を受け入れたところはだいぶ馴染んできた気がして頷いた。
「じゃあ…動いてい?」
「…うん…だいじょう…ぶ…動いて…」
切なげに訊いて来る蘭ちゃんが可愛くて、そっと頬に手を伸ばすと、指先にキスをされて、ぎゅっと握られた。その手を顔の横に固定されたと思った瞬間、中に埋められたものが一気に引かれ、また奥までズンと入って来る。思わず私の口から苦しげな声が洩れた。
「…ぁ…っんぁ…」
最初はゆっくりだった動きが次第に速まっていく。余裕がないというように性急な動きで腰を打ち付けられる。何度も揺さぶられて声が掠れるくらいに喘がされて、また全身に熱が巡り始めた。ハッキリ言えば気持ちいいとかの快感はないけど、しっかり濡れているおかげでビビっていたほどの痛みはない。最初の行為は圧迫感だけがあった。でも蘭ちゃんに初めてをあげることが出来たという満足感でいっぱいになる。何度もキスを交わし、蘭ちゃんが一度イった後の二回目の行為は最初から奥に入れられて全身にゾクゾクとしたものが走った。
「…痛くねえ?」
「…平気…んあ…っ」
「やべぇな、これ…猿になりそ…の中、気持ち良すぎてバカんなる…」
激しく腰を打ち付けながら、蘭ちゃんが蕩けたような顔で呟く。それだけで私は満たされてしまうから不思議だ。好きな人が、蘭ちゃんが私で気持ち良くなってくれてると思うと、何故か私までお腹の奥が疼いてきた。
「…んぁ…っ」
不意に蘭ちゃんのが私の中のどこかに当たった。ビリビリとしたものを感じて声が跳ねる。それに気づいた蘭ちゃんが僅かに笑みを浮かべた。
「ここ…気持ちいーの…?」
「ぇ…わ…わかんな…い…んっ」
「ここ突いたら中がすげー絡みついてくんだけど…」
「…ゃ…あ…っそ、そこ…や…だっ」
私の体で何が起きてるのかすら分からない。でも蘭ちゃんの言ったようにそこを突かれるだけで、ぞわぞわと肌が粟立つ。蘭ちゃんがそこばかり刺激してくるせいで、だんだんと甘い痺れが増して、何かが上り詰めて来る感覚に襲われた。
「……こっち見ろ」
その時、蘭ちゃんが急に動きを止めて私を呼んだ。その甘い低音が、耳に心地よく響いて、またゾクリとした痺れが走る。乱れた呼吸だけが室内に響いて、熱い体はすっかり汗ばんでいる。自然に涙が浮かんで来るけど、それは痛いからとかじゃなく、好きな人に抱かれて死ぬほど幸せだからだ。まさかこんな気持ちにさせられるなんて、会った時には少しも思わなかったのに。
「…可愛い。気持ちいいって顔してる」
「……っ?」
ふっと笑みを浮かべた蘭ちゃんに唇を塞がれる。繋がっている部分が更に深く繋がると、奥の奥がじわりと疼いた。すっかり蕩けた部分からはジンジンとした熱が溢れてくるようで、どうにもたまらなくなった。
「…オマエのこんな顔、誰にも見せたくねえな」
「…蘭…ちゃん…?」
絡めとられていた舌が離れたと思った瞬間、蘭ちゃんが呟く。自分がどんな顔をしてるのかなんて分からない。でも蘭ちゃんに与えられる刺激が脳まで届いて、時々何も考えられずに真っ白になってしまう。
「…ん…ぁあっ」
一度浅いところまで引き抜き、すぐに奥まで一気に突かれると、さっきの余韻がまた波のように押し寄せて来た。ヒリヒリした痛みはあるのに、また別の熱が全身を覆う。
「…」
蘭ちゃんが甘い声で名前を呼ぶたび、愛おしさで胸が苦しくなる。
私達はこれからだと思ってた。抱き合って、一つになって、身も心も全て繋がって、これから始まるんだと、そう思ってた。
でも現実は――そんなに甘いものじゃないと、この後に思い知らされた。