※性的描写あり。苦手な方はご注意下さい。
触れるだけのような軽いキスを何度も繰り返しながら、蘭さんの手が肌をゆっくりと滑る。少し冷たい感触が火照った身体には気持ちがいい。
――帰したくなくなったわ。
そんな甘い言葉を言われて、私はあっさり蘭さんに堕ちてしまった。きっと心のどこかでそんな期待があったのかもしれないし、断ったら次はもうないかも、という恐怖も感じていた。
――ほんとにいいのかよ?ちゃんって彼氏いんだろ。
彼氏のことは竜胆さんに話したことがある。
それを聞いたらしい蘭さんはそんな意地の悪い質問をしてきたけど、私の気持ちは変わらなかった。
海斗に対して申し訳ないという気持ちより、蘭さんに会ってもらえなくなる方が怖いだなんて、ほんとどうかしてる。
でも海斗だって夜に連絡するなんて言ってたくせに、こんな時間になっても一向にかけてくる気配はないから、きっと私のことは忘れて飲み会を楽しんでるんだろう。
(どうせ合コンだろうけど…)
いつも先輩の飲み会なんて言ってるけど、そこに女の子が参加してるのは人づてで聞いて知っていた。
でもそこを問い詰めたところでケンカになるだけだし今まで黙ってたけど、少しの疑問も沸かなかったわけじゃない。
私は海斗の何なの?
そんな思いが燻り続けてた反動が今こんな形で出てるのかもしれない。
蘭さんは大人だから、私を上手に甘やかしてくれる。
「可愛いな、ちゃんは」
体の熱が上がる甘いキスの後は、こうして胸が疼くような言葉をくれる。
飲みなれない赤ワインを飲んだせいか、頭も視界もふわふわするから、まるで夢の世界にいるみたいだ。
私も帰りたくない、と言った後、蘭さんは私を抱き上げてベッドルームへと運んでくれた。そんなことをされたのも初めてで、ときめくなと言う方が無理だと思う。
「…ん…ぅ」
アルコールと少しの睡魔で瞑ってしまいそうな目を蘭さんに向けると、再び唇を塞がれて今度は深いキスをされた。舌先で私の唇を優しく開いて、口内を愛撫するように蘭さんの舌が動く。こんな甘いキスをされたのは初めてで、自然と体が火照っていくのが自分でもハッキリと分かった。
すでに脱がされた服はベッドの下に落とされ、下着だけ身に着けた肌を蘭さんは慣れた手つきで暴いていく。
「…ぁっ」
ブラジャーのホックを秒で外され、直に膨らみへ触れられた時、思わず声が漏れてしまった。蘭さんの手のひらが胸の先端を掠った程度。なのにたったそれだけで肌が粟立つくらいに気持ちいいなんて、いったいどうしたっていうんだろう。
――ってさぁ、ちょっと感度悪いんじゃねーの?
海斗に体を許してしばらくした頃、不意にそんな言葉を投げつけられたことがある。
その時はビックリして、どう応えていいのかすら分からなかった。だけど確かに海斗に抱かれる時、私は友達が言うほど気持ちいいとは感じてなかったかもしれない。ただ海斗が迫ってくるからそれを受け入れる。彼女としての義務みたいな気持ちだった。
そのうち慣れれば感度なんて良くなると思ってたし、あまり深く考えたこともない。単に経験が少ないだけだと思ってた。
だけど――そこで気づいた。
海斗は誰と比べて感度が悪いと感じたんだろう?
私と同じで海斗も初めてだったのは間違いないし、お互い手探りでの初体験だった記憶がある。
なのに急にあんなことを言いだすなんておかしい。
あの時はてっきりエッチな動画の見すぎだと思ってたけど、もしかしたら違うのかもしれない。
「んぁ…ぁっ」
胸の形を変えながら、蘭さんの指先がすでに硬くなった場所を弄ってくるだけで、ぶるりと身体が震える。擦ったり、軽く摘まんだりされると、それだけで痺れるくらいの感覚が広がっていった。
「ちゃんって敏感?もうこんなに硬くなってる」
「…そ、そんなことは…」
ない、と言いたかったけど、指摘されたことは間違ってなくて、蘭さんに乳首を弄られるだけで体がびくんと反応してしまう。
「マジで可愛い」
ちゅっ…と音を立てながら、蘭さんは私の胸にキスを落とした。伸ばされた舌がゆっくりと円を描いて、私の肌をぬるりと舐め上げていく。
「…んっ」
すでに硬く主張している乳首を強く吸い上げられた。蘭さんの手が脇腹を撫でながら下着まで滑り下りて、逃げることもできないまま、最後の一枚を脱がされていく。少しだけ冷んやりとした空気が肌を撫でる感覚に背中がゾクリとして。軽く身震いしている間に脚の間へ彼の手が滑るように入り込む。そのまま指先で擦るように隠された場所を撫でられた。それだけでビクビクと体が震えてしまう。
「もう濡れてるよ、ちゃんのここ」
「え…嘘…」
「嘘じゃねえって。ほら」
蘭さんは苦笑いを浮かべると、指の動きを少しだけ速めた。
「や…ちが…んんっ」
どんなに否定したところで私のカラダは正直だった。
指で割れ目をなぞられると、恥ずかしい場所がくちゅくちゅと厭らしい音を立ててしまう。自分でも信じられないくらいに溢れてるのが分かった。
「いつもこんな感じ?」
「ち、違う…。いつもはこんな、あぁ…っ」
すっかり敏感になっている芽に指を擦り付けられて思わず声が出る。
「へえ…いつもは違うんだ?」
蘭さんは意地悪な笑みを浮かべながら私を見下ろしてくる。その表情ですら色っぽい…なんて見惚れてしまった。
「だ、だって…私、感度悪いって言われ…て…ぁっ…」
「こんなに感じてるのに感度わりーわけねえじゃん。クリもいい感じに膨らんでるし」
浅い場所を指で抜き差ししながら、蘭さんは敏感な芽を軽くつついてきた。耳殻をゆっくりと舐めながら、左手で胸全体を揉んで、時折、指の腹で乳首を撫でる。
「あぁっ、ん…っ!」
体験したことのない快感が全身を襲っておかしくなりそうだった。
私の気持ちも気分も無視して勝手にその気になって、すぐに挿れようとする海斗とは全然違う。
蘭さんは丁寧な愛撫を施して優しく触ってくれるし、どこをどうすれば女が気持ちいいのか、よく知ってるんだと思った。
年の差や経験の差はこんなとこで現れるのかもしれない。
耳を軽く舐められて、首筋にキスが落ちてくる。胸を揉みしだかれて、蘭さんの唇が膝の裏から太腿を通ってゆっくり舌を這わしていく。そのまま恥ずかしい場所を舐められて、ナカまで舌先で弄られた。
こんなことをされるのも初めてで、愛液を舐めとる卑猥な音が耳を刺激しておかしくなりそうだ。気がつくと私はすっかり蕩けさせられていた。
指を厭らしく動かされると勝手に腰が浮く。くちゅっとえっちな音を立てながら緩急をつけて浅い場所を出し挿れされるのがたまらない。ナカがきゅうっと収縮するのが分かった。
どうしよう。凄く気持ちいい。
「ちゃんのここ、すげー濡れてきた。そんなに気持ちいいんだ?」
幼い子に話しかけるような、穏やかな低音が耳元で聞こえた。濡れた唇が耳輪に吸いついて、そのまま首から胸元まで舐め回される。乳首を強く吸われた瞬間、背中が勝手に反ってしまった。
「……ん…き、気持ち…いい…」
「…かわい。やっぱ素直だよなぁ?ちゃんは」
蘭さんはあやすように私の頭を撫でながら、唇へちゅっと軽めのキスを落とす。それだけで胸の奥がざわめいて変な音を立てた。
海斗はこんなに丁寧に触れてはくれない。適当に私のカラダを弄ってるだけのくせに感度が悪いと文句を言ってくる。最悪だったのは「濡れてねえじゃん」と言われてローションを塗られた時だ。あの時は凄く不快で屈辱だった。
そんな物で濡らして無理やりねじ込んで、自分だけさっさと終わらせてしまう。そんな身勝手なセックスが当たり前。最初も痛いだけだった。慣れてきた今だって周りが騒ぐほど気持ちのいいものじゃないし、単に異物感があるだけだと、そう思ってた。
だけど、いざ蘭さんに身を任せてみたら、私はセックスが本当はどんなものなのか、全然分かってなかったんだと実感した。
現に腿を開かされた恥ずかしい格好のまま、私は延々と蘭さんの手や舌に弄ばれて、声が枯れるほど喘ぎ続けている。蘭さんは乳首を舌で転がしながら、いつもの冷静な目で私が喘ぐ姿を眺めていた。
恥ずかしい格好で体を弄られて、散々感じてる顔を見られてる。そう思った瞬間、羞恥心で身体が震えた。
「こんなに濡れてたらそろそろ大丈夫か…指、入れるよ」
私の頬に口付けながら、蘭さんが優しい声で囁く。
こんな時、海斗は私に告げることなく勝手にナカを掻きまわして解したと思い込んで突っ込んでくるような男だ。だから余計に蘭さんが大人に見えた。
「…んぅ…ぁっ」
その時、たっぷりと濡らされた場所に蘭さんの指がぬぷりと入ってくるのが分かった。その甘い刺激で思わず喉を反らす。それは単に気持ちいいだけじゃなく――。
(嘘…指が…当たってる…?)
海斗にされる時には感じたことのない刺激を下腹の奥に感じて驚いた。
「痛くない?」
「…い、痛くな…んんっ」
ナカでゆっくりと抜き差しされ、また腰がびくんと揺れた。蘭さんの指が長くて、簡単に奥の方を突いてくるせいだ。
「奥、気持ちいい?それともここかな」
「…ぁあ…っん」
不意に奥を突いていた指が、入口付近まで抜かれ、下腹辺りの内壁を擦るように動いた。その瞬間、ぶわっと肌が粟立ってナカがジンジンと疼き始めた。そこを刺激され続けてると、何かが迫って来るような感覚になる。
「ら、蘭さ…そこ…ダメ…何か…変……」
「もしかしてさぁ…ちゃん、ナカでイくの初めて?」
頭を振って蘭さんの胸元のシャツを掴むと、彼はかすかに微笑んだようだった。
「大丈夫だって。気持ち良くしてやるから」
耳元でそう囁いたかと思えば、蘭さんは指の動きを少しずつ速めて、ある場所を何度も擦り上げてきた。
「イきそうなんだろ?可愛い顔見せて」
「ぁ…ぁあっ」
ぐちゅぐちゅと蘭さんの指が立てる卑猥な水音を聞きながら、私は初めての絶頂を体験させられた。
何度か刺激を繰り返された直後、足が勝手に痙攣して、電気の波に襲われたような甘い痺れが下腹部から足にかけて走る。
目の前が真っ白で、呼吸の激しい乱れとは裏腹に全身の力が抜けていった。
「ちゃんって可愛い顔でイくのなー?コーフンしたわ」
肩を上下させながら荒い呼吸を整えていると蘭さんが耳元で囁いた。それだけでゾクリとして、また何かを期待するみたいにナカの奥の方がズクンと疼く。
私、蘭さんにイカされちゃったんだ、と思うと凄く恥ずかしい。なのにもっと気持ちよくして欲しい、なんて前の自分なら考えもしない思いが胸を過ぎった。
あの蘭さんが私を見て興奮してくれてると思うと凄く嬉しくて、気分が余計に高揚していく。
「あー…ちゃんが厭らしい顔するから、こんなになっちゃったじゃん」
蘭さんはそう言いながら、私の手首を掴むと、自分の下半身へと押し当てた。蘭さんのソレは海斗のよりも大きくて硬い。ドキっとして反射的に手を引っ込めそうになった。でも蘭さんがそれを許すはずもなく、「触って」と甘い声でおねだりしてくる。
それがやけに可愛くて、そのギャップにまた胸がきゅんと鳴ってしまった。
殆ど裸の私と違って、蘭さんはまだスーツのジャケットを脱いだだけの状態だ。だから下半身はスラックスのせいで少し窮屈そうに見えた。
私がイクのを見て興奮したから、蘭さんのがこんなに大きくなってる。そう思うと最高にドキドキしてくる。
促されるまま、スラックスのジッパーを下げていくと、黒いボクサータイプの下着が見えた。それだけでやけに恥ずかしくなったけど、私を見下ろす蘭さんの瞳が熱っぽく揺らいでいて、こっちまで変な気分になった。
きっと蘭さんが言うような興奮してる状態だったのかもしれない。淡泊だと思っていた自分が男の人を見て欲情するなんて信じられなかった。でももう誤魔化せないくらい、蘭さんに触れたいと思ってしまった。
下着の圧迫で窮屈そうな蘭さんの熱に指を伸ばしてしまったのは、ある意味失態だったかもしれない。
「なに…口でシてくれんの?」
伸びてきた蘭さんの手に頬を撫でられて、そんなことを言われたら、私には頷くことしか出来なかった。
海斗に何回かお願いされてしたことはあるけど、あんな卑猥な行為は苦手だったはずなのに、何で相手が蘭さんだと不快じゃなくなるんだろう。むしろ気持ち良くしてあげたいと思ってしまうんだから自分でも驚く。
なのに――蘭さんは「ジョーダン」と呟いて苦笑した。
驚いて顔を上げると唇を軽く啄まれて、ちゅっと可愛らしいリップ音が響く。
「本当はして欲しいけどさー。ちゃんがえっちだから我慢できなくなったわ」
蘭さんはそう言って私の髪も優しく撫でてくれる。ただ、我慢できないと言う言葉とは裏腹に、その表情にはまだ余裕がある気がした。
何でそんなに余裕あるんだろう。私はすでに一回イカされて、今は体の奥が疼いて仕方ないのに、蘭さんだけ余裕あるなんて、ちょっとズルい。
未だに服も着たままで、一向に脱ぐ気配はなく、予想通り蘭さんはスラックスの前を緩めて下着から出した自分のソレに、慣れた手つきでゴムを装着していた。
着たままする気なんだ、とちょっと驚いていると、蘭さんは優しい笑みを浮かべたまま、私をゆっくりベッドへ押し倒し、両手で腰を軽く持ち上げるようにして引っ張る。そうされることでアっという間に蘭さんと密着した。
「蘭さん…?」
膝で立ち上がると、彼は広げさせた私の脚の付け根部分に薄いゴムを被った先端を押し当てた。硬いものが濡れた場所に当たって、その感触だけで体がビクンと反応してしまったのが恥ずかしい。
蘭さんは入り口の辺りを擦りながらくちゅくちゅと音を立てた。質量のある熱で擦られるごとに、陰核をヌルヌルと刺激されて、そのたび腰がビクビクと跳ねてしまう。
無意識で誘うように身体をくねらせていたらしい。蘭さんはふっと口元を綻ばせたように見えた。
「挿れて欲しい?」
その問いに思わず頷いた自分に驚いた。
自ら欲しいとおねだりするようなことをしてしまう自分が信じられない。
なのに――どうしようもなく蘭さんが欲しい。そう思ってしまった。
自分がこんなにも淫乱だったなんて信じられない。そんな姿を蘭さんに晒してると思うだけで恥ずかしさがこみ上げてくる。
けど彼は、そんな私の様子を見て嬉しそうに微笑んだ。
「じゃあ、これでたっぷり犯してやるからなー?」
くつくつと喉の奥で笑いながら、蘭さんはその体勢のまま、ゆっくりと覆いかぶさってきた。硬く質量のあるモノが、狭い入口を押し開くように擦りながらゆっくり入ってくる。
「ん…ぁあ…っ」
苦しくて反射的に引けた私の腰を押さえ込みながら、馴染ませるように動かしつつ、蘭さんはゆっくりと私のナカへ入ってきた。
「んん…っぁ…」
「痛い?」
「ん…す、少し…」
本当は凄く苦しかった。無理やり押し広げられてる気がするし裂けたような気さえする。海斗のよりも多分ずっと大きい。
それはまるで初体験した時のような感覚だった。
でも強引に押し込むことはしないで、ゆっくり挿れてくれてるからどうにか耐えることができた。私が痛がってるから気遣ってくれてるみたいだ。こんな時でも蘭さんは凄く優しい。
海斗の自分勝手なセックスとは大違いだ。
「やっぱ痛いかー。マジできっついし…こんだけ濡れてんだから普通はもっと楽に入るんだけど」
ゆったりとした動作で腰を動かしながら、蘭さんは嬉しそうに笑った。
「でもほら、全部入った。当たってんのわかるー?」
グイっと腰を押し付けられた瞬間、体のどこかにズンとした鈍痛が走った。
蘭さんのが大きすぎるのか、それとも私のナカが狭いのか分からない。
蘭さんが少し動くだけで下腹の奥にズンっと当たる感覚がある。圧迫感が物凄くて息をするのもツラいけど、でも――何故か不快じゃなかった。
「ちゃんのその顏、コーフンするわ」
私は今、どんな顔をしてるんだろう。自分じゃよく分からない。たださっきから意味もなく涙が浮かんで目尻を濡らしてしまう。
そんな私を見下ろしながら、蘭さんは低く笑った。言葉通り興奮してるみたいで、さっきよりも呼吸が早くなってる。少し苦しいけど、でも蘭さんが興奮してくれてると思うと嬉しさの方が勝ってしまった。
「あー…気持ちいー」
吐息交じりの掠れた低音で呟きながら、私の太腿を胸にくっつけるように押し付けて無理やり広げさせると、蘭さんのを受け入れている場所を指でそっと撫でてきた。
「すげーエロいな、視覚的に」
「や…ぁ…見ないで…」
さすがにこの体勢は恥ずかしい。頭を振りながらお願いしたけど、蘭さんは愉しそうに笑うだけだった。
「何でだよ。ちゃんのここ、すげー濡れて光ってるし綺麗で可愛いしかないけど?」
「…ひゃ…ぁ…」
挿入されたまま陰核を指でぬるりと撫でられ、ビクビクと身体が震えてしまう。それを見計らったかのように、蘭さんは腰を一気に引いては、また最奥を突いて来た。
「…んん…ぁっ」
その強い刺激で勝手に身体が跳ねてしまう。私の反応に蘭さんは小さく笑った。再び腰を引いて、ゆっくりと浅く抜き差しを繰り返しながら、蘭さんの指は陰核を優しく擦り続けた。
「ぁああ…っ」
「マジで感度いいな。すげー締め付けてくるわ…」
「ゃ…ぁあっ」
敏感な芽を擦られながら、すぐ入り口の辺りを突き上げられると背中にビリビリとした電流が走る。その甘い責め苦がツラくて、つい手で蘭さんを押し戻そうとしたけど、その手は呆気なく捕まえられてしまった。片手でひとまとめにされた両手は、頭の上でシーツに縫い付けられる。
「可愛いわ、マジで…」
「んぅ…っ」
呟くような声が聞こえたと思った瞬間、覆い被さるようにキスをされた。さっきよりも強引に舌を絡められて吸い上げられると、目の前がチカチカして混乱してくる。蘭さんが抽送するたび、密着した私の腰も一緒に揺れて、奥に当たったまま擦り上げられると、一瞬の痛みはあるものの、それはすぐ快感へと脳が変換してしまう。
「あぁ…ん…ら、蘭さ…ん…っ」
腰を揺らされるたびにナカが収縮してしまう。気持ちいい。でも、もっと蘭さんが欲しい。そう思ってしまった。
「どうされたい?ちゃん」
艶のある声に訊かれて、どうしようもなくナカが疼いてしまった。こんな感覚は初めてで自分が自分で怖くなる。
「蘭さん…もっと…」
快楽の波が寄せては引くの繰り返しで、上手く言葉にならない。どう伝えていいのかわからない。でも蘭さんは、そんなもどかしい気持ちをすぐに理解してくれたみたいだ。
「あー…もっと乱暴にしていい?」
「…んあ…ぁ…っ」
返事をする間もなく、蘭さんは今までとは比べ物にならないくらい、激しく強くナカを擦り始めた。
「ぁああっ…んぁ…あぁ…っ」
激しく揺さぶられるたび、言葉にならない声が口から洩れていく。セックスの時にこんなに喘いだことはなくて、本気で感じると声が掠れてしまうんだと頭の隅で驚いていた。
「マジでいい、ちゃん…すげー締まる…」
吐息交じりで蘭さんに褒められるのが嬉しい。彼も気持ちいいんだと思うと余計に嬉しい。
ヌルヌルとナカを擦られては奥まで押し込まれる。そのたび身体に電気が走って、それはすぐに甘い快感へと変わっていった。
「あぁ…っイクっ、イっちゃう…っ ん…ぁあっ」
指でイカされた時よりも大きな快感の波が押し寄せて、目の前がチカチカと光った気がした。身体が何度となく痙攣して、海斗とのセックスなんか比べ物にならない、おかしくなりそうなほどのオーガズムが襲う。頭の中が真っ白になって、自分の身体に何が起きてるのかも分からない。絶頂を迎える時、無意識にあんな大胆な言葉が口から出てしまうんだということも初めて知った。
「ヤバ…締め付けすげぇからオレも持ってかれそう…っ」
蘭さんの声が切羽詰ってきてると何となく気づいた。彼もちゃんと気持ち良くなってくれてる。ちゃんと男の人を気持ちよくさせることが出来てるんだから、私は感度が悪いわけじゃなかったんだ。そう思うと、それだけで心が満たされていく。
「ぁあ…っん…」
「…く…出る」
苦しげに呟くと、蘭さんは「…っ」と私の名前を呼びながら乱暴に私を揺さぶり続ける。そんな余裕のない蘭さんの動きが、再び私の快感を引き寄せていく。
「あぁ…っま、またイっちゃう…!ん…ああぁ…っ」
喉と背中を反らしながら、掠れた声で喘ぐ。そして初めてセックスの快楽を知った私は、そこで意識を失った。
でもその後も私と蘭さんは何かに憑かれたように何回もセックスをした。
海斗はいつも普通の正常位で自分が出すことしか考えてないから、女のイカせ方なんて知らないに違いない。でも蘭さんは年上で経験値も豊富なんだろう。色んな体位を教えてくれた。
初めてバックでされた時は、普通の時より凄く気持ちが良くて、何度もイカされてしまった。後ろから激しく攻められると、本当に犯されてるような気持ちになって、こんなえっちなことをされてると思うとやけに興奮した。
でも蘭さんに抱かれて気づいたことがある。
私はセックスのことを何にも知らない上に、下手くそだってこと。
ちゃんは若いんだから当たり前だろ、と蘭さんは笑ってくれたけど、でも大学の友達はすでにセックスの何たるかを知ってるっぽいし、気持ちがいいんだってことも知っていた。
だからこれは年齢のことと言うより、私自身の問題なんだと思う。
それに比べて、蘭さんはテクニックもあって、何回でも私をイカせることができるんだから凄いなあと思ってしまう。蘭さんにそう言ったら年の功って言いたいわけ?とスネられた。それが凄く可愛かったけど。
でも7歳も年上とは思えないほど、蘭さんはタフだと思う。あんなに激しい運動をした後でも涼しい顔をして私を家まで送ってくれるんだから。
――ほんとは泊まってって欲しいんだけどさー。やっぱ女子大生を無断外泊させんのは良くねえだろ。
母親と住んでる話をしたら、蘭さんはそう言って私を先にバスルームまで運んでくれた。
でもさすがにエッチをしすぎたのか、ホテルを出た頃には私も足腰が動かなくて、蘭さんの支えがないと立ってられないほどヘロヘロだった。彼の車にどうにか乗り込んだ後は記憶がなくて、起こされた時はもう家の近くまで来ていた。
「そろそろ着くよ、ちゃん」
「ふあ…?」
軽く揺さぶられて目を開けると、蘭さんは優しい笑みを浮かべて私を見ていた。
いつもかかっている音楽はかかってなくて、開け放した窓からはふわりと夜風が流れこんでくる。その時、蘭さんが好んでつけてるサンローランの香水の香りが漂ってきた。フローラルラベンダーの香りだと言ってた通り、フレッシュな中に、ラストノートは少しだけ甘い香りがする。私は蘭さんのこの匂いが好きだった。
抱かれてる時、何度も嗅いだせいで、私にも少しだけ移ってる気がする。たったそれだけで胸がやけに疼いた。
だけど、シンデレラのような幸せな時間はもう終わりだ。蘭さんにとって今夜のことはワンナイトみたいなものだと思うし、もう一度会ってくれる保証なんてない。
その証拠に、蘭さんは最後まで何も言ってはくれなかった。
「可愛い」とは言ってくれても、「好きだ」とか「付き合おう」とは言わなかった。
きっと蘭さんのような大人の男は、セックスをしただけでイコール付き合うとはならないんだと思う。
でも仕方がない。私は薄々分かっていて、それでも蘭さんに抱かれることを選んだんだから――。
「あの…送ってくれて…ありがとう御座います…」
もうこんな風には会えないかもしれない。そんな寂しい思いを抱きながら、どうにか気怠い体を動かして車を降りようとした時だった。蘭さんの手が、私の腕を唐突に掴んできた。
「え…あの…?」
「ちゃんさー…。また誘ったら、オレと会ってくれる?」
完全に油断していた頭には、その言葉の意味がすぐには理解できなかった。
