01-ファンタスティックロマンスの始まり


眠らない街、東京の港区北部に位置する六本木――およそ人口13417人の繁華街。
近年の再開発により、六本木ヒルズや東京ミッドタウンといった大規模複合商業ビルが誕生したこの街は、二人の兄弟が仕切っていた。
"灰谷兄弟"――。
この街ではその名を知らない者はいない。二人を有名にしたのは五年前の"六本木灰狂戦争"。
当時、この界隈を仕切っていた都内最大の暴走族<狂極>と灰谷兄弟が引き起こした抗争であり、チームの総長、副総長とのタイマン勝負に勝った灰谷兄弟が、若干13歳で実質六本木のトップに立った。

「やっぱ夜の六本木って落ち着くわ」

目に馴染んだネオンに癒されながら、灰谷兄弟の兄、蘭は思い切り両腕を伸ばして空気を吸い込んだ。その間もすれ違ういかつい男達からは頭を下げられ「お疲れ様です!」などと声をかけられる。

「別に起きたばっかで何も疲れてねーけどなー」

苦笑気味に返して、自慢の三つ編みを指で遊ばせながら、蘭は相も変わらず人の多い街並みをひとり歩く。繁華街のイメージが強いこの街も、ビジネス街に高級マンション、はたまた駐日大使館も多くある。色んな人種が行きかうこの街は、蘭にとっても退屈しない。
ただ、ここ最近はこの六本木にもヤクザまがいのやり方で、幅を利かせている組織が出てきた。今夜の見回り的な散歩はその組織の偵察もかねている。

「ここか…。カンパニー」

目的地付近でふと足を止め、前方に聳え立つ大きなホテルを見上げる。表向きはまともな民間企業という話だが、裏では賭博や売春、詐欺、恐喝等々、まるで一昔前のヤクザのようなことをしていると、最近チームに合流した稀咲が話していた。
稀咲は蘭の所属するチームのトップ、イザナに上手く取り入ったという狡猾な男で、あまりいい印象はない。その稀咲が情報源というのは気に入らないが、自分達の街で好き勝手にされる方がよほど腹立たしい。
のトップをどうやって潰してやろうか、と、しばしホテルを見上げながら思案していた。
このホテルの最上階にいるであろうカンパニーのトップ、京介は若干22歳でありながら、この組織をまとめているらしい。狡賢く、金を生み出す能力はある人物だと稀咲が話していたが、蘭にとってそんなのはどうでもいいことだった。頭が切れようが、金をいくら持っていようが、ぶちのめしてしまえば関係なくなるからだ。

「ひとりで乗り込んでってもいーけど…雑魚キャラ相手すんの面倒くせぇな…。竜胆がいれば押し付けたのに…ったく」

いつも行動を共にしている弟の竜胆は、昨夜新年会と称して仲間と散々飲んだくれたらしく、先ほど蘭が家を出る時にもまだ酩酊状態だったので連れてくるのをやめたのだ。その際、置き土産としてキツい一発をおみまいすると、竜胆は呆気なく深い眠り――ほぼ気絶――についてしまった。
ただ、蘭がその辺の男達に一声かければ、40~50人ほどならすぐにでも集まる。助っ人には困らない。この際、知り合いでも呼ぶか?と蘭がケータイのアドレスを開いた時だった。

「あ…?サイレン…?」

六本木の喧騒にも負けないほどの大きな音に気づき、蘭は咄嗟にホテル脇にあるスタッフ用の通用門付近に身を隠した。京介の経営する高級を謳った一見、美術館のようなデザイナーズホテル。そこのエントランス前に一台の救急車が横付けされたからだ。何事だ?と様子を伺っていると、エントランスの顏とも言うべきドアマン達が何やら慌ただしく走り回っている。これは何かあったな、と蘭は笑みを浮かべた。
ジイさんが裏カジノで大損こいてぶっ倒れたか。それとも若い女を相手にして興奮しすぎで倒れたとか。大方そんなとこだろう。
このホテルで裏カジノや売春を斡旋していると聞いていた蘭は、そんな想像をしながらエントランスの様子を伺っていた。
その時、手にしていたケータイが震動した。表示名を見れば、愚弟の名前が表示されている。

「おぉ、竜胆。目ぇ覚めたー?」
『兄貴…今どこ?』

通話口から弟のガラガラ声が聞こえてきて、蘭は思わず吹き出した。喉がやられるまで酒を飲むのはいつものことだ。

「今ぁ?六本木某所」
『…まさか例のヤツんとこじゃねーよな?』
「例のヤツんとこだよ」
『はあ?何でオレを置いて…っいてて…』
「泥酔してたオマエが悪い」
『そりゃ悪かったけど…何かすげー頭が痛ぇんだよな…』
「二日酔いか?」

と言いながら内心苦笑する。さっきまで酩酊してたのだから、二日酔いと言うよりはまだ酔っているんだろうが、頭痛の原因は蘭の鉄拳制裁が原因だろう。ありがたいことに竜胆はすっかり忘れてるようだ。
蘭はホテルの方を気にしつつ竜胆と話していたが、救急車に誰が運ばれたのかまではよく見えなかった。

「つーか、オマエ今日は使いもんにならねーから寝とけ」
『悪い…。あ!でも一人で乗り込むとかやめろよ?何があるかわかんねーし』
「何それ。オレがあんなヤクザ崩れにやられるとでも思ってンの?」
『う…い、いや思ってねーけど!』
「………」
『…兄ちゃん?』
「しっ」

蘭はホテル脇の通用門から正面エントランスを見ていたが、すぐ背後で人の動く気配がしたことで、警戒しながらゆっくりと振り向く。殺気はしない。ただ、かすかに嗅ぎ慣れている血臭が、非常口に続く小道奥の暗闇から漂ってくる気がした。

「竜胆、いったん切るぞ…」

声を潜ませながら告げると、竜胆も察したのか「OK」とひとこと返して、ふたりの通話は切れた。
やっぱ…誰か、いるな。電話を切り、ゆっくりと足を進めた蘭は、コートのポケットに隠し持っていた警棒へ手を伸ばしながら、奥にいる誰かの気配を探る。その人物は未だ動かず、暗闇でジっと息を潜めているようだ。すぐ近くには非常口がある。こいつはそこから出てきたのか、と蘭は思った。

「おい、そこに隠れてる奴。いい加減出て来いよ」

蘭は思い切って声をかけてみることにした。複数ではなく相手が一人だと気づいたからだ。案の定、声をかけられたことで覚悟を決めたのか、その人物はゆっくりと立ち上がった。

「…は?」

そろそろとした足どりで目の前に現れた人物。その姿を見た蘭は、緊迫した空気には似合わない声を上げた。何故なら、その人物の頭には猫耳、目は金色に光り、更に細い首には似合わない太い首輪をしている。あげく乱れた服の短いスカートからは尻尾のような飾りがぶら下がっていたからだ。どう見ても猫のコスプレといった服装をしていたその人物は、濃いメイクで分かりづらいが蘭や竜胆よりも若干下くらいに見える少女だった。だが、その少女の異様さは猫のコスプレだけではなく。先ほど蘭が気づいた通り、彼女の全身には赤い付着物がある。それはまるで飛び散った血液のように見えた。

「えーと…オマエ…誰?」
「………」

少女は何も応えない。微動だにせず、蘭を凝視している。

「ここで何して…つーか、それ血だよな?ケガしてんの?」
「………」

今度も少女は応えず、その頑なな様子にさすがの蘭も困り果てた。
少女に怯えた様子は見られない。ただ、大きな金色の瞳――おそらくはコンタクトだろうが――はどこか興奮気味に瞳孔が開いてるせいか、まるで本物の猫のように見える。唇はかすかに開き、震えているように見えるのも気のせいじゃないはずだ。
ヤクでもやってんのか?と蘭は考えたが、その答えは彼女の手の中にあった。
蘭が一歩近づこうとした時、その少女は両手を前に突き出した。手にはナイフが握られている。よく見れば刃先にも血痕のようなものが付着していた。

「…マジ?じゃあ…その血は誰かの返り血か?」

少女がどこか興奮してるように見えるのはそのせいかもしれない。この類の暴力には慣れていないからだろう。慣れてる人間ならば、こんな状態にはならないことを、蘭は良く知っている。
目の前の少女を必要以上に警戒するのをやめた蘭の顔に、僅かながら笑みが浮かぶ。カンパニー所有のホテルで起きたトラブルなら大歓迎だ。さっき救急車が来たのも、目の前の少女が関係してるんだろう。救急隊員に通報されれば警察も介入してくるかもしれない。運よくいけば、カンパニーの裏の顏が摘発される可能性もある。
自分が手を下さずとも、この六本木から消えてくれたらラッキー。その程度の期待値しかなかったが。

「オマエ、それで誰を刺したんだよ」
「……っ?」

ナイフを突きつけても怯むことなく、笑みを浮かべている蘭を見つめながら、少女は怪訝そうな顔で眉を寄せた。ジリジリと後ずさっているのは本能的なものかもしれない。だが、その時、少女の背後にある非常口のドアが勢いよく開き、数人の黒スーツを着た男達が慌ただしく飛び出して来た。

「いたぞ!」
「捕まえろ!」
「まだナイフ持ってるぞ!」

男達が少女を背後から追い詰めようと近づいて来る。ホテル脇にある通用門用の小道は狭く、一本道となっているせいか、男達を見た少女は何故か蘭の方へ逃げて来た。

「は?お、おい…危ね!」

ナイフを振り回し威嚇してくる少女の攻撃をいとも簡単に避けた蘭は、すぐにその細い手を捉えてナイフを奪う。その瞬間、

「あ~~~ッ!!」

拘束されたことでパニックになった少女が、突然大きな声を上げて暴れ出し、これには蘭も驚いた。

「うるせ……つーか、オマエ危ねーだろが!こんなもん振り回しやがって――」

そう言いかけた刹那。黒服の男達が近づいてくる足音がした。一人、二人、三人、四人、五人…?随分と多いな、と蘭は思う。

「おい、あの子の他に誰かいるぞ!」
「てめえ!誰だ!」
「はぁ…見つかってんじゃん…オレ」

少女の手を放さぬまま溜息交じりで笑うと、走ってきた男達も一瞬怯んだように、おのおの足を止める。男達は目の前に立つ蘭を見て、一目で正体に気づいたようだ。困惑した表情から徐々に驚愕へと変わっていく。

「オ、オマエ…」
「黒金2トンカラーの三つ編み…ま、まさか…灰谷蘭?!兄貴の方か!」
「せいかーい。ご褒美に撫でてやろうか?このナイフで」

少女から奪ったナイフを指でくるくる回して、最後に切っ先へ口付けると、男達もギョっとしたように身構えた。蘭としてはの人間に自分が調べていることは知られたくなかったが、見つかってしまったものは仕方がない。

「灰谷兄弟が…何の用だ!」
「まさかその子と知り合いか?オマエがたぶらかしたんじゃねえだろうな!」
「んなわけ。この子とは会ったばっかだけど。つーかこの子、オマエらの何?」

ナイフを男の一人に向けながら訪ねると、男達は全員で顔を見合わせた。この少女と蘭が知り合いなのかと勘違いしたらしい。違うと分かったからなのか、一人が少女を見ながら口を開いた。

「客の一人を刺して逃げた…」
「客?あー。いたいけな少女にこんなコスプレさせて売春斡旋かぁ。噂通りのクソ野郎みたいだな、って男は」
「て、てめえ!ボスをバカにすんのか!いいからその子をこっちに寄こせ。そしたら見逃してやる!」
「見逃す?オマエ、誰にモノ言ってんの?」
「……何っ?」

蘭は不敵な笑みを浮かべると、手にしたナイフを先頭の男が動く前に素早く投げた。誰かを傷つけることへの躊躇いは一切ない。ナイフはスピードに乗って、あっさり男の太ももへと突き刺さる。

「ぎゃあぁ!」
「ジャックポット!狙い通り。オレってエイムもいいんだよなぁ」
「て、てめぇ!灰谷!」

一人が脚を押さえてくずおれると、仲間の男二人が一斉に走って来た。蘭は少女をかばうように片手で抱きかかえると、もう片方の手で警棒を取り出し、勢い良く下へ向ける。それはシャキンッという金属音を立てて最長まで伸びた。

「灰谷兄弟がなんぼのもんじゃ!ぶっ殺してやる!」

仲間の一人をやられて熱くなった男達が、怒号を上げながら向かってくる。それを見た蘭は楽しげな笑みを浮かべると、殴りかかってきた男の攻撃を後ろへ跳躍して避けた瞬間、空中で体を回転させ、その長い足で勢いよく蹴り飛ばす。次に殴りかかって来た男の拳も軽く避けると、同時に男の横っツラを警棒で思い切り殴りつけた。二人はその場に倒れると意識を失なったのかピクリとも動かない。

「あわわ…い、一撃…?」
「しかも人を抱えながら…?」

後ろに控えてた三人の男達は、少女を抱えたままアッという間に二人を倒した蘭を見て腰を抜かしていた。

「まだやるー?」

警棒で肩をトントンと叩きながら、蘭が笑顔で問いかけた。残った内の一人は足にナイフが刺さったまま動けない。もう二人は地面で白目を向いて倒れている。それを見ていた残りの二人は「灰谷兄弟やべえぞ!」と口々に叫びながらホテルの中へと逃げて行った。

「あれ、もう終わりかよ。アイツの部下よっわ」

物足りないと言いたげにボヤいたその時、パトカーのサイレン音が近づいてくるのに気づき、蘭は軽く舌打ちをした。今この場で警察関係者に姿を見られるのは、あまり得策じゃない。下手に見つかれば、この少女が起こした事件と関連付けられ、証拠がなくても拘束される恐れもある。それが前科を持つ人間の宿命だ。

「ハァ…ケーサツはだりーからオレも帰るわ」

溜息交じりで笑いながら、未だ足にナイフが刺さったまま身動きが取れずにいる男の方へと歩き出す。

「な…何だよ…こっちに来るな!!」
「やっぱ指紋付きの凶器は回収しなきゃだろ」

と、にっこり微笑んだ蘭は、容赦なく男の太ももからナイフを引き抜いた。

「ぎゃぁっぁぁ!」

心の準備もないままナイフを抜かれた男は、その激痛に堪えかねたようだ。そのまま意識を失ってしまった。蘭は特に気にもせずナイフの柄の部分を男のジャケットで拭きとると、気を失っている男の手にそれを握らせる。そうすることで、最初についていたであろう少女の指紋も消えることになった。

「ま、こんな感じか?」

満足そうに頷くと、蘭は抱えたままの少女を見た。薄暗い中、血の飛び散った顔はそれなりに怖い。何せ目の色が金色だ。

「っつーことで仔猫ちゃん。オマエも逃げた方がいいんじゃねーの?客、刺しちゃったんだろ?」
「………」

相変わらず少女は何も応えない。だが無表情のまま、ジっと蘭を見ている。

「はあ…やっぱ喋んねーか。じゃあここでお別れなー?」

と言って、蘭は腕の中の少女を下ろそうとした。が…いきなりツンっと髪が引っ張られた。見れば少女の手が蘭の三つ編みをしっかり握り締めている。

「ちょ、離せって。ほらケーサツがすぐそこまで来てっから」
「………」
「まーたシカトかよ…」

参ったな、と溜息交じりで頭を掻いていると「…」と突然少女が口を開いた。

「は?」
「…

少女がもう一度繰り返す。そこで気づいた。

?それが…オマエの名前?」

蘭が尋ねると少女は小さく頷いた。

「じゃあ…。髪、離してくんね?オレ、前科あるからケーサツには関わりたくねーんだわ」

少女は蘭の言葉を聞いていたが、すぐ左右に首を振り、相変わらず髪を握り締めている。これにはさすがの蘭も困ってしまった。結果的に助けた形になったことで、変に懐かれてしまったようだ。小柄な少女くらい無理やり引きはがすことは出来るものの、コスプレの恰好をした彼女をこんな繁華街へ置いて行くのも何となく気が引ける。
蘭の三つ編みをぎゅっと握り締めている少女の顏は、どこか悲しげで「置いていかないで」と言っているようにも見えた。弟よりも歳が下であろう女の子を置き去りにするのは、いくら前科持ちの不良と言えど、兄貴気質の蘭としては出来なかった。

「まぁ、オマエのことは追々考えるとして…とりま、ここから離れるか…」

蘭は少女を抱えたままホテルから足早に離れると、人目に触れないよう裏路地を通りながら自宅マンションへ向かう。その道中、またしても「蘭さん!お疲れ様です」と、知り合いに声をかけられるのだが、次の瞬間には「え?猫耳…少女?」と驚かれた。

「蘭さん、どーしたんすかー?仔猫ちゃんなんか抱えてー」
「拾った」
「拾ったって、またまた~!どこのコスプレキャバの子っすか」
「そっちのお持ち帰りじゃねえから」
「ハロウィンにはまだ早いっすよー」

六本木中の不良達が馴染みなのはいいが、こういう場合は少し困る。幸い恰好が恰好だけに少女の全身に飛び散っている血も本物とは思われずに済んだ。その後も知り合いと顔を合わせるたび似たようなやり取りを数回ほど繰り返しながら、やっと弟と住んでいるマンションへと辿り着いた。

「さて、と…竜胆にどう説明すっかな~」

オートロック式の扉を抜け、エントランスホールからエレベーターに乗り込むと、暗証番号を入力して自分の階を押す。ふと腕の中の少女――を見れば、相変わらず髪を掴んだまま蘭を凝視していた。地味に視線が痛いな、と苦笑いが零れる。幸い容姿には恵まれている方だ。おかげで異性に見られることには慣れているが、この少女の視線は、それと全く異なるもの。いつ、この手を放されるか分からない、という不安からきてる気がした。

は何歳?13…?14…15くらいか?」
「………」

蘭の問いにが頷く。

「マジ?その歳で売春とかさせられてたわけ?やべーじゃん。オマエ、家出少女か何か?」
「………」

が左右に首を振る。

「…違う?んじゃあ…さっきの奴らに攫われたとかか?」
「………」
「そこは答えねぇのかよ」

そんなやり取りをしていると最上階へと到着。エレベーターを降りて部屋まで向かうと、かすかに中から音楽が漏れ聞こえてくる。どうやら竜胆はどこに出かけるでもなく家にいたらしい。そこで蘭は思案する。この猫の恰好をした少女のことを弟にどう伝えるべきか。
そして30秒後、蘭は考えるのをやめた。

「ま、いーか。そのまま言えば」

言い訳を考えるのも面倒になった蘭は、にニッコリ微笑むと「バカな弟が一人いるけど怖くねえから」と言って玄関のドアを開けた。



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