Temptation lip honey...01



オレが彼女と出会ったのは、念願だった自分の店を持った初夏の頃だった――。

ペットショップを経営するという目標の為、東卍を解散した後はコツコツと努力をしてきた。苦手な勉強もそこそこ頑張り、おかげで二十代半ばで自分の店を持つことに成功。それを機にオレは実家を出て、これまた念願の一人暮らしを始めた。
色んな不動産屋を回り、ここだと決めた店で、担当になったオジサンに辟易されるくらい、沢山の物件を内見した。そんなオレが気に入ったのは、築三年ほどのデザイナーズマンションだ。店からも歩いて帰れるそのマンションは、最寄りの駅から徒歩十五分程度あるものの、普段はバイクで移動することも多いオレにはもってこいの物件だった。おかげで家賃もそこまで高くはない。
その後も他の物件を見て回ったものの、そのデザイナーズマンションほど気に入ったものはなく。結局、オレはそこを借りることにした。
引っ越し当日は場地さんやタケミっち、マイキーくんらが手伝ってくれたおかげで、引っ越し費用を浮かすことが出来たし、何もない真っ白な部屋に、次々と新しい家具が運び込まれるのを見て、オレはこれから始まる新しい生活にワクワクしてくるものを感じていた。
ただ――オレにはもう一つ夢があった。

「…は?彼女ぉ?」
「うっす」

引っ越ししてから二カ月後、場地さんが遊びに来たので相談ついでに話してみたら、かなり驚かれた。きっと今までは二人でそんな話をしたこともなかったからだろう。
今日までオレはまともな恋愛をしたことがななかった。
東卍解散後、高校に進学した辺りで一人二人と彼女は出来たし、それなりに青春ってやつを謳歌してたつもりだけど、当時はまだ彼女よりも昔の仲間優先で、それが原因のケンカが耐えなかった。で、結果オレがフラれるの繰り返し。
でも今は違う。大人になったし、せっかくの一人暮らしをするに当たり、可愛い彼女の一人くらいは欲しくなった。

「念願だった店を出して一社会人になったわけだし、そろそろオレもちゃんと付き合える彼女が欲しいかなーと思い始めて…」
「まあ…千冬もそっち系はてんでダメだったもんなぁ?オレらとバカばっかしてたし」

場地さんは苦笑交じりで言いながら、同情めいた視線を向けてくる。そういう場地さんも去年まではオレと似たようなもんだったのに、今年に入ってちゃっかり彼女というもんを作っていた。何でもタケミっちの彼女のヒナちゃんが高校時の同級生を紹介してくれたらしく、場地さんや三ツ谷くんと合コンみたいなことをしたそうだ。何でオレを呼んでくれないんだと責めたら、タケミっちは「千冬、店だすのに忙しそうだったから」と言われてしまった。いや、まあ確かにそうなんだけど、何もオレだけのけ者にしなくたっていいじゃねーか。
でも…今となればそれはそれで結果オーライかも。
ふと隣に続く壁へ目を向けながら思った。

「最近は店の方もだいぶ落ち着いてきたし、そうなると今度は支えてくれるような彼女が欲しいと思ったんす」
「へえ、で?オレに誰か紹介しろって?」

場地さんが苦笑気味に訊いてきた。そう言えば場地さんに彼女が出来た時、友達に誰かいい子いたら…なんて確かそんなお願いをした気もする。
でも今回はそんな話をするつもりじゃなかった。

「いや…実は隣人にめちゃくちゃ可愛い人が住んでて――ちょっと…いや、かなり気になってるんすよね~」
「は?隣人かよ」
「まあ…ここに引っ越してきた次の日、お袋と一緒に引っ越しの挨拶に行ったんすけど、これがマジで可愛いんすよ」

最初は挨拶なんていいと言ったのに、お袋はそんなわけにはいかないと言い張り、無理やり手土産を持参してやってきた。あの時は正直めんどくせえと思ったけど、そのおかげで彼女と知り合えたんだから、今じゃお袋グッジョブと思うくらいには感謝してる。

――603号室に引っ越してきた松野と申します。愚息ですが宜しくお願いします~。あ、これつまらないもんですけど良かったら召し上がって下さい。
――ご丁寧にありがとう御座います。私、と言います。ここのスイーツ大好きなので嬉しい!
――あら良かった!普通はタオルとか洗剤とかなんでしょうけど、正直そんなのいらないかなと思って。管理人さんがお隣は若いお嬢さんだというので、勝手に選んでしまったんですけど好きならこれにして良かったわねー?千冬。
――お袋…喋り過ぎだろ。迷惑だって。
――はいはい。じゃあ今後とも宜しくお願いしますねー。
――こちらこそ、宜しくお願いします。

さんは可愛らしい笑顔で丁寧に頭を下げていて、オレの中ではかなり好印象な人だったっけ。
簡単にその時のことを説明すると、場地さんは「いや、いくら可愛いとはいえ近場すぎんだろ。やめとけよ」と苦笑してた。
でも実のところ――一ヶ月くらい前から彼女とは何度か言葉を交わすようになっていた。彼女が最近彼氏と別れたばかりだということも知っている・・・・・
その話をしたら「男と別れたばっかの女は難しいだろ」と場地さんに呆れ顔で言われた。確かに男と別れたばかりの女の子を口説けば、すぐ落ちそうではあるけど、それは一時の感傷でしかなく、相手がオレに本気になるかどうかが難しいってことだと思う。
でも、もう遅い。
それを理解していながら、オレは彼女に本気になってしまったから――。

△▼△

二カ月前――。
引っ越してから一週間目の夜、店を終えてマンションまでの道のりを歩いていると、引っ越し当日に挨拶を交わしたさんが男と一緒にマンションへ入って行くのが見えた。腕を組んでたから彼氏なんだろう。何だ、男いるのか…なんて少しのガッカリ感に襲われつつ、あんなに可愛いんだから彼氏がいても当然か、と苦笑した。
それ以来、二人の姿を見かけることが多くなった。二人でいる時もあれば、朝の出勤時、男だけを見かけることもある。
男は彼女の家に泊まって、朝には帰るようだった。
彼女が選ぶだけあって、世間でいうところのイケメンだと思う。いい会社にでも勤めてるのか、いつもビシっとブランド物のスーツできめていた。まあ、ちょっとチャラい印象ではあるけど、女にモテそうないい男の類だろう。
彼女はこういう男が好きなのか。ならオレは絶対に選ばれないだろうな。
男を見かけるたび、自虐的な思いが胸の中に広がっていく。
一応、経営者という肩書はあれど、仮に一流企業に勤めてる男と、かたやペットショップ経営者じゃ勝負は目に見えている。
最初にさんと会った時、あまりにタイプど真ん中で、こんな人が彼女になってくれたら最高だな、とは思ったけど、彼氏の存在を知ってからは、すぐにそんな思いは消していた。
そもそも、まともな恋愛すらしたことのないオレが、さんと付き合えるはずもない。そう思ってしまった。

でもそれから一カ月が過ぎようとしていたある夜。
いつものように仕事から帰宅後、オレは軽くシャワーへ入ってから、その後はブリーダーの人と仕事の電話をしていた。
近年、悪徳業者とも言える金目的だけで大量繁殖をするブリーダーもいるが、この人は個人で営んでいる。無理のない範囲で繁殖をし、大手企業ではなく、オレみたいな個人経営者とのみ取引をするような健全なブリーダーだ。
スコティッシュフォールドの子供が生まれたというので、うちの店にどうかという話だった。スコティッシュは垂れ耳が可愛いと人気の品種だ。けど生まれた仔猫のうち一匹だけ耳が垂れていなかったらしく、どこの店にも断られて困っているという。オレはすぐにその申し出を快諾した。
行き場をなくした動物の末路はよく分かっている。
そういう動物の手助けになるなら、オレが責任をもって優しい飼い主を見つけてやりたい。そう思ってのことだ。
電話を切った後、そのブリーダーから早速その仔猫の写真が送られてきた。確かに耳は垂れていなかったけど、物凄く可愛らしい顔をしている。一見アメリカンショートヘアにも見えるような色合いと模様だ。

(この子ならすぐに飼い主が見つかりそうだな…。もし見つからなかったとしてもオレが飼えば問題ない)

寿命でペケJを失って以来、動物は飼っていない。嫌でもペケJを思い出すからだ。でもそろそろ柔らかいもふもふが恋しくなっていた。このマンションを一番に気に入ったのもペット可だったからというのが大きい。そのうち家族を増やそうと思っていたからちょうどいいかもしれない。
なんて気が早いことを考えながら"めちゃくちゃ可愛いすね"と返信しておく。
ちょうどその時だった。隣の部屋から突然、何かが割れる音と人の怒鳴り声のようなものが聞こえてきた。これまで一度もそんなことはなく、何事かと驚いた。

「何やってんだ…?ケンカしてんのか?」

再び何かが割れる音に続き、今度は男の怒鳴り声がハッキリ届く。どう考えても隣から聞こえてくるその声に、ふと例のイケメンを思い出した。
カップルの痴話ゲンカか、とは思ったものの、かなり激しい口論に発展してるようだ。内容は聞き取れないが、さんらしき声もかすかに聞こえてくる。

(大丈夫か…?あの二人)

こういう時、隣人としてはどうしたらいいのか分からない。夜のこんな時間に隣から騒音が聞こえてくれば、それなりに迷惑でもあるが、それ以前に熱くなった男が彼女に暴力でも振るわないかどうかも心配だった。
ただ、最初に挨拶は交わしたものの、それ以降は特に交流もない。いきなり部屋へ行って止めに入るというのもおかしな話だ。

(いや、でもさっきからガタガタいってるし、すでに手をあげてたりしたら――)

なんて悩んでいた時だった。不意にバシンっという音と女の悲鳴のような声が響き、ハッと息を飲む。どう考えても男が彼女を叩いたような音だった。
オレは考えるよりも先に体が動いて、気づけば部屋を飛び出し、隣の家のインターフォンを鳴らしていた。
一度目は反応なし。でも二回鳴らした時、いきなり目の前のドアが開いた。

「アンタ…誰?」

顔を出したのは案の定、オレが見かけていた男。こんな時間なのにスーツ姿で、その手には何故かトランクを持っている。ケンカの末、帰るところなのかもしれない。

「オレは隣のもんすけど…何か大きな音がしたんで。あの…大丈夫っすか?」
「……」

男はオレの問いに応えるでもなく、小さな舌打ちをして「おい、!」と部屋へ向かって彼女を呼んだ。

「隣のやつ来てるぞ」

その声に反応はない。男は更に苛立った様子で「じゃあオレは行くからな!次来るまでにオレの荷物まとめておけよっ」とだけ叫ぶと、オレを押しのけ、そのままエレベーターホールまで歩いて行ってしまった。

「チッ…何だ?アイツ…偉そうな奴」

人を見下すような視線も気に入らない。
ただ様子から見て、二人は別れ話をしてケンカになったんだろうというのは推測できた。それくらいなら世の中よくあることだろうが、さっきは明らかに殴ったような音と彼女の悲鳴が聞こえた。いくら頭にきたからといって、女を殴る男はクソ以下だと思う。

「あの…すみません、遅くに。大丈夫ですか?」

男への苛立ちよりも、ふと思い出したことで彼女のことが心配になった。開けっぱなしのドアから一歩、足を踏み出し声をかけてみる。するとリビングに続くドアが僅かに開き、部屋の住人が顔を出した。

「あ…えっと…」

戸惑い気味の様子で顔を覗かせた彼女の頬は、予想通り赤くなっている。でもオレの名前を咄嗟に思い出せないようだから、ここは名乗ることにした。

「隣の松野っす」
「あ、そう…松野さん…。すみません…うるさかったですよね」

オレが来た理由を察したらしい。彼女はおずおずといった様子で玄関まで歩いて来た。

「いや…それより大丈夫っすか?何か割れる音もしたし、それに…」
「だ、大丈夫です。ちょっと彼とケンカになっちゃって…こんな時間に騒がしくしちゃってすみません」
「そんなのいいけど…」

と言いつつ、彼女の様子が心配になった。明らかに動揺してるし、赤く腫れた頬は痛々しい。それに――。

「あ…血、出てる」
「え…?」

彼女はキャミソールにショートパンツといった夏らしい軽装だ。そのせいで白く細い足が無防備にオレの目に晒されている。でもそんな意識をする前に、彼女の脛の部分が切れて血が滲んでいることの方が気になった。

「あ…ほんとだ…」
「さっき何かが割れるような音がしてたけど…」
「あ…それは…ちょっとグラスを投げつけられて…」
「…マジか。じゃあそれで切ったんじゃねえの」

女の子にそんな危ないもんを投げつけるなんて、マジであの男はクソ野郎だ。内心イラっとしつつ、ちょっと待っててと声をかけてから、一度自分の部屋へと戻る。確か救急箱に絆創膏が入ってたはずだ。
それを数枚と消毒液を手に、再び彼女の部屋へ戻ると、さんはちゃんと玄関口で待っていてくれた。

「はい、これ」
「え…?」
「何かあちこち切れてるっぽいし、これで消毒した方がいい」

よく見れば彼女の足は細かい切り傷があり、そこから血が垂れていて痛々しい。なのに彼女は気づいてもいない様子だった。男とのケンカのショックが尾を引いてるのかもしれない。

「あ…ありがとう…」
「いや、それより…その様子じゃまだ部屋はガラスまみれっすよね。危ないんでオレが片付けるよ」
「え、でもそこまで迷惑はかけられないし…」
「女の子が殴られて怪我してんのに放置なんてしたら、オレの尊敬する人に叱られるんで」

部屋へ上がりこむのに下心があったわけじゃなく、この時は本心からそう言った。きっと場地さんなら同じことするだろうし、もしかしたらさっきの男を追いかけて一発くらいは殴ってたかもしれない。
彼女は少し驚いた顔をしてたけど、やっぱり心細かったようだ。最後は「お願いします…」と言ってくれた。

「うわ…こりゃひでーな…」

お邪魔します、と言ってリビングへ入ると、そこは想像以上に悲惨な状態だった。
テーブル上にはワインボトルがひっくり返り、中身が零れて床へ滴り落ちている。その床には彼女が言ったようにワイングラスが割れたんだろう。粉々になったガラス片が散らばっていた。
ついでに料理の乗った皿すら割れて、ソファにまで散乱している。
どんだけ暴れたんだ、アイツ、と苛立ちが増した。

「ごめんね、酷いでしょ…」
「いや…大丈夫。つーかさん、危ないから廊下にいて」

彼女は当然裸足のままで、またガラス片を踏んだら怪我が増えてしまう。廊下で待つよう言ってから、オレは了承を得て来客用のスリッパを借りた。
まずは濡れた場所を拭き、その後にガラス片を丁寧に集めていく。手を切らないように、と彼女がミニ箒と塵取りを貸してくれた。大きなガラスなどはそれで取り、細かいものは掃除機で吸っていく。床とソファを何度か掃除すると、やっとチクチクとした感じがなくなった。

「ん、もうないっぽい」

手で確認しながら言うと、さんはホっとしたように「ありがとう、松野さん」と言ってくれた。

「…いや、こんなことくらい。ああ、それと千冬でいいっす」
「え?」
「オレの名前。松野さん、なんて呼ばれ慣れてねえし…ツレもみんな千冬って呼ぶんで」
「…千冬…綺麗な名前だね」
「………」

――ああ、ヤバいかも。
少し泣きそうな、頼りなさげに微笑む彼女を見た時、オレの中で警鐘が鳴り響いた。
さんを「可愛らしい人」から、完全に恋愛対象として見てしまった瞬間だったかもしれない。

「あ、あの…良かったらお茶でもどう?あ、それともお酒がいいかな」
「え?」

不意にさんがキッチンへ立ち、冷蔵庫から缶ビールを取り出す。どういう意味かと立ち尽くしていると、彼女は少し冷静さを取り戻したのか、かすかに微笑んだ。

「掃除とこれのお礼したいの。料理もまだ残ってるし、食事がまだならご馳走させて」

言いながら絆創膏を貼った足を指す。大したことをしたわけでもないのに律儀な人だなと、内心苦笑が漏れた。
それにもしかしたら、今は一人になりたくないのかもしれない。

「あ、もうご飯食べちゃったかな」
「いや、まだだけど…」
「ほんと?なら食べていって」
「え、マジでいいんすか」
「うん、もちろん」

帰りに寄ったコンビニで弁当を買ってきてはあるものの、そんな物より彼女の料理を選ぶに決まってる。

「じゃあ…お言葉に甘えて」

そう応えたのは必然だったと思う。

△▼△

「は?じゃあ…それ以来、その子と飯食ったりしてんのか」
「まあ…」
「マジで?」

隣人はやめておけと言われたから、さんとの間にあった出来事を洗いざらい正直に話すと、場地さんはかなり驚いたようだった。

「何だよ…ちゃっかりしてんなァ、オマエも」
「いや、別につけこんだわけじゃないっすけど…向こうも寂しいのか、しょっちゅうオレに食事作って持って来てくれるんすよ。で、その流れで飲んだりして…」
「まあ…それはいいとして…その男とはどうなってんだよ。完全に終わってんのか?」
「そうみたいっすね。何か別れた理由も相手の男に女が出来たとかで」
「チッ。クズはどこまでいってもクズだな」

場地さんが吐き捨てるように言った。それにはオレも激しく同意する。
二人が別れ話をしたあの日。本当は交際二年目の記念日だったらしい。
だから彼女は豪華な料理を用意し、初めて二人で飲んだワインを準備して男を待っていた。
でも家に来た男は自分の荷物を取りに来ただけで、記念日のことなんか忘れてたらしい。
さん曰く、前兆はあったようで、マメだった男が次第に連絡を寄こさなくなり、色々と不安に感じてたようだ。だからこそ記念日に「夜、行くから家にいろ」と連絡が来た時、さんは覚えててくれたと喜んであれこれ用意をしてた。
なのに来た途端「他に好きな女が出来た。もう別れよう」の一言で去ろうとする男にキレてしまったと話していた。

――絶対に別れないから。

ついカッとしてそう言った彼女に、逆切れした男が苛立ち、ワイングラスを投げつけた。そのことで更に口論になり、しまいには彼女を叩いたようだ。

「まあ…千冬が好きならオレは何も言うことはねえけど…その女はオマエのことどう思ってんだよ」
「……それはオレも知りたいとこではある」
「ってことはまだ告ってねえんだな」
「いや、さすがに別れたばっかの子に言えないっすよ。何か下心で言ってると思われそうだし…」
「確かになー。じゃあ…もう少し親しくなってから言えばいいんじゃねえの。そんなクズ忘れさせてやるくらいの勢いでいけよ」
「いでっ」

バシンと背中を叩かれ、その強さで前のめりになる。相変わらず場地さんは手加減なしだ。
でも最終的には応援してくれるって流れになったのは良かったかもしれない。
もちろん隣人だからこそ、玉砕したら気まずいことになるのも承知の上だけど、そんな理由で諦められるなら場地さんに相談しなかっただろう。

「ま、マジで惚れたんなら…頑張れ」
「うっす」

一番味方して欲しい人からの言葉は、オレに大きな勇気をくれた。


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