
誓って言うが、竜胆も最初はそんなつもりじゃなかった。そもそも彼女は竜胆の兄、蘭に惚れてる女であり、同時にふたりの部下でもある。いくら惚れていようとも、口説くのは彼女が自分の兄をきちんと諦めてから、とは思っていた。
なのに竜胆のそのプランが崩れたのは、たまたま面倒な仕事を片付け、気分の良かった兄の蘭が、弟の竜胆、そして部下の彼女――を飲みに誘ったことだった。
最初はまだ良かった。蘭の行きつけの高級ホテル最上階にあるラウンジに行き、三人で楽しく飲んでいた、あのときまでは。
三人で飲みだしてから二時間後。最近できたという蘭の彼女から電話がかかってきて、「オレ、彼女とデートだから先に帰るわ」とウキウキした様子でふたりを置いて先に帰ってしまったことから、竜胆の受難は始まった。絶賛、蘭に片思い中のは「蘭さん、もう次の彼女が出来たの?」とショックを受けたようで、徐々に頼む酒の度数が高いものへと変わっていったのも、よろしくなかった。おかげでやけ酒に走ったを、彼女に絶賛片思い中の竜胆が慰めるという構図が成立し、度数の高い酒を無理やり付き合わされる羽目になった。
「もぉ~さいってえ…。蘭さんってば、前の女がビッチすぎて懲りたから、しばらく女はいらねえとか言ってたクセに!舌の根も乾かないうちってこういうこと言うんですよねぇ?竜胆さん…!」
「…まあ…兄貴はああいう人だから、さ」
「そもそも、わたしみたいな可愛い部下が近くにいるのに、よその女に手え出すとかありえないもんー」
「…聞いてねえ…。ってか、自分で可愛いとか言うなし」
まあ、マジで可愛いけど、とは竜胆の心の声だ。梵天が経営する表の会社の面接に来たとき、竜胆が一目惚れしたくらいは可愛らしい女だった。普通の家庭で育っただけあり、全くスレたところがなく素直な性格で、接するうちに竜胆も本気で好きになってしまったのだが、一つ問題だったのは、その彼女が何故か兄の蘭に惚れてしまったことだ。
蘭は見た目も端正な顔立ちでスタイルも良く、また女の子に対しては意外に紳士的で優しい一面がある。男には死ぬほど冷たく無慈悲なのだが、そういう裏の顏を知らないは、仕事帰り、酔っ払いに絡まれたとこを助けてくれた上司の蘭にあっさり惚れてしまった。あげく彼女は自分に惚れてるとは知らず、竜胆にそのことを打ち明け、相談までしてくる始末。あれから早一年。未だに彼女は蘭に片思い中で、そんな彼女に竜胆も片思い中、という変なトライアングルが出来上がっていた。
「すみませーん…同じものお代わり下さーい」
「おい…飲み過ぎじゃねえ?そろそろやめとけって」
カクテルグラスを一気に空にした彼女が、バーテンに向かって注文するのを、竜胆は溜息交じりで制止した。これ以上飲ませては体に障る。だいたいは自分で思ってるほどアルコールに強くないのを竜胆は知っていた。
「ほら、送ってやっから、もう帰んぞー」
カウンターに突っ伏した彼女の頭をぐりぐりしながら、竜胆が立ち上がる。なのには顔だけ上げると左右に首を振るだけで、一向に動こうとしない。
「おい、」
「やだ…まだ帰りたくない…どうせ誰も待ってないし」
「ハァ…んじゃあ、どうするよ。このラウンジで朝まで飲むわけ?」
竜胆とて、まだ彼女と一緒にいたい気持ちはあれど。他の男の、それも自分の兄のことで落ち込んでる彼女を見てるのも居たたまれない気持ちになってくるのだ。こんなことならが蘭に惚れてしまう前に口説いておくべきだった、という後悔すらしてしまう。今ではすっかりいい上司、相談役みたいな立ち位置になっているので、彼女から男として見られてないのがありありと分かるのだ。それは竜胆にとっても面白くはないというのが本音だった。
「ほら、とりあえず出よう。こんな酔っ払い状態じゃ店に迷惑だろ」
ここは蘭の行きつけである高級ホテルのラウンジ。泥酔する客など彼女くらいのもので、さっきから紳士淑女の皆さんにジロジロ見られている。ただでさえ若者など立ち入らない雰囲気の店なので、余計に目立っていた。
竜胆が強引にの腕を引っ張ると、彼女は渋々といった様子で立ち上がった。ただやはり足にきてるのか、ふらふらと足元がおぼつかない。仕方なく彼女がコケないよう、しっかり腰を支えて店を出ると、エレベーターに乗り込んだ。
もう一度言う。竜胆は決して、そんなつもりじゃなかった。彼女が蘭をきちんと諦めるまでは――以下同文。
ただ、思ってた以上に酔っていたが「もっと優しく慰めて下さいよー」と言いながら竜胆にしな垂れかかってきたことや、そのせいで彼女の髪から甘い香りがして竜胆の鼻腔を刺激してきたこと。今は夏で彼女が肩と足を出すような服を着ていたこと。支えている腰がやけに細くて、でも女の子特有の柔らかさが手から伝わってくること。
はたまた――潤んだ瞳で「まだ帰りたくないのに…」と見上げてきたことも重なって、気づけば彼女のくちびるを塞いでいた。
別に欲求不満だったわけじゃない。いくらに惚れてるとはいえ、彼女は兄に片思いしている相手。なので体の欲求不満は適当に遊んで発散していたし、何なら夕べも適当なセフレとしたばかりだった。
だけども、惚れた女の子相手だと、そういう遊びで解消した欲求なんてものでは発散しきれないくらい、全く違うベクトルなのだと、竜胆もこのときハッキリと自覚した。
甘くくちびるを食みながら、つい彼女の柔らかい腰から尻にかけて、するっと撫でてしまい、重ねているくちびるの隙間から「ん…」と彼女の鼻から抜けるような声が洩れ聞こえてきたら、もうダメだった。腰の辺りがずくんと重くなり、我慢できないほどの欲求が全身に回っていく。そんな男の煩悩に従って彼女のくちびるをつい舌先で舐めてしまったのも追い打ちをかけたようだ。は少し驚いたようで、潤んだ瞳をぱちぱちと忙しなく瞬かせた。
「り…竜胆…さん…?」
「帰りたく…ねーんだろ?」
「…え、あ…」
「ああ、あとは…優しく慰めて、だっけ」
彼女の体を壁に押し付け、上から見下ろせば、酒で火照った頬が更に赤くなったのが分かった。その表情はやけに色っぽく、男の欲を更に疼かせるだけだった。
ただ――その無防備さが、竜胆の怒りにも火をつけていく。
「いいよ。オレが慰めてやっても」
「え、あ、や…りんどーさん…?」
戸惑う彼女を無視して、竜胆はロビーに着いた途端、彼女の手を引いてフロントへ大股で歩いて行く。そこでホテルの部屋を確保すると、再びエレベーターに乗り込んだ。フラつきながらも着いてきたは、まだ状況を理解してないのか「どこ行くんですか…?」と不安そうに竜胆を見上げてくる。
こうなっては竜胆もあとには引けない。彼女がまだ蘭を諦めてなくても、自分のものだけにしたいという欲求の方が勝ってしまった。の問いにも答えず、部屋のある階で降りると、竜胆は強引に彼女を室内へ押し込んだ。高級ホテルなだけあって部屋はかなり広く、またベッドルームは別にある。竜胆は迷うことなくの膝裏を持ち上げて抱きかかえると、真っすぐベッドルームへ向かった。は驚いた声を上げたが、もうやめるという選択肢はなく、そのまま彼女をベッドの上へ放ると、着ていた上着を脱ぎ捨てた。
「り、竜胆さん…?…」
「兄貴のことなんて忘れさせてやるよ」
未だ戸惑い顔で自分を見上げてくるを軽く睥睨すると、竜胆はゆっくりベッドへ上がった。ぎし、と軋む音が静かな室内に響き、の肩がぴくりと跳ねる。ただ、まだ酔っているせいか、竜胆を見つめる瞳はとろん、としていた。これから何をされるのかも分かってないといった顔だ。無意識に男を煽るのだから、こいつはタチがわりい、と妙な苛立ちさえ覚えて、上体を起こしていた彼女の腕を引き寄せ、一度ぎゅうっと抱きしめる。その際、竜胆の硬い胸板にむにゅっとした感触が押しつけられ、再び腰の辺りにずくんとくるものがあった。
背中を抱いてた手を細い首裏へするすると上げていけば、自然と彼女の顏が上を向く。そのタイミングでもう一度くちびるを塞ぐと、驚いた彼女の手が竜胆のシャツをぎゅっと握りめてくるのが腕から伝わってきた。
「ん…ま…待っ」
「待てねえよ」
キスの合間にそんな言葉がついて出る。すでに優しく事を進めてやる余裕はなく。半ば強引にくちびるを割って舌を滑り込ませると、彼女の口内をねっとり味わい、舌を絡ませてはじゅうっと吸い上げる。の口内は酷く甘く感じて、夢中でくちびるを貪り、そのまま背中を支えていた手を外せば、はころんとベッドへ倒れ込んだ。は、は、と呼吸を乱して、胸の膨らみが上下する様は酷く扇情的で、竜胆は迷うことなく彼女の首筋にも吸い付いた。同時に胸の膨らみへも手を滑らせ、服の上から揉みしだく。巨乳とまではいかないが、竜胆の手に納まるくらいの丁度いい大きさで、その柔らかさが手のひらから脳に直接伝わってくる。首筋に口付けながら、胸の先端部分を指で刺激すると、の肩がぴくんと跳ねた。
「…あ…んっ」
今度こそハッキリと彼女の喘ぎ声が口から洩れたのを聞けば、余計に興奮してしまう。くちびるを少しずつ下げていくと同時に、着ていたキャミソール風のトップスの肩紐を下げていけば、可愛らしいデザインのブラジャーが竜胆の目に晒された。
「や…だ、だめ」
「今更おせえって。そもそも慰めろって言ったのお前だし」
「ち、ちが…そういう意味じゃ…ぁっ」
やっと自分の置かれた状況を理解したらしい。が恥ずかしそうに身を捩る。だが泥酔してるせいですでに体は脱力しており、抵抗とも呼べないものだ。竜胆はかまわず、ブラジャーの下部分を指で引っ掛け、それを強引に上へと押し上げた。そうすることで、ぷるんと可愛い乳房が露わになる。思わずごくり、と喉が鳴ったのは、何度か想像をしたことのある彼女の裸体を現実に見たせいだ。気づけば自分のガチガチに硬くなった陰茎をの太腿に押し付けていた。その感触にまた彼女の体がびくんと反応したが、それさえ竜胆を煽るだけでしかない。
竜胆は片方の乳首を指でくにくにと捏ねながら、もう片方を迷うことなく口に含んでじゅう、と吸った。んんっと可愛い喘ぎが、彼女の口から洩れたことで、もっと喘がせてやりたくなった。竜胆の口内でツンと立ち上がった場所を、舌先で転がしたり、合間に吸ったりを繰り返すだけで、の華奢な体がびくびくと反応するのがたまらない。
そのまま胸を愛撫しながら、無防備に投げ出された白い太腿を撫でて少しずつ開いていく。間に自分の体を入れてしまえば、彼女の抵抗も微々たるものにしかならなかった。履いていたミニスカートの裾から手を滑り込ませ、ショーツの上から目当ての場所を撫でつけると、は「あ、ん。や、やだ…」と可愛い声で竜胆を煽ってくる。ただ割れ目の部分をすりすりと刺激していけば、そこが少しずつ潤みを帯びて濡れてくるのが指先から伝わってきた。
「やだって言うわりに濡れてきたけど?」
「だ、だって、竜胆さんが触るから…」
「へえ、お前、惚れてもねえ男に触られて濡らすのかよ。意外と淫乱?」
本当はこんなこと言いたくもないのに、彼女の気持ちが自分にないと思うだけで意地悪な言葉が出て来てしまう。彼女を傷つけたという自覚はある。が一瞬悲哀に満ちたような顔で瞳を揺らしたからだ。
「そ、んなことない…」
「そんなことあんじゃん。ああ、それともオレを兄貴と重ねてるとか?そんな似てねえと思うけど」
嫉妬の炎が今更ながらにこみ上げたのは、彼女が自分を見つめる目を見たからだ。どこか恋い慕う男を見るような甘い熱が一瞬浮かんだせいだ。するとは「に、似てないですよ…ふたりは全然」と言って、竜胆を見上げた。その瞳には薄っすら涙が浮かんでいる。それを見てしまえば竜胆も思わず固まってしまった。
「泣くのは…ずるくねえ?」
「だって…竜胆さん…ちっとも分かってくれてない…」
「…あ?」
何が?何を。こう見えて竜胆も彼女に付き合い、度数の高い酒をしこたま飲んで酔っている。ので、その酔っている頭は、そうそう回らないのである。よっての言いたいことも理解が追いつかない。いや、主語がないので理解の仕様もないのだが、何となく。そう何となく彼女の言い回しを深読みすれば――。
「わたしが好きなのは……竜胆さんです、よ」
「…………は?」
今度はハッキリ主語があったので言われた意味は分かった。分かったのだが、その言葉の真意が今度は分からない。乾いた「は」はそういうゴチャゴチャしたものを一つにまとめた結果だ。
だいたいが好きなのは兄なわけで、オレではない。なのに好きなのは竜胆さんですよと、シレっと告白とも取れる言葉を吐かれれば、酔っ払いの頭など簡単に混乱する。そんな思いから出たのが「なに言ってんの、お前」だった。するとの口がむうっと尖っていく。いや、可愛い。この状況でその顏は反則だろ、とは竜胆の煩悩が言った感想だ。
「…やっぱり分かってなかった」
「…だから何が。え、お前、言ったよなぁ?兄貴に助けてもらったーって嬉しそうな顔で言ったあと、好きになっちゃったかもって」
「だ、だからあれは…その…そう言ったら竜胆さん、どんな反応するかなぁ…と思って…」
「ハァ?どんなって…何で」
「な、何でって、だから…竜胆さんにヤキモチ妬いて欲しくて…」
「………」
照れ臭そうに頬を染め、上目遣いで見上げてくる彼女は、もうハッキリ言って超絶可愛かった。悪いが腰にぐぐっとくるくらい、竜胆の男の部分を煽ってくる。とりあえず、彼女の気持ちはざっくり程度に分かったので、ならこのまま頂いちゃってもいいだろう、という邪な思いがこみ上げた。
結果、竜胆は行為を続行することに決めた。いや、もうやめてと言われようが抱く。そんな勢いで彼女の両脚を押し広げる。いきなり行為を再開され、はひゃっと可愛い声を上げたのもいけなかった。
「り、竜胆さん…っ?な、に」
「お前の本心は何となく分かったし、話はあとでするとして…まずは抱かせて」
「……え」
「今、オレの頭ん中、お前を抱きたいしかねえの。ってか、ここまでオレを煽ったのだけどな」
「え」
真顔で言い切る竜胆を見て、今度はが固まる番だった。その隙に彼女の足の間へ顔を埋めた竜胆は、ショーツを片寄せ、徐にその場所へじゅうっと吸い付く。いきなり強い刺激が恥ずかしい場所へ与えられたは、「んんっ」と可愛い声を上げて腰を揺らした。足を閉じようにも手で押さえつけられ、固定されているので、延々と恥ずかしい場所を舐められ、吸われて、ぐずぐずになるくらい濡らされてしまった。
「や…り、竜胆さ…は、恥ずかしい…ってば…んっ」
「そういうこと言われたら、余計にコーフンすんだって…」
シーツに垂れるほど愛液を溢れさせている膣口に、今度はゆっくり指を埋めていき、浅い部分をくちゅくちゅと擦るだけで、彼女の腰がやだやだと言うように揺れる。
「は…すげえ、とろとろ…、かわい」
「そ…そういうこと…ぁ…言わない…で…んんっ」
「めっちゃ締め付けてんじゃん…オレの指、そんな気持ちいい?」
「…や…だ…んぁ」
きゅうっと可愛く指を締め付けられた興奮で、軽く言葉攻めしてみれば、更にぎゅっとナカが締まるので、竜胆もだんだんたまらなくなってきた。小さめのクリトリスがぷっくりしてきたのを見て、そこへじゅっと吸い付くと更に指が締め付けられる。飴を転がすみたいに、くにくにと小さな芽を刺激するだけで、指の埋まった場所からまたとろりと蜜が溢れてきた。彼女の弱い部分を舌で虐めて、指をじゅぷじゅぷと抜き差しすれば、押さえていた腿がかすかに震えている。抵抗を諦めて快感に溺れていく彼女は、惚れた欲目を抜きにしても可愛いと思う。
「も、もう…だめ…イっちゃ…う」
「ん、イクとこ見せて」
「や…だ…んんっ」
竜胆にイカされるのは恥ずかしいのか、いやいやと首を振ってはいたものの、やはり竜胆の甘い愛撫には抗えなかったらしい。一際高く喘いだあと、彼女はがくがくと腿を震わせ、竜胆の指をぎゅううっと締め付けながら達したようだった。好きな子が恥じらいながら達する姿が、竜胆の体も昂らせていく。ひくひくとしている場所を何度か指で抽送したあと、一気にそれを引き抜き、今度は質量のある屹立したものをそこへ宛がった。
…本音を言えば、最初は本当の本当に最後までする気はなかった。ただ少し無防備な彼女にちょっとした怒りもなかったと言えば嘘になるし、ついキスをしてしまったことで邪な気持ちもなかったというのには嘘になる。でも本当に一線を越えるかどうかは、竜胆も頭の片隅でチラっとは悩んだ。ただ、やはりここまでしてしまえば男として最後までしてあげないといけない、という責任感も出てくる。いや言い訳とかじゃなく。
ただ、その前に、竜胆は一つだけ忘れていたことを思い出した。は、は、と浅く呼吸を繰り返す彼女のくちびるにちゅっとキスを落とすと、はさっき以上に蕩けた瞳で竜胆を見上げてきた。
「…り、竜胆…さ…ん?」
「さっき驚きすぎて言い忘れたんだけどさ…好きだから」
「…え…?」
「オレものこと…好きっつったの」
「…ぁあっ」
告白したのと同時に、とろつく場所へガチガチに勃起したものを一気に押し込むと、じゅぷっという卑猥な音が漏れた。イったばかりで未だひくついてるその場所が、竜胆のものを無遠慮に締め付けてくる。それが苦しいほど気持ち良く、腰を押し進めるたび、彼女の背中が弓なりに跳ねた。挿れただけで、また達したらしい。
「…マジかわいー。好き」
快感の涙で頬をべしょべしょに濡らしている火照った顔も、薄っすら開く濡れたくちびるから洩れる喘ぎすら、竜胆の欲をたかめていく。ただ、その思いとは裏腹に、ゴムもつけない自分を容易く受け入れた彼女の無防備さは、やっぱり腹が立つ。いや、早くと繋がりたくてつけ忘れたのは竜胆なので、全く矛盾しているのだが、恋とはそもそも矛盾してるものなのだ。
「さあ…マジで隙ありすぎ、男に対して無防備すぎな?」
「…ふぁ…?」
「簡単にオレに挿れられちゃって…気持ちいー顔して、マジむかつく」
がつがつと激しく腰を揺すられながらも、はポロポロと快感の涙を流している。その顏を見てると、どうにも矛盾した苛立ちが止まらないのだが、ついでにエロ可愛くて腰も止まらないので、竜胆もたいがいである。
でも何度も言うようだが、竜胆もここまでするつもりはなかった。本当に。
ただがムカつくくらい可愛くて、とんでもない間違いを起こした末に、両想いだと分かったので、まあ、何と言うか全て良かったということにした。
けれども、一番の間違いは、竜胆の気を引きたいがために蘭のことを好きなフリをしたの女心だったのかもしれない。