
01-初めての夜に
※軽めの性的描写あり
春千夜に口内を優しく愛撫されながら、一枚一枚、着ているものを脱がされていくのが恥ずかしくて、は無意識に体を捩った。でもすぐに戻され、簡単にブラのホックを外されしまった。その慣れた手つきにちょっと驚いたのと、かすかに胸が痛くなったのは、自分以外にもこうして春千夜に抱かれた女がいるんだという思いが溢れたからだ。
でもそれは仕方ない。春千夜は大人の男であり、誰もが振り向くくらいに美しい顔立ちであり、かつ日本最大の組織、梵天のナンバー2という立場の人間だ。そんな男に女が寄って来ないはずがない。
「…ひゃ」
長い口づけが終わり、春千夜の唇が首筋、鎖骨へと降りていくのを感じて恥ずかしさに耐えていると、突然、胸の膨らみをやんわりと揉まれた感触、そしてその一番敏感な部分をペロリと舐められる感触に、は思わず声を上げた。こそばゆいという感覚とも違う。初めての刺激に戸惑い、更にそんな甘ったるい声を自分が出せることも知らなかったは、とても恥ずかしくなった。
「ご…ごめんなさぃ…変な声出ちゃった…」
急に声を上げたから気分を害されたかと、つい普段と同じように謝罪してしまった。
「別に変な声じゃねえよ…可愛いしかねえだろ、今の」
春千夜が顔を上げて彼女の頬を撫でながら、どこか低くて甘ったるい声で言う。可愛い、と言う耳障りのいい言葉にの顏がぶわっと熱を吐き出したように熱くなった。春千夜は無駄に顔も良ければ、声もいい、とこの時、気づく。あの低音に甘さを含まれたら、はたまらなくドキドキしてしまった。
これから何をされるのか分かってるようでいて何も分からない。経験がないのだから当然だ。なのに体は勝手に火照っていく。おかしい、自分の体じゃないみたいだ。じんわりと汗ばむのを感じながら、は春千夜を見上げた。薄闇の中で大きな瞳と視線が絡み合う。
「ってか、その声、もっと聞きてぇんだけど」
「…え…ひゃ…そ、そこだめ…」
春千夜の手がするすると下りて、足の付け根部分をゆっくり撫でられると、くすぐったさと共にぞくりとした感覚に襲われ、更にその手が悪戯に内腿を撫でたり、ショーツのラインをなぞったりしてくる。そんな場所は他人に触れられたことはなく、自分で触るのとは全く違う感触にも驚いてしまった。
「だめ?」
「だ、だめ…変な声でちゃ…ふぁ…っ」
言った矢先から、変な声が漏れてしまう。春千夜の手がからかうように動くせいだ。つつ、とショーツの上を動く指からの刺激で、体が勝手にびくんと動いてしまうのも恥ずかしい。
「…かわい」
の反応を見て、春千夜が甘い声で呟き、彼女のくちびるにちゅっと口付ける。それだけで真っ赤になっていくのだから、春千夜からすれば言葉通り、可愛いしかない。なのに彼女は変な声が出てしまうことを凄く恥ずかしがるので、余計に意地悪したくなるのだ。
こういう行為をしたことがないというのは気づいていたが、彼女の反応からもそれは伝わってくる。それはやけに新鮮で、またそれが春千夜を興奮させるのだというのを、彼女は分かっていない。
「…ここ、触ったことねえの」
「…え」
ショーツのふちをなぞっていた指が、クロッチ部分へ伸びてくる。その場所をするりと撫でられただけでピリピリとした甘い刺激が全身に広がる感じがした。
「な、ない、です…」
「…自分で触ったことねえのかよ」
「お、お風呂で体を洗うくらいしか…」
「マジ…?」
小さい頃、施設にいた頃は、施設長と一緒にお風呂へ入っていた。その時、そこは女の子にとって大事な部分だから、あまり強く洗っちゃダメよ、なんて言われたので、今でもふんわりとしか洗ったことはないし、未知の部分ということでじっくり見たこともない。知るのが怖いと言う方が正しいかもしれない。
「へえ…じゃあ…オレに触らせろよ」
「…へ?」
「オマエの初めては全部オレがもらうって、今決めたわ」
「え、ぜ、全部って…ひゃぁっ」
誰も触れたことがないと知って、春千夜の独占欲が一気に強まった。当然だ。初めて惚れた女の体を他の誰も知らないし触れたこともないのだから、男の部分を激しく揺さぶられる。
の内股へ手を入れて少しだけ開かせると、春千夜は再びショーツの上からその部分を指で優しく撫でた。途端にの口から可愛い声が漏れる。
「どんな感じ?」
「ど…どんなって…な、何か…くすぐったい…ような、違うような…ン」
春千夜の指がその場所をゆっくり何度も撫でていくたび、くすぐったさとはまた別の感覚がその場所から広がって、腰の辺りがむずむずしてくる。それを見ていた春千夜はかすかに笑ったようだった。
「…の腰、揺れてんじゃん。かわい」
「え…だ、だって…何かむずむずして…んぁあ」
春千夜の指が上の部分を少しだけ強く擦った瞬間、今までとは比べ物にならないほどの刺激がきた。
「は、春千夜さ…そ、そこだめ…」
「ん?ここ?」
「や…ぁっ」
ピンポイントでその場所を撫でられ、の体がびくんと跳ねる。春千夜の触れられてる場所がジンジンと熱くなって、自分でも制御ができない。
「直に触るぞ」
「へ…?や…待っ…んんっ」
春千夜の指がクロッチ部分の端に動いたと思ったら、突然中へ侵入してきた。直に春千夜の熱い指をその場所に感じて、思わず腰を捻る。でもそんな抵抗とも言えないような動きでは、春千夜の動きを止めることは出来なかった。
「んん、や…そこ…だめ」
「濡れてきてる…痛くねえだろ?」
確かに痛くはない。ただ、濡れてると言う状態も話にしか聞いたことがなく、それが本当に自分の体から出てきたものなのかと驚いた。でも春千夜の指が往復するたび、それは更に溢れて、その部分がぬるぬるとしてくるのが分かる。それを指に絡めて春千夜が割れ目の部分を優しく刺激していたが、ある部分を掠めるように撫でられた時、またしてもびりっとした刺激が走った。それ以外で言えば、もっと下の方に触れられると、そこからまたむずむずとしたもどかしい感覚に襲われる。
「あー…やべ…コーフンするかも」
「な…なに…言って」
「仕方ねえだろ…こんなゆっくり事に及ぶことなんてオレも初めてなんだよっ。何かオレの方が焦らされてる気分だわ…」
「え…あ、ご、ごめんなさ…」
一瞬、怒られたのかと思ってつい謝ると、春千夜は軽く吹き出したようだった。
「オマエ、こんな時でもそのクセ出んのな。別に怒ってねえよ。ただ…」
「た、ただ…?」
「今、頭ん中がエロ一色でやべえ…」
「…な…」
「オマエのせいだから」
春千夜は皮肉めいた笑みを浮かべると、真っ赤になっているの唇をやんわりと塞ぐ。舌で優しくこじ開け、彼女の小さな舌に絡ませると、じゅうっとそれを吸いながら、口内を愛撫していく。そんな大人のキスすら初めてのは、必死に春千夜へしがみつくことしか出来ない。でもその時、触れられていた場所で春千夜の指が再び動き、ぬるぬると何度か往復した後、ある部分にちゅぷっと音を立てて侵入してきた。その初めての感覚にの体がびくんと大きく跳ねる。体内に遺物が入ってきたようで、思わず腰を引いてしまった。
「わりぃ…痛かったか?」
その問いに慌てて首を振った。痛いわけじゃなく、ビックリしたのだ。春千夜曰く、入れたのは指の先だけと言う。なのに、それだけで少し怖いと思ってしまった。そもそも自分の体に他人の指が入るなんて、想像すらしたことがない。
「…ってか、触ってると挿れたくなんだよ…オマエ、すげえ濡れてるし…」
「ご、ごめん…なさい」
「いや、怒ってねえから、いちいち謝んな。まあ…想像以上に初めての女は大変なんだって分かったわ」
春千夜は苦笑交じりで言いながら、少し汗ばんでいる彼女の額にちゅっと口付けた。本音を言えば痛いくらいに勃ち上がってるので、このまま強引に抱きたい気持ちはありまくるのだが、を怖がらせてまで抱くつもりは春千夜にもない。
ここは初めての我慢か?と考えつつ、これからはゆっくり少しずつ進めていくしかないと考える。これが他の女だった場合、絶対に我慢などしないが、可愛いなら話は別だ。オレも随分と丸くなったもんだな、と苦笑しつつ、今夜は諦めて寝ようかと言う気持ちになった。そもそも熱が下がったとはいえ、病み上がりという自覚はある。
「ってことで、今夜はこのまま寝る――」
と言いかけた時、突然が起き上がった。
「何だよ…どうした?」
「え、で、でも…春千代さん、ツラそうだし」
「まーそれは否定しねえけど。でもオマエ、怖いんだろ?」
「う…そ、そうですけど…」
「なら無理することねえよ。ヤりたい盛りのガキじゃねえんだから我慢くらい出来るっつーの」
な?と言いながら頭を撫でてくれる春千夜を見て、は泣きそうになった。本音を言えば初めてを春千夜にあげたいし、今も平気だから抱いてと言いたい。でも、それ以上に怖いという思いが強くて、申し訳ない気持ちになったのだ。特に初めては物凄く痛いと聞いたことがある。それを考えると尻込みしてしまうので、自分でもどうしていいのか分からなかった。
ただ、そこでエッチはダメでも春千夜の為に出来ることはあると気づいた。もちろんにその経験はないし、やったことはない。でも一応男女の営みという知識としては知っている。まだそれなら怖くないんじゃないかと思ってしまった。
「ほら、サッサと寝るぞ。起きてたらムラムラするし――」
「は、春千夜さん」
布団に潜ろうとした時、突然にガシと腕を掴まれた春千夜は、ギョっとしたように振り向いた。見ればが真剣な顔で自分を見つめている。ただ、その顏は地味に赤い。
「…何――」
「わたしがします」
「……は?」
「春千代さんがツラいなら、わたしがその……するので…それならいいですか…?」
途中、ごにょごにょとよく聞き取れなかった春千夜は、「何をするって?」とつい訊き返していた。するとはますます真っ赤になりながら――。
「だ、だから…わたしが…する分には怖くないので……お…お口でさせて下さい」
「…………え」
彼女からのとんでもない申し出に、今度こそ春千夜の顏が固まってしまった。