
03-男の苦悩
※性的描写が含まれますので、18歳未満の方の観覧はご遠慮ください。
その日、仕事を終えた砂羽は、店の閉店時間を過ぎた頃に顔を見せたオーナーの蘭に飲みに誘われた。蘭は時々労いの意味もこめて店のキャスト達を誘うのだが、この日はたまたま残っていたのが砂羽だけということもあり、ふたりで近くのバーへ向かう。最近は妹のが蘭の組織のナンバー2と付き合始めたこともあり、ふたりは前より良く話すようになっていた。
「んで、ちゃんは最近どうよ」
シャンパンで乾杯したあと、蘭がふと思い出したように砂羽へ尋ねた。春千夜をからかうネタでも欲しいのか、蘭は時々こんな風にふたりの近況を訊いてくるのだ。
その日の疲れをとるようにシャンパンで喉を潤していた砂羽は、蘭からの質問を苦笑交じりで「どうって何ですか」と返しながらも、最近の様子がおかしいことを思い出していた。
「いや、三途と上手くいってんのかと思ってさ。あんな普通の子の初彼が三途じゃ、そろそろ身ももたねえんじゃねえの」
「初彼じゃないですよー。一応あの子も学生の頃は彼氏いたみたいだし」
「マジ?まあ、でも学生の時じゃ、まだガキの付き合い程度のもんだろ」
「まあ、そうですねぇ。あ、でも三途さんとは仲良くしてるみたいで、今のところ特に問題はないと思うなあ」
そう言いながら、砂羽は先日電話でと話した時のことを思い出す。まだまだ初心い妹だと思っていたが、まさかあんな相談をしてくるとは思ってもいなかった。
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日曜日、仕事も休みの砂羽は、久しぶりに出かけることもなく自宅で寛いでいた。前の日の酒が残っていたせいか、ひたすら寝て、気づけば夕方。ああ、お腹空いたなあという感覚で目が覚めた。
がいる頃は食事に困ることもなかったが、あいにく妹はとある組織に狙われている可能性がある為、恋人の家に避難中で不在。ということは自分で食べるものを用意しなくてはならない。
しかし砂羽は家事の一切が苦手なので、自分で作るという頭はなかった。
「ウーバーでいっか」
がいなくなってからは、だいたいこんな感じである。外食となると、寝起きのボサボサ髪では行けず、それなりの恰好をしなくちゃいけないし、大人のささやかなマナーとしてメイクもしなくちゃならない。普段はきっちりしてる分、休みの日にまでメイクをするのは面倒だ。そう考えると必然的にデリバリーサービスを利用する回数も多くなる。
この日も砂羽はスマホに入ってるアプリから中華の弁当を注文して、来るまでの間にシャワーを浴び、出たあとは缶ビールで喉を潤す。最近の彼女のルーティンだ。可愛い妹から電話が入ったのは、そんな時だった。
「、どうした?こんな時間に」
と言っても、まだ夕方なのだが、この時間帯、はだいたい仕事と称して彼の家の掃除をしたあとは、食事の用意をしたりと忙しくしているのは砂羽も知っている。なのに電話をかけてくるのだから、また買い物か何かの頼み事かと思った。
は今、交際中の三途春千夜が属している梵天と敵対している組織、愛田興業に梵天のスパイと勘違いをされ、狙われている可能性があるので一人では外出できない。その分、出勤前の砂羽に買い物を頼むのが、これまた最近のお約束みたいになっている。砂羽の勤める店が春千夜のマンションと近いので、店前に寄って妹の顔を見ていくのは、砂羽にとっても安心を得られる機会になっていた。
しかし砂羽の仕事が休みの日曜日は、さすがにも遠慮してしまうらしく、そういったお願い事はしてこない。だからこそ休みのこんな時間にかけてくるのは非常に珍しいと砂羽は思った。
『う、うん…ちょっと…お姉ちゃんに訊きたいことがあって…』
「…訊きたいこと?」
『う…って、いうか…その…教えて欲しいことと言うか…』
「教えて欲しいことって…?珍しいね。が私にそんなこと言うなんて」
孤児として育ったため、砂羽は姉として妹の面倒はきっちり見てきたものの。早くから夜の仕事をしてきた砂羽は家の家事などは苦手で料理も掃除も何もできない。そんな姉とは逆に家事全般が得意なの方が、どちらかといえば普段から姉に色々教えてくれる方だった。
「で、何を教えて欲しいの?」
『えっと…その…』
珍しくどこか歯切れの悪いは、その"教えて欲しいこと"の中身をなかなか言おうとしない。普段は姉に対し、そこまで遠慮をする子でもないので、砂羽も余計に気になってきた。
もしかして三途さんとの間に問題でも起きたんだろうか――?
一瞬でもそう思ったのは、やはり相手は梵天という犯罪組織のナンバー2だから、というのが主な理由だ。
早くに両親を亡くし、孤児になったとはいえ、それ以外では平々凡々に生きてきた子だ。そのが初めてまともにつき合う男が、日本最大の組織の幹部ともなれば、姉としても最初は色々と心配をした。それでも二人の関係を認めたのは、春千夜の方も妹に対し、本気の熱量を見せたからだ。危ない場面でも体を張って助けてくれた。そういう男だからこそ、大事な妹を預けようという気持ちになったのだ。
その妹が今まさに何かに悩んでいるとするなら、やはり同居中の春千夜が原因なのでは、と心配になるのも当然だった。
「まさか…三途さん、もう浮気したとか?」
まず最初に思いつくことを口にすると、は殊の外驚いた様子で『ま、まさか!』と否定してきた。
『春千夜さんはそんなことしないもん…』
「はあ…何、小学生みたいなこと言ってんの。男なんてチャンスさえあれば、ほぼ99%は浮気する生き物だから」
『残りの1%は…?』
「そりゃ、まあ…ごくまれに彼女や奥さん一筋の男もいるからね。でもその中に、男がモテないからって理由もあることにはあるし、単に気が弱くて手が出せないだけの男もいるわけで、全員がパートナーを愛してるからって理由とは限らないのー。だいたい三途さんみたいな男は放っておいても女なんか寄ってくるでしょーが。何で浮気しないって言い切れるわけ?」
『そ、それは…だって…』
はごにょごにょと口ごもっていたが、ふと落ち込んだ様子で『やっぱり浮気するのかな…』と呟いた。今こうして心配になったということは、彼女の用は浮気の件じゃないらしい。
「ごめん。別に三途さんが浮気するとか言いたいわけじゃなくて。ただが悩んでるなら、そっち系の話かと思っただけ。でも違うんでしょ?」
『う、うん…まあ…』
「ところで三途さんは?が食事の用意をしてないってことは…今いないの?」
『あ、うん。春千夜さん、今夜は梵天のお仕事で出かけてるの。食事も外で食べるから、オマエは休んでろって』
「そっか。まあ優しくされてるなら私も安心だけど」
『…うん。すっごく優しい』
「……あんた、まさか惚気る為にかけてきたわけじゃないでしょーね」
シレっと惚気てくる妹に思わず苦笑が漏れた。ついこの間までは恋愛の"れ"の字も知らなかった妹が、恋人のことで惚気てくるようになったのか、としばし感慨にふける。まあ年頃の妹が何故か仕事に生きがいを見出し、恋愛そっちのけで働いてた頃は、砂羽も地味に将来のことを心配していた。なのでに好きな人が出来たのは姉としてもホッとはしている。
「ああ、そう言えば教えて欲しいことがあるって言ってたっけ。浮気じゃないなら何を――」
と言いかけて、砂羽は言葉を切った。先ほどからの話す後ろで何やら人の会話というか、何かの音声らしきものは聞こえていたのだが、急にトーンが変わった気がしたのだ。てっきりテレビでもつけてるんだろう、と思ったのだが、今まさに聞こえてくる音声はとてもじゃないが民法で流せる類のものではない。
『…ァアアン!…す…ごい…くる…アんっ…イっゃ…う』
先ほどの音量とは違い、次第に大きくなっていったのは、女の喘ぎ声。それに交じって男の低い声が時々入るのは、砂羽でも知ってるエロ動画というやつだろう。昔風に言えばアダルトビデオ的なものだ。何でそんなものがのいる部屋から聞こえてくるんだ、と砂羽はギョっとしてしまった。
「………ちょっと…アンタ、なに流してんの、それ…」
『え?あ!わ、忘れてた…!』
指摘されたことで慌てたのか、何やらゴン!だのガタンだのと何かにぶつけたような音と、妹の「痛っ」という悲鳴。そして少しするとあんあん聞こえていた女の喘ぎ声がぷつりと途絶えた。どうやらが映像を止めたらしい。
やはり今のエロ動画は妹が見ていたのか、と砂羽は愕然とした。純情一直線だった可愛い妹が、何故そんなものを見ていたのか理解できない。そして、やはりと言うべきか。一瞬は春千夜に変なプレイでも強要されてるのかと疑った。しかし電話口に出たは恥ずかしそうに『ちょ、ちょっと勉強中で…ごめんね』とエロ動画を見ていた理由を、砂羽に説明し始めた。
「…は?怖くてエッチを拒んだ…?」
『う、うん…まあ…そ、そうなんだけど…』
姉にその手の話をするのはやはり恥ずかしいのか、またしてもがごにょごにょと口ごもる。しかし砂羽はその話を聞いて、少しホっとしていた。話を聞く限り、春千夜に変なことを強要されてるわけじゃないと分かったからだ。どちらかといえばの方がエッチを拒んだことに罪悪感を覚え、その手の勉強をしてるという。だからって何もエロ動画を観なくても、とは思う。元々根が真面目な妹だけに、その気持ちも痛いほど理解は出来るのだが。
「んで…フェラの練習のためにエロ動画を見てた、と」
『う…そ、そんなハッキリ言わないでよ…恥ずかしい』
「何を今さら…。っていうか、よくそんなこと出来たね、のくせに」
『な…わたしのクセにってひどい、お姉ちゃん』
「だってエッチ関連のこと何も知らなかったでしょ?雑誌で読む程度の知識しか」
『う…まあ…春千夜さんにも驚かれたけど…』
そりゃそうだろう、と砂羽は内心苦笑した。見た目も中身も純情で、そんな行為からは一番遠いところにいるような子なのだから、その手の行為に慣れているであろう春千夜でも多少は驚いたに違いない。こういう時、素人の真面目な子の方が純粋な分、好きな相手に喜んで欲しくて頑張って奉仕してしまうこともある。そしてはもろ、そういう性格なのを砂羽は知っている。
「で…エロ動画を観て勉強してる上に、私に何を教えて欲しいわけ?ああ、男の感じる部分とか?そりゃやっぱり裏筋とか、普段触れないような部分が――」
『ち、違…!………っていうか裏筋ってどの辺……?』
「いや、そこ食いつく?ほんと真面目なんだから、あんたは」
恥ずかしそうなわりには興味津々で訊いてくる妹に、つい「ぶはっ」と吹き出してしまう。こういうところは前の可愛い妹のままだ。
『そ、そんなんじゃないし…!ただ、その…どうせなら春千夜さんに喜んでもらいたいんだもん…』
とは恥ずかしそうな声で言いながらも、最後は尻すぼみになっていく。その気持ちだけでも男は喜ぶんじゃないの?とは思ったが、当の本人は経験がないので相手の望むことも分からないといった感じだ。
やっぱり男がどうしたら喜ぶかを訊きたいんだろうか?と砂羽が苦笑していると、『それでね…お、お姉ちゃんは…初エッチの時、怖くなかったのかなぁって気になって…』と案外まともなことを訊いてきた。
「そりゃ怖いか怖くないかで言えば…最初は怖かったよ。めちゃくそ痛かったしねー」
『え……や、やっぱり痛いんだ…』
「まあ、あの時は相手も若くて下手くそだったってのもあるけど。こっちも緊張して濡れるどころの話じゃなかったし」
『……ぬ、濡れないと…その…』
「ああ、死ぬほど痛いかな。でも濡れてたら多少は痛みも和らぐとは思うけど、最初はどうしても異物感があるからねー」
ケラケラ笑いながら説明すると、はうーっと唸りながら、また迷路へ迷い込んだようだった。砂羽とて必要以上にビビらせるつもりはないが、痛いものはどうしても痛いので、そこは嘘をついても仕方がない。恋人のいる大人の女なら誰でも通る道であり、その怖さを克服できなければ、一生好きな男に抱かれることは出来ないだろう。
『わ、分かった…』
「そ?覚悟は出来たんだ」
『……で、出来ないけど…』
「まあ、頭で考えてると怖い方が勝っちゃうかもだけど、そんなの自然に任せればいいでしょ。三途さんなら経験豊富そうだし、その辺は上手く進めてくれるんじゃない?」
砂羽としては怖がる妹を安心させようと言った言葉だった。しかしにとっては春千夜の経験値の高さも気になるようで『やっぱり…春千夜さん、そうなのかな…』と落ち込んでいる。しかし、そこは気にしても仕方がない。見栄えのいい成人男性が未経験なんて、聖人君子でもなければあり得ないのが今の常識だ。
「過去は変えられないけど、三途さんの今の恋人はなんだから、もっと自信を持って堂々としてなよ。ものすごく優しくされてるんでしょ?」
『…う、うん…それは…まあ…』
「なら過去の女なんてどうでもいいじゃない。ま、浮気されないよう早めのエッチをおススメするけど」
『わ…分かってるよ…。だから、こうしてコッソリ勉強してるんだし…』
「そんなプロ同士のセックスなんて何の参考にもならないでしょ。はド素人なんだから。なりに彼を悦ばせてあげたらいいの」
それはセックスが怖いという妹に対し、早く春千夜に身を任せた方が彼も喜ぶ、という意味合いで言った言葉だった。しかしは何を勘違いしたのか、『が、頑張って研究してみる…!ありがとね、お姉ちゃん!」と一人納得した様子で電話を切ってしまった。
妹の研究、という言葉に一抹の不安を覚えた砂羽だったが、まあ男女のことは互いに解決しないことには仕方がないので、ここは姉として見守るしかない。
「それにしてもエッチまだしてなかったとは…。じゃあ、私のプレゼントも不発ってこと?」
少し前、春千夜が熱を出して寝込んでいた際、砂羽がの代わりに食材やら薬やらを買いに行った時のこと。薬局に行った砂羽は、半同棲デビューをした妹にエールを送る意味で、こっそりコンドームも買い、買い物袋の中へそれを忍ばせておいたのだ。
てっきり役に立ったと思っていたものの、エッチをしてないんじゃ砂羽のプレゼントも意味をなさない。それに気づいて、つい苦笑が洩れた。
「はあ…アレが日の目を見るのはいつになることやら…」
可愛い妹の脱ヴァージン計画は、まだまだ先になりそうだ。そう思いながら、残りの缶ビールを一気に飲み欲した。
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「…ン…ぅ」
甘く舌を絡みとられ、はくぐもった声が漏れてしまった。どこか余裕のない動きなのは春千夜が酔っているからだろう。
この日、仕事で出ていた春千夜は、帰宅するなりシャワーを浴びると、起きて出迎えたを早々に寝室へと連れ込んだ。例え数時間でも会えなかったことにイラついたらしい。
いきなりベッドへ押し倒され、「早くオマエに会いたくて仕方なかったわ…」と切なげな表情で言われれば、も何も言えなくなる。
「…あ…っ」
春千夜の手が性急に動き、身に着けていたスカートをたくし上げられ、露わになったショーツの真ん中に春千夜の指が触れる。その場所を覆っているシルクよりも更に柔らかい部分を撫でられ、の腰がかすかに震えた。
「ン…ぅ…」
太腿の方から下着の中へ指を入れられ、は恥ずかしさでもじもじと膝を合わせたものの、足を閉じても指は容赦なく侵入してくる。シャワーを浴びたばかりの春千夜からは甘くいい香りがしてきて、乾かしていない濡れた髪がの頬へぴたりと吸い付いた。
「…んんっ」
じゅるっと舌を吸われた瞬間、下着の中で指が轟く。割れ目の部分を縦になぞられ、の膣口はその指を溢れた蜜で濡らしていく。
「…マジで可愛いな、は」
軽く撫でる程度の愛撫で花陰を濡らすを、春千夜はそう言いながら愛しそうに見つめた。
「は、春千夜さ……ん、…う」
深く、何度も角度を変えて口付けられ、が息苦しさに喘ぐ。キスの合間にはだけられた胸を弄られ、小さく声が跳ねた。それに呼応するように下腹の奥が疼き、春千夜の指が動く場所から愛液がとろりと溢れてきた。ようやく唇を放した春千夜が、のそこを指で確かめ、うっそりと微笑む。
「、感じすぎだろ…」
「…え、ご、ごめんなさ…」
「謝んな。可愛いって言ってんだよ」
「んっ」
彼女の短く爪を切り揃えた指先にちゅっとキスをすると、春千夜の唇は更に鎖骨、胸、腹部から太腿。体中満遍なくキスをされ、はどうしていいのか分からない。
あの日、春千夜はが怖いなら無理強いはしないと言っていたので、抱くつもりはないんだろう。ただ、お前に触れたいと言われてるようで、ぎゅっと胸の奥が苦しくなった。
「ん、ぅ…」
最後にまた強く唇を塞がれ、は春千夜の硬い胸板へ手をついた。シャワーを浴びたあとバスローブしか身に着けていないせいで、直に春千夜の肌へ触れてしまう。どきっと鼓動が跳ねて目を開けると、大きな鋭い瞳がを見下ろしていた。
(春千夜さん…ほんとに綺麗な顔…)
ふと先ほど姉と交わした会話を思い出す。経験豊富そう、と砂羽が言っていたが、それは確かに事実なんだと、こうして春千夜に触れられてる今ならはっきり分かる。きっと自分以外の女性も、こんな風に春千夜とキスを交わしたり、肌を合わせたりしたに違いないと。
甘く舌を絡め合いながら、は切なく目を閉じる。口元の傷も含めて、春千夜は全体的に美しかった。
そっと滑らかな頬に触れながら、は思う。春千夜の裸も、今みたいに無防備な姿も、もう誰にも見せて欲しくない。こんな風に感じたのは生まれて初めてだった。
「ん…」
ツツ…と糸を引いて唇が離れる。の唇は吸われすぎてぽってりと紅く染まっていた。その唇に、春千夜が親指で触れて優しくなぞっていく。こういう時はして欲しいのだと、もだんだん分かってきた。普段、理性のある時はにさせるのを嫌がるのだが、時々彼女に触れているうち、我慢が出来なくなると口でして欲しいと甘えてきたりする。それはにとって恥ずかしくもあり、また嬉しいことでもあった。
「…あ…」
腕を引かれ、ベッドに座らされて、はドキッとして目を反らした。バスローブの前がはだけて、春千夜の硬く屹立した陰茎が見えてしまっている。そこへ誘導され、「して?」と言われた時、は恥ずかしいのを耐えて小さく頷いた。
いつもこの瞬間はドキドキして顔が一気に熱くなる。
は目を閉じて、おずおずとそこへ唇を寄せた。
「…っ」
差し出した舌先で太い先端をちろちろと舐めると、春千夜が深く息を吐いたのが分かった。ふわりと春千夜愛用のボディシャンプーの香りがするだけで、ドキドキがいっそう強くなっていく。
はこっそり動画などを見て覚えた愛撫の仕方を思い出しながら、亀頭の周囲に舌を這わせ、砂羽に教えてもらった裏側の張りつめた筋も丁寧に舐め上げる。ちろちろと舌を動かすたび、春千夜のそれがびくびくと反応するのが厭らしくて、でもそれが嬉しいと感じた。
そのうち舐めているだけでは物足りなくなったらしい。彼女の熱い口腔にゆっくりと太いものが沈められていく。まるで口の中が犯されていくようで、全身がじっとりと熱く火照ってきた。同時に、まだ犯されていない下腹の奥がきゅんと何かに吸い付くように収縮するのを感じ、無意識にもぞもぞと腰が動く。それが恥ずかしくて、は膝に力を入れて太腿を閉じた。彼のモノを口淫しながら感じてるなんて思われたくないのに、経験はなくても体が勝手に反応することに驚いてしまう。
「は…やば…もうイキそう…」
が扱くというより、今夜は春千夜の方が腰を揺らし、彼女の咥内を犯すようにゆっくりと動く。腰が動くたび、咥えてる場所からちゅぷちゅぷと卑猥な音が洩れ聞こえた。快楽を貪る春千夜は淫靡でいて美しく、その顔を盗み見た瞬間、自分の股の間がじわりと濡れていくのが分かる。それがどうにも恥ずかしいのに、自分ではコントロール出来ないのが怖いと思った。
先端から先走りが洩れ、口の中に苦味が広がると、感じてくれてるんだ、という思いからの気持ちも次第に高揚していく。つい咥えたままちゅうっと吸い付くように唇へ力を込めると、春千夜の腰がびくんと跳ねた気がした。
「あー…やべえ、…もうイク…っ」
そう言った瞬間、春千夜は何度か軽く腰を動かすと、ぐいっと彼女の肩を押し戻す。そして先ほど春千夜が使用して放ったままだったバスタオルへ一気に吐精したようだ。酔っているうえに理性もないはずなのだが、この行為の時、春千夜はの口へ絶対に出そうとしない。その気遣いが嬉しくもあり、少しだけ寂しくもあるのだが、春千夜をちゃんとイカせてあげられたことで、はホっと息を吐いた。おかげで隙があったらしい。気づけば後処理をした春千夜に腕を引かれて押し倒されていた。
「は…春千夜…さん?」
驚いて視線だけ上げてみれば、春千夜の綺麗な顔が、どことなく不満そうに見えてどきりとした。上手く出来なかったのかと一瞬、不安になる。しかし春千夜は「オマエさあ…」と拗ねたように口を尖らせた。
「何か上手くなってねえ…?」
「…へ?」
「やたら変なテク覚えた気がすんだけど…マジで誰かと練習してねえだろうな…?」
じっとりと大きな目で見下ろされ、予想外の疑惑を向けられたは心底驚いた。どうやら動画で覚えたテクを実行したことで、変な疑いを持たれたらしい。の顏が一瞬で真っ赤になった。
「な…し、してません…!こ、こんな恥ずかしいこと…す、するのは春千夜さんだけ…です…」
最後はやっぱり恥ずかしいので、目を伏せ、言葉もだんだんと尻すぼみになっていく。てっきり、また「嘘つけ」と怒鳴られるかと思ったのだが、一向に何も言われないので、もう一度視線を上げると、春千夜の頬がかすかに赤くなっているように見えた。
「………オマエ、マジでオレを煽る天才だな」
「…え?ひゃ…っ」
春千夜の男の部分を何故か刺激してしまったらしい。今度は春千夜がの肌に舌を這わせていく。
「んんっ…は、春千夜…さ…」
中途半端に脱がされた格好のまま、恥ずかしくて身を捩ったところで無駄なあがきだったらしい。スカートも今では腰まで捲り上がり、ショーツが見えてしまっている。そのまま下着を下ろされ、の恥ずかしい場所が全て春千夜の目に晒された。
「や…ぁ、は、恥ずかし…から…っ」
「オレのだけ見てんのずりいだろ」
「そ、それは…だって…んぁっ」
太腿を手で押し広げられ、かすかに濡れてるであろう場所を見られている。は春千夜の視線を感じて、恥ずかしさのあまり涙がじわりと目尻を濡らした。その場所はまだ指で触れられたことがあるだけで、見られたのは初めてだった。
「や…だ…ぁみ、見ない…で…っ」
「何でだよ。すげー綺麗なのに。のここ」
その恥ずかしい場所を指で広げられた感覚に、の喉がひゅっと鳴った。春千夜の目に晒されている処女孔は、未通とは思えないほどにとろりと蜜が溢れてくる。それを見た瞬間、春千夜の喉がかすかに鳴り、イったばかりの場所がぐぐっと勃ちあがるのが分かった。
「…すげえ溢れてきた…」
溢れた蜜を指ですくい、割れ目の中へぬちぬちと塗りつければ、の広げられた腿がびくびくと跳ねる。初めての刺激が強すぎて、の目から涙がぽろぽろ零れていった。
熱く熟れた場所にふっと息をかけられ、は腰をくねらせる。どうにか逃げたいというその動きが淫靡に見えて、逆に春千夜を刺激した。
「ひぅ…っ」
ぷっくりしてきたクリトリスを全て剥かれ、指の腹でぬるぬると撫でられる。その強い刺激では喉をのけ反らせた。くすぐったい感覚の後から、味わったことのないむず痒さが追いかけてくるようだ。ただ同時に最初にされた行為を思い出し、怖さで腰が引けてしまう。
「逃げんな。怖いなら指も挿れたりしねえから」
「で、でも…恥ずかしい……」
「……だから、そういうのが煽ってるってんだよ」
「…ひゃ」
苦笑気味に笑うと、春千夜はの白い太腿に吸い付き、まるで所有の印でも刻むように赤い跡を残していく。
「…ぁ…ん…く、くすぐった…い…です」
内股にも吸いつかれ、びくんと脚が揺れてしまう。口付けられた場所からはくすぐったさのあとに、じわりと甘い痺れが広がるようだった。
しかし、太腿にキスをされ続けて油断していたところへ、指で弄られていた場所に熱く柔らかい舌先が触れて、の声が一段と高くなった。
「や…ぁっだ、だめ…」
尖らせた舌で純潔の膣口を犯されて、はいやいやと首を振って髪を振り乱す。しかし春千夜は行為を止めようとはしない。
「今度はがイクとこ見てぇ。痛いことしねえから」
「…や…ぁぁあ…っ」
潜り込んできた舌先で、くちゅくちゅとナカを掻き混ぜられて驚く。体内を舐められる感覚にぶわっと肌が粟立ち、のそこがひくひくと痙攣する。その瞬間、ナカを犯していた舌がぬるりと滑り、割れ目全体を舐めていく。その場所はすでにねっとりと濡れていた。
「んンっぁあ…っ」
春千夜の舌が硬さを増した小さな芽に辿り着き、そこをちゅうっと優しく吸われた瞬間、全身に電流が流れたような痺れが駆け巡り、脳天を突き抜けていく。甘い感覚が全身を包み、は初めての絶頂を味わった。
「…痛くなかったろ?」
体を起こした春千夜は、は、は、と浅い呼吸を繰り返すの額にちゅっと口づけた。半ば強引に事に及んだわりに、その表情は嘘のように優しい。その眼差しを見ていたら余計に恥ずかしくなったは、つい顔を反らしてしまった。
「何だよ。初めてイった感想ねえの」
「そ…それは、その…」
指先で頬をすりっと撫でられ、火照った頬が更に熱くなる。感想というなら、イった瞬間、気持ち良すぎて怖いくらいだった。今日まで知らなかった未知の世界でもある。
「は、恥ずかしい…けど…」
「けど?気持ち良かったかよ」
「う…き、気持ち…よかった…です…」
「…………」
目を反らし、真っ赤になりながら応えるを見た瞬間、すでに勃っている場所が更に硬さを増していくのを感じて、春千夜はそっと彼女の上にのしかかった。だいぶ解したし、イカせたし、そろそろいいよな、という邪な思いが過ぎったからだ。
しかし、いや、案の定というべきか。行為を続行しようとした春千夜を、がうるうるとした泣きそうな顔で見上げてくるので、胸の奥がきゅうっと変な音を立てる。
「春千夜…さん…?」
「……はぁ」
あまりに切なくて溜息が出る。恥ずかしさと怖さを滲ませて見つめてくるが可愛すぎて、このまま犯してやろうか、という邪な思いと、大事にしたいから怖い思いはさせたくない、という相反した想いに、今夜も苦悩する春千夜だった。